モリコメンド 一本釣り  vol. 73

Column

瀧川ありさ 等身大の姿が身近に。新作『東京』に見る、彼女の新しい表現のカタチ

瀧川ありさ 等身大の姿が身近に。新作『東京』に見る、彼女の新しい表現のカタチ

独創性と親しみやすさを同時に感じさせてくれるシンガーソングライター、瀧川ありさ。メジャーデビュー4年目を迎えた彼女はいま、新たなフェーズに向かおうとしている。

まずはこれまでのキャリアを紹介しておきたい。1991年生まれ、東京出身の彼女は幼少期から松任谷由実、山下達郎、THE BLUE HEARTSなどさまざまな音楽に親しみながら育ち、中学生のときにバンド活動をスタート。高校卒業の時期にバンドは解散、その後、ソロアーティストとして活動を再開させた。

鮮やかなポップ感とシックな手触りを共存させた中性的なボーカル、色鮮やかな風景を描き出すソングライティングによって徐々に注目度を上げた彼女は、2015年3月にアニメ「七つの大罪」のエンディングテーマ「Season」を収録したシングルでメジャーデビュー(彼女をフックアップしたのは、ユニコーン、ゴスペラーズ、西野カナなどを手がけてきた名うてのミュージックマンだという)。

同年7月に2ndシングル「夏の花」、11月にはアニメ「終物語」のエンディングテーマに採用された3rdシングル「さよならのゆくえ」をリリース。10代〜20代の女性を中心に知名度を上げるなか、2016年に入ってからもリリースとライブを着実に重ね、11月に最初の集大成と呼ぶべきメジャー1stアルバム『at film.』を発表した。

タイトルにある“at”は瀧川ありさの頭文字。アルバムに関するインタビューのなかで彼女は、「メジャーデビューから1年8カ月経ってリリースしたアルバムということで、わりと時間を掛けての1枚目だったと思うんですよ。でも、そのおかげで自分のなかでちゃんと成長できた部分を提示できているのかなって。“満を持して”良かったと思っていますね」「(デビューから)2年目に入ってから——5枚目のシングル「色褪せない瞳」をリリースした時期ですね——いい意味で肩の力を抜けるようになってきて」「深呼吸も出来るようになったし、しっかり足場を固められたという実感もあります」とコメントしていたが、その言葉通り、『at film.』を通して彼女は、自らの音楽性をナチュラルに示してみせたのだ。

2017年2月にシングル「ノーサイド/ONE FOR YOU」をリリース(テレビアニメ「ALL OUT!!」のエンディングテーマに起用された「ノーサイド」は自身が敬愛する松任谷由実の名曲のカバー)、さらにライブ活動も継続してきた瀧川ありさは、今年6月にこれまでとは違うテイストの作品を発表。“東京生まれ東京育ちの彼女が感じる東京を綴ったコンセプトミニアルバム ”『東京』だ。デビュー以来、自身の楽曲を通して東京の風景を描いてきた彼女。その独自の視点と表現スタイルは『東京』とタイトルされた本作によって、さらに明確になっている。つまり本作は、シンガーソングライターとしての彼女のアイデンティをはっきりと提示する作品と言えるだろう。

ミニアルバム『東京』は叙情的なピアノから始まるミディアムチューン「night light」からスタートする。大勢の人たちがそれぞれの思いを持ちながら行き交う東京。“君”と“僕”
の小さな物語から始まり、サビの「僕らが生きる街は 孤独にそっと愛 羽織って お互いの肩に掛け合っては それぞれどこかへ向かってく」というフレーズによって、すべての人たちに向けた普遍的なメッセージに結びつけるこの曲からは、彼女のソングライティングがさらに深みを増していることが伝わってくる。

ファンク、ソウルミュージックのテイストを取り入れた「FRIENDS」も彼女の新機軸といえる楽曲。心地よいグルーヴを含んだバンドサウンド、洗練されたメロディラインとともに描かれるのは、ずばり“女性同士の友情”。お互いにさまざまな事情を抱え、不器用な毎日を送っていても、ふたりで会って少し話せば、またがんばろうという気持ちになれる。彼女自身のリアルな日常が感じられる「FRIENDS」は、彼女と同世代の女性を中心に強く共感されるはずだ。

そして本作の白眉はタイトル曲の「東京」だろう。アコースティックギターを中心としたカントリーテイストのサウンド、爽快感、解放感に溢れたメロディも印象的だが、この曲の軸になっているのはやはり歌詞。「東京はヘンテコだ」「東京で生まれたのに 息苦しくしてる僕はずっと」といった率直なフレーズからは、彼女自身のパーソナルな心情がまっすぐに感じられる。そう、瀧川ありさという女性の等身大の姿が身近に感じられることこそが、本作『東京』の魅力であり、彼女の新しい表現のカタチなのだと思う。サウンドの幅、歌詞の表現を含めて、シンガーソングライターとして新たな領域に踏み込んだ本作によって、瀧川ありさの存在はさらに多くのリスナーに浸透しくことになりそうだ。

文 / 森朋之

その他の瀧川ありさの作品はこちらへ

オフィシャルサイトhttp://www.takigawaalisa.com

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