Interview

sleepyhead 関わる者すべてを満月へと導く、武瑠ソロプロジェクトの独創的な設計図

sleepyhead 関わる者すべてを満月へと導く、武瑠ソロプロジェクトの独創的な設計図

昨年12月に解散したSuGのボーカル・武瑠によるソロプロジェクト「sleepyhead」が始動して約5カ月が経った。武瑠はこの間にTSUTAYA O-EASTでの初ライヴ、バースデーライヴ、THE ORAL CIGARETTESとの対バン、ファンクラブ組織“秘密結社S.A.C.T(Sleepyhead.Agent.Club.Team)”の発足、1stフルアルバム『DRIPPING』のリリース、そしてツアーを控えるなど、精力的に活動し続けている。一度はふさぎ込んだ状況や思考から再び立ち上がり<絶望も逆境も希望に変える>、飽くなきクリエイティビティの源に迫った。

取材・文 / 鳴田麻未 撮影 / 江隈麗志

sleepyhead=「寝ぼけてる頭」=「夢からずっと覚めないでいられる」

ソロプロジェクト始動前後のことから伺います。SuGは、2017年9月2日に日本武道館公演を行い、12月20日に解散を発表しました。さまざまな思いがあってのことだと思いますが、このバンドでやりたいことはやり切ったと言えますか?

ひと言では言えないですけど、あの状態のSuGがやれることはやり切ったっていう感じです。

休止時、今後について何か考えていましたか?

まず解散できるかわからなかったんで……何も考えてなかったです。ただ解散したいっていう一心でした。だから12月に解散という形にできて、そこでやっと先のことを考え始めました。

年末ですね。まず何から取り掛かったんでしょうか?

とりあえずライヴを決めました。それでそのために曲をレコーディングしなきゃ、って。日にちを決めないとそのまま何もしなくなっちゃいそうだったんで、締切りだけ決めて動き出しましたね。

2018年1月31日には、sleepyhead始動と初ライヴ”透明新月”が告知されました。「準備不足ですが、ただ闇雲に踏み出してみることにしました」とコメントしていましたが、まず3月17日のライヴという締切りを設けて、そこに向けて逆算して準備していったと。

そうですね。日程を決める前から”透明新月”っていうタイトルにしようと思ってたんですけど、取れた日がたまたま新月っていうミラクルが起こったんです。

その、月に関するこだわりはどこから由来しているんですか?

sleepyhead=「寝ぼけてる頭」って訳なんですけど、逆に言うと「夢からずっと覚めないでいられる」。そういう意味を込めてるんですね。それでアーティストロゴも月を入れて。”透明新月”ってライヴタイトルと月入りのロゴ。それをまず最初に決めましたね。「新月」はもちろんスタートの意味で、「透明」っていうのは、良くも悪くも過去が後ろに透けて見えてて、隠すこともできないし、逆に助けられてる部分もある。なので、自分が成長していく上でそれを忘れずにいて満月になれるように。越えるべき過去って意味を含めて”透明新月”と付けました。

そしてTSUTAYA O-EASTで行った”0TH ANNIVERSARY LIVESHOW 『透明新月』”。「“不完全”復活」という発言が印象的でした。

そう銘打って、決意だけで立ったステージで。自分を客観視するためのライヴだったなと思います。みんなに伝えたいこととかはなかった。そこまでたどり着いてなかったです。だから「復活してよかった」とか「音楽をもう1回本気でやろう」と思えたのは、5月12日の誕生日ライヴ(”birthday scream party”@青山 月見ル君想フ)でしたね。3月は踏み出すきっかけっていう日だったと思います。

レーベルや事務所に所属せず自主で活動をスタートさせましたが、これには何か意図が?

単純に一度人間不信になったから、1人で勉強してみようって思ったんです。まず自分でやってみて活動の仕方を全部知った上で、必要なら人に任せたいっていう。だから今は手伝ってくれる人を探そうって思えてきました。マネージャーとかCDの制作スタッフもいなくて本当に全部自分でやったんで……。

1人でCDを作るってめちゃくちゃ大変じゃないですか?

はい。物理的に無理だなと思いましたし、「こんなこと気づかずにやってくれてたんだ」ってこともあれば「こんなの今は全く必要ないじゃん」って思うこともいっぱいありました。この作業の人は要らなくて、こういう人が自分には必要なんだってことがクリアになりましたね。

自主活動の一環で、3月にはクラウドファンディングで「ファン参加型ファンクラブ組織“秘密結社S.A.C.T(Sleepyhead.Agent.Club.Team)”の発足」という企画も立ち上げましたね。目標300万円に対して1024万円が集まりましたが、この金額やファンの反応についてはいかがでしたか?

正直なこと言うと、ある程度の額はいくと思ってました。クラウドファンディングって、ファンディング(投資)じゃないと思ってて。あれは基本的にはオンラインショップだと思ってるんです。自分の欲しいものを買って楽しむって企画を、イベントと謳ってファンディング体験っぽくやってる。ガチの投資だと本当に返ってくるかわからないものを賭けなくちゃいけないけど、あれはちゃんと返ってくるってわかった上でできるんで、安心して楽しめるというか。だからどれぐらい集まるかも見えやすいですよね。それでも予想以上の数字でしたね。公約通りオリジナルゲームの制作まで始めてます。

今の自分を“抽出中”の1stフルアルバム『DRIPPING』

初ライヴで自分を客観視したとおっしゃいましたけど、改めてどういうアーティストだと思いましたか?

発想力に自分を追いつかせることが一番のテーマな人だな、と思いました。終わった時に思ったんですけど、ライヴでこういう景色にしたいっていうイメージとか全体図とかが明確に見えてて。それの中にいる人として表現のレベルを上げなきゃなと。このあいだ大阪のライヴ(6月6日”THE ORAL CIGARETTES ReI project coupling tour ~Piggybacking Together~”)ではわりとできたので、ここから向かう先ややることは明白だなと思ってます。あと、昔よりソングライティング能力が上がったというか、自分のやりたいことに近づけてるなと、そのライヴでもアルバムを作ってても思いました。

アルバム『DRIPPING』は、武瑠さんの好奇心旺盛で聡明なところが投映されているアルバムだなと思ったんですね。多種多様なジャンルや要素が絶妙にバランスよく収まっているので。

アレンジャーを、RINZO、杉下トキヤ(ex. Last Note.)、kanadeYUK、PARKGOLF、SHIROSE(WHITE JAM)、TeddyLoidという6人の方に振ったんですよ。音楽性は縛らないようにしようと思って。

そうなんですね。得意分野が異なる6人なので振り幅の大きいサウンドになってるのも納得です。

サウンドプロデューサーがいないんで自分が仕切って明確にイメージを伝えてお願いしました。でも詞曲も同時並行で作ってたから、アレンジが返ってきて「あ、こういう感じならこの曲は修正しなきゃな」とか紆余曲折あって、すっごいちょっとずつ全曲を進めていきました。たぶん、あんなヒマな時期じゃなかったらできなかったな(笑)。

内容に関して、全体のコンセプトの構想はありましたか?

タイトルもテーマもあってないようなものです。『DRIPPING』は、今の自分とか、今までの歴史、美学みたいなものを絞り出してる途中っていう意味。抽出した後ではなくて今です。やっと前に進もうとしたところで、答えとかわかってなくて、ただ抽出してるっていうだけにしたかったので『DRIPPING』にしました。

なるほど。であれば、最近作った曲ばかりなんですか?

半分くらいは昔原型を作ったもので、それを作り足して完成した曲もあるし、書き下ろしもあるし、アルバムを作ってる途中で生まれた曲もあります。中でも、復活の意識を持って書いたのは「闇雲」と「結局」と「HOPELESS」と「ALIVE」ですね。「ALIVE」は「復活しよう」という気持ちになれそうな時に書き下ろしました。まだ完全にはなれてなかったですけど。

人間不信から復活に至るまでの心理状態

先ほど「一度人間不信になった」というお話も出て気になってましたが、ここ1、2年はジェットコースターのような精神状態だったのではないかと……。

そうですね。もともと頭の中にあるものに自信があるタイプだったんですけど、バンドの最後の1年くらいでその自信がまったくなくなって。普通の対バンも決まらないし、ダブルブッキングも起きるし、スタッフもド新人で仕事的に事故りまくるし、10周年の武道館に行くまでいろんなことが噛み合わなくて。がんばってもどうにもならない、みたいなことが1年くらい延々続いてたんですね。それを自分のせいにするしかなかった。今思うと自分のせいにしすぎたと思うんですけど、事実それを引き寄せた自分の人間的な魅力のなさ、優秀な人材をつかまえられなかった自分たちの力量なので、ひたすら自分を責めてて。

それはキツイですね。

ずっと自分を責めてたら、当然自分に自信がなくなってきて。自分の頭にあるものってなんなんだろう、別にどうでもいいものなのかなって。それで復活する気にもなれなくて。でもそんな中、ミュージシャンの先輩や友達に「どうしても(音楽を)やったほうがいいよ」と言ってくれる人もいて、「ホントかなあ。もう終わった人間なんで」みたいな、すぐにはそう思えなかったですけど。3月17日は確実にそういう気持ちや引きこもり感を引きずったままステージに立ってましたね。だからMCも全然プロのトーンじゃなかった。だけど、それでいいや、その後作っていけばいいやと思ってました。そういう気持ちになる途中の過程で生まれたのが「ALIVE」でした。

<答えなどなくていい 決意ひとつ在れば良い>や<生きたいから 進みたいから 変わりたいから 死にたくなる>という歌詞はそういうことだったんですね。

もう、コードだけ入れて、歌ってメロディ乗せただけ。要は歌詞とメロディを同時に書く曲が今回すごく多かったですね。

それってどうしてでしょう?

なんか“いい曲”を書こうっていう気がなかったです。人に発表するかわかんなかったんで。ただ今の自分の心情を日記のように書いてみたり、ただの音遊びのつもりで作ってみたりした曲もけっこうあります。例えば「MY FORTUNE FADED」はThe Musicの「The People」って曲がすげー好きで、同じリフでただ盛り上がる曲があったらいいなとか、「酩酊」だったら岡村靖幸スタイルの現代バージョンをやってみたいなとか。「退行的進化」はThe xxの派手バージョンをイメージしたし、「HURT OF DELAY」はKREVAさんみたいなヒップホップのメロウなバラードが欲しいなと思って。音で遊んでるやつは明確に狙ってるものがありますね。

ヒップホップもロックもEDMも一緒くたに凝縮された1枚で、結果論ですけど武瑠さんらしい作品かもしれませんね。

超いろんなジャンル聴いてるんでアイデアはめっちゃ出てくるんですよ。デモも43曲あったんで絞るのが大変な状態で。だから書きたい歌詞の方向性、ストーリーで収録曲は決めました。音像はマジでバラバラな中、5曲に参加してくれたkatsuma(coldrain)くんのドラムの力は相当でかいです。

想像できるような活動をする予想内のアーティストになりたくない

武瑠さんは音楽的知識もさることながら、戦略やマーケティングなどビジネス感覚にも長けた稀有なミュージシャンだと思うのですが、どうしてそんなにクレバーなんですかね?

あんまりクレバーだと思ってないですけどね。得意なことと苦手なことのパラメーターがものすごいハッキリしてて、だから結果的にそう見えるだけで、本当は偏ってるだけなんだと思います。

ソングライティングとパフォーマンスだけでも成り立つ職業ですけど、ご自身のトータルプロデュースもされてるじゃないですか。

そうですね。それに関しては、バンド時代に自分がやらないといけない状況だったからですかね。10年間やって、自分たちの発想を促したり導いてくれたりするマネージャーって最初の2年しかいなかったので。途中からは自己発信しないと形にならなかったんですよ。実際、自分はプロデューサーだし5人の一番のマネージャーだって気持ちでやってました。

ファンはアーティストを映す鏡とも言われますが、ご自分のファン層や見られ方はどう分析していますか?

この音楽性然りなファン層だなってインスタとか見てると思いますね。海外の方もいっぱいいるし、いわゆるヴィジュアル系が好きな人もいるし、邦ロック勢みたいな人もいっぱいいるし、アパレル関係とか美容師も多いし、黒いギャルもいるし、本当にバラバラで。まさに鏡で、挑戦していくのが好きな人しか、流れを考えると残ってないと思う。今までいろんなバランスでやってきましたけど、根本はドキドキしたいだけなので。「見たことないものを見せる」がテーマであり続ければいいんじゃないかなと思います。ファンの人も見たことないものを見せると喜ぶってイメージがあります。1人になって、より一層そうだなと思いました。

では、これからsleepyheadとして追求していくアーティスト像を教えてください。

今までやってきたことと変わらないですね。「あーあー」って想像できるような活動をする予想内のアーティストになりたくない。ジャンルが存在しないっていうのは1人になってからも変わらず、いやもっとかな、さらにそうなっていくと思います。だからファン同士のつながりを強くしていかないと自分の居場所なんてすぐなくなるだろうなとリアルに思ってます。

時に厳しい現実にさらされながらも活動を続けていく原動力ってなんでしょうか。

「これしかないから」っていうのが一番です。「好きだから」じゃ原動力になりきれないかな、「好き」だけじゃ自分はここまで動けないです。ほかのことやりたくないし逃げ場がないから、これしかないっていう思いが強いです。

ライブ情報

sleepyhead LIVE TOUR 2018 DRIPPING

7月 6日(金) 下北沢BasementBar
7月21日(土) 心斎橋FANJ twice
7月22日(日) 名古屋 ライブホールM.I.D
7月29日(日) 渋谷WWW X

武瑠

手法や領域に縛られることのない、体現型クリエイター。ファッションブランドmillion dollar orchestra主宰。音楽、映像、小説、デザイン、ファッションをミックスし、3D音楽表現を展開。2010年1月、SuGのボーカルとしてメジャーデビューを果たし数々のヒットチューンを生み出す。2017年9月2日、日本武道館公演をラストライヴとし、バンドを解散。2018年1月31日22時27分、満月。皆既月食の夜に、ソロプロジェクト・sleepyheadをスタートさせた。

オフィシャルサイト
http://sleepyhead.tokyo

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