Interview

miwaの“今”が見えてくる『miwa THE BEST』。〈acoguissimo〉ファイナル公演で披露された新曲も含むベスト盤を思い出話もまじえて深掘り

miwaの“今”が見えてくる『miwa THE BEST』。〈acoguissimo〉ファイナル公演で披露された新曲も含むベスト盤を思い出話もまじえて深掘り

デビュー8周年を迎えたシンガーソングライターmiwaが、キャリア初となる2枚組のベストアルバム『miwa THE BEST』をリリースする。
ドラマ『泣かないと決めた日』に起用されたデビュー曲「don’t cry anymore」からドラマ『リッチマン、プアウーマン』の主題歌としてヒットし、『紅白歌合戦』に初出場した際に歌唱した「ヒカリへ」、最新にして通算23枚目のシングル「アップデート」までの全シングル表題曲をリリース順に収録。さらに、未発表の新曲「Unchained Love」と「アコースティックストーリー」に、ファンからの人気も高い名バラード「めぐろ川」を加えた全31曲という大ボリューム盤。
そんな今作を完成させた彼女の“これまで”と“これから”を聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ

アコギ1本あれば、いつでもどこにでもみんなに会いに行ける

まず、6月10日に横浜アリーナにて、47都道府県を巡る単独のアコギ弾き語りツアー〈acoguissimo(アコギッシモ)〉のファイナルを迎えた感想から聞かせてください。

2011年から8年かけて全国を回ることができて嬉しかったです。初めて行く県もあったんですけど、私が知らない土地にも自分の音楽を聴いてくれて、ライヴを楽しみに待っていてくれる人がいるんだっていうことが、音楽をやっていくうえで大きな勇気や励みになっているし、アコギ1本あれば、いつでもどこにでもみんなに会いに行けるということが自分にとっての強みでもあると感じることができたツアーになったと思っています。

最初は小さなライヴハウスからスタートした企画でしたが、最終地は出身地である神奈川で、しかも、横浜アリーナという大きな会場になりました。

すごいことだなぁって感じました。ただ、私自身がやっているのは、ギターを弾いて歌うっていうとってもシンプルなことで。そのスタイルは変わっていないのに、ステージから見えている景色は全然違っていて。横浜アリーナに全国からみんなが駆けつけてくれて、見守りにきてくれた。そんな人がたくさんいるなって実感できました。すごくあったかい空間でしたね。

最後のMCでは涙を堪えているシーンもありました。

いつものライヴと違って、私ひとりにみんなの視線がより集まるじゃないですか。だから、私を見にきてくれたんだっていう気持ちもより伝わってくるし、何より、ひとりだけどひとりじゃないっていう気持ちになれて……ステージ上ではひとりなんだけど、ライヴの空間というのはひとりぼっちじゃないんだっていう。こんな経験ができるのもみんながいてくれるおかげだなっていう想いを噛み締めた瞬間でした。

また、“完”じゃなく、“1周目”が終わったというニュアンスで話していたこともびっくりしました。

そうですね。47都道府県制覇はしましたけど、終わりではないというか。弾き語りは私のライフワークですし、またアコギ1本の弾き語りで歌を届けに行きたいなっていう意識がありました。全県を周り切ったっていう感慨はもちろんありましたけど、完結ではなく、1周しただけ。次に行くときは、前回とは違う市町村に行きたいなって思っています。

さらに、ファイナルではベスト盤に収録された新曲「アコースティックストーリー」の初披露もありました。アコギ弾き語りツアー〈acoguissimo〉の47都道府県完走を記念して書いた曲になっていますが、アレンジに驚きました。

みんなびっくりすると思うんですけど、もともとすごい楽しいというか、明るくて泣ける曲にしたいと思っていたので、そういうアレンジで進めながら作っていて。

「アコースティックストーリー」っていうタイトルなので、アコギメインの曲かと思いますよ(笑)。そしたら、ピアノが弾むダンスポップというか、みんなで歌えるようなアンセムになっていたので。この合唱のようなコーラスは誰が入れてるんですか?

埼玉公演のお客さんにお願いして収録したんです。あと、ローディーの八木ちゃんとかマネージャーさん、ディレクターさん、ソニーの宣伝チームにライヴのスタッフ、それに、eggmanの井上さんも。

そうなんですか!! 大勢の人が参加している曲なんですね。

すごく嬉しいですね。こういう曲が書ける日がくるとは思っていなかったし、こういう曲を書く人じゃないって自分では思っていたから。でも、自分の中でこういうときがくるっていうのは嬉しい変化でもあるのかなと思います。

“こういう”というのは歌詞のことですよね。横浜アリーナのMCでは、「初めてパーソナルなことを歌った」と話していましたね。

そう、初めてなんです。私にとっては、ずっと小説を書いてきた人がいきなり自叙伝を書いたようなイメージ(笑)。

自分の歩みに対して、今ならひとつの物語として作品にしてもいいかな

デビュー以来、ドラマや映画、アニメやCMに楽曲を書き下ろしてきたmiwaさんが、どうして自分のことを書こうと思い立ったんですか?

アコースティックギターを弾いていたから今の自分があるし、47都道府県を回って全国で歌って、全国のみんなに会いに行けたっていう気持ちもあったし、そうやって出会えた人に感謝の気持ちを伝えたいなって気持ちもあったし。そういった8年……ギターを弾き始めたときから考えたら10年以上経つのかな。弾き語りライヴを始めたときは17歳だったけど、アコギに出会ったときから考えると、15歳からの自分の歩みに対して、今ならひとつの物語として作品にしてもいいかなって思えたタイミングだったっていうのもありますね。

どんなことを思い出しました?

やっぱり下北に通っていた頃のことも思い出しました。〈acoguissimo〉を始めた頃はすごく人数が少なかったこととか。何より、デビュー曲では「一人きりだって」と歌っていた私が、この曲では「今はもうみんながいる」と歌えるようになっている。それは、すごいことだなって思います。

これからも私小説的な歌詞を書いてみたりは?

しないです! この曲は特別ですね。アコギ1本持って歩いてきた道のりに、みんながついてきてくれた。私がアコギ1本持って歩いている姿は変わらなくても、いろんな人と出会って、いろんな人が私の夢に乗っかってくれて、協力してくれて、応援してくれた。それは、とても幸せな光景だなっていうのが、この曲のイメージで。自分が歩いてきた道のりを振り返ってみたら意外と物語になったというだけで、今も昔も自分のことを曲にして共感してもらえるとは思わないから。ただ、17歳の頃から頑張ってきた子がこういうふうになれるんだっていう物語のような曲になっているので、今、17歳の子が聴いたら、自分の思い描いている夢も10年後には叶うのかなって思えるきっかけになるかもしれないし、一緒にこの8年を歩んできた人たちからしたら、振り返るだけの思い出も詰まっているので、そういうことを感じる一曲にはなりました。

私小説的な歌詞もいいと思いますけどね。先ほど、デビュー曲「don’t cry anymore」の話が出ましたが、ご自身にとってはどんな曲になっていますか?

大変だったんですよね。アレンジも歌詞もいろいろ直したんですよ。だから、すごく多くの人が関わった、いろんな思いの詰まった楽曲になっているし、歌えば歌うほど、元の状態をどんどん忘れて更新されていくというか。最初の頃は、歌詞を直すっていうことにすごい違和感があって。作りたてならいいんですけど、デビュー前にライヴで歌ってきたものを直したので。けど、テレビを通してたくさんの人に届く曲に仕上げていくっていうことに対しての思いを持てたし、8年かけて、「don’t cry~」になったなと思っています。今は歌うときになんの疑問もなく、この形がしっくり歌えているし、改めて振り返ると、とてもデビュー曲な感じがする歌詞だなって思います。

ここから戦っていくんだっていう決意や強い意志を感じますよね。

うん、そういう感じがしますよね。すごくデビュー曲な感じがするなぁと思いました。そのときはそんな意識はなかったけど。

もう一曲、歌謡マナーのピアノバラード「Unchained Love」が新曲として収録されています。ドラマ『シグナル 長期未解決事件捜査班』挿入歌として書き下ろした曲で。

韓国ドラマのリメイクで、もともとのドラマを観て作ったんですけど、結構テーマが重くて。今回は作詞家の藤林聖子さんにも入っていただきながら、なるべく日常に置き換えられるようなテーマに落とし込みたいねっていう話をして、ドラマの設定が非日常的すぎるので、もうちょっと日常的に感じられることに寄せて、突然の別れに対する自分の気持ちがまだ踏ん切りがついていない人にスポットを当てた感じです。簡単に言うと、理由はわからない突然の理不尽な別れがテーマ。同世代からちょっと上の大人の女性の人が共感できるような歌になったんじゃないかと思います。

大人の女性の理不尽な別れをテーマにしたせいか、歌声も普段とはまったく違いますよね。

そうそう。歌い方も「miwaっぽくないものにしよう」っていうテーマもありました。だから、ちょっと吐息まじりみたいな歌い方をしていて。一回聴いただけではmiwaだってわからないような感じにするっていうのがテーマだったので、「難しい!」って思いながら、いつも以上に息を混ぜたり、サビもあんまり抑揚をつけすぎずに歌っていますね。

どうしようもないやるせなさみたいなものが伝わってくる、とても大人っぽい声になっていると思います。逆にベスト盤に収録されている中で、一番古い曲はどれですか。

「オトシモノ」ですね。これは高校生のときに作った、すごい初期の曲なんですよ。妹が受験勉強をしていたときだから17歳ですね。私が高2で妹が中3のとき。

ドラマ『獣医師ドリトル』の主題歌でした。

この曲も、1回歌詞を書き換えているんです。そもそもは妹の受験を励ますみたいなイメージで、自分を見失ったり自暴自棄になったときにもう一回大切なことを思い出してほしいなって思って書いた曲だったけど、それが『ドリトル』の主題歌になって、松浦晃久さんのアレンジで、凄腕ミュージシャンの方がレコーディングをしてくれて。ドラマを見てこの曲を知った人もたくさんいましたし、17歳のときに書いた曲がこんなふうに広がっていくっていうのもすごいことだと思いますね。

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