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懐かしい田園風景を一人称視点で歩くゲーム『NOSTALGIC TRAIN』とは?

懐かしい田園風景を一人称視点で歩くゲーム『NOSTALGIC TRAIN』とは?

あなたはこの夏、不思議な田園風景で何を見つけますか?

2018年6月13日、一風変わったゲームが発売されました。一人称視点でオープンワールドの美しい町を自由に探索したり、ファンタジックなストーリーを楽しんだり、田舎の美しい景色を存分に味わえる『NOSTALGIC TRAIN(ノスタルジック トレイン)』。制作者は、ナラティブ&環境アーティストの畳部屋氏。背景モデラーとしてのキャリアを持ち、現在は海外で開発者として活躍する傍らインディーゲーム制作を行っている畳部屋氏は、クラウドファンディングサイトを通じて支援者から資金を募り、たったひとりで本作を作り上げました。Unreal Engine 4で表現された美麗なグラフィックには、思わずため息が出ます。オンライン要素はないので、のんびりと自分のペースで楽しめるのもうれしい。本作の魅力を2回に渡りお伝えします。

文 / 内藤ハサミ


ウォーキングシミュレーターとは?

まずは、発売告知で公開されたトレーラーをご覧ください。こちらの動画を観ていただけば、本稿の内容の理解度も高まると思います。

本作は“ウォーキングシミュレーター”という、比較的新しいジャンルのゲームです。一般的に“マップ内を動き回ることだけで操作が完結し、ストーリーは存在するがインタラクションはほとんど存在しない”と定義づけられることが多いです。以前は、ウォーキングシミュレーターといえば、「ゲーム性に乏しい、歩いているだけでクリアできる」と内容の薄さを皮肉るように使われる用語だったという印象でしたが、ここ5年ほどで、むしろその“歩くだけ”という特性を活かし、面白く仕上げている作品がいくつもリリースされています。代表的な作品は、イギリスのデベロッパー・Chinese Roomの『Everybody’s Gone to the Rapture -幸福な消失-』、『Dear Esther』などでしょうか。前者は全住民が消失した町で過去の出来事を知ること、後者は美しい島を散策しながら主人公の独白を聴くことが目的。どちらのゲームにも、相互の働きかけをする仕組みはほぼ存在しないものの、重厚なストーリーと美しいグラフィックに多くのユーザーが魅了されました。戦闘や謎解きなどの駆け引きがないぶんストーリーやグラフィックのクオリティに注力でき、個人での開発が可能だというこのジャンルの特性は新進気鋭デベロッパーの熱意ともマッチしたようで、次々に興味深い作品が生まれ続けています。水準の高いゲームが出てきたことで純粋にゲームジャンルとしても認知されてきており、現在は開発元がウォーキングシミュレーターと銘打って作品を発表しているという、面白い発展をしてきた分野だと言えます。

ふたつのゲームモード

さて、『NOSTALGIC TRAIN』の説明に戻りましょう。まず、筆者がエンディングまでプレイしてみて、おすすめしたいポイントをプレイヤー適正にしてまとめてみました。

○こんな人は楽しめる

  • 田舎の景色、味のあるローカル列車が見たい
  • 目的を持たず、ぶらぶらと散歩したい
  • 断片的に語られる情報から、内容を推理することが好き
  • 切なさを体験できるストーリーが好み
  • アイテムや実績集めに縛られず、のんびりとゲームを楽しみたい
  • 新しいジャンルのゲームをプレイしてみたい

このなかで、なにかひとつでも当てはまるものがあれば、ぜひともプレイしてみてください。本作は積極的にさまざまな操作を楽しむようなゲームとは真逆の位置にある面白さ。基本的にすることはただフィールドを動き回ること、本当にそれだけです。「ウォーキングシミュレーターは、はたしてゲームと呼べるのか?」……実は筆者も実際に触れて、最近の傾向を調べるまではそう考えていましたが、アクションゲーム、パズルゲーム、シューティングゲームにジャンルそれぞれの楽しみかたがあるように、“ウォーキングシミュレーターの独特な楽しみかた”があるのだと今は確信しています。

▲美しいセピア色のタイトル画面

本作は、幻想的で切ない物語を楽しめる“旅の終わりに二つのゆらめき”とサブタイトルの付いた“ストーリーモード”、マップを自由に歩き回って楽しむことが目的で物語の存在しない“フリーモード”、ふたつのゲームモードから成っています。どちらから始めても問題ありませんが、筆者は物語の内容が気になったので、まずはストーリーモードから始めてみました。

物語は、“夏霧”というどこか懐かしい田舎の駅が舞台。赤くて可愛らしい一両編成のローカル線が、この街のシンボルとなっています。小さい小学校に神社、その横を流れる小川、うっそうと茂る竹林……小さな港からは今にも潮の香りが漂ってきそうです。プレイヤーである主人公は、この情緒たっぷりの駅ホームで、全ての記憶を失った状態で目覚めます。唯一わかることは、自分が白いワンピースを着た女性であるということだけ。こういう、落ち着いた性格の女性キャラが主人公のゲームは、結構珍しいのではないでしょうか。

▲指定のポイントに到達するとテキストが表示され、ストーリーが読めます

▲赤い電車の可愛らしさもさることながら、踏み切り棒のしなり具合がリアルでたまりません!

▲“夏霧”という駅名、何か暗示めいたものを感じますね……

▲こじんまりとした駅前の景色。赤い円柱のポストがあるということは……戦後すぐあたりの時代でしょうか?

自分に関することすらなにもわからない不安な状態のまま、まずは周辺を歩き回って情報を集めます。ですが、夏霧をいくら歩き回っても人っ子ひとり見当たりません。しかし主人公には、意識を集中させると自分を導くような白い光が見えるという特殊な能力が備わっているので、それを頼りに探索を進めていきます。見つけた白い光に触れるとストーリーが進み、その次は別の場所に現れた光を探し出して触れる。この繰り返しです。

▲ストーリーが進む場所に、次々と現れる光

マウスの右クリックで風景のなかに光が浮かび上がり、近づくとテキストが表示されます。キーボードの“W”で前進、“S”で後退、“A”と“D”で左右にも動けます。ダッシュやジャンプ、しゃがむ動作までできるので、思っていた以上に操作は快適。

▲光に導かれるままに入った古本屋。そこに置いてあった雑誌を読み、“夏霧の神隠し伝説”について知ることができました。これは自分に起こったことと関係しているのでしょうか?

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