Interview

フレデリックが初のアリーナライヴを経て次のフェーズへ。EP「飄々とエモーション」で耳を楽しませてくれる、彼らの新たな試みとは?

フレデリックが初のアリーナライヴを経て次のフェーズへ。EP「飄々とエモーション」で耳を楽しませてくれる、彼らの新たな試みとは?

フレデリックの最新EP「飄々とエモーション」が完成。リード曲の「飄々とエモーション」は4月30日に行われた神戸ワールド記念ホールのライヴに向けて作られたナンバーで、初アリーナ公演に寄せる彼らの想いが形になった作品だ。観客がシンガロングできる、今後の彼らにとって代表作となりそうな予感の曲。そして、「シンセンス」「NEON PICNIC」といったタイプの異なる曲に加え、キリンレモンのCMソング「シントウメイ」も収録。さらに初回限定盤には、昨年11月より開催されたフレデリズムツアーのドキュメンタリーと、神戸ワールド記念ホールでのライヴ映像を収録。最新の彼らの音楽に触れられる内容となっている。

取材・文 / 岡本明

一緒に音楽を楽しめるのが音楽のあるべき姿

今回の「飄々とエモーション」は、いつ頃から取りかかっていたんですか?

三原康司 去年の11月ぐらいから〈フレデリズムツアー~ぼくらのTOGENKYO~〉を回っていたんですけど、その期間に作っていました。特にリード曲の「飄々とエモーション」は神戸ワールド記念ホールに向けてというところで、今までとは違うっていう感覚がありました。アリーナでライヴをするときって会場が大きいので音がより響いたりもするし、たくさんのお客さんに向けたメッセージという気持ちでも違っていて。つねに伝えようという気持ちはありますけど、よりたくさんの人に伝えようと思いました。

三原健司 アリーナでのライヴと、ライヴハウスでのライヴって、自分たちの認識では全然違っていて。今までのフレデリックだと、言葉を詰めて詰めて歌を作っていたところがあったんですけど、広いアリーナの会場の席で聴いてもらうときに、メロディの広さがあったり、ゆとりを持って大きく歌う曲があったほうがいいんじゃないか。そういう自分たちなりのアリーナに対する向き合い方があったので、変化はありましたね。

かなり大きな変化ですね?

健司 そうですけど、これが初めてというわけではなくて。歌のメロディを大きく持とうという意識はずっと昔から制作する中で少しずつあったんです。メジャーデビューのタイミングで出した曲とかミニアルバムの曲とか、一作一作の変化の中にはそういうところも芽生えていて。自分のボーカルに対するアプローチの仕方の変化も含めて、昔から積み上げてきたものだと思います。

そうなると歌い方も変わってきますよね?

健司 そうですね、「エモーション」という言葉が入っているように、曲に対する感情の乗せ方はより意識が強くなりました。

しかも、言葉やメロディの間隔を意識することで、行間に感情を込められるというか、感情の起伏をより大きく作ることができますね?

健司 はい、隙間が空いて言葉が短くなるぶん、ひとつの文に対する感情というより、ひとつの言葉に対する感情というところで、そこに感情は乗せやすくなるし。

そもそも、なぜ今までメロディや言葉を詰め込んでいたんですか?

康司 リズムを大事にするバンドだからですね。口に出したときの気持ちよさが主体となって僕は曲作りをしていたので、言葉数が多くなるのは自然なことだったんです。

そういう良さも残しつつ、広がりのあるメロディが加わって変化が生まれてきたわけですね。しかも「桃源郷」(前作ミニアルバムのタイトルが『TOGENKYO』)って歌詞に入っています。

康司 そのときに一番感じていたことを言葉にするのって、フレデリックが今までやってきたことなので。今感じていることをエネルギーとして向き合って音楽にしていくことで、リスナーみんなとコミュニケーションして、そこでみんなから返ってくる言葉に自分たちも新たに感情を揺らしていく。その関係が心地よくて、聴いてくれるお客さんもそう思ってもらえたらいいなと思います。そういう関係性で一緒に音楽を楽しめるのが音楽のあるべき姿だなと思っていて。なので、そのときに感じていたことがこの曲の中に言葉として形になっていると思います。

「僕の最低も最高もさらけ出して」、というあたりは生々しい感じですね。想いをより強く届けたいというか。

康司 サビの部分だからでもあるんですけど、バンドの向き合い方をそこでちゃんと伝えていこうと思いました。

ちゃんと意志を持って、流されるわけではないからこそ、飄々としていられる

「飄々とエモーション」というタイトルですけど、「飄々と」と「エモーション」って、そもそも逆を向いている言葉じゃないですか。両方を含んでいるということなんですか?

康司 「飄々と」っていう気持ちって、バンドが大事にしてきた言葉だと思っていて。「飄々と」って、印象だけだと風に流されてしまうイメージですけど、そうじゃなくて、ちゃんと風に乗っていけるという意味合いがあって。プライドが重ければ重いほど、そこに風が吹いてきても動かされないですけど、何も持ってないと風に流されてしまう。ちゃんと意志を持って、誰にも流されるわけではないからこそ、飄々としていられるという。そういう気持ちや自分たちの向き合い方が、「飄々と」という言葉の中に入っていて。自分たちの内側には熱があってずっとさめなくて、いろんな場所に対して感情を揺らして、その熱を持っていろんなものを選択して、それらを積み上げてきたバンドだから、この「飄々とエモーション」いう言葉が言えるんだと。それでこのタイトルになりました。

今のバンドを表している言葉ですね。「フレデリックってどんなバンド?」って聞かれたら、「飄々とエモーション」なバンドって答えても間違っていないような、それぐらいの自信作ですね?

康司 そうですね(笑)、新しい始まりの曲だなと思いました。

サウンド的なこだわりも伺いたいんですけど、独特なつんのめるようなリズムがありつつも、サビで広がる感じがあって。

康司 スピード感のある曲だなと思っていて。ダンスミュージックは昔からフレデリックが大事にしている部分であり、その中でもリズムとメッセージの2つが両立している曲だなと思うんです。サウンド面でもそれぞれ自分はこうしたいっていう熱意がこもっている曲でもあります。

高橋武 より人に伝わりやすくするということを考えたとき、より歌を聴いてもらうことだなと思って。そうなったとき、楽器が後ろに引くことが歌を生かすことだとは思っていなくて、それだと極論するとアカペラでいいことになるじゃないですか。そうじゃなくて、より歌が届くようにするには、健司くん以外の3人が健司くんの背中を押すことであって、一歩後ろに下がるというのは違うと思えたんです。歌がより届くようにするにはどうすればいいかというのを、特に今回のレコーディングで考えていた気がします。それが体現できた曲であり、歌がしっかり聴こえて、だからといって3人が自分たちの良さを犠牲にすることは考えていなくて。そういう歌への向き合い方が曲に表れていると思います。

底知れぬ可能性がある曲になった

むしろ楽器がうまく絡み合うことで、ボーカルが生きる?

高橋 そう思います、バンドである以上。今回、健司くんの歌がスッと入ってくるし、楽器もこういうことをやっているんだなと、あとからでもいいから気づいてもらえると思うので、いいバランスでできたと思います。

赤頭隆児 ここまで歌にフォーカスしたのは、アリーナのライヴや大きなステージを見て、俺たちが一番大事にしたいのはどこなのかというのを確認したのが大きいですね。そういうステージからの景色を想像しながら音楽を作るという、やったことのない作り方だったので、自分たちの実になったと思えることも多くて。アリーナで実際にやってみて、この曲で良かったと思いました。

ライヴでのお客さんの反応は?

健司 この曲はシンガロングの部分が出てきたりするので、一緒に歌ってもらいたい曲なんです。そういう新しいコミュニケ―ションをとりたい曲でもあり、自分たちでも挑戦なので、どうなるんだろうと思っていましたけど。結果、フレデリックのファンの方は、音楽を通してコミュニケーションをとりたい人が多いんだなって。ハンドクラップの入る曲もこれまでにありましたけど、そういうのとは別のアプローチで、もっと近くにいたいという気持ちをみんなが持ってくれているんだなって、この曲を通してより感じるようになりました。だから、この曲が持っているパワー、みんながシンガロングの部分を歌ってくれることで、よりこの曲のスケールもどんどん変わっていくんじゃないかな。底知れぬ可能性がありますね。

「シンセンス」はライヴでの爆発力がデカい曲

ますます変化が楽しみですね。そして「シンセンス」ですけど、すごくキレのいい感じですね?

康司 そうですね、ダンサブルでBPMは「飄々とエモーション」と同じなんですけど、リズム感のある曲になっていて。

速く感じますね。生き急いでいる内容みたいになっているし。

康司 切り込んでいますね。テンポを決めたときに気持ちよかったビートだったので、ここに落ち着きました。歌詞は今の自分たちが思う気持ちみたいなことを個人的な視点で書きました。

歌のキレの良さも冴えていて。

健司 「飄々とエモーション」がメロディを大きく歌っているぶん、こちらは両極端にしたいと思ったんです。ひとつひとつの歌い方で印象も変わったりしますから。この曲ももうライヴでやってるんですけど、ライヴでの爆発力がデカい曲ですね。

高橋 キレの良さは楽器にも言えますね。「飄々とエモーション」はBPM140ぐらいで、今までのリード曲と比べると遅めなんです。しかも「シンセンス」ぐらいのダンスを基調にした曲というのは130台が多くて、それと比べると速いんですけど。こういう印象の曲も面白いんじゃないかと康司くんと話していて、ライヴをやるうえでの表現の幅を広げてくれると思いますし、「シンセンス」が入ることでセットリストの幅もこれからまた広がってくれると思います。

赤頭 かっこいい曲ですよね。レコーディングも健司くんが弾いてなくて、ギターは僕だけなんですけど。音で埋まってない、隙間があるのが爽快です。僕のギターから始まるのも初めてで、そういうのも新鮮で楽しかったです。

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