Interview

琴音 ボーカル・オーディション番組で話題をさらった16歳のシンガーソングライターは歌にどんな思いを込めるのか?

琴音 ボーカル・オーディション番組で話題をさらった16歳のシンガーソングライターは歌にどんな思いを込めるのか?

テレビのボーカル・オーディション番組でその澄んだ歌声が大いに注目を集め、さらにはレコード会社が主催するオーディションでもグランプリを獲得して、今回の音源リリースを実現した注目のシンガーソングライターである。もっとも、そうした華々しい栄誉を手にする以前から地元・新潟でマイペースの活動を続けていた彼女は、そのなかで書きためた楽曲をまとめて初めてのミニアルバム『願い』を完成させた。
ここでは、現在16歳の彼女がどんなふうに音楽を、あるいは歌うことを意識し、そのこととどんなふうに向き合ってきたか、そして今回の作品作りを通してどんなことを感じたのか、といったことについてじっくり語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 高木博史

 「上手だね」と親に言われたくて歌っていたような気がします。

資料によると中学の頃に曲を作り始めたそうですが、もちろんその前から歌ってはいたんですよね?

そうですね。

琴音さんのなかで歌うということが意識されたのは、いつ頃、どういうタイミングだったんですか。

もの心ついたときにはもう、好きだったと思います。元々、両親が音楽をやっていて、自分に対しても“音楽が好きな子になってほしいな”という気持ちで育てていたみたいで、家の中には音楽に触れる機会があって…。

だから、名前にも“音”が入ってるんですね。

(笑)、そうなんですよ。お父さんがつけてくれたみたいなんですけど。それで、家にはCDとか楽器とか、いろんなものがあって、もの心がつく前からよくわからないままにピアノの鍵盤を叩いていたり、ギターの弦を鳴らしたりしていました。その上で、好きになるきっかけということで言うと、いろんな人に褒めてもらえたからだと思います。

歌うと褒められるから、どんどん歌うようになったということですか。

自分は、褒められると“もっとやろう”と思うタイプなので(笑)。それに、音楽くらいしかやりたいと思うことがなくて、それで保育園で習った童謡とか「みんなのうた」で紹介された曲とか、そういう曲を覚えて歌ってたんですけど、それは「上手だね」と親に言われたくて歌っていたような気がします。それで褒められると、また新しい歌を覚えて、それをまた歌って聴かせて、近所のおじいちゃんやおばあちゃんにも「上手だね」と言われて、それで“大きくなったら歌手になるんだ!”と思うようになって、その気持ちがずっと続いているように思います。

子どもの頃は、「音楽くらいしかやりたいと思うことがなかった」んですか。

そうですね。どちらかというと一人でいるのが好きで、近所の子と遊んだりするよりは大人の人に絵本を読んでもらったりするほうが好きで、外でアクティブに遊ぶのも運動が得意じゃなかったので好きじゃなくて、人と関わるのが苦手だから友達とおままごとをしたりするのも好きじゃなくて、絵も思うように描けなくて“手も汚れるし”って思ったりして(笑)。それで結局、自分からやることというと音楽に絞られていったという感じでした。

「思うように絵を描けなくて」と言われましたが、歌については自分が思うように歌えるなという感覚があったんですか。

う〜ん…、どうなんでしょう。絵は例えばマルを描こうとして、でもうまく描けないということが子どもの自分にもわかるじゃないですか。でも、歌は目に見えないものだから、聴いた人がどう思うかというものだと思うんですけど、そこで周りの大人は子どもが歌ってるから「かわいいね、上手だね」と言ってくれるのを本当に上手いんだと思い込んでたんだと思います(笑)。

“大きくなったら歌手になるんだ!”という気持ちがずっと続いていると言われましたが、その気持ちが揺らいだり、他のことに向かうような時期はなかったですか。

両親が音楽が好きでしたから、例えば「音楽なんかしないで、勉強しなさい」みたいなことを言われることはなかったですし、むしろ歌ったら褒めてもらえるし、お父さんもお母さんも音楽をやってて、その遺伝子をもらったからか、ずっと歌ってても声が嗄れるようなことはなかったし、聴いた音をすぐ取れたりもして、だから自分のなかで“私は歌が得意なんだ”という感覚があったんですよね。それに、面白そうだなと他のことを思ってやったことがいくつかあったんですけど、でもそれはどれもわりとすぐに飽きちゃったんです。でも、音楽だけは飽きることがなくて、だからいまでもやってるんですよね。

自分の内面をさらけ出した曲を作って、それをいいと言ってもらえるのは、自分を肯定されてるというようなことだと思うんです。

中学生になって自分でも曲を作り始めたそうですが、その作り始めたときには何かきっかけがあったんですか。

ちゃんとものを考えられるような年齢になっても「歌手になりたい」と自分は言い続けていたので、親も本気だと思ってきて、それでいろいろアドバイスしてくれたんですね。お母さんはピアノの人なので、歌ってて音程がはずれてると指摘してくれるし、お父さんは歌の人なのでいろんな歌い方を教えてくれるし。そういうなかで、歌が下手だとは言わないんですけど、それでも「あなたくらい歌える人は世の中にいっぱいいるから」ということを言われて、確かに自分でもそう思うところはあったから、そうなると“歌1本でやっていくのは厳しくない?”と考えるようになっていったんです。それに、その頃は自分の短所や長所もよくわからなくて、ただ歌いたいと思った曲を歌ってるという状態だったんですけど、もっと自分の個性を出すということを考えると、それは自分で作るということなんじゃないかなと思って。それで、とりあえず作ってみたのが中学2年のときです。

その初めて作った曲というのは、いまも歌ってるんですか。

今回出すミニアルバムに入っている「大切なあなたへ」という曲なんですけど、その曲はお母さんへの感謝の気持ちを歌っているんですね。初めて作った曲だから、まだすごく拙いんですけど、でもお母さんはその曲をすごく喜んでくれて、しかもその曲を人前で歌うと、「すごく心が温まる」というような感想を言ってくださる方もいて、自分が作った曲をそういうふうに評価してもらえるのは自分が認められているというような気持ちにもなったし。だから、もっと自分の曲を作っていくと、また何かいいことがあるかもしれないと思って(笑)、それで何か強く思うことがあると曲を作るようにしています。

自分が作った曲をいいと言ってもらうと自分が認められているような気がしたと言われましたが、それはやはり人の曲を歌って褒められるというのとは違う感じがするということですか。

自分が作る曲というのは、やっぱり自分の深層というか、自分の中身を見せるような感覚があるので、だから最初に歌うときはちょっと怖かったんです。でも、「素敵です」と言ってくださる方が多くて、だから“私はこれでいいんだな”という安心感を感じたんですよね。自分の内面をさらけ出した曲を作って、それをいいと言ってもらえるということは、自分を肯定されてるというようなことだと思うんです。だから、人の曲を歌って、例えば「いい声だね」と言われるのとは違ううれしさは確かにあったと思います。

曲を作る際に何かお手本にしたり、あるいは自分のなかで意識していることはありますか。

お父さんも曲を作っていたので、その曲の歌詞とコードを書いたファイルを時間があるときに見たりして、“こういう曲もいいな”と思ったりするんですよね。それから、お父さんはMr.Childrenが好きで私もよく聴いていたんですけど、自分で曲を作るようになって、Mr.Childrenの曲には歌詞の奥行きみたいなことをすごく感じるんです。その曲を作った人とはまったく違う人生経験を重ねてきた、いろんな人が聴いてもほっこりしてもらえるような曲というのは本当にすごいなと思うんですけど、そういう曲を聴いていて気づいたのは歌詞の描写をあまり細かいところまで書いてしまうと事柄が限定されてしまって、あまり感情移入できなかったり、共感できなかったりするんですよね。どんな人が聴いても共感できるような曲がかっこいいと思うんですけど、そういう曲を作ろうと思ったときに、あまり細かく書き過ぎないというような気持ちがベースにあるような気がします。それから激しい口調とか、言葉単体で言えば痛い言葉というか、そういうものは使わないようにしています。そういう表現は人に受け入れられにくいような気がするし、それよりも聴いた人が元気になったり、励ましや癒しになるような曲を作っていけたらいいなと思っています。

曲を作るときに使うのはギターですか。

ギターです。ギターは、コードを押さえてストロークで弾けばそれで鳴りますけど、でもピアノは鳴らしたい音をすべて弾かないといけないというか、鳴らしたい音を全部自分の手で管理しないといけない感じがするんです。弾こうと思ったら、その音の鍵盤を押さないといけないというか。そこが難しいなと感じて、それでピアノは断念して、ギターで作るようになりました。

動画サイトで琴音さんの映像を検索すると、ギターを抱えて歌っている映像がいくつか見ることができますが、一方テレビ番組で歌ったときにはギターはなくてハンドマイクで歌っていましたよね。ギターを弾きながら歌うということは、琴音さんのなかではどれくらい重要なことですか。

ギターを弾きながらかどうかということよりは、自分の曲かどうかということが重要であるような気がします。自分は、人の曲を歌うのも自分の曲も好きなんですけど、ギターを持っていないときは基本的には自分の曲は歌えない状況なんだと思います。だから、自分の曲が歌えないのは残念という気持ちがあるかもしれないですが、でもギターを弾いていないときのほうが歌うことに集中できているということはあるかもしれないですね。ただ、ギターを弾いて、それで自分で歌うというのは、全部を自分で決められるんですよ。自分にはそれがすごく合っていてるような気がします。

いろんな方といろいろ話しながら作業を進めていくと、自分の曲をより大事にしようという気持ちがすごく大きくなったように感じています。

曲を作ることは自分の中身をさらけ出すようなものだという話がありましたが、そういう曲の一人称が“僕”になるのは何かの意識がはたらいているんですか。あるいは、自然にそうなってしまうというようなことですか。

なぜ“私”じゃないか?ということですか。それはわりと単純な話で、“私”はひらがなだと3文字ですけど、“僕”は2文字だから、そのほうが使い勝手がいいんです(笑)。自分がいま作っている曲は、根本は自分の実体験で、そこから派生したものなんですけど、“僕”というのは基本的には自分の主観なんですね。で、“君”とか“あなた”という人たちは、自分が見た光景のなかにいる人なんです。その人たちが“こういうことを思ってるのかな?”とか“どういう気持ちなんだろう?”ということも考えるんですけど、それは想像でしかないし、それよりも自分のことのほうが確かじゃないですか。だから、“僕”のことを歌ってる曲が多いのかなという気もします。

自分が体験したことを曲にしたときに、そのことが自分自身に何か作用することはありますか。

どうなんでしょう…。曲にしたいと思うことは、自分のなかで特別強く感じたこと、“こうしたい!”と強く思うことなので、それはつねに訴えたいというか、だから曲の形にしようと思うんですけど…。実際に体験したその現場では相手を励ましたいと思っても励ましの言葉がうまく出てこなかったり、言葉にはできたんだけど全然まとまってなかったり、そういうことが多いんです。でも、曲にするときには言葉が厳選できるというか、自分の感情に近い言葉をちゃんと選べるので、そうやって作った曲を発信することで自分の気持ちが的確に伝わるし、自分の気持ちを受け取ってくださる方が増えるという良さが曲にするとあるように思います。

本格的なレコーディングは今回が初めてと言っていいだろうと思いますが、その本格的なレコーディングという体験についてはどんなふうに感じましたか。

いろんな方が協力してくださったんですが、みんな“この曲は、こういう曲だからこうしたい”というふうに、すごく曲ごとにその内容をすごく考えて、そこに寄り添ってくださったんですよね。特に歌詞の内容を、私以上によく考えてくださってるなあと感じることが多かったです。それから、いろんな方が制作に関わっていらっしゃって、その人たちといろいろ話しながら作業を進めていくと、そのなかで曲それぞれについて、作ったときに自分がどういうことを考えていたかあらためてしっかり思い出そうとしたり、作っている最中に抱いいていた感情やどうしてそういう歌詞にしたのかということをあらためて確認できたりするので、その曲に対する自分の気持ちを再確認できて、自分の曲をより大事にしようという気持ちがすごく大きくなったように感じています。

出来上がった作品を聴き通してみての感想は?

これまでに家で録音したものは、ほぼ歌とギター、多くても歌とギターとピアノくらいの音のものしかなかったんですけど、今回はいろんな楽器の音が入ってすごく華やかになった曲があって、でもその一方で「last word」のようにギターと声だけの曲もあって、そういう対比も作れたし、自分が作り出した1曲1曲がそれぞれにパワーアップした感じがして、すごくうれしかったです。

その初めてのミニアルバムが間もなくリリースされるわけですが、その1年後、来年の今頃にはどうなっていたいと思いますか。

いまよりもいろんな人に知っていただけるようになっていたいし、もっとパフォーマンスのレベルが上がっていたいなという自分自身に対する願望もあります。その上で、自分の曲がもっといろんな人に届いていたらうれしいですね。

期待しています。ありがとうございました。

ライブ情報

『願い』発売記念フリー・ライブ&サイン会

7月21日(土) 大阪・三井アウトレットパーク大阪鶴見
7月22日(日) 愛知・アスナル金山
8月5日(日) 東京・タワーレコード渋谷店B1 CUTUP STUDIO

琴音

新潟県長岡市出身の高校2年生、16歳のギター弾き語りシンガーソングライター。中学生の頃からオリジナル楽曲を制作し、広く注目を集める。あどけなさと、透き通る歌声が紡ぐ詞の世界観が魅力。2018年、テレビ朝日「今夜、誕生!音楽チャンプ」グランドチャンプ。「eggs presents ワン!チャン!!~ビクターロック祭り2018への挑戦~」グランプリ獲得。3月に幕張メッセで開催された“ビクターロック祭り2018”にて、オリジナル曲「願い」「音色」を披露。7月、初めてのミニアルバム『願い』をリリースする。

オフィシャルサイト
http://kotone17utasuki.wixsite.com/mysite

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