LIVE SHUTTLE  vol. 280

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けやき坂46(ひらがなけやき)ツアーファイナルで魅せた、成長し続ける、独自の色。

けやき坂46(ひらがなけやき)ツアーファイナルで魅せた、成長し続ける、独自の色。

けやき坂46(ひらがなけやき)『走り出す瞬間』ツアー2018
2018年7月10日 幕張メッセイベントホール

“変化”と聞くと嫌がる人もいるかもしれないが、“成長”といえば、否定的に捉える人は少ないだろう。武道館3days公演からわずか5ヶ月。東名阪5都市10公演に及んだ、自身2度目のツアー<「走り出す瞬間」ツアー2018>のステージに立ったけやき坂46は、武道館公演での彼女たちとは全く違うグループのように見えた。急遽抜てきされた不安や迷い、葛藤がないというだけではない。学業のために活動休止を発表した影山が不参加という以外、メンバー構成は同じ。だが、この間に彼女たちは2本の冠番組がスタートし、初の舞台も上演された。そして、ツアー中にデビューアルバム『走り出す瞬間』をリリースし、ひらがなけやきのオリジナルアルバムを引っさげたツアーであったことが大きいだろう。振り返ってみれば、武道館公演では「ハッピーオーラを届ける」こと、その一点に集中していた。それは、笑わずにクールで、社会や大人への怒りや不満、反抗心を体現している(というパブリックイメージの)欅坂46(漢字欅)のカウンターとしての在り方であった。しかし、それだけでは表現の幅が狭まってしまう。1stアルバムの制作を経たひらがなけやきは、「ハッピーオーラを届ける」という軸はブラさずに、独立したガールズグループとして、様々な楽曲にチャレンジするという道を選んだのだろう。漢字欅との違いを明確にする必要性があるのでは? という声は重々に承知した上で、可能性を広げていくという決意をしたのだと思う。

(9日公演より)

楽曲の幅を広げても決して失われない、ひらがなけやき独自の色は何かと問われたら、1つは、やはりライブの楽しさが挙げられるだろう。武道館公演はサーカスがコンセプトになっていたが、今回のツアーのテーマは「MAGICAL LIBRARY(不思議な図書館)」。華やかなマーチソングに乗って登場したメンバーは、それぞれが、地球儀やステッキ、虫眼鏡やランプ、海賊やトレジャーハンター、西部劇やミステリーを思わせるアイテムを持っていた。1曲1曲が不思議な図書館に所蔵されている様々な本を開いたような世界観で、ライブ全体としても1つのストーリーを感じるような複合的な構成となっていた。その大きな流れも、観客ひとりひとりによって、異なる捉え方ができる内容で、タイトル通りに、20名の少女たちが夢に向かって走り出す瞬間を捉えた成長譚に涙をした人もいるだろうし、親友の元カレを好きになってしまった女性視点の「ひらがなで恋したい」で始まり、元カノの親友との交際を高らかに宣言した男性視点の「僕たちは付き合っている」に至る甘酸っぱいラブストーリーに感動した人もいるだろう。

よりバラエティが増した音楽の中で展開される、様々なショートストーリーズ。そのヒロインや登場人物を演じるのがひらがなけやきのメンバーで、1期生による「おいで夏の境界線」では巨大なスクリーンに筆で絵を描く演出があり、メンバーが横一列になって手を繋いで歌唱するシーンでは、砂浜の波打ち際で遊んでるような風景が見えた気がした。続く、二期生の「最前列へ」では、<初めて意思を持ったよ>というフレーズ通りに、視線や指先に強い意思が込められており、ハードなテクノナンバー「こんな整列を誰がさせるのか?」では、全員が黒縁メガネをかけて横一列で歌うことで“個”から“集団”となってしまったことを表し、ラテン歌謡「未熟な怒り」では切ない歌声を吐くことで夕景を引き連れてきた。曲が変わる度に、ページをめくるように風景が変わり、物語が変わり、主人公が変わっていく。このライブのコンセプトに沿ったカラフルな転換は彼女たちの魅力の1つだろう。

(9日公演より)

19名でのパフォーマンスから、1期生、2期生と交互に各2曲ずつを披露したあと、ユニット/ソロコーナーへと突入し、多彩さはさらに増していった。「線香花火が消えるまで」と「夏色のミュール」はともにトリオによるパフォーマンスで、前者が60’Sのガールズグループのようなレトロソウル、後者が80’Sのアイドルのようなポップソングとなっていた。佐々木(美)は小さな明かりの中、ソロ曲「わずかな光」で閉じた心を表現し、真っ白い光に包まれた齊藤は「居心地悪く、大人になった」で抜群の歌唱力の高さを見せつけた。この二人の対比は、70’Sのニューミッジックとフォークソングのアーティストの違いを表しているようで、この4曲で日本の音楽シーンのヒストリーを題材にしたミュージカルを見ているような感覚があった。さらに、モノトーンの衣装で髪の毛を振り乱しながら熱唱したハードなダンスナンバー「ノックをするな!」に対し、ハロウィンソングの「ハロウィンのカボチャが割れた」と猫耳をつけてパフォーマンスした「猫の名前」で明と暗、ポジとネガ、楽しいことと悲しいこと、喜びと怒り、アーティストとアイドルという一般的には対立していると考えられている二面性を表現していた。

(9日公演より)

(9日公演より)

(9日公演より)

(9日公演より)

(9日公演より)

(9日公演より)

(9日公演より)

そして、齊藤が力強く歌い出すフォークソング「それでも歩いてる」と武道館3days公演が決まった心境が収められた「イマニミテイロ」では、ギター曲とピアノ曲のどちらも歌いこなせる強さと自信のようなものを感じた。また、「イマニミテイロ」に続く、アルバムのリード曲「期待していない自分」は、ともに、佐々木(美)のセンター曲でもある。「イマニミテイロ」では10人でのパフォーマンスが、やがて5対5に分かれ、「期待していない自分」では佐々木(美)だけが、他のメンバーと違う方を向いており、ひとりぼっちになる瞬間もあった。先頭に立って孤立しているのではなく、一歩下がってうつむいていた彼女がメンバーの背中に追いつき、「永遠の白線」では横一列に並んだ。2期生による「半分の記憶」は小坂のセンター曲で、スクリーンには楽曲の世界観に合わせた不機嫌そうな表情がアップで映し出されていたが、歌唱後に一瞬だけ、満面の笑顔を見せた。このギャップに心を奪われた人も多かったのではないかと思う。

(9日公演より)

(9日公演より)

(9日公演より)

ソロダンスもフィーチャーされたディスコファンク「誰よりも高く跳べ!」で、観客を“ここではない、どこか”へと連れて行き、オーディエンスが拳を叩く掲げて叫んだ「NO WAR in the future」を経て、会場全体が1つとなって大合唱したラストナンバー「車輪が軋むように君が泣く」では、佐々木(美)が涙を拭うような仕草も見せた。そこにはきっと、人知れぬプレッシャーがあったのだろう。さらに、アンコールではこの日のライブに不参加だった影山が登場し、ファンに対して、改めて自分の口で、ひらがなけやきの活動を休止することを伝えた。影山の「やっぱりひらがなが大好きなんだな〜って思いました。ひらがな、最高ですよね」という言葉に、隣にいた東村は大粒の涙を流していた。ツアーファイナルのオーラスに向けて、少しずつ、涙が増えていった。一期生11人による「ひらがなけやき」の歌声には、この日、一番の感情が込められていたように思う。彼女たちにとって初のオリジナルソングではあり、アルバムのオープニングナンバーであり、<少し みんなとは離れて不安そうに歩く私>の旅立ちの歌でもある。等身大の彼女たちの気持ちが表出したとしても不思議ではない。

そして、長濱ねるに変わり、この曲のセンターを担当する柿崎と影山はひらがならしく、満面の笑顔でハートを作り、続く、「僕たちは付き合っている」では、彼女たちのモットーである“ハッピーオーラ”をメンバー全員で人文字で表した。ここで、ツアーの総括として、キャプテンの佐々木(久)は、一期生の佐々木(美)と二期生の小坂にコメントを求めた。この二人をそれぞれの期のセンターとして代表してもらうという意図もあったかもしれない。佐々木(美)が「最後に20人全員で終わらせることができたのはすごい嬉しいことだなと思って。来年も20人でできたらいいなと思います。またここに帰ってきたいです」と意気込み、小坂が「二期生は初めてツアーに参戦させていただいて。1つ1つの出来事が新鮮に感じられたし、自分たちの成長にも繋げられたツアーになったと思うので、このような経験ができて本当によかったなって思います。それに、身近に皆さんの声援を聞けることが、本当に一番幸せだなって感じました。本当にありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えた後、舞台出演の発表を挟み、佐々木(久)はこう続けた。

「これから19人で活動して行くんですけど、メンバーが一人欠けると、力も減ってしまって、気持ち的にもすごく、悩んでしまうことが多くなったりするんですけど、それでも、皆さんがいつも、ひらがなけやきが大好きって言ってくださるから、私たちは前に進めているんだと思います。ひらがなけやきは、本当にライブが大好きだし、ここが常に帰ってくる場所だなと思っているので、これからも、ずっと、永遠に、このハッピーな空間を作り続けられたらいいなと思います。皆さん、これからも一緒にこの素敵な空間を作ってくれますか? これからも、ひらがなけやきは、初心を忘れず、<謙虚、優しさ、絆のひらがなけやき>で頑張っていきますので、これからもよろしくお願いします!」

(9日公演より)

最後に「私たちの目標が隠されたあの曲」と説明した「約束の卵」をペンライトを持って歌唱。<小高い丘の上>(武道館)から<大きな卵>(東京ドーム)を目指すという決意を込めた楽曲を高らかに歌い上げ、ダブルアンコールでは影山も加えた20名で「NO WAR in the future」を再び熱唱。ステージ上で円陣を組み、生の声を張り上げ、全速力で2階に駆け上がり、会場を走り抜けて終幕した。涙で終わるのではなく、確かな未来の目標へと走り出したことを知らしめる、早くも次の公演が待ち遠しくなるライブであった。

文 / 永堀アツオ 撮影 / 上山陽介

けやき坂46「走り出す瞬間」ツアー2018
2018年7月10日 幕張メッセイベントホール

セットリスト
M0. OVERTURE
M1. ひらがなで恋したい
M2. おいで夏の境界線
M3. 最前列へ
M4. こんな整列を誰がさせるのか?
M5. 未熟な怒り
M6. 線香花火が消えるまで
M7. わずかな光
M8. 夏色のミュール
M9. 居心地悪く、大人になった
M10. ノックをするな!
M11. ハロウィンのカボチャが割れた
M12. 猫の名前
M13. それでも歩いてる
M14. イマニミテイロ
M15. 期待していない自分
M16. 永遠の白線
M17. 半分の記憶
M18. 誰よりも高く跳べ!
M19. NO WAR in the future
M20. 車輪が軋むように君が泣く
アンコール
EN1. ひらがなけやき
EN2. 僕たちは付き合っている
EN3. 約束の卵
ダブルアンコール
WEN. NO WAR in the future

その他のけやき坂46の作品はこちらへ

舞台情報

舞台『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』にけやき坂46の出演が決定。
8月24日(金)~9月9日(日) TBS赤坂ACTシアター

オフィシャルサイトhttp://www.keyakizaka46.com/

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