Interview

「私が笑顔でいる事が、君への一番の復讐です」一度見たら忘れない超話題の新鋭アーティスト・原田ちあき『誰にも見つからずに泣いてる君は優しい』の言葉が優しすぎる!

「私が笑顔でいる事が、君への一番の復讐です」一度見たら忘れない超話題の新鋭アーティスト・原田ちあき『誰にも見つからずに泣いてる君は優しい』の言葉が優しすぎる!

その本を手に取れば、鮮やかなる色彩の暴力に打たれて、書店の隅でクラッとして、ページをめくれば鋭くも優しい言葉に包まれ、私は泣く、そして笑う。『誰にも見つからずに泣いてる君は優しい』というタイトルにさえズキューンと射抜かれ、そりゃあもう一も二もなくファンになる。

原田ちあきは、紛うことなき新進気鋭のアーティストだ。その活動は多岐に渡り、イラストレーター、漫画家、キュレーター、あるいは総じて美術家と称されることもあるが、本人いわく「よいこのための悪口メーカー」である。ここ数年の活躍は目覚ましく、独自の極彩色に染まったイラストを巷で目にすることも多々。

本書『誰にも見つからずに泣いてる君は優しい』は、彼女がこれまでに手がけた作品を集めたもので、書き下ろしのエッセイを加えて“原田ちあき”という現象を究極的に表現している。ポップでキッチュでシュールでめちゃくちゃカワイイ、その世界観の中にあるのはいつでも真実だ。ちなみに、原田本人もまたポップでキッチュでシュールでめちゃくちゃカワイイ(= 新種の小動物を発見しちゃったような喜びを感じてしまう!)ことも、私見ながらここに書き添えておく。

取材・文 / 斉藤ユカ 撮影 / 宇壽山貴久子

「イヤなことは忘れちゃいなよ」って簡単に言う人がいるけど、忘れることはできないですよね

原田さんの作品と、経歴と、ツイッターなどでつぶやいていることなどを総合的に見て、この人は明るいのか暗いのかよく分からないな、と。

たぶんどっちも兼ね備えています(笑)。

誰もが心の奥底に持つドロドロした闇を肯定した上で、それをどこかコミカルに描いていますよね。

悲しいのとギャグって表裏一体な気がしてて。悲しいことを悲しく描けば、ただただ悲しい絵になるんですけど、例えばそれをギャグっぽい4コマ漫画に落とし込んだら、ちょっと面白い話になるとことがあります。だから自分ではこの本の絵も、書いてることも、ツイッターで発表してる4コマ漫画も、全部根っこは同じだと思ってるんです。時と場合によって落とし込み方が違うだけで。

悲しみをネタ化するというのは、本書の中で原田さんが提案していることのひとつでもあります。ご自身の大失恋も、気づいたら鉄板の爆笑ネタになっていた、と。

どうにでもなれ! と思ったときに、いかにどうにでもなるか、ですよ(笑)。だって失恋話ってめちゃくちゃ面白くないですか? 失恋話とかって、悲しいけど年月を経るとどんどん面白くなって笑い話になるパターンってあるじゃないですか。 友達に子供の頃いじめられたっていう人がいて、その人が「毎日、学校でボコボコにされててさぁ~」って言うんです。 学校に行くと毎日殴られて、泣いたり歯向うともっとボコボコにされるから、黙っていたら「タフマン」ってあだ名がついてしまったという話を鉄板ネタにしていて。 めちゃくちゃ面白いじゃないですか。当時は凄く辛かったはずなのに笑い話にできるってすごく強い事だと思うんです。しかもこれからもきっとずっと面白いんですよ。 「イヤなことは忘れちゃいなよ」って簡単に言う人がいるけど、忘れることはできないですよね。 だけど笑い話にすれば、その出来事の意味は変わってくるから。

ただし、原田ちあき的思考で言うと、「だけど許されたと思うなよ」という感情もまた消えることなく存在するんでしょう?

そうなんです! そのことが面白さに転換できると思うんです。そのいじめられっ子だった友達も「あいつが有名になったら俺は文春にリークする!」と。復讐の誓い方にちょっとユーモアがあると面白くなる。 何年も胸の中で悔しさや悲しみをグツグツ煮込んで消えない人ってきっとたくさんいると思うんですが、たぶん他人に話せてないんですよね。「ムカつくー!」って誰にも言えない人が、ずっとウゥゥゥゥ〜ってなってて、しかも年を経るごとにどんどんドロドロしていっちゃって。それって本来凄く優しい事なのに、自分の事を汚い心の持ち主だと思い込んでしまう。

©原田ちあき/大和書房

相手の今をSNSで見れたりするのも悔しさに拍車をかけるから困りものですよね。私もそのタイプなんですが「くっそー! 美味しそうなもん食いやがってー!」とか(笑)。それをやり始めるとめちゃくちゃしんどいと思うんです。でも、そういう人がすごく沢山いらっしゃるんだなって、私もこうやって作品を発表させてもらうようになってから感じたし、ドロドロしてるのは一人じゃないんだなって思いました。私のドロドロした気持ちを落とし込んだ絵が、多くの人の共感する材料になっています。SNSで“いいね”を押すだけでもちょっとスッキリしてもらえてるのかな、と。

原田さんの作品って、ある種の開き直りを促してくれますからね。私、こんなに卑屈でドロドロしてるけど、それでもいいんだって。

悪口言うな! っていう風潮が強いんですけど、悪口って面白いじゃないですか。まずはそれを認めて、面白く悪態つける人になればいいんです(笑)。

さすが、“よいこのための悪口メーカー”(笑)。

きれいに見えているだけで、みんなそういう黒いものを抱えていると思うんです。他人のそれが見えてないから、自分だけ真っ黒なんじゃないかと思って不安になっちゃったりとか、寝る前にモヤモヤしちゃったりとかするんです。「自分めっちゃ汚ねぇ!」とか思って、どんどんおかしくなっちゃう。でも、そんな汚くないからね(笑)。みんなドラマを見すぎてるのかな。ドラマチックに生きようとしすぎてて、あんまり自分の黒さを認めたがらないですよね。ただ、自分が汚いと感じてることって、人に話してみると案外そうでもなかったりするんですよ。

はじめてツイッターに絵を投稿したとき、共感することがみんなにとっても気持ちいいんだって、はじめてわかった

あとやっぱり、原田さんの絵のタッチと強烈な色彩が、悲しいとか悔しいとか恨めしいとかの黒い感情をポップに見せてくれるんですよね。

前はもうちょっと精緻な絵で、気持ち悪い感じだったんです。4、5年ぐらい前、展示を重ねていた頃はアングラなものが好きで、自然とそうなっていたんですけど、「こんな絵を描いていたら人に見てもらえん」ということに気づいちゃって。頭身を高くしてセーラー服を着せたらとっつきやすくなるかなとか、そもそも顔が可愛くないかもしれないからウサギの帽子をかぶせてみようとか、そうやって工夫した結果こうなりました(笑)。

描かれた女の子のほとんどは、泣いているのか汗をかいているのか、頰に水滴がついていますが、何らかの意図があってのことですか?

それには二つの理由があって。まずは、泣いてる絵も汗をかいてる絵も、もともとすごく好きだったんです。あとは、昔描いていた絵が詳細な描画をしていて、書き込みも多くて、どんどん余白がなくなっていったんですね。でも、絵に余白がないと人に見てもらえない、ということに気づいたんです。それで余白を絵の中になるべく作るように努力したんですけど、それだとなんとなく物足りなくて、顔の中の余白に描いちゃった、と。

©原田ちあき/大和書房

人に見てもらいたいという欲求は、最初から強かったんですか?

はい、子供の頃から。とにかく褒めてもらいたいっていう気持ちが強かったんです。親に褒めてもらいたかったんだけど、全然褒めてもらえなくて。それでどんどん見て欲しがりになってきたかもしれないですね。絵を描くほどに、なんで見てもらえないんだ? なんでだ? って思ったりすることが多くなってきたんで、年とともに欲深くなってきたのかもしれません。今の画風になって、いろんな人に見てもらえるようになるまでは3年ぐらいかかりましたね。

原田さんの絵って、心の奥底にあるごく個人的で密室的な感情が発端になっているじゃないですか。でも、それをオープンに人に見てもらいたいと素直に思えるなんて、表現として健全だなと思います。

わぁ、ホントですか⁉ 本にも書いたんですけど、はじめてツイッターに絵を投稿したときに、ちょっとした“バズり”を経験したんです。今考えるとさほどバズってはいないんですけど、「わかる!」とか、全然知らない人からリプライが飛んできたりとかして、へぇ〜わかってくれるんや? と思うと嬉しくて。共感することがみんなにとっても気持ちいいんだってことが、そのときはじめてわかったというか。それだったら、もっと描いてみようっていうところから、始まったんですよ。

ちょっとだけ汚れてるほうが、自分の綺麗な部分がより際立っていいなって

色を塗るときは、何かを考えていますか?

全く何も考えてなくって。最初は編集者さんの依頼で仕方なく色を塗り始めたんですけど、だんだん色を見ること自体も楽しくなってきたんです。音楽も同じだと思うんですけど、イラストもフェチが大事だなと思うんですよね。私は、悪口言ってる女の子と、泣いてる女の子フェチ(笑)。色を塗っているとどんどん興奮してくるので、色フェチでもあるなと思ってます。そのフェチが組み合わさると一つの個性になって、この人の作品だってわかってもらえるようになるのかなって。駆け出しの頃って、アイデアとか気になるものがたくさんあるので、良くも悪くもいろんな絵が描けちゃう。でも、その中のいくつかの要素を突き詰めて自分らしさを探してきたのかもしれません。そういう個性が今は大事なんだろうなって思いながら、最初の頃はイラストを投稿していました。

ただ、本書を手に取ってもらいたい理由の一つとして、言葉の力を感じるということがあるんです。書き下ろしのエッセイ部分はもちろんですが、イラストに添えられた言葉も名言揃いで。「私が笑顔でいる事が、君への一番の復讐です」とか「意地悪なあの子にバチが当たりますようにと毎晩願ってしまう私にバチが当たりませんように」とか、もう、泣きながら笑える(笑)。

やっぱりそういうこと、みんな普通に思いますよね(笑)。だって自分の人生では自分が主人公ですもん。だから、自分に対しては謙虚になる必要ないし、潔癖である必要もないんです。昔、くっそムカつく! って色々思ってた時期によく考えていたことなんですけど、ちょっとだけ汚れてるほうが、自分の綺麗な部分がより際立っていいなって。汚れてる部分を認めないと、綺麗な部分が輝けないと思うんですよね。

©原田ちあき/大和書房

原田さんは今、過去に傷つけられた人や物事に対して、きっと正しく復讐できていますね。毎日とても楽しいでしょう?

めちゃめちゃ楽しいです。 でも復讐って毎日を豊かに笑顔で過ごしていくことだと思っているので、これからも私の復讐は続いていくのだと思います。 そうして生きていく中で、ふと過去を思い返したときに「ざまあみろ」と思えたらその時は我々の勝ちですね(笑)

原田ちあき(はらだ・ちあき)

1990年、大阪府生まれ。イラストレーター、漫画家、キュレーター。Twitterフォロワー8万8000人。2014年「よいこのための悪口メーカー」を名乗り、悪口イラストを本格的に書き始める。自らの創作活動のかたわら、キュレーターとしても活動。著名アーティストとの「きみでおめかし」展などを開催。またアイドルやアーティストとのコラボも多数。ブログ「ハラダチ日記」をはじめ、WEB連載やテレビ番組出演など幅広く活躍している。著書に『原田ちあきの挙動不審日記』(祥伝社)、『誰にも見つからずに泣いてる君は優しい』(大和書房)がある。

オフィシャルサイト
http://cchhiiaakkii8.wixsite.com/chiaki

ブログ「ハラダチ日記」
https://ameblo.jp/harada-chiaki/

Twitter
@cchhiiaakkii

Instagram
cchhiiaakkii9

『誰にも見つからずに泣いてる君は優しい』

原田ちあき(著)
大和書房
「ゲスの極み乙女。」川谷絵音さんが「今一番飲みたい人」!  ツイッターフォロワー8.2万人。毒舌・超絶カラフルイラストなのに「心に刺さる」「染みる」「病みかわいい」とSNSで話題。描きおろし作品約50点を掲載。壮絶黒歴史を含めた初のエッセイ10本収録。クリープハイプ、でんぱ組.incなど、有名アーティストとのコラボ作品なども。
詳細はこちらhttp://www.daiwashobo.co.jp/book/b348510.html