モリコメンド 一本釣り  vol. 75

Column

彼女 IN THE DISPLAY 新世代J-ROCKシーンを背負う存在の“ホンモノ感”

彼女 IN THE DISPLAY 新世代J-ROCKシーンを背負う存在の“ホンモノ感”

ラウドロック、エモコア、ポップパンクなどを軸にしながら、レゲエ、ジャズなどの多彩な要素を取り入れたサウンドによって、新世代J-ROCKシーンを背負う存在としての期待が高まっている“彼女 IN THE DISPLAY”。ミニアルバム「get up」でメジャーデビューを果たした彼らは、2010年に結成された5人組バンドだ。

70年代から数多くのロックバンドを輩出してきた福岡を拠点に活動を続けてきた彼女 IN THE DISPLAY。その音楽的支柱は00年代以降のモダン・ヘビィ・ロックだろう。ズッシリとした重さと空間を切り裂くような鋭さを併せ持ったギターリフ、骨太なグルーヴとしなやかなスピード感を同時に感じさせてくれるリズム・セクション、そして、濃密な感情を激しく放出するボーカル。彼らの楽曲を聴けば、そのなかにしっかりとしたルーツミュージックが宿っていることがわかるはずだ。表面的なインパクトやギミックに頼るのではなく、自分たちの価値観、美意識に合った音楽をしっかりと堀り下げ、それを血肉化することで、バンドの音楽性に反映させる。その地道なプロセスを経ないと“ホンモノ感”は絶対に生まれない。

しかし、ホンモノであるからといって、それがそのまま認められるとは限らない。日本で活動する以上、日本のリスナーが反応する間口の広さも必要だし、ストレートに伝わる歌も不可欠。実際、彼女 IN THE DISPLAYのメンバーも、現在のシーンにアジャストするために試行錯誤を行ってきたという。“良かれと思ってトライしたことが上手くハマらない”ということを繰り返していくなかで彼らは“やはり自分たちが信じることをやるべきだ”というもっとも根源的なモチベーションへと回帰。メジャーデビュー作「get up」における初期衝動に溢れたサウンド、そして、幅広い層のリスナーが楽しめる幅広さには、これまで経験してきたすべてのことが込められていると言っていい。そのことをもっともストレートに示しているのが、リードトラック「STAY KID」の“見渡さなければ見つからないものもある”という歌詞だろう。やりたいことに突き進み、それを実現できることは稀、というか奇跡に近い。ほとんどの人は、さまざまな壁にぶつかり、ときに方向転換余儀なくされながらも、自らの道を探すことになる。おそらくボーカリストのRYOSUKEは約8年間に及ぶバンド活動のなかで、そのことを痛感したのだろう。自らの経験をそのまま綴るのではなく、年齢、性別、音楽の趣味に関わらず、誰もがグッとくる歌詞に結びつけセンスもこのバンドの武器だと思う。

「STAY KID」はサウンドメイク、アレンジにも、現在のバンドの姿勢がよく表れている。圧倒的な疾走感を備えたビート、ラウドロック、ミクスチャーの要素と色濃く取り入れたアンサンブル、そして、メロディアスかつドラマティックなボーカル。これはまさに音楽的な芯の強さと自由度の高さを兼ね備えた彼らだからこそ実現できたことだろう。前作「GOLD EXPERIENCE REQUIEM」に続いてサウンドプロデュースを担当した江口亮(LiSA、いきものがかり、坂本真綾、cinema staffなどの楽曲を手がけるクリエイター)の手腕も見逃せない。パッと聴いた瞬間のインパクト、何度聴いても飽きない深みを両立させたプロダクションはさすがの一言だ。

その他の楽曲も激しく魅力的だ。イライラした感情、焦りや不安、攻撃衝動などをダイレクトに叩きつけるアッパーチューン「CHAOS」、ポップパンクの進化型とも言えるサウンドと“ヤバイ状況を突破するんだ”という意志を表明するような歌詞がひとつになった「DRAGON HORN SHOTGUN」、レゲエの要素を取り入れたイントロからサビに入った瞬間にラウドロックのスイッチが入る「Kick」、アルバム中もっとも“ラウド&ファスト”(つまり彼らの衝動がもっとも強く反映された)なナンバー「KVE」、そして、エレクトロ的な音像を含んだサウンドと友に向けた強い思いが融合した「Anthem for my friends」。根本にあるルーツミュージックとカラフルなポップネス、現状に対する強い感情がぶつかり合う本作を聴けば、彼らの現在地がはっきりと確認できるはずだ。

2015年に「OZZFEST JAPAN」、2016年に「KNOTFEST JAPAN」とラウド系の大型イベントに出演するなど、ライブシーンでも徐々に注目度を高めている彼女 IN THE DISPLAY。ロックミュージックに対する強いこだわり、どこまでも上に上がってやるという上昇志向を併せ持った5人が音楽シーンに対してどんなインパクトを与え、どんな暴れっぷりを見せてくれるのか、ワクワクしながら注視していたいと思う。

文 / 森朋之

その他の彼女 IN THE DISPLAYの作品はこちらへ

オフィシャルサイト
http://www.kid-official.com

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