Interview

Tearless Bring To Light 北海道発の4人組、話題の女性ボーカルの魅力を彼らはどんなふうに押し出していくのか?

Tearless Bring To Light 北海道発の4人組、話題の女性ボーカルの魅力を彼らはどんなふうに押し出していくのか?

にわかに活況を呈している北海道のバンド・シーンから、またひとつ注目バンドが登場した。TVのボーカル・オーディション番組でも高い評価を集めた女性ボーカリストをフィーチャーし、重厚なハードロック・サウンドを聴かせる4人組だ。この2月に現体制となるや、早くも初音源を完成させ、一気に活動を加速させてきた。
ここでは、バンドの結成から始めて、初音源完成までの道のりを振り返ってもらいながら、現時点でのバンドの音楽性をメンバーそれぞれの言葉で語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 鈴木圭

最初に鳴らしたときには、自分の理想が一度崩れ去ったような感じはありました。

どういうふうに生まれたバンドですか。

藤本 僕とくらげと和希が、いつも使っているスタジオが同じだったんですけど、ある日僕が使ってた隣のスタジオから彼女の声が聞こえてきて、僕はびっくりして。スタジオの店長に「この声、誰?」という話をして、それで連絡先とか教えてもらったんです。当時、彼女は別のバンドをやってて、そこから引き抜きという形になってしまったんですけど、「一緒にやらないか」と誘って、それから和希と前のドラムを誘って始めたバンドです。ただ、その後ドラマーが抜けてしまったんですけど、今年初めに西さんが入ってくれて、いまの状態になりました。

藤本郁弥(gt)

くらげさんと佐藤さんは、具体的にはどういうふうに誘われたんですか。

くらげ 前のバンドが練習中にやって来たんですけど、そのバンドのギターが彼のことをすごく好きで「わあ、郁弥さん。よかったら、見て行ってくださいよ」ということで、1曲やったんです。そしたら、後日彼から連絡が来たんです。

佐藤 僕は、くらげを誘うことについてずっと相談を受けてて、「いいボーカルをみつけたんだけど、自分のことを尊敬してくれてるコたちのバンドにいるから、そこから引き抜くのは…」ってずっと悩んでたんですけど、あるとき「引き抜くことにした」と。「彼女の声を生かしたいんだ」という話で、その時点ですごくはっきりとしたイメージがあったから、そこからそこに向かって真っ直ぐに、という感じでした。

くらげさんの声を耳にする前から、藤本さんのなかにはバンドの構想があったわけですか。

藤本 僕は元々、音楽の仕事を少しやってたんですけど、自分の曲を自分のバンドでやって勝負したいと思っていて、そこでやりたいと思っていた音楽のイメージに彼女の声がぴったりだったんですよね。和希とは、以前から音楽仲間というか、僕がやりたいこともよくわかっていたので、誘いました。西さんは、僕たちの映像を見てくれて、そこでドラマーを募集しているのを知って、「ぜひ、やりたい」と言ってきてくれたんです。

そこで思い描いていた音楽のイメージは、今回のミニアルバムで聴くことができるような音楽だったんですか。

藤本 イメージは、だいぶ近いですね。

その藤本さんのイメージ通りのメンバーが集まったとしても、でも実際に一緒に音を鳴らしてみると、なかなかそのイメージ通りにはならないことも多いですが、初めて一緒に音を出したときの感触はいかがでしたか。

佐藤 僕がこのバンドをやる以前は、こういう歌をメインにした音楽をあまり聴いていなかったこともあって、最初は確かにちょっと戸惑いがありました。

藤本 最初に鳴らしたときには、自分の理想が一度崩れ去ったような感じはありましたね。僕が考えたフレーズを、僕以外の人がやると全然印象が違ったりするんですよ。だから、自分が思ってるイメージと実際に鳴らした音にはかなりギャップがあって、そのギャップを埋めるために僕のイメージを説明するんですけど、それがちゃんと伝わりきらなくて、難しかったですね。

くらげ 私は、その時点ではまだバンド歴がそれほどなかったから、どれが正解なのか全然わからない感じだったんですけど、いまから考えるとその頃は確かにかなりグダグダしてたんだなあと思います。

くらげ(川村海月:Vo)

そういう状況のなかで、西さんが加入するわけですね。

西 最初に、くらげが弾き語りしてる映像をtwitterで見て“このコ、やばい!”と思ったんですよ。それで、すぐに直接DMしたんです。そしたら、すぐに一緒にやることになったっていう。

その時点でのこのバンドのサウンドについては、どういう印象でしたか。

西 彼女の歌はすごく好きだし、もちろん曲もすごくいいと思ってたんですけど、でもベースとドラムのアンサンブルがかなりグチャッとしてたり、シンセなどの上ものもけっこう混乱してたから、僕が入ってから一緒に整理作業をやりました。

僕がどんな曲を作っても、彼女が歌えば成立してしまうというか、歌が前に出ていくんですよ。

例えばアルバムの1曲目に入っている「マイルドロット」という曲は、オフィシャルサイトでも一部聴くことができますが、この曲は現時点での代表曲というような位置付けなんでしょうか。

藤本 代表曲というわけではないですが、くらげの歌を聴かせるとは言っても、バラードだけでは多くの人に楽しんでもらえないと思って、一般的なリスナーの人が聴くようなロックの曲もあるといいなと思って作った曲です。

このバンドの基本的な曲の作り方は?

藤本 曲によっていろいろなんですが、でもある程度のバックトラックとメロディを彼女に伝えて、そこから徐々に形にしていって歌詞ができたところで最終的に仕上げるというパターンが多いと思います。

歌詞はどういうふうに仕上げていくんですか。

くらげ だいたいは、ざっくりとテーマを決めてから、それに沿ってまず言葉を埋めていって、その内容を凝縮したようなフレーズをサビに入れる、というような進め方ですね。

最初に決めるテーマというのは、トラックからイメージするんですか。

くらげ いや、それとは関係なく自分のなかにあることや身近な出来事から決めてしまいます。ちなみに、「マイルドロット」は友達の片思いをネタにしました(笑)。

歌詞は、すべて日本語、すべて英語、英語と日本語が混ざったもの、といろんなパターンがありますが、日本語と英語の使い分けについてくらげさんのなかで何かルールはあるんですか。

くらげ ざっくり言うと、日本語で言うとストレートになり過ぎて恥ずかしい部分を英語にします。

では、全編英語の場合は、内容全体が恥ずかしいということですか。

くらげ そうですね(笑)。曲にもよるんですけどね。「紫蘭」はがっつりとストレートに伝えていいかなと思って全部日本語にしたんですけど。でも、ちょっと意味を濁しておいたほうがいいかなと思ったら英語を使うっていう。だから、そこはどんなふうに受け取ってもらっていいので、という部分だったりするんですよね。

サウンドについては、ギターを中心にしたハードロックというのが僕の印象なんですが、いかがですか。

藤本 その通りだと思います。

佐藤 郁弥と僕が共通して好きなのはハードロックなので、ベースについてはどの曲も僕のなかのハードロック的な要素が出ていると思います。その上で、例えばくらげが聴いてきた音楽の要素も取り入れたりして作っていってますね。

西さんが入ったところで、かなり整理作業を行ったというお話でしたが、その整理作業ではどういう方向性を意識したんですか。

西 その時点ではもう音楽性みたいなところは土台が出来上がっていたので、僕がやったのは例えばドラムのキックとベースのアタックを揃えるとか、そういうところを自分の感覚として気持ちよくなるように修正していった感じです。

西 佑太(Ds)

「自分の感覚として気持ちよくなるように」という話が出ましたが、今回のアルバムを聴くとドラムだけでなくどのパートでも演奏する人間の気持ち良さにかなり比重をおいたアレンジになっている印象があります。その一方で、このバンドはくらげさんの歌を生かすという大きなテーマがあるという話が冒頭にありましたが、そのバランスについてはどんなふうに考えていますか。

藤本 正直に言って、僕がどんな曲を作っても、彼女が歌えば成立してしまうというか、歌が前に出ていくんですよね。だから、バンドと歌のバランスみたいなことについてはそんなに細かく考えていなくて、西さんが入ってくれたおかげでバンドとしてのアンサンアブルは相当詰められたので、その流れでかっこいいと思うものを作って、それでくらげが歌えばちゃんと歌ものとして成り立つし、もっと言えばそれほど“歌もの”ということを強く意識してるわけではなくて、簡単に言ってしまうと“かっこよければいいじゃん”という感じなんですよね。

となると、ボーカルが背負っている部分はいよいよ大きいですが、くらげさんはいまの時点でのこのバンドのアンサンブルについてはどんなふうに感じでいますか。

くらげ 郁弥はいつも私の好みの曲調で作ってくれるから歌いやすいし、歌詞も考えやすいし…。録音したものを聴いてみると、もし私がこのバンドに関係ない人間でも、普通に聴こうと思うなというものになってますね。

くらげさんの好みの曲調が出てくるということですが、例えば佐藤さんはベースの方向性を考える上でくらげさんがどんな音楽を聴いてきたか確認したりしましたか。

佐藤 しましたよ。僕が聞いたときにはaimerが好きだと言ったので、aimerのアルバムを聴いて、ベースを研究しました。

くらげ 一緒にバンドを始めるときに、フミヤから「どんなバンドが好き?」と聞かれて答えたら、私の年代だったら普通は知らないようなバンドだってすごく驚かれたんですよね。

藤本 プリティー・レックレスとかエヴァネッセンスとかね。

くらげ たまたまその頃は洋楽ばかり聴いていた時期で、「好みが合うね」という話から始まったんですよね。

(アレンジは)その曲がいちばんかっこよくなるように、ということだけを考えて、やれることは全部やるという考え方です。

今回のレコーディングを振り返って、それぞれ印象に残った場面や楽曲について聞かせてください。

佐藤 本番のレコーディングに入るまでは3曲目の「Across the mirror」に苦手意識があったんですけど、いざ始まってみると、その曲はわりとすんなり録れて、むしろ2曲目の「Chain」のベースをいい感じのノリでやるのに苦労しました。

佐藤和希(Ba)

西 僕も「Chain」は印象に残ってます。めちゃくちゃ変拍子の曲なので、最初は覚えられなくて全部譜面に書いてやってたし、そもそも前のドラムの人の時期に出来上がってた曲だから、そこに自分らしさを入れ込むのが大変でした。

くらげ 私も「Chain」、それに4曲目の「A skinny sky」が大変でした。どちらもトラックに音数が多くて壮大な曲だし、どちらも感情的な曲だから。それに歌メロが高かったり低かったり、急に上がったりで、他の人は難しくて歌えないんじゃないかなという気もするんですけど。だから、レコーディングの歌入れはすごく時間がかかりました。

藤本さんは曲を作るときに、彼女が歌うことはどれくらい意識しているんですか。

藤本 彼女は、ほとんどなんでもやれてしまうので…。それに、僕は彼女がきついところをがんばって出してる感じがいいと思っているので、敢えてきつくなるキーを選んで作ったりしてるところはありますね。

藤本さんは、レコーディングを振り返って印象に残っているのは?

藤本 「A skinny sky」が印象深いかな。この曲のためにオーケストレーションやストリングスのアレンジをかなり勉強してやりましたから。それから、「紫蘭」は僕が中学生のときに作った曲で、それをこのメンバーでいま音源にできたのはとても感慨深いし、思い入れは強いですね。

ストリングス・アレンジの話が出ましたが、1曲目の「マイルドロット」もいきなりシンセの音が聴こえてきたので、あらためて資料で4人の担当楽器を見直したんです(笑)。あのシンセも藤本さんが弾いてるんですか。

藤本 そうです。上ものは全部、僕がやってます。

ということは、ライブではアレンジを変えるんですか。

藤本 いや、同期を使いますね。

音源でもライブでもメンバーの演奏だけで完結できるアレンジにこだわりを感じているバンドもありますが、藤本さんはそこについてはもっと自由な考え方なんですね。

藤本 そうですね。そういうことはまったく気にしたことがないです。曲ごとに、その曲がいちばんかっこよくなるように、ということだけを考えて、やれることは全部やるという考え方です。

『Pieces』というアルバム・タイトルは、どのタイミングでどういうふうに決めたんですか。

くらげ 入ってる5曲の曲調が幅広くて、それぞれにいいところがある曲が揃っているので、一つひとつの欠片、つまりPieceが集まってるということでもあるし、Piecesという複数形になると“作品”という意味もあるんですよね。だから、それぞれにいいところがある幅広い曲が集まった作品という意味で、このタイトルにしました。

出来上がった作品を聴いての感想は?

佐藤 録り終わってまず思ったのは、ほっとしたというか、ようやく自分たちの名刺代わりになるものができたなということですね。

西 すごい盛りだくさんの内容だと思うんですけど、でもどの曲でもそういうサウンドにくらげの歌が負けないで前に出てるんで、すごくいい内容に仕上がったなと思います。

藤本 この5曲をお客さんがどんなふうに聴いてくれるのか、ものすごく楽しみなんですけど、でも同時に“課題がいっぱいあるな”ということも思いました。メンバーの4人のなかで音楽の知識や経験値にかなりデコボコがあるので、そのあたりを修正して4人の共通意識と音楽の理解度をあげていけば、もっといい作品が作れるだろうなという気がしています。

最後に、来年の今頃にはどうなっていると思いますか。

くらげ 予想はまったくつかないですけど…、とりあえずワンマン・ライブができるくらい曲数は増やしたいですし、まだ自分たちのなかでいろいろ迷いもあるので、しっかりと確立したものを持てるようになってたらいいなあと思いますね。

期待しています。ありがとうございました。

Tearless Bring To Light

くらげ(川村海月:Vo)、藤本郁弥(gt)、佐藤和希(Ba)、西佑太(Ds)から成る、4人組ロックバンド。2017年初頭に活動を開始するや、「ヤバいバンドがいる」と話題になっていたが、ドラム脱退により一時活動を休止。その後、Aoのドラマー西をメンバーに迎えて、2018年2月に現体制となった。「心に響く音楽を」をモットーに札幌を中心に活動中。ボーカルのくらげ(川村海月)は、テレビ朝日系「音楽チャンプ」第3回チャンピオン。

オフィシャルサイト
http://tearless-btl.com

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