Interview

ニトロデイ オルタナ・シーン注目の4人組は初リリースの前作で何を感じ、その経験を新作にどうつなげたのか?

ニトロデイ オルタナ・シーン注目の4人組は初リリースの前作で何を感じ、その経験を新作にどうつなげたのか?

平均年齢18歳、90年代オルタナティヴ・ロックの影響を純化したようなサウンドが注目を集める4人組から新作が届く。話題を呼んだ前作「青年ナイフEP」から約1年ぶりのリリースとなる2nd EP「レモンドEP」を、夏という季節が連れてくる高揚と倦怠を簡潔な言葉とけれん味のない爆音で描き出している。
ここでは、そのバンドの誕生から前作の評判、そして新作の制作へとつながる流れをギター/ボーカルの小室ぺいに振り返ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 田中和彦

最近は、自分の曲というよりも4人で作っている感覚のほうが強くなってきてます。

ニトロデイは、小室さんが始めたバンドなんですよね。

そうですね。

他のメンバーは、どういう話をして誘ったんですか。

とりあえず、自分たちで曲を作って、というのをやりたかったんで、そういうふうに声をかけたら「やりたい」と言ってくれて、それに音楽の好みもわりと近いほうだったんで、一緒にやろうという話になってバンドを組みました。

ということは、メンバー3人とは音楽を通した知り合いだったわけですか。

そうです。前にやってたバンドでイベントを一緒にやったりして、そこで音楽の話もけっこうしてたんです。で、さっき言ったみたいに、好きなものもわりと近いからいいかなと思って。

「自分たちで曲を作って」というのが最初のテーマだったということですが、現時点でのニトロデイの曲は小室さんが詞も曲も書いているわけで、つまりは小室さんからすると自分の曲をバンドでやりたい、ということだったんですか。

最初はそういう意識でしたけど、最近は4人ともアレンジの引き出しが増えてきたりして、自分の曲というよりも4人で作っている感覚のほうが強くなってきてます。

小室さん自身はニトロデイを始める前から曲は作っていたんですか。

はい、やってました。

その曲を人に聴かせるのに、弾き語りのようなスタイルやDTMでトラックを全部作ってしまうような形ではなく、バンドという形が小室さんにとっては大事だったんですか。

そうですね。自分が好きで尊敬しているアーティストも、バンドだからこそかっこいいという感じがあったので、自分もその形がいちばんやってて楽しいかなと思ったんです。

ただ、人が集まってやるのがバンドですが、人が集まると面倒なことも増えるじゃないですか。そこは、気にならなかったですか。

最初に始めるときには、そこまで考えなかったです。それに、3人とも全然知らないわけじゃなかったから、大丈夫だと思ってたんだと思います。

人としては大丈夫でも、一緒に演奏してみるとしっくりこないということもけっこうあるみたいですが、現在も一緒に活動しているということはいきなり4人で鳴らした音にピンと来たということなんでしょうか。

いや、最初からうまくいったわけではなくて…。やっぱりそれぞれの演奏があるし、自分のなかにも“絶対、これ!”というものがあったわけではなくて、やっていくなかで固まっていった気がします。それは、自分だけじゃなく、4人全員のバンドとしてのやりたいことが見えてきたというか。だから、最近は“こういうことをやりたい”というのがちゃんと自分たちでわかった上でやれるようになってきたなということは感じています。

何かのタイミングで“俺たちは、この4人でずっとやっていくんだ”と雷に打たれたように感じる、みたいなドラマティックな瞬間はなかったですか。

ないですね(笑)。

いまもそうですけど、曲を作るときには聴いてくれる人のことをあまり考えずに作るんです。

(笑)、「自分のなかにも“絶対、これ!”というものがあったわけではなくて」ということだから、やりながらかっこいいと思うものは探していくことになりますよね。

そうですね。僕らは全然経験がなかったし、本当に未熟だったから、やっていくなかで“自分たちがやりたいのはこういうことだな”というのを見つけていったと思います。

そういう意味では、最初の音源として前作「青年ナイフEP」を作ったことはメンバーのみなさんにとってもすごく意味があったと思いますが、あの作品が世の中に出たことで受け取ったいろいろなことのなかで何か印象に残っていることはありますか。

思ってたよりも、世の中のいろんな人が聴いてくれるんだなあということは思いました。そのなかには、うれしいことを言ってくれる人もいっぱいいたし、「ここがダメだ」ということを言ってくれる人もいて、正直“うるさいなあ”と思うこともあったけど(笑)、それでもいろいろ参考にはなりました。前作は、いま振り返ると、自分たちのなかでまだ固まりきってなかったなあと思う部分もあるから。それにしても、意外にみんな反応を示してくれて、そのことはよかったなと思います。

「意外にみんな反応してくれて」ということは、小室さんとしては“みんな気に入ってくれるだろう”とか“みんなに気に入ってもらいたい”と思って作った作品ではないということですか。

それはいまもそうですけど、曲を作るときには聴いてくれる人のことをあまり考えずに作るんです。自分が作りたいものを作るということが多いので、それでも聴いてくれる人は聴いてくれるのかと前作で思いました。

前作について、褒めてくれる人もいれば“うるさいなあ”と感じるようなことを言う人もいたということですが、褒めてくれた人の言葉で何か印象に残っていることはありますか。

ウ~ン…、憶えてないです。あっ、でも自分がバンドをやる前から好きだったナカコーさんやART SCHOOLの木下(理樹)さんがコメントしてくれたのは、うれしかったですね。

“うるさいなあ”と思ったことで何か印象に残っている言葉はありますか。

印象に残っているというか、「あのバンドのパクリだ」みたいなことを言われたことがあったんですけど、そういうことを言ってた人たちも納得するような自分たちらしさというものをどこまで突き詰められるかということを最近は考えています。

ちょっと恥ずかしいですけど、歌詞は見てくれるとうれしいかもしれないです。

さて、今回の新作「レモンドEP」ですが、収録された5曲はこの音源を目がけて作った曲ですか。

いや、最初は音源のことは全然考えていなくて、ただバンドで作っていってたんですけど、「また音源を出そう」という話になった時点でもう4曲できていて、「氷菓」という曲だけ今回の音源を意識して作りました。

資料に「夏をテーマに制作され」とあるし、実際どの曲も夏を感じさせる内容ですが、意識してそういう内容にしたわけじゃないんですね。

はい、たまたまです。

前作で受け取ったものや、そこまでの経験が影響して、これまでと曲の作り方が変わったり曲のモチーフになることに変化したり、というようなことはなかったですか。

前作と比べると、アレンジは相当がんばったなと思います。音作りにも自分たちの色が出るようにいろいろ考えたし。だから、バンドとしては前作と比べると大きく前に進んだんじゃないかなと思います。

アレンジの充実は一聴して感じることですが、その骨格になっている楽曲の歌詞とメロディについては特に変化は感じていないですか。

歌詞は変わったと思います。高校の頃、部活でちょっと短歌をやったんですよ。友達に誘われて始めたんですけど、2年間わりとちゃんとやって、それで歌詞もけっこう変わったと思います。それまでは、ただ書きたいことを書いてただけだったんですけど…。短歌は文字数が少ないから、書いた人の一語一語に対するこだわりが出ると思うんですけど、そういうものをいろいろ読んだので、歌詞を書くときの言葉の使い方が変わったと思います。

部活では、昔の歌人の作品を読んだりするんですか。自分でどんどん作っていくんですか。

だいたいは、みんなで作って、批評し合うんですけど、好きな歌人の歌集を部員から借りたり、図書館で借りて読んだりもしてましたね。

言葉数が限られたそういう表現をやっていたせいなんでしょうか、ニトロデイの曲の歌詞は、今回の作品の曲に限らず、あまり言葉が多くないですよね。小室さん自身は、歌詞を書く上で、“できるだけ言葉は少なく”とか“説明し過ぎない”とか、そういうことは意識しているんですか。

僕は歌詞で絶対伝えたいことがあるというわけじゃなくて、自分が“こういう歌詞だったらいいな”と思うものをただ書いているだけです。

その“こういう歌詞だったらいいな”という、小室さんのなかのかっこいい歌詞のイメージに影響を与えた人はいますか。

歌詞を書き始めた頃は向井(秀徳)さんの歌詞がいいなと思って書いてたんですけど、最近は短歌を読むようになって、そっちの影響のほうが強いかもしれないですね。

歌人では、誰が好きなんですか。

雪舟えまという人。それに、中澤系という人が好きです。

小室さんは洋楽も聴くようですが、洋楽の歌詞の内容を意識したり、参考にしたりすることはないですか。

普段はあまり意識しないですけど、すごく好きになった曲は気になって調べたりすることもあります。

例えばニトロデイの音楽を初めてライブで聴いた人は、爆音サウンドだから歌詞をしっかり聴き取ることは難しい場合もあると思いますが、そういう人に“この人たちはどういうことを歌っているんだろう?”と気になってほしいと思いますか。

ちょっと恥ずかしいですけど、歌詞は見てくれるとうれしいかもしれないです。

歌詞を読まれるのは恥ずかしいですか。

恥ずかしいです。自分の言葉で書いて、それを大勢の前で歌うというのは、やっぱり恥ずかしいですね。

それは、ニトロデイの歌の中に小室さんがいるから、恥ずかしいんですか。

そういう恥ずかしさではないけど、自分が書いた歌を聴かれるのはやっぱり…。よくわかんないけど。

(タイトル曲は)聴いたときにレモンみたいな感じが思い起こせる曲かなと思って。

「相当がんばった」という今作のアレンジに関して、どんなふうに詰めていったのか具体的にどれかの曲を例にして教えてください。

5曲目の「ユース」という曲は7分くらいあって、多分このバンドの曲ではいちばん長い曲なんですけど、最初はそんなに長くなかったのを、もっとスケール感を出したよねという話になって、間奏とかいろいろ意見を出し合ってアレンジしていきました。

その「もっとスケール感を出したい」と言うのは、小室さんが言うんですか、それとも他の誰かが言い出すんですか。

最初は自分が言い出して、「だったら、こうしよう」みたいな感じで、みんながいろいろ言い合って、それで進めていきます。

「グミ」は冒頭にコーラスが入っていますが、あのアイデアは曲を作った時点からあったものですか。それとも、バンドでアレンジを詰めていくなかで出てきたものですか。

あれは、自分が言いました。曲を作ったときにはなくて、バンドで合わせていったときにも“何か足りないなあ”と思って、それで考えついたのがあのコーラスだったんです。あの曲をやってる時期にちょうどThe Rentalsを聴いてて、そこにコーラスが入ってたんですけど、この「グミ」みたいな曲にコーラスが入ってると新しい感じが出せるんじゃないかなあと思って、それでやってみました。

そういうふうに4人で鳴らしてみて、その具合を判断する基準が厳しくなって、アレンジがさらに充実してきたということでしょうか。

それもあるし、引き出しも増えたから、それを前よりも出せるようになってきたなと思います。リフをつけるときに、上(の音域)が足りてないなと思ったら、そういうリフを作ったり。だから、鳴らしたい音と実際に鳴らせる音のギャップがだいぶ無くなってきた感じがします。

1曲目「レモンド」がタイトル曲ですが、ジャケットにレモンが写っているし、やはりこのタイトルはレモンと関係があるんですか。

直接的には関係ないですけど、聴いたときにレモンみたいな感じが思い起こせる曲かなと思って。

♪ぬるいままの炭酸 喉の奥に流し込んで♪という歌詞がありますが、その“ぬるいままの炭酸”がレモンスカッシュみたいな飲み物だったりするんですか。

そういうことです(笑)。

(笑)、なるほど。この曲を表題曲にしたのはどうしてですか。

4人がみんな気に入っているので。特にベースのフレーズはなかなかいいんじゃないかっていう話をしました。

(ライブは)やっと人に聴かせられるレベルまでは来れたかなという気がしています。

音源のリリースについては、前作からと同様、これからも1年に1作品くらいのペースになりそうですか。あるいは、もっと作れるなという感覚もあるんでしょうか。

音源については、どんどん出そうというよりも、すごく完成度の高い、名盤と言われるようなものを作れたらいいなという気持ちのほうがいまは強いです。

ライブと音源制作のバランスについては、いまの時点ではどんなふうに考えていますか。

これからは、曲を作る時間が減っていってしまうかもしれないですけど、それでも曲は作るんですけど…。まあ、両方がんばります。

いまの口ぶりだと、ライブを精力的にやることより、作りたいと思ったときに曲をしっかり作って、アレンジもしっかり詰めて、それを音源に残すということをやりたいという気持ちが強いですか。

ウ~ン…、最近まではライブがちょっと苦手だったんですけど、やっと人に聴かせられるレベルまでは来れたかなという気がしていて、もっと技術を上げていきたいなと思っていて、そしたらライブももうちょっと楽しめるかなと思ってるんですけど。いまは、ただやるだけで精一杯なので。

最後に1年後にはどうなっている、あるいはなっていたいと思いますか。

もっと完成度の高い音源を作って、ライブもかっこいいバンドになっていたいですね。

期待しています。ありがとうございました。

その他のニトロデイの作品はこちらへ

ライブ情報

「レモンドEP」Release Tour

8月4日(土) 神奈川・横浜BB STREET w /突然少年/Layne/betcover!!
8月10日(金) 大阪・心斎橋Pangea w /ナードマグネット/MASS OF THE FERMENTING DREGS
8月14日(火) 愛知・名古屋CLUB UPSET w /The Wisely Brothers/Layne /THE STEPAHNIES
8月30日(木) 東京・下北沢THREE w /uri gagarn

ニトロデイ

小室ぺい18歳(ギボ) / やぎひろみ18歳(ジャズマスター) /松島早紀18歳(ベイスオンベイス) / 岩方ロクロー19歳(ドラムス)。
ニトロデイは平均年齢18歳ながら、そのサウンドは90年代オルタナ愛に溢れ、ローファイな爆音オルタナティブロックを演奏する。ART-SCHOOL、THE NOVEMBERS、uri gagam、向井秀徳などのオープニングアクトにも抜擢され、一躍注目を集めた。吐き出すようにシャウトするボーカル、小室ぺいの独特の語感によって描かれるキャッチーでフックのある歌、初期衝動丸出しのやぎひろみの破壊的轟音なギターサウンド、それを支える屈強なリズム隊。初期衝動はもちろん、それだけでは終わらない大きな可能性を秘めている。
7月25日に2nd EP『レモンドEP』をリリースした。

オフィシャルサイト
http://artist.aremond.net/nitroday/

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