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アップデート実施『NOSTALGIC TRAIN』レトロな町をさらに楽しむ探索レビュー

アップデート実施『NOSTALGIC TRAIN』レトロな町をさらに楽しむ探索レビュー

終戦後の復興を感じさせる農村の風景や謎に満ちたストーリーを楽しむことができるウォーキングシミュレーター、『NOSTALGIC TRAIN(ノスタルジック トレイン)』。美麗なグラフィックで表現されたオープンワールドの探索は、明らかになっていく謎の解明とともに静かな興奮をもたらしてくれました。前回の記事では、ファンタジックで不思議な物語を体験できるストーリーモードと、夏霧町を自由に歩いて堪能できるフリーモード、ふたつの楽しみかたを紹介しました。今回は、7月中旬に行われたアップデートの情報、筆者がフィールド探索して気づいたことや見つけた楽しみなどについて伝え、この美しい世界を歩く一助となればと思います。

文 / 内藤ハサミ


待望のアップデートでユーザーの声を実現

7月15日のアップデートで各種オプションが拡充され、ユーザーから要望が多かった機能が多数実装されました。追加された内容は下記のとおりです。

  • カメラを操作するマウスの感度調節、X,Y軸の反転
  • フリーモードの天候選択
  • 音量調節
  • ストーリーモードのクリア後、チャプターを選び再プレイできる機能

個人的にプレイする側として嬉しいのは、天候選択とチャプターを選択して再プレイできる機能ですね。特に天候選択は「待ってました!」と小躍りしてしまうくらいの追加要素です。今まで選択できたのは晴れた昼と霧の昼の2種類で、夜はストーリーモードのとあるタイミングでしか体験できませんでした。アップデート後にさっそく夜の夏霧町を見に行きましたが、夏の静かな夜の雰囲気を存分に堪能でき、とっても癒されました。小さい街灯の下でひとり、ぼーっと遠くの線路を眺める……現実にはなかなかできないことですが、ゲーム内なら夜中も安全に出歩き放題です。

▲“天候自動変化”の設定では、変化の周期も設定することができます。同じ構図で天候やエフェクトの違うスクリーンショットを集めるのが好きな筆者にはありがたい機能です

このように便利な機能が追加されているので、まだプレイしたことのない方だけでなく一度クリアしてしまった方も、もう一度夏霧町に戻ってきてはいかがでしょう。まだまだ遊べる、楽しみが尽きない世界ですよ。

夏霧町で見つけた、実際にあった昭和のカルチャー

昭和中期の雰囲気が色濃い夏霧町。その雰囲気を盛り上げる、町内にちりばめられた実在するモチーフの数々を見てみましょう。夏霧町のあちらこちらで静かに存在感を放つこの懐かしいオブジェクトが、懐かしい風景のリアルさをしっかりと支えているのです。ここでは、なかでも筆者が気になったものを数点紹介します。

○かわいいオート三輪“マツダK360”

夏霧の駅前、駄菓子屋の前、港などに停まっている、ホワイトとブルーのバイカラーが可愛らしいオート三輪。この形は、昭和34年に発売され好評を博した、マツダK360でしょうか。そのコロンとした美しいフォルムや、安定性に優れ小回りの利く合理的な設計に、今でも根強いファンを持つ傑作です。狭路や舗装が不十分な場所にも楽に入っていける小ささは、荷物を運ぶのにピッタリですね。きっと、酒屋さんの配達などにも使われたのでしょう。ゲーム内で実際に乗り込んだり動かしたりすることはできませんが、夏霧町をオート三輪でのんびりドライブ……そんなモードがあったらいいな、なんてつい妄想してしまいます。

▲デザインも優れたマツダK360。このオート三輪で、町内に荷物を運んでいるのでしょうか

○最後の丸型ポスト“郵便差出箱1号”

昭和20年の終戦後、復興に向けて動きだした日本。物資が流通するようになってきた昭和24年に登場したのは、丸型の鉄製ポスト、郵便差出箱1号です。夏霧町には、このタイプの郵便ポストが2台設置されています。のちに高度経済成長時代を迎えると、丸型では内容物があまり入らないという理由から、街中のポストはどんどん角形に替わっていきました。帽子をかぶっているような愛嬌のある形の丸型ポストはほとんど現存しておらず、昭和中期を代表するアイコンのひとつとなっています。

▲駅前に置かれたポスト。サビの表現が、設置からそれなりに時間が経った鉄製だということを物語っています。雰囲気抜群ですね

▲こちらは、民家の近くにあるポスト。集荷時間は平日2回、休日に1回……でしょうか。ゆったりした時代だったのですね

○モダンなデザイン“丹頂型公衆電話ボックス”

赤い屋根と丸みを帯びたデザインがタンチョウヅルを思わせることから“丹頂型”と呼ばれ親しまれていたこの電話ボックスは、昭和29年に登場。デザインは一般公募で決定し、急速に普及したようです。夏霧町では古本屋の前に設置されており、ストーリーモードのなかでも登場人物が使用する描写があります。10年後に開催された東京オリンピックの頃から、組み立ての容易さや防犯面にも優れた全面ガラス張りタイプが普及したこともあり、今となっては幻の電話ボックスとなってしまった丹頂型ですが、戦後の復興に沸く街並みには、この電話ボックスが彩っていました。

▲ボックス内の電話は、おそらく“青電話”と呼ばれるもの。これは十円硬貨専用で、100円玉が使える“黄電話”もあったそうです。今改めて見ると、オシャレなデザインですね

いかがでしたか? 筆者は昭和50年代生まれなので、このなかで実際に見たことがあるのは郵便差出箱1号のみ。丁寧に保存されているものを、確か博物館かどこかで見つけた記憶があります。他のものについても「わー懐かしい!」という気持ちにはならないのですが、戦後の復興を支えたモノたちとその愛嬌あるデザインには特別な歴史を感じます。プレイヤーの世代によっては、もよおす感興がもっと変わるかもしれませんね。

さて、これら3つの製品が登場した年代は、紹介順で言うと昭和34年、昭和24年、昭和29年。おそらくこの風景は、昭和34年からおおよそ10年以内くらいの夏霧町の姿なのではないかと予想されます。ストーリーモードではさまざまな時代のエピソードが語られるにもかかわらず、実際に探索できるマップはこの年代の風景に固定されています……。この意味について、ぜひ考えながらプレイしてみてください。主人公が、誰もいない終戦後の夏霧町をさまよっている理由がわかるとき、プレイヤーのなかでカチリカチリとはまり始めた物語のピースがひとつの大きな流れとなり、感動を呼び起こすはずです。

ちょっとしたところに作り込まれたリアリティ

実在するモチーフ以外にも、リアルさを追求した風景はたくさんあります。「ああ、こんな風景あるある!」と思わず言ってしまうようなところや、細かい作り込みが光る場所をいくつか挙げていきましょう。

▲部分的に補修された駅のホーム。コンクリートの色がそこだけちょっと濃い!

▲旅客運賃表。この路線は夏霧を含め10の駅があるんですね

▲電車は、平日は1時間に多くて2本。1本も来ない時間帯もあります。21時台が終電です

▲あるある! 家の裏に無造作に置かれた、ちょっと処理に手間のかかる廃棄物。あとで適切に処理しよう……と思って10年くらい経っちゃうんですよね

▲田んぼ、川などに侵入すると、パシャパシャと水音が。水田を踏み荒らすなんて絶対にリアルにはできませんが、ここなら入り放題ですよ!

▲晴れているときに視線を上にやると、目に染みるようなスカッとした広い空。最高の気分です

ちょっとした風景の美しさ、道端にあるものの面白さを見つけるというのは、散歩の醍醐味のひとつ。目的もなくぶらついても、よく見るとあちこちに面白いところが隠れています。無造作に置いてある道具ひとつとっても、そこに暮らす人やそれにまつわるストーリーが見えてくるよう。終始無人の夏霧町に、人々が暮らしていた気配や体温のようなものを感じるのは、こういう細やかな配慮が行き届いているからなんですね。

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