Interview

安西慎太郎&多和田秀弥らが舞台「野球」飛行機雲のホームランで日本に忘れられた“思いやり”を取り戻す

安西慎太郎&多和田秀弥らが舞台「野球」飛行機雲のホームランで日本に忘れられた“思いやり”を取り戻す

7月27日から東京・サンシャイン劇場、8月25日から大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて、舞台「野球」飛行機雲のホームランが上演される。1944年、戦局が傾き、予科練への入隊を余儀なくされた、甲子園を目指した少年たちの“儚く散った夢”と“熱い友情”のドラマが描かれる。近年、最も忙しいと言われる西田大輔が作・演出にあたり、甲子園開催100周年記念にあたる今年、“青春”に命をかけた少年たちの“野球”への情熱を日本に甦らせる。そんな舞台に出演する、安西慎太郎と多和田秀弥にインタビュー。この舞台にかける意気込み、同い年の仲の良さ、モテ期の話まで、存分に彼らの掛け合いを楽しんでほしい。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 友澤綾乃


“野球”を真面目に楽しくひたむきにプレーする

平成最後の夏、西田大輔さんのオリジナルストーリーで舞台『野球』が上演されます。脚本を読まれた感想を聞かせてください。

安西慎太郎 1944年という時代設定ですが、甲子園を目指す球児たちの“青春”が戦争によって引き裂かれてしまった暗い話にするのではなく、“野球”を全力でプレーすることが作品の肝になっています。なので、僕たちが“野球”を真面目に楽しくひたむきにプレーすることが大切だと感じました。

安西慎太郎

多和田秀弥 戦時中の話で、兵役に取られる子供たちの話ですから、イメージとしては絶望感や悲壮感があるし、暗いと思われる方がいるかもしれません。ですが、(安西)慎太郎から、「西田さんはそこに重点を当ててなくて、子供たちの生き様を美しく描いていると思う」と言われて、僕も初読でそう感じました。要所では、不安な時代の側面も描かれていますが、それ以上に少年たちの野球への熱意が伝わってくる。だから、僕たちの演技で、お客様が、例えば甲子園の球場で応援しているような熱い雰囲気になってくれたらいいですね。慎太郎が演じる穂積のいる会沢商業学校と僕のいる伏ヶ丘商業学校が、野球の紅白戦をするお話ですが、どちらのチームも頑張れと応援したくなるお話です。野球のシーンでは、本物の野球の球を使うので、本当に“野球”を身近に感じられるような仕掛けが満載ですよ。僕自身はどちらかといえば、“野球”に遠い人生でしたが、詳しいことを知らなかった僕でさえ、今では“野球”は楽しいと思っていますから。

多和田秀弥

誰かのために100パーセントのパワーを出せたら

安西さんは会沢商業学校の穂積 均を、多和田さんは伏ヶ丘商業学校の唐澤 静を演じますね、それぞれのキャラクターを教えてください。

安西 会沢商業学校のピッチャーをしています。不思議なポジションのキャラクターで、前に出て騒ぐタイプでも、客観的に引いて見るタイプでもない。なのに、チームメートから大事な話をされたり、みんなに信用されている。それは、彼に優しさがあって、人のために100パーセントのパワーを出せる人だからですね。秀弥の演じる伏ヶ丘商業学校のピッチャーの唐沢 静と幼馴染みで、彼とはどちらかといえば対照的で、穂積は誰よりも思いやりがあって、情熱的というより温かい人で、自分よりも相手のために頑張る人かな。

多和田 そうだと思う。唐澤とはタイプが違って、まさに“静”と“動”だよね。なので、ふたりでいるとバランスがいい。

安西 わかる。それが幼馴染みの良さだよね。

多和田 タイプは違うけれど、お互い心を許し合っている。唐沢は「10年にひとりの天才ピッチャー」と言われ、今でいうプロ野球の選手、“職業野球”の選手になると思われていたのですが、だからといって、プライドが高いわけでもない。それは彼に「予科練へ入隊しなければならない。夢を諦めなくちゃいけない」という“諦念”が心にあるからだと思うんです。そんな彼をすごく気にしてくれる、“きんちゃん”(穂積 均のあだ名)がいて、最終的には、彼やみんなと一緒に野球をプレーすることで、人間の根底にある大事な部分に気づく。そんな人物です。

男子の部活のような稽古場

ここまでの稽古の印象を。

安西 決してそうしようとしたわけではないのですが、ノリは完全に部活ですね。

多和田 たしかに男子感半端ないね(笑)。

安西 男子だけの部活を想像していただけたらわかるのですが、舞台から男同士のほとばしる空気感を感じてもらえますし、難しいのは、実際の“野球”のプレーを舞台上でどのように演技していくのか……演出は西田さんだからあまり心配していないのですが、そこは慎重かつダイナミックにつくっています。西田さんは監督で、僕たちが選手で、稽古場で楽しくやれているし、声も出ている。

多和田 “野球”を経験した、しないにかかわらず、学生の青春時代を思い出します。ボールを使うシーンがあるとお伝えしましたが、最初は捕球や投げることに失敗することがあったんです。なのに、失敗しても笑いに変えられるし、逆に「ゴーゴー!」とみんなで励ましあう。慎太郎が言ったように、野球部が“野球”で心をひとつにして目標に向かって走っているようで楽しいですし、変な緊張感がないから、稽古場にいることがラクですね。

稽古中には、どんなことがありましたか。

安西 2回ほど紅白戦を実際にやったんです。もちろん、会沢商業学校と伏ヶ丘商業学校で。1回戦は会沢が勝ちました。2回戦は、西田さんも入られて、ほぼ9人対9人のゲームになって、罰ゲームではないですが、負けたほうが差し入れを持っていくことにしたよね?

多和田 思いっきり僕らが負けて、伏ヶ丘のメンバーが順番に思い思いの飲み物やお菓子をわんさか差し入れしましたよ(笑)。

(笑)。西田さんの演出はいかがでしょうか。

安西 今作は、西田さんでしかできない作品だと思います。脚本を読んでも演出を見ても、西田さんの閃きや感性がほとばしっていて、ほかの人では絶対にできないことをされるんです。それから、稽古場も「みんなで楽しくやろうぜ」という楽しいノリがあって。

多和田 そうそう。

安西 『武士白虎~もののふ白き虎~』(2015年)や、『Sin of Sleeping Snow』(2016年)でも当てていただきましたが、演出家としても、ひとりの人間としても魅力的な方です。この人の代わりはいないと感じさせてくれる存在感があります。

多和田 僕は初めて演出を当てていただくのですが、友達の共演者からいろんな話も聞いていたし、西田さんの『瞑るおおかみ黒き鴨』(2016年)を拝見させていただいて、とても美しい演出をされていたので繊細な方かなと思っていたら、僕のイメージ像とはまったく違っていたのが印象的でした。僕らの演技をご覧になって、「それ面白くないよ。楽しくやろうよ」とざっくばらんにおっしゃるから、これまでに出会ったことのない“色”を持った演出家だと思います。西田さんがつくり出す作品に染まりたいと思ってしまう人が多いというのもうなずける、そんな人柄にも惹かれました。少年っぽくて、思われたことを僕たちに率直にぶつけてくださいますし、相乗効果で作品がレベルアップしていく様子がわかるから、一緒にいて楽しいです。

誠心誠意、心を込めて役に向かうのが座長の務め

安西さんは座長になりますが、どのように座組みを引っ張っていこうと思いますか。

安西 いろいろな方がいらっしゃいますが、僕は引っ張ろうというタイプではないと思うんです。

多和田 あはは(笑)。そんなイメージある。

安西 座長だからといって、役者をまとめる必要もないと思っています。

多和田 うん。今作はすでにみんなまとまっているし、慎太郎は、引っ張っていこうというよりは、“素”で喋っているときに爆発力があるから、慎太郎がそこにいて、誠心誠意、心を込めて役に向かっているだけで安心感があるからこそ、みんなが慎太郎についていける。

安西 さすが同い年!(笑)引っ張っていこうとしたときに芝居を中途半端にやっていたりすると、ついていきたくないですよね。つまり、行動でしか信用されない。誰よりもがむしゃらに演技して、西田さんにダメ出しをされて、「もう一回!」と野球のノックを何本も受けるように泥だらけになるほうが、「僕もドロドロになってもいいんだ」とほかの役者も思ってくれて、化学反応が生まれると思うので、僕は言葉ではないところで戦いたいと思っています。

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