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【放送は終了したけど…】今からでも観るべきおすすめ&隠れた良作アニメ3選(2018年4~6月編)

【放送は終了したけど…】今からでも観るべきおすすめ&隠れた良作アニメ3選(2018年4~6月編)

『ゴールデンカムイ』『ピアノの森』『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』といった正統派の大作から、『ヒナまつり』『ウマ娘 プリティーダービー』などの個性派、大作シリーズのさまざまな続編など、多彩なラインナップが跋扈した2018年4月クール。その中から、本誌ライターが個人的に大ハマリ! アニメファンのみならず、「テレビアニメって、あんまり観なくなっちゃったんだよなぁ」世代にもオススメしたい良作を紹介します。パッケージやサブスクリプションサービスで今からでもチェックされたし!

文 / 阿部美香


王道ピュアラブにいい意味で裏切られた力作

『多田くんは恋をしない』(全13話)

漫画やラノベなどの原作付きアニメが大多数を占め、見た目を含めたネタとしてのインパクト、スピード感重視の作品が注目を浴びやすい昨今。オリジナルシナリオで、学園青春恋愛ドラマを真っ向から描いた『多田くんは恋をしない』(以下『多田恋』)には、まず拍手を贈りたいと思う。

ストーリーも王道だ。亡き父への想いを胸に秘め、父と同じカメラマンを目指している高校生・多田光良(CV:中村悠一)がある日、桜を撮影していた皇居で、迷子で世間知らずの外国人の少女・テレサ(CV:石見舞菜香)と出会う。テレサは、テレサの世話を焼いている親友のアレク(CV:下地紫野)と共に、ヨーロッパの小国・ラルセンブルクからやってきた留学生だった。多田とクラスメイトになったテレサとアレクは、多田の仲間に誘われて写真部に所属。日本の高校生活を満喫するが……じつはテレサはラルセンブルクの王女で、アレクは侍従。帰国後、テレサは親が決めた貴族の婚約者・シャルル(CV:櫻井孝宏)と結婚し、女王に即位することが決定しているのだ。身分を隠しながら多田たちと交流するテレサは、初めての恋心を多田に抱き、多田もテレサに心惹かれていくのだが……。

お付きの女の子を従えた育ちの良さそうな世間知らずの異国の少女が、普通の高校生と出会って距離を縮めていく……という序盤のくだりで、「ああ、これはつまり『ローマの休日』なんじゃ?」と勘づかされるのが、この物語最大のミソだ。制作陣も明らかにそこを意識させたかったのだろう。『多田恋』のオープニングムービーには『ローマの休日』の名場面――オードリー・ヘプバーン演じるアン王女とグレゴリー・ペック演じる新聞記者ジョーがベスパに乗るシーンを、多田とテレサで再現したカットも登場。芸が細かいことに、その2人を写真に収めようと旧型のカメラを構えて追い掛ける写真部の仲間・伊集院(CV:宮野真守)の姿まで描かれている。(『ローマの休日』では、アンが王女だと気づいたジョーが、スクープ写真を手に入れようとして、仲間のカメラマンに王女の写真を撮らせるのだ!)

ここまでお膳立てされてしまうと、人は誰しも『ローマの休日』のストーリー――ローマを表敬訪問した某国の王女が、窮屈さに耐えられずローマ市内に逃げだし、偶然知り合った新聞記者と1日を過ごして恋に落ちるが、身分の違いを知る2人は恋心を告げないまま、お互いの立場へと帰っていく――そんな悲恋が、『多田恋』でも描かれるに違いないと想像する。事実、そういう展開は訪れるのだが……世の中、捨てたもんじゃないね! というのが、全話を見終わった感想。青春ラブコメディらしい正しい(?)結末に、思わずうるっときましたね。そもそも『多田くんは恋をしない』という逆説的なタイトルと、エンディング主題歌の「ラブソング」(あのサンボマスターのカバー!)にも、いやー、やられた!(と言いたくなる理由は、ぜひ本編でお確かめください)

『多田恋』を面白くしている要素は、他にもある。まずは、劇中にイヤというほど登場する、テレサがこよなく愛する時代劇『れいん坊将軍』。タイトルからも分かるとおり、明らかに『暴れん坊将軍』のパロディーなのだが、この劇中劇が笑わせてくれるのだ。将軍・徳川虹宗が悪を成敗するとき、「虹の色をひとつ言ってみろ!」と問うのだが、相手が何色を答えても将軍は、「虹の色は……虹色だ! 成敗っ!」と言って敵を斬りつけてしまう。この理不尽さ! テレサがことあるごとに口にする、「いつも心は虹色に!」という将軍の決めゼリフもクセになる。『れいん坊将軍』が、ただ面白要素として登場するのではなく、テレサの生い立ちや多田くんとの関係に関わるポイントとして、ちゃんと意味があるから尚更いい。

このアニメには、随所にそういう細かな目が行き届いている。多田とテレサの初恋だけでなく、写真部の先輩・杉本一(CV:梅原裕一郎)と彼の幼なじみの長谷川日向(CV:石上静香)、多田の妹・ゆい(CV:水瀬いのり)と写真部仲間の山下研太郎(CV:下野紘)、多田の親友・伊集院薫(CV:宮野真守)とアレク、アレクとシャルル……と、周囲の人々の片思いの構図にも、じつにヤキモキさせられる。

声優好き女子目線から言うと、人気者を配した男性声優キャスティングの妙もポイント。なかでも、めっぽうお調子者だが友達思いの伊集院を演じる宮野真守のはっちゃけた演技と、いい奴なのか悪い奴なのか最後までミスリードさせていくシャルル役の櫻井孝宏の存在は、この物語に立体的な面白さを付け加えている。だって、過去のいろいろな作品を考えると、櫻井孝宏が恋のライバルだなんて……絶対、悪いことが起きそうな感じがするじゃないですか。そして、同時期にオンエアが始まっていた『シュタインズ・ゲート ゼロ』での岡部倫太郎(CV:宮野真守)の暗くてシリアスな演技の連続に、“鳳凰院凶真”不足を感じている方は、ぜひ『多田恋』で少しでも、ぶっ飛び宮野真守成分を補給いただければと思います(笑)。

あ、書き忘れてましたが、オーイシマサヨシが歌うオープニング主題歌「オトモダチフィルム」も最高にいい曲。メインスタッフの『月刊少女野崎くん』制作チームは、今回もいい仕事をしてくれました。『月刊少女野崎くん』も面白い作品なので、ぜひそちらもご覧いただければ!

『多田くんは恋をしない』オフィシャルサイト

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