Interview

人気コミック映像化へ3年越しの挑戦! 熱い原作リスペクトが“業界初”の本格バドミントン作品を創った─アニメ『はねバド!』制作陣インタビュー

人気コミック映像化へ3年越しの挑戦! 熱い原作リスペクトが“業界初”の本格バドミントン作品を創った─アニメ『はねバド!』制作陣インタビュー

ここ数年、バドミントンでの日本人選手の活躍が目立っている。そんな中、おそらく商業アニメーションとしては初となるバドミントン作品が放送をスタートした。バドミントンに打ち込む女子高校生たちの姿を描く『はねバド!』だ。本作を観た最初の感想は、「スゲーッ」「……コレ、最後まで作画持つのか?」だった。そのくらい本作のバドミントンシーンは激しく美しかった。また、『good!アフタヌーン』(講談社)で連載中の原作漫画と異なる展開をみせるシナリオも興味深い。いったい本作のアニメ化はどのようにして進められたのか? 制作を手がけた東宝、ライデンフィルムのプロデューサー陣に話を聞いた。

取材・文 / 加藤和弘(クリエンタ)
構成 / 柳 雄大


実は3年前から進んでいたアニメ化プロジェクト

本作の企画は、実際のバドミントンで日本人選手が躍進する前からスタートしていたという。東宝でプロデューサーを務める細井駿介氏は、『はねバド!』原作者である濱田浩輔の大ファン。『はねバド!』以前から作品を追いかけていたという彼は、『はねバド!』のキャラクターとその背景にあるドラマに魅力を感じアニメーション企画を提案した。

企画を持ち込んだのは、原作でインターハイ予選が描かれようとしていた時期──すなわち、作品の当初にみられたコミカルな要素から、ライバルたちとの熱い戦い、それぞれが抱えていた過去のトラウマと向き合う姿などが描かれ、熱いスポーツ漫画へと変貌を遂げている時期でもあった。他方、アニメーション制作を担当することとなったライデンフィルムの新家朋人氏は、もともとバドミントンの経験者。それゆえに今回のアニメーション企画にも並々ならぬ熱意があったという。

『はねバド!』のアニメーション企画がスタートした経緯を教えてください。

細井駿介 最初の企画書を確認したところ、日付が2015年でしたので、3年前になりますね。実際はそれより前から作品自体には注目していて、14年の後半頃には漠然とアニメにしたいと思うようになり、15年に最初の企画書が出来上がりました。その当時は別の会社に所属していたのですが、紆余曲折ありまして、今の会社に移ってから本格的に企画が動き出したという感じです。かなり前からの企画で、現在のようにバドミントンで日本人選手が活躍する前から動かしてはいたんです。

私自身、原作者の濱田浩輔さんの漫画が好きで、『パジャマな彼女。』(2012年に『週刊少年ジャンプ』で連載された恋愛漫画)を連載されていた時に、非常に映像的なコマや漫画を描く方だなと強く印象に残っていました。その後講談社さんで連載された『はねバド!』を読んだとき、バリエーション豊富なキャラクターが沢山いて、それぞれにしっかりドラマがあるところが非常に良い作品だなと思い、のちにスポ根ものとして舵を切った際により面白くなったと感じました。これは、映像化すれば今までになかったようなチャレンジングな映像として観せられるんじゃないかなとも思いました。

ライデンフィルムさんとは、以前からお付き合いがありまして、『はねバド!』の企画が動き出したときにお願いしたところ「うってつけの人がいる」と、新家さんを紹介していただいたんです。

新家朋人 学生の頃からずっとバドミントンをやっていたんですよ。それで今回、バドミントンをアニメーションで描くというなら適任、という形で紹介されました。自分自身が経験していましたし、他の制作関係者にも経験者が意外と多くいたので、バドミントン特有のルールや試合など、考証部分に関しては大きな問題なく進められましたね。

細井 ご自分の今の仕事(アニメーション制作)でバドミントンに関われる、恩返しができるかもしれないということでモチベーションが高く、非常に心強かったですね。

新家 自分としては、アニメーション業界に入った時からスポーツ物のアニメーションを作ってみたいとは思っていまして。難しいジャンルではありますが、挑戦しがいのある作品だと思っていました。そのうえで、ライデンフィルムはまだ若い会社で……ありがたいことに初期の頃から元請け作品を作らせていただいてはいるのですが、「ライデンフィルムと言えばこれ」という代表作がまだない会社だとも思っていました。

もちろん、お話をいただいた物は何でも受けてきちんと作るというのもひとつの側面なんですが、一方でウチの会社のイメージを決定付けるような作品もなかったので、今回いいお話をいただけたと思いました。スタッフにも恵まれましたので、ウチの会社としてフラグシップ的な作品にできたらと思って制作しています。

細井 もともとはライデンフィルムさんは、何でもこなせるという印象のスタジオでした。また、新家さんがこれまでに関わられてきた作品(『テラフォーマーズ』、『魔法少女まどか☆マギカ』など)は激しい作品が多く、それを作りきったという点でも高く評価させてもらっていたんです。

『はねバド!』はスポーツ物ということもあり、アクション部分での作画のリソースを多く必要とし、カロリーの高い作品になることは目に見えていましたが、新家さんであればやってくれるであろうという……会社として、というよりは、人に対しての期待を込めてお願いしました。

原作サイドへ提案した“一か八か”のアニメオリジナル路線

アニメ『はねバド!』が始まってみると、原作ファンも驚く大胆なシナリオが待っていた。原作序盤のコミカルな印象に対し、アニメーション版ではかなり重めのシリアスな内容となっていたのだ。なぜそのようなストイックな展開となったのか、それは“描きたい終着点”から逆算して物語を整理した結果なのだという。そうして生まれたオリジナル展開は、原作サイドへの一か八かの提案の末に世に出ることとなった。

アニメーションは、原作序盤のコミカルな雰囲気からは大きく変わり、かなりシリアスな雰囲気でスタートしましたが、脚本はどのように決まったのでしょうか?

細井 もともと企画書を原作さんに提案に行く時点で、現在のようなストーリーの整理をするアプローチで制作できないかと考えていました。まず1クールで描かなければいけないという制限と、原作ですとキャラクターの心情のラインが複雑に絡み合っているという部分があったので……漫画の場合はいつでも振り返って整理して読み直すことができますが、アニメーションの場合、普通は振り返ったりはせずに流れて観ていくものですから、そのまま描いてしまうとキャラクターの心情を追うのが難しく、しっかりと整理をしていく必要があるのではと感じていたんです。

それと、「ここを終着点にしたい」というエピソードから逆算して、そこまでに至る物語を整理した時、原作さんに“『はねバド!』って、こういうことを描きたいのではないですか?”と、話をさせていただいたんです。僕としてはそこを目指して整理して描いていきたいと思っていて……それをお話ししたところ、アニメ化をご快諾いただけました。ただ、すべての展開をオリジナルにするつもりはなくて、アニメシリーズとしてストーリーの終着点に向かって進む中で、キャラクターや物語のテンション感は原作と同じような印象を持っていただけるように気を付けています。

細井 脚本に関しては原作さんサイドにも打ち合わせに参加していただいて、意見などを頂戴しています。今回のように原作と異なる脚本の話をした場合、一か八かの部分もあって、ともすればお怒りになられる場合もあります。数ある原作の中から選んでアニメ化するということは、その時点で読者の方から大きな評価を受けている、しっかり認められている作品だと思いますので、アニメ化にあたって内容を変えるということは、なかなか難しいお話だと思います。

私自身、原作のある作品を企画し制作する時には、その作品は色んな人達の目を通って評価されてアニメになるんだという意識は持っていますし、そういう作品だからこそリスペクトする気持ちを持って臨むべきだと思っています。一方で、アニメというメディアでその作品を最大限に魅力的に見せるためにはどうすれば良いかを考えるのも我々の仕事でもあるので、そういったアプローチも時には必要になることもあるんじゃないかなと思っています。

原作の序盤ではコーチの立花健太郎が物語を進める立ち位置にあったと思うのですが、アニメーションでは荒垣なぎさを中心にして物語が描かれていたように感じました。このあたりはどのような狙いがあったのでしょうか?

細井 1クールで描くと考えた時、なぎさと綾乃が軸になると思っていました。特に序盤はそこを中心に描いていくことになったので、入り口としてはなぎさの問題から進めていきました。シリーズ構成を考える際に、全編なぎさの視点にすると王道のスポ根ものになるかも知れないよねという意見もあったんですが、そうしてしまうと原作が持っているいいところが沢山そぎ落とされてしまい、アニメ化する意味が全く無いと議論しました。

新家 原作を読まれている方は、やっぱり綾乃が持つ闇の部分も期待されていると思うんです。そこを期待して、今後綾乃がどうなっていくんだろうと楽しみにしている方も多いと思うので、しっかり押さえて制作しています。

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