LIVE SHUTTLE  vol. 284

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ASIAN KUNG-FU GENERATION 気持ちの伝わる歌、気持ちの伝わる演奏という核心に満ちたツアー・ステージを振り返る。

ASIAN KUNG-FU GENERATION 気持ちの伝わる歌、気持ちの伝わる演奏という核心に満ちたツアー・ステージを振り返る。

ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour2018「BONES & YAMS」
2018年7月11日 新木場STUDIO COAST

今年3月、2枚目となるベストアルバム『BEST HIT AKG 2 (2012-2018)』をリリースしたASIAN KUNG-FU GENERATIONは、同時に2枚のセレクション・アルバムを出した。『HONE』と『IMO』と題された作品集には、最初のベスト『BEST HIT AKG』が出た2012年時点で、ゴッチこと後藤正文が個人的に選んだ“ベスト曲”が収録されている。

ベストアルバムの収録曲は、一体、誰が選ぶのだろう。リスナーの要望とアーティストの希望が一致すれば問題はない。しかし、アーティストが“ベスト”と思うものと、リスナーが“大好きだ”と思うものは、必ずしも同じではないこともある。なので、リスナー主導の場合は、リクエストをつのって上位曲を集めて“ベスト”にすることがある。反対に、メンバーが中心になって選んだ“ベスト”もある。アーティストによっては誰の意志も反映させないで、シングル曲だけを集めるなど、リリース形態による仕分けを“ベスト”にするケースもある。

アジカンの場合は、1枚目の『BEST HIT AKG』が出たタイミングで、ゴッチが自分のブログで“架空のベスト”『骨』と『芋』の選曲を発表して話題になった。『BEST HIT AKG』からは漏れたものの、ゴッチにとって意義深い曲がピックアップされていて、コアなファンにとっては非常に興味深い内容となっていた。今回は『BEST HIT AKG 2 (2012-2018)』に合わせて、それらを『HONE』と『IMO』として実盤化したわけだ。そしてTour 2018 「BONES & YAMS」は、『HONE』と『IMO』の収録曲を中心にライブ演奏しようというツアーだ。選択肢としては『BEST HIT AKG 2 (2012-2018)』中心のツアーもあり得ただろう。しかし、アジカンはそれを選ばなかった。どうしてもアジカンの骨(BONE)と芋(YAM)を、ライブハウスでオーディエンスと分かち合いたかったのだ。

新木場スタジオコーストを埋めた観客たちは、これから始まるライブのセットリストに興味しんしんだ。前述の理由で、レアな曲が演奏される可能性が高いからだ。いい意味で会場はザワザワしている。

開場時、今年4月にセルフ・プロデュースのソロアルバム『サーカス・ラブ』を発表したニック・ムーンが、オープニングアクトとして登場。ニックはUKのバンド“KYTE”のフロントマンで、ステージの右端に小さなブースを設けて、一人でデスクトップとキーボードを操りながら色彩感豊かなサウンドで楽しませる。去り際に、「今日は暑いね。アジカン、大好き。ありがとう、楽しんでね」と片言の日本語でニックが挨拶すると、オーディエンスから温かい拍手が上がった。

ニックが去って間もなく、アジカンのメンバーがステージに入ってくる。ゴッチ、喜多建介(g & vo)、山田貴洋(b & cho)、伊地知潔(dr)に加えて、サポートのthe chef cooks meのシモリョー(key)の5人が、それぞれの位置に着く。途端にギターのフィードバック音が聴こえてきて、「Right Now」が始まった。まずは『BEST HIT AKG 2 (2012-2018)』からのキラーチューンでオープニングを飾る。 

キラーチューンとはいえ、バンドから繰り出されるサウンドは、華やかというよりは、タフでラフな印象。ボーカルにはほとんどディレイがかかっておらず、サウンド全体もドライで、いわゆる“むき出しの音”だ。しかも力の抜けた演奏なので、かえって凄みがある。これは骨太のライブになりそうだ。続く「エントランス」は『IMO』からのナンバーで、オーディエンスのクラップがパーカッションのように響く。クラップがアジカンの楽器のひとつのように聴こえてきて、この曲がライブで愛されている証拠のように思えたのだった。

「極楽寺ハートブレイク」、「マイクロフォン」と“『IMO』曲”を続けて演奏。ゴッチのボーカルにハモる喜多の声が、アジカン独特のボーカルサウンドを醸し出す。伊地知と山田のリズムセクションは、大らかなグルーヴを生み出していて、“素”のアジカンをガッツリ体感できた。

「集まってくれて、ありがと! ここ(コースト)は人のライブを観に来た思い出が多い。ELLEGARDENもここで復活するって、すごいことだよね。対バンに呼ばれるかなと思ってたけど、ONE OK ROCKだったね(笑)。エルレの不在をワンオクが埋めた感じがするから、ONE OK ROCKと一緒に演るのは素敵だなと思ったよ。おめでとう!・・・でも今日はアジカンのライブだからみんな最後まで楽しんで帰って!」とゴッチのMCも力が抜けている。

アジカンはバンドシーンに多くの仲間を持ち、ファンに自分たちの好きな洋楽を積極的に聴くことを勧めてきた。アジカンは自分たちが音楽ファンのひとりであることを隠さない。この場面でも、オーディエンスに対して、同じ音楽シーンにいる友人としてコメントしている点が素敵だなと思った。

ここからライブは佳境に入っていく。『HONE』からのナンバーを6曲、立て続けに演奏する。「サイレン」、「無限グライダー」、「永遠に」、「ノーネーム」を聴いていると、アジカンの初期にあった“翳り”を思い出す。自分と世界のズレに苛立ち、無力な自分を認めるツラい作業を強いられる日々。その中でロックがどれだけの救いになり、同時に絶望となるか。性急さと繊細さが同居するこれらの楽曲群が、以前とは違ったニュアンスで聴こえてくる。“もうひとりの自分”が、“かつての自分”を見つめるような客観性と優しさがそこにはあった。もちろんそれは、以前とは格段に上達した技術に裏打ちされてはいるが、技術だけではない人間性の進化がそれを可能にしていた。特にゴッチは、かつての自分が作った楽曲を全面的に信頼して、演奏を楽しんでいた。彼の思う“アジカンの骨”がしっかりと伝わってきて、素晴らしいシークエンスとなった。

「今、たくさんのフェスがあるけど、『リライト』を聴いたら帰っちゃう人がいたりする(笑)。そういう時は、ガッツリいい演奏をして、“見るしかない”って、思わせるしかない。音楽はいつだってリスナーのモノだと思う」とゴッチ。『HONE』や『IMO』からのナンバーを重視した今回のツアーは、選曲の基準を事前にファンに告知しているので、「えーっ、『リライト』をやらないの?」と文句を言うオーディエンスはいない。今も昔も自分は“いちリスナー”であることを自覚しているゴッチは、リスナー本位の原則を守りながら、アーティストの“主張”とファンの“理想”の関係を模索し続ける。

「架空生物のブルース」と、続く最新曲の「生者のマーチ」が、この日のハイライトだった。『HONE』からの「架空生物のブルース」は、2010年の作品でありながらビッグスケールの叙事詩として、見事にアップデートされていた。対して今年発表された「生者のマーチ」は、非常に内省的な抒情詩で、再生への希求が描かれている。この2つを、東日本大震災前と震災後の歌と、単純に決めつけてはいけない。だが、この時系列には非常に深い意味がある。

「架空生物のブルース」が収録されているアルバム『マジックディスク』は、バンドにとって金字塔と言える傑作だった。傑作であることは、今も変わっていない。が、2011年に起こった未曾有の災害は、ソングライターであるゴッチに重大な影響を及ぼした。ゴッチは音楽と世界についての認識を、新たにしなくては前進できないと感じていた。その後のゴッチに起こった変化は、音楽的到達点である『マジックディスク』を作ってしまったのが理由ではない。まったく別の観点から、ゴッチは変革を求めた。2011年の末に発表した「マーチングバンド」で、アジカンは変革の第一歩を踏み出したのだった。そうして今年、発表した「生者のマーチ」で、“アジカンの変革”は新たな土台を築くことができた。

ライブで続けて演奏されたこの2曲には、そうしたストーリーを含んでいた。その2曲を、アジカンは丁寧に、かつ優しく演奏したのだった。

「夜を越えて」からは『BEST HIT AKG 2 (2012-2018)』を中心に、終盤の盛り上がりに突入。明るく伸びやかな「ローリングストーン」、シンフォニックなアンサンブルの「Re:Re:」を経て、本編は「新しい世界」で終わった。ゴッチは笑顔でピックを客席へ投げて去った。

アンコールではニックが登場して、アジカンと一緒になんとレディオヘッドの「High & Dry」をカバーする。ハンドマイクで歌うニックの声が、とても気持ちがいい。まるで別のバンドのライブに来ているような、不思議な気分を味わった。

「ニック・ムーンに大きな拍手を! 今回、ニックと一緒にツアーして、キヨシがカンバセ―ションを頑張ってくれた(笑)。何語だって、音楽は音楽。サウンドを聴けば言葉が分からなくても気持ちが伝わってくる」とゴッチ。制作中のアルバムがもしかしたら2枚組になるかもとインフォメーションすると、会場から期待の歓声が起こった。

ゴッチがギターでポロポロ弾き出し、そこに喜多のギターが絡んで始まったのは「マーチングバンド」だった。山田と伊地知の一切ムダのないリズムが潔い。絶望の中での再生を誓ったこの曲は、“骨と芋”ツアーのアンコールに実にふさわしい。

続く「今を生きて」の♪このフィーリングをずっと忘れないでいて♪というフレーズを、オーディエンスたちは身体をゆらゆら揺らしながらバンドと一緒に歌う。最後の「転がる岩、君に朝が降る」では、ゴッチがシンガーとして素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。気持ちの伝わる歌、気持ちの伝わる演奏、それが今回のツアーの核心だった。

文 / 平山雄一 撮影 / Tetsuya Yamakawa

ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2018「BONES & YAMS」
2018年7月11日 新木場STUDIO COAST

セットリスト

1. Right Now
2. エントランス
3. 荒野を歩け
4. 白に染めろ
5. 極楽寺ハートブレイク
6. マイクロフォン
7. サイレン
8. 無限グライダー
9. 永遠に
10. ノーネーム
11. 未だ見ぬ明日に
12. 架空生物のブルース
13. 生者のマーチ
14. 夜を越えて
15. サイエンスフィクション
16. ローリングストーン
17. Re:Re:
18. スタンダード
19. ワールドワールドワールド
20. 新しい世界
En1. High & Dry
En2. マーチングバンド
En3. 今を生きて
En4. 転がる岩、君に朝が降る

ライブ情報

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8月5日(日) 国営ひたち海浜公園

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2018 in EZO
8月10日(金)  北海道 石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ

Sky Jamboree 2018 ~one pray in nagasaki~
8月19日(日) 長崎市 稲佐山公園野外ステージ

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9月15日(土)  エディオンアリーナ大阪(大阪府立体育会館)

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9月22日(土)  福井フェニックスプラザ

京都⾳楽博覧会2018 IN 梅⼩路公園
9月23日(日)  京都 梅小路公園芝生広場

PIA MUSIC COMPLEX 2018
9月29日(土) 新木場・若洲公園

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9月30日(日)  六本木ヒルズ

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10月7日(日) 山梨県 山中湖交流プラザ きらら

その他の詳細はオフィシャルサイトにて。

オフィシャルサイト
http://www.asiankung-fu.com

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