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「僕たちの全力プレーを観て欲しい」──安西慎太郎主演、多和田秀弥、永瀬匡ら出演舞台『野球』開幕。ある夏、たった一日に青春を懸けた男たちの物語

「僕たちの全力プレーを観て欲しい」──安西慎太郎主演、多和田秀弥、永瀬匡ら出演舞台『野球』開幕。ある夏、たった一日に青春を懸けた男たちの物語

7月27日(金)、池袋・サンシャイン劇場にて舞台『野球』飛行機雲のホームラン~Homerun of Contrailの東京公演が開幕した。本作は、演出家・西田大輔によるオリジナルストーリー。
1944年夏──。戦局が暗い影をもたらすなか、甲子園のグラウンドに立つという夢がついえた少年たちが、野球への情熱を胸に試合に挑む“忘れられない一日”を描いた青春物語。
ゲネプロ前に行われた舞台挨拶には、主演の安西慎太郎、共演の多和田秀弥、永瀬 匡、小野塚勇人、松本 岳、白又 敦、小西成弥、伊崎龍次郎、松井勇歩、永田聖一朗、林田航平、村田洋二郎、田中良子、内藤大希(友情出演・Wキャスト)、藤木 孝、作・演出の西田大輔が登壇。出演に向けての抱負、本作の見どころ、作品に込めた想いを語った。

取材・文・撮影 / 近藤明子

「この作品が多くの方に届きますように……」

安西慎太郎(穂積 均 役) 作品の時代背景などいろいろありますが、お客様、舞台上にいる僕たち、そして舞台袖といったすべての空間で表現しています。僕たちの全力プレーを観て欲しいなという想いです。それだけです!

多和田秀弥(唐澤 静 役) この時代背景、そしてこの限られた時の中で、少年たちが大好きだった野球に対して打ち込む姿、熱意、輝きを、この舞台を通してお客様と一緒に体感できるように頑張っていきたいと思います。作・演出の西田さんがおっしゃっていたのですけども、本当に新しい演劇が出来ているのではないかなという実感が自分にもあります。あとはフルパワーで、全力で初日からやっていきたいと思います。

永瀬 匡(岡 光司 役) いよいよ初日が始まります。毎日毎日「この日が最後だ」と……そういうストーリーなので。一球一球、一日一日、一公演一公演、全力で生きたいと思います。

小野塚勇人(菱沼 力 役) ついに初日の幕が上がります。どういう反応があるのかすごく楽しみです。細かい技術などはいっさい捨て置いて、僕たちの熱量、たった一日に青春を懸けた男たちのストーリーを存分に感じていただければ嬉しく思います。

松本 岳(田村俊輔 役) 素晴らしい舞台です! 以上です!

白又 敦(早崎 歩 役) 僕はこの公演のために頭を丸めてきました。そのぐらい気合が入っています。ぜひ楽しんでください!

小西成弥(浜岡喜千男 役) 一公演一公演、一試合一試合にすべてをかけて、すべてを出し切って、お客様にいい作品を届けられるように頑張りたいと思います。

伊崎龍次郎(佐々木 新 役) 稽古初日に西田さんが「全員野球でいく!」とおっしゃっていて、まさしくスタッフさんも含めそうなったと思います。ぜひ僕たちの全員野球を楽しんでください。

松井勇歩(常上秋之 役) 一分一秒が、かけがえのない作品になっていると思います。皆様の心と記憶にずっと残るような作品を届けたいと思います。

永田聖一朗(大竹明治 役) 僕が演じる役は伏ヶ丘商業学校のキャプテンなので、みんなをまとめていけるように一公演一公演頑張っていきます!

林田航平(菊地勘三 海軍少尉 役) 今回は野球を知らない教師役なんですけど、誰よりもプレーを楽しんで、ナインの素晴らしい子たちを温かく見守っていけたらいいなと思っています。

村田洋二郎(穂積大輔 海軍中尉 役) この作品は、かっこいい衣裳やかっこいいウイッグなどはありません。生身の人間が演じます。そしてド派手な殺陣や歌もありません。やることは野球だけです。それだけで人の心を打つような作品になっていると思います!

田中良子(唐澤ユメ 役) 稽古場で、こんなに泣いたことないなというくらい、彼らの野球を観ていて涙が流れました。その想いが皆様にも伝わるといいなと思います。

内藤大希(友情出演・島田治人 役Wキャスト) 本日より5公演、島田治人役を務めさせていただきます。僕はWキャストなので、皆様より早く客席で1幕を観させていただいたのですが、本当にメチャメチャ面白かったです!

藤木孝(遠山貞明 海軍中佐 役) この作品は西田さんの大傑作だと思います。そして劇場でしか味わえない、演劇でしか実現できない演出も見どころだと思います。頑張って演じます。どうぞよろしくお願いします。

作・演出:西田大輔 “反戦”という言葉をメッセージにするのではなく、そうではない伝え方で僕らなりのメッセージを伝えられたらなと思い、ここまで頑張ってきました。普段、自分は演出している作品に対して冷静であることを心がけているのですが、それさえも忘れるぐらいの俳優の熱と制作陣の熱意が嘘のないお芝居をつくってくれたと思っています。舞台上で一球落としたら芝居が終わってしまうような緊張感と覚悟を持って、たった一日の野球の試合に臨みます。演劇でしかできないことを俳優の皆さんとスタッフとで作り上げてきました。どうぞこの作品が多くの方に届きますように……。

続いて始球式が行われ、安西慎太郎が速球をキャッチャーミットのど真ん中に決めると、キャストから大きな拍手と声援が起こり、安西も思わずガッツポーズ! こうして舞台挨拶は終了した。

本物の野球をしているリアルな感覚

ゲネプロは、審判の「試合開始!」の声を合図に、約2時間半に及ぶ“野球”の試合がスタートした。

甲子園出場を夢見る“会沢商業学校”“伏ヶ丘商業学校”の球児たちを、キャストひとりひとりが表情豊かに生き生きと演じ、試合が進むにつれてユニフォームが泥にまみれ、額には汗が光り始める。

それは日常ごく普通に見られる野球の試合風景のはずだった。唯一、違和感を感じるとしたら、“ストライク”が「よし」、“ボール”が「だめ」など、敵性語である英語が試合中に使用されていないことぐらいか……。

面白いのは、ピッチャーマウンドとバッターボックスは一定の場所に固定されているのではなく、様々なシーンを印象的に切り取っているような演出になっていたこと。

舞台の上手と下手にマウンドとバッターボックスがあったと思うと、次の瞬間には客席にピッチャーが背を向けていたり、時にはピッチャーもバッターも客席の方向を向いてプレイしているなど、まるで舞台上でカメラがスイッチングしている画面を見ているかのように様々な角度で試合中の彼らの表情を楽しめるのが斬新だ。

また本作は、元プロ野球選手で野球解説・評論・指導者の桑田真澄が監修を担当。キャストに直接指導し技術を伝えただけあり、投球フォームはもちろんバットのスイングスピード、守備やスライディングのフォームなど各自の動きも細部まで球児そのものだった。

一回裏、二回表、三回裏……ゲームが進むなかで登場人物たちの背景や、抱える悩み・想いが吐露され、くじけそうな気持ちを“野球”と“仲間”たちがギリギリで支えているのを知り、思わず胸が熱くなる。

やがて戦局は彼らの未来・夢をも巻き込み、穂積中尉(村田洋二郎)によって全国中等学校野球大会の中止が告げられる。落胆する球児たちにさらに追い打ちをかけるように彼らの元に赤紙(※召集令状の俗称)が届けられる──。

どんなときにも笑顔で明るくチームを引っ張る前向きな穂積(安西慎太郎)と、無口だが野球に捧げる熱意は誰にも負けないピッチャー唐澤(多和田秀弥)。幼馴染みとしてのふたりの関係性や、ライバルとして一歩も譲らぬ姿勢で対峙しながらも互いを思いやる気持ちを安西と多和田が丁寧に演じる姿に好感が持てる。

そして、若者たちを見守るベテラン俳優陣の熱演からも目が離せない。軍人然とした威厳を漂わせる海軍中佐・遠山(藤木 孝)が、野球の試合を見守るなかで見せる優しいまなざし。

また、穂積海軍中尉を演じる村田洋二郎が声を荒げ、少年たちに厳しく接する姿には、観ているこちらも思わず身震いするほどの迫力に満ちていた。

その一方で、教師でもある菊池少尉(林田航平)が、野球を知らないながらも球児たちの良き兄貴として彼らを支え、守ろうとする様子は胸に迫るものがあり、唯一の女性キャスト田中良子演じる元新聞記者・唐澤ユメの野球に懸ける想いと、球児たちのために奔走し、涙する姿に観客も共感。2幕では「スンスン」と鼻をすする音が会場内の至るところで起こっていた。

印象的なシーンで流れるテーマソング「蝉時雨」が、残された時間の終わりを告げるようで、なんともせつない気持ちになる。

終戦から73年の夏、第100回全国高校野球のさなかに上演されているこの舞台。ただひたすら、白球を追いかけ汗する彼らの姿に、平和の尊さ、夢を追いかけることができる自由の喜びを改めて感じることができるだろう。

舞台『野球』東京公演は、8月5日まで池袋・サンシャイン劇場にて上演。8月25日・26日には梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて大阪公演が上演される。アフタートーク登壇者など、詳細は公式サイトをチェックして欲しい。

舞台『野球』飛行機雲のホームラン

東京公演:2018年7月27日(金)~8月5日(日)サンシャイン劇場
大阪公演:2018年8月25日(土)~8月26日(日)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

STORY
1944年夏──戦局が暗い影をもたらす中、少年の甲子園のグラウンドに立つという夢はかき消され、予科練への入隊を決意する。少年たちはぶつかり合いながらも、未来を語りあい、いつしか、ひとつのチームになっていった。甲子園は叶わなくても、野球への情熱は捨てられず、その想いは“忘れられない一日”へ繋がっていく。

作・演出:西田大輔
野球監修:桑田真澄
音楽:笹川美和(cutting edge)
テーマソング:笹川美和「蝉時雨」(cutting edge)
挿入歌:笹川美和「サンクチュアリ」(cutting edge)

出演:
穂積 均 役:安西慎太郎
唐澤 静 役:多和田秀弥
岡 光司 役:永瀬 匡
菱沼 力 役:小野塚勇人
田村俊輔 役:松本 岳
早崎 歩 役:白又 敦
浜岡喜千男 役:小西成弥
佐々木 新 役:伊崎龍次郎
堂上秋之 役:松井勇歩
大竹明治 役:永田聖一朗
島田治人 役:内藤大希、松田 凌
菊池勘三 役:林田航平
穂積大輔 役:村田洋二郎
遠山貞明 役:藤木 孝
唐澤ユメ 役:田中良子

オフィシャルサイト
公式Twitter(@Contrail_St)

関連楽曲:笹川美和