Interview

ミツメ 結成9年目にしてネクスト・ステップを踏み出したニューシングル「セダン」。海外ツアーでも注目される彼らの現在地

ミツメ 結成9年目にしてネクスト・ステップを踏み出したニューシングル「セダン」。海外ツアーでも注目される彼らの現在地

2009年からマイペースに活動を続け、着実に熱心なリスナーを獲得してきたミツメが、ニューシングル「セダン」をリリースした。昨年末に発表したシングル「エスパー」でまばゆいポップの息吹を感じさせた彼らが、「セダン」で描いたのはセンチメンタルでやるせない夏の情景。新作でもミツメらしいクールな音像と詩情溢れる歌を届けてくれた。また、カップリングには初のタイアップ曲「ふやけた友達」(テレビ東京系「フォーカード」7月クール・エンディングテーマ)、ボーナストラックにはスタジオライブ音源4曲を収録し、新境地を披露。近年は海外でも積極的にライブ活動を展開し、今年は上海公演や全国ツアーを敢行。結成9年目にしてネクスト・ステップを踏み出した彼らの現在地を探る。

取材・文 / 佐野郷子 撮影 / 板橋純一

僕らの音楽を広く知ってもらえるきっかけになればいいと思ってつくったシングル。

「セダン」は、前作シングル「エスパー」に続いてポップな仕上がりになりましたね。これは最初からシングルを意識してつくったんですか?

川辺素 そうですね。「エスパー」の前にシングル2枚をリリースする計画はあったんです。それまでは4曲でひとつの作品として完結するようなカタチでリリースしてきて、それはそれで気に入ってたんですが、次はA面とカップリングというカタチが面白いんじゃないかなと。だったら、シングルらしい曲を気合いを入れてつくってみようと。

それはA面、B面がある7インチっぽい発想から?

川辺 ああ。特にそういう発想はなかったんですけど、結果的にはそうなりましたね。

シングルといえば7インチではなく、CDシングル世代ですよね?

川辺 そうですね。短冊世代(笑)。

nakayaan 僕らが子どもの頃は短冊全盛でしたね。

川辺 僕もPUFFYとか買っていました。マキシ・シングルっていうアルバムサイズのCDがあるんだと後で知るみたいな。

「セダン」は夏にこれといった目的もなく海に向かうクルマの中で聴きたいような曲ですね。

川辺 夏のリリースですが、なるべく暑苦しくならないようなミツメらしいひんやり感は意識したかもしれない。

nakayaan 「うつろ」(2013年)のMVでは海辺で踊ったりしたし、どこか夏っぽいのかな。

歌詞にある〈君の格好悪い車〉が「セダン」というのも絶妙ですね。

川辺 確かにセダンがクルマの車種だって通用するのも微妙なタイミングかも。

nakayaan 最近はクルマに乗るヒトが減っているし。

須田洋次郎 僕らもメンバー全員クルマ持ってないし(笑)。

ポップでメロディアスでありながら、エモーショナルな熱さを内包している。個人的にはプリファブ・スプラウトあたりを彷彿としました。

川辺 ああ。ラジオのパーソナリティの方にも言われました。僕らはプリファブを聴いていたような90年代のバンドを聴いてきた世代なので直接の影響はないんですけどね。

「エスパー」はバンド史上最もポップで耳にのこる楽曲でしたが、ここで舵を切ったのは?

川辺 僕たちの中で、シングル的な曲の発想というのがそもそもなくて、どういうのがシングルと見なされるんだろうと色々考えて曲をつくったんです。そしたら今までのファンも、しばらく離れていた人にも好反応があってうれしかったですね。

結成が2009年。2011年に1stアルバム『ミツメ』をリリースしてから、リリースの度にバンドがじょじょに変化していきましたね。

川辺 来年で結成10年になるので、年齢的には中堅というか(笑)。毎回、今までやっていないことをやってみようと様々なチャレンジをしてきたんですが、『ささやき』(2014年)から、スペースシャワーミュージックと制作を一緒にやるようになって、アイデアを頂く機会が増えたのは大きいですね。今回のシングルも僕らの音楽を広く知ってもらえるきっかけになればいいと、納得しながら進められました。

制作もアレンジも全部自分たちで試行錯誤を重ねながら我流でやってきた。

皆さんが出会った大学のサークルでは、どんな音楽を好んでいたんですか?

川辺 僕らの大学時代はピッチフォーク全盛期で、アーケイド・ファイアとかが出て来て、ビーチ・ポップやチル・ウェイブと呼ばれる音楽を夢中になって聴いていましたね。

須田 サークルには部員が100人くらいいたので、J-POPも含めて色んな音楽が好きな人がいたんですけど、音楽の趣味が合う同士が集まるようになるじゃないですか。僕らは洋楽中心で、日本のバンドだとフィッシュマンズとか。

大学生が好きそうなバンドですね。

川辺 そうですね。アメリカの大学生が好きそうな音楽は一通り聴いてきたと思います。その頃はサークル内とかを見てた感じだと相対性理論とかサカナクションが大学生には人気があったのかな。

須田 僕らはペイブメントやビートルズなどのコピーをやったりしながら、じょじょにオリジナルをつくるようになっていったんです。

そういうUSインディ・ポップなどの影響は初期に顕著でしたね。いわゆるJ-POP/ROCKの流れとは違う。

川辺 アレンジャーやプロデューサーのような外部の人を入れずに、そういう人たちと出会う機会もなく、制作もアレンジも全部自分たちで試行錯誤を重ねながら我流でやってきたからこうなったのかなとも思います。それがミツメらしさになったのかなと。

nakayaan(B)、川辺素(Vo/Gt )

気がついたらいい感じの場所に着いていたように淡々と自然に進んでいきたい。

カップリングの「ふやけた友達」は、初のタイアップ曲になりましたね。

川辺 『フォーカード』という人形劇のエンディングテーマの話を頂いて、脚本とイメージ写真を見て書いた歌詞なんです。あるテーマに対して曲をつくるのは初めてだったし、作品のムードを捕まえられるかなというプレッシャーはありましたけど、それも僕らには新しい経験でしたね。

シングルらしい曲というテーマはこの2作でクリアーできましたか?

川辺 Aメロ、Bメロ、サビという従来のポップの構成とは違うところが自分たちの音楽の個性なのかなと思っていたので、シングルではそれを取り入れつつ、ミツメらしさをどう出せるかはけっこうみんなで考えましたね。

ここで盛り上がるというポイントを絶妙に外してくるのはミツメらしい。

川辺 普通にAメロ、Bメロ、サビでアクセル全開だとジェットコースターみたいじゃないですか? いつの間にか電車に乗ってて、気がついたらいい感じの場所に着いていた、みたいな曲の展開にしたくて。僕らは淡々と自然に進んでいきたいんです。

淡々としているから聴き手も引き込まれるというのはありますね。

川辺 ただ、自分たちらしさを考えすぎて、自意識過剰になりすぎないようにしないと。好きなものを好きにつくりたい。それがいちばん大事なので。

今回のCDにはボーナストラックとして新録スタジオライブ音源も収録されますが、その意図は?

川辺 2014年に「Blue Hawaii Session」としてYouTubeで全曲公開したことがあって、それが自分たちでその後のライブの指針になったので、時期をみて再びやってみたいと思っていたんですよ。

須田 スタジオライブも「セダン」や「ふやけた友達」をレコーディングした同じ環境で録っているんですよ。

それでシングルから違和感なく聴き続けられるんですね。

須田 よかった。そこがいちばん気になっていたところで。

「煙突」から、前シングル「エスパー」まで収録されているので、今のミツメを知るための入門編としてもいいですね。

川辺 そうですね。特に「煙突」はもう7年前の曲だし。

須田 ライブで一発録音の方が7年前よりずっと上手いという(笑)、成長を聴いてもらえたら。

川辺 7月にこの前のライブ(2018年4月25日/マイナビBLITZ赤坂)をCD(『mitsume archives 02』)にして、ライブ会場と通販などで販売しているんですよ。

nakayaan いつでもどこでも映像が観られる時代だからこそ、CDでじっくり聴いてほしいというのはありますね。

川辺 と言いつつ、今回のシングルには映像視聴用コードも付いています。スタジオライブの4曲は、今までのアレンジをがらっと変えた曲や新曲など今、収録するのに意味がある曲を選曲しました。

大竹雅生(Gt,Syn)、須田洋次郎(Dr)

宅録的な発想から始まって、ライブならではの表現の面白さに気がついていった。

元々ライブが好きなタイプのバンドだったんですか?

川辺 元は宅録的な発想から始まっている部分が大きいバンドではあったんで、ライブハウスで叩き上げというスタートではなかったんです。僕らの世代くらいから先に音源をつくって、その後ライブを始めるバンドが増えてきたんじゃないかな。

宅録の音源をSoundCloudに上げたり?

川辺 僕らのときはまだMyspaceでしたね。バンドがたくさんありすぎて、先ずは音源を発表して興味を持ってもらわないと、ライブにお客さんも来てくれないし。

ライブに意識的になったのは?

川辺 最初はつくった音源を再現したいというところからでしたが、ライブを重ねるうちに再現するだけではなく、ライブならではの表現の面白さに気がついて今に至る感じですね。

最近はそれぞれがDJでも活動されていますが、音楽性に影響はありますか?

須田 普段聴く曲とDJでかける曲は必ずしも同じではないんですが、DJをすることで発見することはありますね。ライブのときの曲の流れとかBPM、曲と曲のつなぎ方とかに影響はあると思います。

バンドにフィードバックしていくこともある?

須田 あると思います。音楽に詳しい周りのミュージシャンの友達から教えてもらうことも多いですね。この前、韓国のフェスで一緒だったチャン・ギハと顔たちのメンバーの長谷川陽平さんもDJで日本の70〜80年代の音楽をかけていて面白かったし、その時々で新鮮な音楽を楽しんでいきたいですね。

東京インディから海外へ。スピッツ主宰の「新木場サンセット2018」に出演。

昨年はアメリカ、去年は中国でツアーし、今年は国内10都市と、タイ、上海をまわるツアー「mitsume tour esper 2018」を開催。ライブが多い日々でしたが、その影響はありますか?

川辺 ようやく自分たちでも納得できるライブができるようになってきたというのはありますね。去年、中国で7カ所ライブをやったのはけっこう大きかったかもしれない。

須田 移動は飛行機と列車だったんですけど、中国の新幹線で8時間とか、かなりハードで。3日連続ライブして1日移動してまたライブとか。

川辺 今までそういう経験をしたことがなかったので、ライブとがっちり向き合うことができて、バンドがまとまった感はあった。

nakayaan 僕らが行った中国のライブ会場は音響的にも整っていたし、ステージとフロアの作りも洗練されている新しい建物もあって、なんていうか勢いを感じましたね。

オーディエンスの反応はどうでしたか?

川辺 まっさらな視点で観てくれるのが新鮮でしたね。中国では好き好きに楽しんでくれる感じがよかったですね。

須田 アメリカはテキサスのサウス・バイ・サウスウエストと、ニューヨークとLAくらいなので、アメリカもまたチャレンジしたいですね。

nakayaan 6月に韓国の軍事境界線の近くで開催されたフェス(DMZ Peace Train Music Festival)も楽しかったし、海外も含めてライブはもっとやっていきたいですね。

8月にはスピッツが主宰する「新木場サンセット2018」への出演もありますね。

川辺 スピッツは好きで子供の頃から聴いていました。

須田 世代ですからね。それこそ家に短冊CDやアルバムがありました。

川辺 僕のお母さんがスピッツのファンクラブに入っていて、ファンクラブの会報に「崎山(龍男)さんと(草野)マサムネさんがミツメのアルバムを紹介しているよ」と教えてくれたんです。「新木場サンセット2018」が決まったときは母親が感激してくれて、これで親孝行できるなと(笑)。一昨年、スカートが出たときに観に行ったんですけど、新しいお客さんにミツメを知ってもらう機会にしたいですね。

初期から現在まで、アートワークやミュージックビデオも含めトータルで作品の世界観を作り上げていますが、今後もその活動方針は変わらずに?

nakayaan そうですね。自主制作の1stからずっとジャケットの写真を手がけている友人のトヤマタクロウくんも含め僕らと一緒に動いてくれるチームでやってきたので、それがミツメの統一感にはなっているし、納得できるカタチでリリースできてきたと思います。それは続けていきたいですね。

川辺 次は何をしようと目の前のことを考えながら9年経った感じですね。これまでは東京インディと呼ばれて同じ棚に並べてもらったりしてきましたが、これからは色んなところに混ぜてもらいつつ、芯は貫いていければと思っています。

その他のミツメの作品はこちらへ

ライブ情報

8月30日(木) 新木場サンセット2018 東京・新木場STUDIO COAST
9月17日(月) ザ・なつやすみバンド〜10th anniversary tour〜『映像』懇親会 大阪編 大阪・梅田Shangri-La
9月29日(土) シャムキャッツpresents Tour “ALSO” 2018 札幌・SOUND CRUE
9月30日(日) シャムキャッツpresents Tour “ALSO” 2018 福岡・The Voodoo Lounge

tour sedan 2018
10月20日(土) 愛知県・名古屋CLUB QUATTRO
10月21日(日) 大阪・梅田CLUB QUATTRO
10月24日(水) 東京・恵比寿LIQUIDROOM

ミツメ

2009年、東京にて結成。川辺素(Vo/Gt )、大竹雅生(Gt,Syn)、nakayaan(B)、須田洋次郎(Dr)の4人組。2011年に1stアルバム『ミツメ』を発表。以降、『eye』(2012年)、『ささやき』、(2014年)、『A Long Day』(2016年)を発表。オーソドックスなバンド編成ながら、各々が担当のパートにとらわれずに自由な楽曲を発表し続けている。国内のほか、インドネシア、中国、台湾、韓国、アメリカなど海外ツアーを行い、活動の場を拡げている。

オフィシャルサイト
http://mitsume.me/

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