LIVE SHUTTLE  vol. 285

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SPYAIR 夏の恒例のイベントで増えた、またひとつの伝説。2年連続、豪雨の中のステージを振り返る

SPYAIR 夏の恒例のイベントで増えた、またひとつの伝説。2年連続、豪雨の中のステージを振り返る

SPYAIR「JUST LIKE THIS 2018」
2018年7月28日 富士急ハイランド・コニファーフォレスト

1週間前の快晴&猛暑という天気予報はどこへやら、南の海でフッと生まれた台風があっという間に北上し、異常なルートを通って富士急ハイランド・コニファーフォーレストに向かってきている。やや西に針路を変えたとはいえ、コニファー周辺を暴風雨圏がかすめるのは確実なようだ。昨年はライブが始まってから豪雨となり、ライブが終わると止んだのだが、今年は開演前から強い雨が降っている。それでもSPYAIRの夏の恒例イベント“JUST LIKE THIS 2018”に集結したオーディエンスは、しっかりとレインウェアを着こんで開演を待っている。その姿は頼もしくさえあった。

開演直前のバックステージでは、状況が状況なだけにスタッフがあわただしく駆け回っている。楽器担当のローディが、ギターが濡れないようにタオルでしっかりくるんで、次々とステージに運び込んでいる。

と、ステージに繋がる通路で、偶然、SPYAIRのメンバーに出くわした。IKE(vo)、MOMIKEN(b)、KENTA(dr)の3人は笑顔で武者震いをしている。UZ(g&rap)はと言えば、屋根のない道を歩いてこちらにやって来るところだ。おそらく雨の降り具合を、身をもって確かめているのだろう。彼らを待つファンが、今、どんな状況なのかを思ってのことなのかもしれない。うっすら濡れたUZの表情は、これから始まるライブに向けてピリッと引き締まっている。さあ、間もなく開演の時間がやってくる。富士急ハイランドで開催される“JUST LIKE THIS”は今年で4回目。また伝説がひとつ、増えそうな予感がする。

降りしきる雨の中、会場は15000人のオーディエンスで埋め尽くされている。巨大なメインステージから、左右と中央にランウェイが客席内に向かって伸びている。

突然、轟音が響く。ステージの上に、和太鼓と三味線、尺八、鉦という和楽器バンドが現われ、この日の最初の音を出す。確かに和楽器のサウンドなのだが、リズムがロックしている。その中をSPYAIRの4人と、サポートの2人がステージに入ってきた。和楽器バンドのビートにSPYAIRが合流して、ワイルドなアンサンブルで始まったのは、今回の“JUST LIKE THIS 2018”のテーマソング「We’ll Never Die」。いきなり“和ビート”をフィーチャーした、意外性に富んだオープニングとなった。

「ようこそ、SPYAIRのライブへ!」とIKEが叫んで、「サムライハート(Some Like It Hot!!)」へ。3曲目の「イマジネーション」では、IKEとUZとMOMIKENがトロッコに乗って会場を巡り、至近距離でのコミュニケーションを図る。ずぶ濡れになりながらのこの全力のパフォーマンスに、悪天候で緊張していたオーディエンスたちは一気に熱を帯び、すぐさま一体感が生まれたのだった。

「改めまして、SPYAIRです。よく来てくれたね」とIKEが挨拶すると、豪雨に耐えて開演を待っていたオーディエンスが歓びを爆発させて、大声でリアクションする。ライブは上々のスタートを切った。

メロディアスな「Goldship」に続くファンキーな「Are You Champion? Yeah!! I’m Champion!!」では、女性12名のSPYAIRダンサーズが登場して盛り上げる。名曲「Naked」ではIKEに寄り添うようにハモるUZのコーラスが、美しく響く。悪条件の中で、この繊細なハーモニーを何事もないように実現してしまうバンドの実力は、明らかに去年より上がっている。

レアだったのは、IKEが「今までライブでやったことがないヤツを披露したいと思います」と言って歌った「The Way of My Life」だった。今回のセットリストを組む中で、オーディエンスに特別感を味わってもらいながら、自分たちもチャレンジできる曲を選ぼうというバンドの意志が伝わってくるタイトな演奏だった。

続く「Rockin’ the World」のエンディングでは、UZとMOMIKENが2小節ずつ交代でソロをぶつけ合う超スリリングなセッションが展開され、会場はますますエキサイトしていく。♪急なRainに 傘も持たず♪と歌い始める「雨上がりに咲く花」は、会場にピッタリのフレーズでユーモアを感じさせる。次の「虹」も雨にちなむリリックで、♪叫んだって届かぬ世界で ありがとう。って 言える人を探してた♪とIKEは心を込めて歌う。終わって、IKEが「ありがとう!」と叫んだのは、偶然ではなく、歌の核心が乗り移った心からの言葉だった。

メインステージに4人が揃うと、IKEが「イヤモニ(イヤーモニター)替えてくる」と言って、一度、中座する。雨で機材がダウンしてしまい、自分の声がよく聴こえない状態で「虹」を歌っていたのかと思うと、IKEの気合いはハンパない。残ったメンバーが話を繋ぐ。

まずMOMIKENが「お前ら最高だな!」とシャウト。UZは「みんなで限界まで行きましょう」とにこやかに語りかける。するとKENTAは「ドラムを叩く時、いつも履いてるこのシューズの中がグシャグシャ。くるぶしくらいまで水が溜まってます。UZもMOMIKENも大丈夫なの? 俺、今日はシューズ脱いで、初めてハダシで叩くかもしれない(笑)」と宣言。戻ってきたIKEは「去年に引き続いて、今年もとてもいい天気になりましたね!(笑)」と笑わせた後、「お前らが一緒に乗り越えようとしてくれて嬉しい」と真剣にお礼の言葉を述べたのだった。

ここからライブは中盤に入る。中央のランウェイに作られたテント張りのステージに移動して、アコースティック・セットでの演奏となる。本当は夕暮れの下での演奏になるはずだったが、この雨では生楽器が壊れてしまうから仕方なくテントでのセットとなった。メンバーは本当はオーディエンスと同じ雨を浴びて演奏したいのだろう。笑いを交えながらのMCに、ファンへの気遣いがにじむ。ここで4人で“SPYAIRのアコースティックカバーユニット”「キャンプファイヤー」として「Stay Together」を、IKEとUZの2人で「Beautiful」を歌う。どちらもアコセットらしい、リリカルな演奏となった。

続くIKEとUZの“対決”を映像化した爆笑コーナーで、そんなしっとりした雰囲気が一瞬で吹き飛ぶ。ロマンとジョークをぶつけ合わせる、極端なメリハリが面白い。昨年は“ファッションVS筋肉”で争ったUZとIKEが、今年は“海外カブレVS釣りバカ”で対決する。KENTAはUZに、MOMIKENはIKEに肩入れして笑いを巻き起こした後、「Hold It Buster!! ~Battle of Rap~」でIKEとUZがリアルなラップバトルに突入。本当に息をもつかせないエンターテインメントだ。

さらには和楽器バンドが再び現われて、今度はSPYAIRの4人も和太鼓の前に立つ。雨を弾き飛ばしながら、4人はパワフルなパフォーマンスでオーディエンスに元気を与える。そんな力強い和太鼓サウンドをイントロにして、「STRONG」へ雪崩れ込む。

オープニングで和楽器とSPYAIRが意外にも相性が合うことを発見したが、「STRONG」ではさらにその魅力が増していた。それだけに、UZのストレートなボーカルがより真っ直ぐに耳に突き刺さる。♪ドシャブリの今日も 信じるんだmyself  同じチャンスは2度とない♪というリリックが、ハマり過ぎるほどハマっていた。

ライブはそのまま、終盤を迎える。「OVERLOAD」、「現状ディストラクション」など、得意のヘヴィなロックナンバーを立て続けに。フロントのUZ、IKE、MOMIKENは、ランウェイを力の限り走りまわって、豪雨を2時間耐えてきたオーディエンスを鼓舞する。ドラムセットにいるKENTAも、他の3人に負けず、ありったけのパワーをグルーヴに変えて会場に送り続ける。僕の目の前の女性オーディエンスが、ハダシになって拳を上げ、SPYAIRと一緒に歌っていた。壮絶、かつ美しい光景だった。

♪クズじゃなく 星屑のように♪と歌う「RAGE OF DUST」では、大きな炎がステージ上で燃えさかる。分厚い雨雲の上では、きっと星が輝いていることだろう。最後の歌の前に、IKEが叫ぶ。「めちゃくちゃだけど、このライブができて本当に嬉しい。みんなの思いを抱えてステージに立てていることは、プレッシャーだけど、最高に幸せです!」。本編ラストチューンはニューシングルの「I Wanna Be…」だった。

ライブ開始から約2時間が経とうとしている。ずっと雨に打たれてきた機材も、メンバーも、オーディエンスもギリギリの状態だ。会場のあちこちに、水たまりができている。この後、どうするのかと思っていると、IKEがこんな提案をしたのだった。

「今日は下がらねえ。このまま歌ってもいいですか?」。

オーディエンスは一瞬、何が起こったのかわからないようだった。だが、IKEの言葉が、これからすぐにアンコールに入るという意味だったことがわかると、賛同の歓声が上がる。

「ここまで続けてきて、本当によかった。みんなの声を聴かせてください」とIKE。大歓声の中で、アンコール1曲目の「JUST LIKE THIS」が始まる。信頼する仲間と、そんな仲間と一緒にいられる場所に対する思いを歌ったこの曲は、イベント“JUST LIKE THIS”全体のテーマソングでもある。SPYAIRとオーディエンスは、この会場で風雨にさらされながら、絆を確かめあった。この日の朝、決行が発表されたため、遠方からのファンで来られない人もいた。そんな状況について、「JUST LIKE THIS」を歌い切ったIKEが話し出す。

「来れなかったヤツらに伝えてくれ。お前らが来ようとしてくれたことはわかってる。また来年、一緒に楽しもう! 毎年、ここでお前らと遊ぶのが目標だから、また来年絶対に来てくれよ! 最後の曲をやります。歌ってくれよ」

この日の最後の曲は「SINGING」。SPYAIRには、たくさんの名曲がある。それもシンガロングできる名曲が多い。中でも飛び切りのシンガロング・ナンバー「SINGING」で、メンバーとオーディエンスは心ゆくまで交歓を楽しむ。メンバーはオーディエンスに励まされ、オーディエンスはメンバーに勇気をもらう。メンバーはオーディエンスに感謝の気持ちを表わし、オーディエンスはメンバーにお礼の気持ちを届ける。風が強くなって、PAスピーカーから出る音が右に左に流されるが、会場中が歌えば大丈夫。

終って、花火が打ち上げられると、ライブをやりきった後の爽快な歓声が会場にコダマした。メンバーはオーディエンスに拍手を贈りながら、ステージを降りた。

極限を乗り越えた余韻の残る会場のスクリーンで、なんとSPYAIRが9月からワールドツアーに出ることが発表される。興奮の歓声が、また会場から上る。さらにこのワールドツアーのファイナルが東名阪の3会場で行なわれるという文字が浮かび上がると、最後の歓声が巻き起こった。本当にタフなライブだった。SPYAIRとオーディエンス、そしてスタッフは、それを見事にやり遂げたのだった。

文 / 平山雄一
撮影 / 鳥居洋介、三浦知也、中島未来

SPYAIR「JUST LIKE THIS 2018」
2018年7月28日 富士急ハイランドコニファーフォレスト

セットリスト

1.We’ll Never Die
2.サムライハート(Some Like It Hot!!)
3.イマジネーション
4.Goldship
5.Are You Champion? Yeah!! I’m Champion!!
6.Naked
7.The Way of My Life
8.Rockin’ the World
9.雨上がりに咲く花
10.虹
11.Stay Together(Acoustic Ver.)
12.Beautiful(Acoustic Ver.)
13.Hold It Buster!! ~Battle of Rap~
14.ファイアスターター
15.STRONG
16.4 LIFE
17.OVERLOAD
18.Crazy
19.現状ディストラクション
20.RAGE OF DUST
21.I Wanna Be…

<アンコール>
22.JUST LIKE THIS
23.SINGING

ライブ情報

SPYAIR WORLD TOUR 決定!!

アメリカをはじめヨーロッパ、アジアと世界を駆け巡る!!
アメリカとヨーロッパはSPYAIRの盟友ROOKiEZ is PUNK’Dをゲストに迎えてのSPLIT TOUR!
*詳細はオフィシャルサイトで

SPYAIR

IKE(Vocal)/ UZ(Guitar & Progrumming)/ MOMIKEN(Bass)/ KENTA(Drums)の4人から成る愛知県出身4人組ロックバンド。2005年結成。バンド名の由来は、どこかで見かけた「SPYWARE」(コンピューターウイルス)という言葉の響きに惹かれ、検索して一発で出てくるように少し変えて「SPYAIR」となった。
これまでに22枚のシングル、5枚のオリジナルアルバムを発表。東京ドームをバンドの目標に掲げ、ネクストステージに邁進中のSPYAIR。2016年末から2017年にかけて開催したSPYAIR史上最大規模のアリーナツアー『真冬の大サーカス』は5万人を動員。2017年10月には2年ぶりとなる5thアルバム『KINGDOM』をリリース。この作品を携えて、2018年1月より2年ぶりとなる全国ホールツアー『SPYAIR TOUR 2018 –KINGDOM–』を開催(全国21都市23公演)。今夏で富士急ハイランド・コニファーフォレストで4度目の開催となった単独野外ライブ『JUST LIKE THIS 2018』は、豪雨の中前年をはるかに超える圧巻のパフォーマンスで15,000人のオーディエンスを魅了した。
海外ではアジア・南北米オセアニア・ヨーロッパ地域でのリリースはもちろんこれまでに韓国、中国、台湾、パリ、フィリピンでの単独公演を開催。
そして遂に9月23日よりアメリカをはじめヨーロッパ、アジアを廻る『SPYAIR WORLD TOUR 2018』が決定!日本だけでなく世界での活躍にも期待が高まる。

オフィシャルサイト
http://www.spyair.net

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