Interview

今村ねずみ&本田礼生がTHE CONVOY SHOW の真髄を語る。再演を迎える「星屑バンプ」の裏話も!

今村ねずみ&本田礼生がTHE CONVOY SHOW の真髄を語る。再演を迎える「星屑バンプ」の裏話も!

世界の北野武に「死ぬまでに一度は見るべきだ」と言わしめた男たち、THE CONVOY SHOW(ザ・コンボイ・ショウ)。彼らが昨年上演した「星屑バンプ」が、9月7日より博品館劇場にて、早くも再演される。とある遊園地のヒーローショーの物語を下敷きに、歌あり、ダンスあり、タップあり、笑いあり、涙ありの、これこそ、ザッツ・エンターテインメントショー=“THE CONVOY SHOW”が繰り広げられる。
長きにわたり本物のエンターテインメントを追求し続ける主宰者であり、本作の作・演出を手がける今村ねずみと、『asiapan』(2016年)から招集され、昨年の初演にも出演している20代メンバーの本田礼生にインタビュー。再演にかける意気込みから、オーディションの裏話、新しく加わったメンバーについて多くを語ってもらった。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 冨田望


初演の達成感はあるけど、もっとレベルアップしたい欲が出てくる

昨年9月に初演された「星屑バンプ」が、早くも再演されます。今作を再演したいと駆り立てたきっかけはなんだったんでしょう。

今村ねずみ 初演は、東京の博品館劇場で上演しただけですし、ずっとこの作品を地方へ持って行きたいという野望がありました。去年の時点から、初演で終わらせる気持ちはなかったんですよ。僕らのパフォーマンスは劇場でしかお客様に観てもらえないし、地方公演をするのは“THE CONVOY SHOW”を広める意味で大切ですからね。

今村ねずみ

昨今、冠は同じですが、中身が異なるバージョン違いの作品が多いように感じます。同じ演目を再演されるのはとてもチャレンジングだし、同時に、再演する意義を考えさせられますね。

今村 再演というのは、まず、初演では満足できなくなるからで(笑)。

本田礼生 はい(笑)。悔しかったです。

今村 もちろん、初演の達成感はあるけど、本番が終わったのに新たな発見があって、違った試みにトライしたくなる。再演だからベースは変わらないけれど、もっとレベルアップしたい欲が出てくる。再演は初演を体に一回落とし込んだものですが、もう一回、新しくやり直せば、感じたことのない深みが芝居に出てくるので、これは再演ならではの魅力ですね。

本田 僕は『asiapan』(2016年)の初演・再演に出演していますが、再演のときに“再演”という意識はありませんでした。“THE CONVOY SHOW”の稽古に臨むスタンスが「今このときに出せるものを出す」という感じなので。今作も同様の思いです。また新たな芝居をするように、舞台上で生きて、本番を踏んで、より深みを追求していきたいと思っています。そして、今回の再演でこの「星屑バンプ」を東京だけではなく、札幌や福岡、新潟などたくさんの土地で上演してその土地の方々に観てもらえるのがとても嬉しいです。

今村 地方で公演したいと思っても呼んでくださらないと上演できませんから、地方で公演を打てるのは幸せなことですね。“THE CONVOY SHOW”を続けてきて、ずっと付き合ってきたイベンターさんたちや待ってくれているお客様のお力添えがあるからこそですね。

本田礼生

初演の脚本は、実際に香港に滞在されて書かれたそうですね。

今村 2週間前にも香港に行っていました。違う作品のきっかけ探しに行ったのですが、新しい作業に没頭することはできませんでしたね。「星屑バンプ」を書き上げた同じホテルに泊まって、「そういえば『星屑バンプ』はここで書いたな」と思い出すような滞在になりました。実は今作を書いていた当時、外は土砂降りの雨で観光もできないし、やることもなくて、まさに作家がホテルで缶詰状態になるように、書くことしかなかったんです。今思えば、書くシチュエーションに向き合い続けたから出来た作品だと思います。

香港に行かれて、デパートの屋上にある遊園地のヒーローショーの設定の着想を得られたんですか。

今村 日本にいるときから、その着想はベースとしてありましたね。スターになりたいけどなれずにくすぶっている若い戦隊ヒーローたちと、役者を目指してはいるけれど、ぬいぐるみを着ているおっさんたちが、たまたま巡り合ったらどうなるだろうという設定だけは頭に持って、香港で具体的にストーリーを書き進めていきました。

あの極限状態を経験すると、何も怖くなくなる

初演のときにご苦労されたことはありますか。

本田 去年の「星屑バンプ」の稽古は、真夏に稽古場の窓を閉め切って、エアコンも切って、踊って歌って芝居をして。鏡が人いきれで曇るなかで、Tシャツを何枚も替えるぐらいの汗をかき、本当にヘトヘトでした。あの極限状態を経験すると、何も怖くなくなるんです(笑)。その後、博品館で1ヵ月もの長い公演をしましたが、不思議と楽しんで乗り越えられました。

今村 ハハハ(笑)。一応、クーラーは入れたよ、時々だけど。

本田 (笑)。人間、極限状態に追い込まれると、芝居が良くなることに気づきました。 “THE CONVOY SHOW”は小細工がまったく通じない。いろいろなものを削ぎ落として、自然体の感覚でダンスをして歌を歌う必要があるから、体をすっからかんの状態にすることは、その感覚をつかむうえで大切な稽古でした。

今作では若手組に、加藤良輔さんが新たに加わりますね。

本田 以前から面識はあったのですが、共演したのは“方南ぐみ『伊賀の花嫁 その二』”(2018年)です。 “THE CONVOY SHOW”に入ると、自分の新しい部分が見えてくるので、今まで見てきた良輔さんの違う一面を稽古場で見られると思うと純粋に楽しみです。

今村さんは、実際にオーディションで加藤さんをご覧になっていかがでしたか。

今村 本当はもっとできる子だなと感じたんです。どこか“シャイなあんちくしょう”でいるから、“シャイ”な部分をとっぱらったら素晴らしい役者になるという可能性を感じました。だからこれからの稽古では“シャイなこんちくしょう”にしてやろうと思っています(笑)。オーディションでは、歌も踊りもできるのは魅力的なのですが、その子と稽古期間を一緒に過ごして本番を乗り越えて、「またな」という関係性にならないと面白くない。本番が終わったから「じゃあね」というより、「お前とやって良かった」と健闘を讃え合えるような子を探していますね。僕らのオーディションの時間は長くて、かっこつけてる余裕がなくなっても、さらにどんどん追い詰めていく。ハアハア息を切らせて踊っているのを見ると、その子がどういう稽古をしてきたのか、その子そのもの、人間が見えてくるんです。でも、歌や踊りや芝居ができる以上に、「こいつとだったら一緒にやれる」という直感を大切にはしています。

礼生はいい意味でドライ。硬派で男っぽい

本田さんは、“THE CONVOY SHOW”の若手組の中ではどんな立ち位置ですか? リーダー的存在のような気がしますが。

本田 いやいや、そんなことないです。

今村 よっ、稽古場番長!(笑)2.5次元舞台の(本田)礼生も観たけれど、しっかりしているし、役づくりにこだわっているタイプで、お芝居好きな印象があります。“THE CONVOY SHOW”の稽古場での取り組み方は、硬派で男っぽいよね。

本田 ありがとうございます。

若手のチームをどのように引っ張っていきますか。

本田 引っ張っていくという気持ちはないです。そもそもねずみさんがいらっしゃるので……。

今村 礼生はいい意味でドライだから。「俺もやるから、お前もやれよ」という、ギブ・アンド・テイクがはっきりしていて、あやふやなことを嫌うタイプですね。

本田 そうですね。“THE CONVOY SHOW”はみんなが同じ方向を自然と向くし、自分が良くなかったらすべてをダメにしてしまうので、演出のねずみさんを信じながら、自分のパフォーマンスをどれだけ心から信じられるかが大切だと思います。

役を演じていると、自分の性格が憑依してくる

今回の稽古はどのようになりそうですか。

今村 初演よりも明確に“稽古”を意識していきたいですね。初演の稽古をなぞるだけではなく、身体に一回入っているぶん、明確な答えを出していきたいです。かといって、「初演はこうだったから、こういう答えにしよう」という意識はない。初演があるからこそ、あえてぶつけたい疑問やトライしたいものがありつつ、いいものはいい、正すところは正そうと思っています。初演は、僕の頭の中にしかないイメージを伝えて、肉体と心を動かしていたから、どうしてもあやふやになるところがあったかもしれないので、再演はそうならない稽古にしたいですね。

本田 僕は、いつもどおりです。全力で、小細工を使わない!

今村 若手は、役が変わるかもしれないですよ。初演は当て書きで書いていたので、良輔が入って、荒田至法が演じていた役が似合っているかといったら、当然ズレるところも出てくるので、脚本を書き直すところはあると思います。

それは楽しみですね。

今村 それが“THE CONVOY SHOW”の柔軟性なんです。いろいろな設定があって、やっていくうちに台詞も彼らの性格に近づくけれど、作・演出をしている僕も彼らに近づいていく。“THE CONVOY SHOW”は役を演じていると、そこに自分の性格が憑依してくるところがありますね。

たしかに、“THE CONVOY SHOW”を観劇すると、いつも今村さんの当て書きが絶妙な味わいを出している気がします。

今村 彼らそのものを描くのではなくて、こうだったら面白いなというフィクションも入っています。例えば、礼生の素材を生かしつつ、僕のイマジネーションをぶつけて、そのへんの道を歩いている人、出会った人を掛け合わせたりもします。『asiapan』では、実際にアジア旅行で出会った人のイメージと、礼生の性格を混ぜながら役柄を膨らませたところがあります。本田礼生がこんな台詞を言ったらゾクっとするなとか、いろいろな化学反応を試していますね。ただ基本的に、その人に興味がないと当て書きはできないですし、逆に相手も人に興味を持たれるタイプでないといけない。僕はこう思っているのに相手が何にも反応してくれないという一方通行のやりとりだと寂しくなります。つくり手は、お互いの接点でどんなことが起こるのか想像するのが楽しいですから。

本田 たしかに、なんとなく僕の性格をはずしてはいないのですが、僕そのものではないんです。ねずみさんが、僕の中から役を引っ張り出してくれる。こういうふうにねずみさんから見られているのかと思うと新鮮ですし、改めて自分自身を俯瞰で見ることができるのですが、100パーセント僕自身ではないからこそ、役づくりできるスペースもあって楽しいです。

あくまで役のひとつなんですね。

本田 はい。自分の内面を引っ張ってはいるけれど、今作であれば「星屑バンプ」の役のひとりです。

具体的に引っ張られたところはありますか。

本田 まっすぐでがむしゃらにもがいているところですね。僕は小細工をするタイプで(笑)。“THE CONVOY SHOW”の稽古を通して正面からぶつかって揉まれていく役づくりを教えていただきました。

今村さんは、それは意図されていましたか。

今村 小手先で芝居をして欲しくないという意識はあります。今作はおじさん組から見れば、60歳になっても夢をみようというお芝居です。ですから、たまたま出会った60代と20代の若者がコンビを組んでひとつのコンテストに出るというシチュエーションは現実的でないかもしれないし、青くさいと思われるかもしれません。だからこそ、僕らは全力でぶつかって、適当な芝居でごまかすのではなくて、おちんちんに毛が生えているようなリアルさを見せたい(笑)。舞台で繰り広げられる会話は、必ずしも日常生活で飛び交っているわけではありません。だから、舞台の上で正々堂々と「俺たちは星屑でいい。夢は諦めない」と宣言しなければいけない。舞台はなんでもありなので、失敗を恐れずトライできる場所ですが、役者はそこにリアリティを感じてもらうにはどうするのかを考えるのも大切な作業です。僕らが「星屑バンプ」を2時間ほど演じる。その戦いで弱音を吐いて欲しくないし、舞台でいくら綺麗にメイクをしても、小手先で芝居をしたら10分でつまらないものになってしまう。

本田 そうなんですよね。

今村 ですので、役者は漠然とした感覚的なところも大事にしつつ、具体的に演じていく必要があります。演出家としては「どうしてそんなふうに動いたの?」と聞いたときに「いつ、どこで、何を、どうやって」、いわゆる5W1Hを答えられなかったら、そこを正すのが役割ですね。初めて若手と一緒に演じた『asiapan』のときの稽古では「この星のどこの国か指を差してみろ」と聞いても、若手は明確なビジョンを持っていなくて戸惑っていましたから。

本田 はい。そうでした。

今村 だから僕らの稽古は、脚本をベースに具体的な共通項を増やしていくことを大切にします。「星屑バンプ」であれば、舞台が「デパートの屋上」で「真夏の炎天下」とイメージを具体的にしながら、おっさんと若者が仲を深めていくのは「なぜか?」「それはいつか?」「どんなふうに?」……そうやって様々な問いを稽古で繰り返して、リアリティに繋げていきます。

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