Interview

アニメ映画『ペンギン・ハイウェイ』主演:北香那&蒼井優が語った意欲作の正体─かわいい見た目に(いい意味で)ダマされる…!?

アニメ映画『ペンギン・ハイウェイ』主演:北香那&蒼井優が語った意欲作の正体─かわいい見た目に(いい意味で)ダマされる…!?

カナダのファンタジア国際映画祭では、最優秀アニメーション賞にあたる今敏賞(長編部門)を受賞! 住宅地に突如現れたペンギンと、憧れの「お姉さん」を研究している小学4年生の「アオヤマ君」の成長を描く、劇場アニメ『ペンギン・ハイウェイ』が2018年8月17日(金)より公開となる。ベストセラー作家・森見登美彦の同名人気小説の瑞々しいタッチを、リアリズムとファンタジーが融合した躍動感あふれるアニメーションへと昇華したのは、気鋭のアニメ制作スタジオ「スタジオコロリド」と、『フミコの告白』(2009年)などの斬新なクリエイティブで国内外から注目を集める石田祐康監督だ。

そんな『ペンギン・ハイウェイ』は、主人公のアオヤマ君とお姉さんの声を、北香那と蒼井優、2人の女優が演じていることも話題を呼んでいる。アニメ声優初挑戦の北香那と、数々の作品で声の演技を披露してきた演技派女優・蒼井優に、『ペンギン・ハイウェイ』での演技と見どころ、子ども時代の思い出話など、たっぷりと語ってもらった。

取材・構成 / 柳 雄大 文 / 阿部美香


「これはどういう物語なのか?」とディスカッションするのが楽しい作品に

『ペンギン・ハイウェイ』は、タイトルから受ける印象ではペンギンを巡るほのぼのしたお話かと思いきや、壮大なSFファンタジーへの変貌が見どころとなる一本です。様々な要素が詰め込まれた作品ですが、おふたりが初めて物語に触れたとき、どういう印象を持たれましたか?

北香那 私は原作から読ませていただいたんですが、最初はペンギンとお姉さんと少年のかわいい話かと思っていたら……すごく深くて切ないお話で驚きました。読み進めていくうちに、生きることそのものを考えさせられたといっても過言じゃないなって。そして小学生の頃、年上の憧れの人に感じたドキドキ感があって、昔を思い出しましたね。

蒼井優 私はアニメの台本が最初だったんですけど、はじめは、全体像を捉えきれなかったんです(笑)。夏公開のアニメということもあって、誰もが笑って泣けて……という王道のストーリーを想像していたんですけど、この作品はそこまで単純なお話ではなくて。もし私が子どもなら「ペンギンかわいい!」と楽しめますし、大人になってしまった人たちには、今までの人生を温かく浮き上がらせてくれる感覚がある。大人の夏休みにぴったりの、いい映画だと思いました。しかも、ひとりで観るより、何人かで観に行くほうがいい。「あれってどういうこと?」って、絶対に言いたくなるから(笑)。

 ああ! そうですよね!

蒼井 私自身、アフレコの現場で石田(祐康)監督やスタッフさんと、これはどういう物語なのかということをディスカッションするのが、とても楽しかったんです。いろんな捉え方があるし、どう捉えても間違いじゃない。なので、5年後ぐらいに観ると、また違う感覚になれると思うんですね。映画本編も冒頭から、自分の体験にはないはずの原風景が広がってくる感じが、とても面白かったです。

“男性の理想が全部詰まった”キャラクターになった「お姉さん」

本作で北さんは「アオヤマ君」、蒼井さんはアオヤマ君が憧れるミステリアスな「お姉さん」を演じられましたが、それぞれのキャラクターで核になるものは何だと思いましたか?

 アオヤマ君は、自分でも賢いと言ってしまうくらい、とても頭が良い少年なんです。そんな彼が時々見せる子どもらしさ、「子どもがそんな言葉使う?」という大人びた言い回しのかわいらしさに、すごく惹かれました。なので、ただ堅苦しく喋るんじゃなくて、語尾に子どもらしさを加えた、抜ける感じの喋り方を意識しましたね。「~なんだよ」という話し方も、最後の「よ」をハッキリ言うんじゃなく、ちょっとふわっとさせることで、子どもらしい感じやかわいさを出そうと思いながら演じました。

小学4年生の少年、という部分でこだわったことは?

 声のトーンには気をつけました。小学4年生の男の子の声のトーンはよく分からなかったんですけど……私には小4の妹がいるので、「これは大チャンスだ!」と思い、授業参観に参加したんです。そこで、男の子たちと話をしたりして、ちょっと参考にしたりした感じではあります(笑)。勉強しました。

それはいい経験になりましたね。蒼井さんは、お姉さんを演じる上でどこを意識しましたか?

蒼井 とにかく、アオヤマ君に対して愛情を持ち続けることですね。ただ、それが一辺倒にならないようには気をつけました。お姉さんは、アオヤマ君に「やあ、少年」と話しかける台詞がすごく多いんですが、それにちょっとずつ差をつけられたらいいなと思いながら。でも普段は、“お姉さん”なキャラクターを演じることがあまりないので、難しかったですね(笑)。

今まで観てこられた映画やドラマに登場する女性をモデルにしたりは?

蒼井 それはなかったですね。このお姉さんは、やさしくて、美人で、スタイルが良くて、サバサバした感じもある、男性の理想が全部詰まった役じゃないですか?(笑) そういう完璧なキャラクターは、実写作品にはあまり出てこないんですよ。なので、とにかく実際に演って、録った声を聞かせていただいて、監督と音響監督さんにベースとなるトーンを決めていただいてから、収録をスタートしました。

そんなアフレコ現場でのエピソードを聞かせていただけますか? 蒼井さんは、これまでも多数の作品で声優経験を積まれていますが、北さんへにアドバイスをされたりは?

 2人の掛け合いシーンを収録したのは1日だけだったんですが、私は蒼井さんにお会いするのが初めてなので、スタジオで蒼井さんの横にいるだけで緊張して、ドキドキしてしまって。でも、そんな私に蒼井さんが休憩中、『ペンギン・ハイウェイ』と関係ない話をしてくださって、すごくリラックスできたんです。とてもありがたかったですし、楽しかったです。

蒼井 そう、住むにはどの街がいいかという話を(笑)。先輩として、何もアドバイスできてないんですけど(苦笑)。

 そんなことないです! すごく心が落ち着きました。完成したアニメをスクリーンで観たときも、蒼井さんが演じられたお姉さんの少し低めな感じの声が絶妙で。その声とアオヤマ君の淡々とした声のバランスがすごくステキで、嬉しかったです。ふたりの声が合わさったことで、すごく感動しました。

蒼井 私のほうこそですよ。北さんは本当にお上手だから……本編でアオヤマ君が泣いてると、「泣かないで」と思いながら、すっかり感情移入して観てしまいました。

女優として、声優としての芝居の違い

おふたりとも女優として活躍されていますが、今回、北さんは声優初挑戦、蒼井さんはこれまでたくさんの作品で声優を経験されています。声だけで演じることを、今、どう感じていらっしゃいますか?

 私とはそもそも声の出し方も違いますし、声優さんはすごいなと思いました。そう思っていろいろなアニメを観ると、声ばかり気になるんですよね。機会があったらもう一度挑戦したいですし、今回は男の子役でしたけど、女の子とか小さい子の役もやってみたいです。普段、出せない声を出す楽しさは、声優さんでしか味わえないと思うんです。普通のお芝居でも、声のトーンがちょっと違うとお芝居も変わる。声優を経験させていただいて、ますます勉強になりました。

蒼井 私は、オファーをいただくたびに、「自分でいいのかな?」と毎回思うんですけど……とても楽しい。だからこそ、ベストを尽くして頑張りたいと思っています。今回の『ペンギン・ハイウェイ』という作品もそうですが、アニメは皆さんの労力の積み重ねのほぼほぼ最後に近い段階で、私たちが作品の一部にさせてもらう。だから、よりきちんと寄り添える自分でいたいと感じています。また、声のお仕事は、自分のビジュアルが作品を邪魔しないという喜びがあるんです。もし『ペンギン・ハイウェイ』が実写作品だったら、お姉さんの役は私には来ないと思うんですね(笑)。声優のお仕事は、実写では挑戦できないことに飛び込めるし、知らない場所に連れて行ってもらえる。そこがとても魅力ですね。

女優としての芝居と、声優の芝居は、かなり違うものですか?

蒼井 声のお仕事をさせていただいて、違いを知ることができた気がします。実写のお芝居は、曖昧なことが良かったり、余白をどう使うか? みたいなことがある気がするんです。自分の体もそうですが、いろいろなパーツを演技に使うことができるし、無駄なこともプラスしていけるんです。でも、アニメーションに対しては、自分が使える武器は声だけ。明確に感情をキャッチして、それを音に乗せなければいけないと分かりました。ただし、それをどうやって実現するかは、もっともっと勉強しなきゃいけなくて。それができるようになったら、プロの声優さんたちが見ている世界に、ちょっとだけ近づけるのかな? という気がしています。

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