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【レビュー】これはまさに〈理想のプリキュア〉と言わざるを得ない!─15周年イヤー作品『HUGっと!プリキュア』が絶賛される深い理由

【レビュー】これはまさに〈理想のプリキュア〉と言わざるを得ない!─15周年イヤー作品『HUGっと!プリキュア』が絶賛される深い理由

2018年で15周年を迎えた「プリキュア」シリーズの最新作『HUGっと!プリキュア(以下、はぐプリ)』が、すごいことになっている。1作目『ふたりはプリキュア』から一貫して〈戦う女の子たちの物語〉を描き、子どもたちの憧れの存在として夢と希望を与え続けてきた「プリキュア」シリーズ。その〈伝統〉をしっかりと引き継ぎつつ、過去のシリーズでは見られなかった〈革新〉にも挑戦する『はぐプリ』は、間違いなくアニバーサリー・イヤーにふさわしい〈理想のプリキュア〉作品だ。

本稿では、折り返し地点を迎えますます盛り上がる『はぐプリ』のすごさについて、TVシリーズを余すところなく見続けてきた生粋のプリキュア好きである筆者が独断混じりで語り尽くしてみたい。これをきっかけに、ぜひ一人でも多くの人に『はぐプリ』への興味を持ってもらえれば幸いだ。

文 / 北野 創 構成 / 柳 雄大


子どもも大人も分け隔てなく楽しめる「プリキュア」の作品性

本題に入る前に、まずはプリキュアの基本事項について説明しよう。2004年2月に放送を開始した「プリキュア」シリーズは、東映アニメーション制作によるオリジナルのアニメ作品。主人公となるのは基本的に中学生の女の子で、彼女たちが妖精の力を借りてプリキュアと呼ばれる存在に変身し、世界を危機に陥れる悪の組織と戦うというのがストーリーの根幹となる。

ここでポイントとなるのが、主人公は必ずごく普通の女の子であるということ。何か特別な才能を持っていたり、特殊な環境に身を置いているのではなく、一般の家庭で暮らす普通の女の子だからこそ、視聴者の女児には身近な存在に感じられ、憧れの対象となり得るのだ。

東映アニメーション(東映動画)制作の〈変身ヒロインアニメ〉と言えば『美少女戦士セーラームーン』シリーズ(1992年~1997年)が思い浮かぶが、同じキャラクターたちを5年間描き続けた同シリーズとは異なり、「プリキュア」シリーズでは1年ごとに作品の主人公や世界観を一新(一部例外もあるが、いまのところ3年以上連続したTVシリーズは存在しない)。毎年リニューアルされるからこそ、幼年代の子どもや新規のユーザーが新しく作品に入りやすいし、シリーズごとの特色やその違いを楽しむこともできる。そういった新陳代謝を繰り返すことで、15年間も続く人気コンテンツになったのだと思う。

そして、プリキュアは見るものに、戦うことのカッコよさ、諦めないことの美しさ、信じることの素晴らしさを教えてくれる。プリキュアが立ち向かう相手は常に強大な存在。それはときに街を破壊して暴れる巨大な怪物だったり、人の心の弱さにつけ込む狡猾な者だったりする。だが、彼女たちはどんなピンチや逆境にも(例え途中で心が折れそうになることがあっても最終的には)めげることなく、仲間や守るべき人々の力を信じ、全身全霊で挑むことによって、希望ある結果を掴み取るのだ。

それはいわゆる少年マンガのメソッド〈友情・努力・勝利〉に近いものではあるが、ただ単純に勧善懲悪なストーリーで終わらせるのではなく、そこに「悪とは何か?」といった道徳的なテーマを盛り込んで、子どもにも理解できるようにわかりやすく描写するのがポイント。子どもも大人も関係なく楽しむことができる明快かつピュアな作品性は、プリキュアの最大の魅力と言えるかもしれない。

〈子育て〉というテーマ性を前面に掲げた最新作『HUGっと!プリキュア』

そういった〈プリキュアらしさ〉をしっかりと継承しつつ、積極的に新しい要素を取り入れているのが今回の『はぐプリ』。ここからはその特色と魅力について、過去の「プリキュア」シリーズとの比較を挿みながら紹介していきたい。

野乃はな

『はぐプリ』の主人公は、中学2年生の女の子・野乃はな(CV:引坂理絵)。同い年の女の子に比べると小柄で子供っぽいが行動力はバツグンで、〈超イケてる大人のお姉さん〉になることを夢見ていろんなことに挑戦する女の子だ。プリキュアの主人公は伝統的に活発で天真爛漫な女の子であることが多いが(なかには7作目『ハートキャッチプリキュア!』の主人公・花咲つぼみのように、少し内向的な性格の子もいる)、はなも基本的にはその流れに沿った元気いっぱいな女の子として描写される。

ハリハム・ハリー、はぐたん

物語は、はながラヴェニール学園に転校してきたところから始まる。前髪を切りすぎたり遅刻したりとドジっ娘ぶりを発揮しながらも無事に学校生活一日目を終えた彼女は、その日の夜、空から降ってきた不思議な赤ちゃん・はぐたん(CV:多田このみ)と、関西弁をしゃべるハムスターのハリハム・ハリー(CV:野田順子/福島潤)と出会う。そのはぐたんが持つ〈ミライクリスタル〉を狙ってやってきたのが、人々から未来を奪う悪の組織・クライアス社。はなは「はぐたんを守りたい!」という強い気持ちによってはな自身から新たなミライクリスタルが生まれ、〈元気のプリキュア〉ことキュアエールに変身するのだ。

ここで重要なのが、はぐたんの存在。『はぐプリ』では〈子供を守る母は最強である〉という発想のもと、〈子育て〉が要素のひとつとして掲げられており、プリキュアは〈はぐたんを守るお母さん〉としての役割も担うことになる。「プリキュア」シリーズでは過去にも、6作目『フレッシュプリキュア!』のシフォン、10作目『ドキドキ!プリキュア』のアイちゃん、13作目『魔法つかいプリキュア!』のはーちゃん(彼女は後に成長してプリキュアになる)などの赤ちゃん妖精が登場してきたが、ここまで〈子育て〉を前面に出したシリーズはなかった。かつ、プリキュアに変身する少女たちとその母親の関係性も物語に絡んでくるところは、今作の肝のひとつと言えるだろう。

そのプリキュアに変身する少女だが、もちろんはなひとりだけではない。信頼できる仲間と手を取り合って困難を乗り越えていくのが「プリキュア」シリーズの伝統だ。

薬師寺さあや

輝木ほまれ

はなのクラスの学級委員長を務める薬師寺さあや(CV:本泉莉奈)は、〈知恵のプリキュア〉であるキュアアンジュに変身。同じくクラスメイトで何事にもクールな大人っぽい女の子、輝木ほまれ(CV:小倉唯)は〈力のプリキュア〉キュアエトワールとなる。

はなを含む彼女たちの成長物語も本作の軸となるもので、さあやは〈自分が本当にやりたいことは何なのか?〉という悩みを経て、女優の母親と同じ演技の道を志し、ほまれはかつてスター選手として活躍するも負傷で挫折したフィギュアスケートの世界に戻るべく努力を重ねる。クライアス社から未来を守るプリキュアとしての姿だけでなく、ひとりの夢を追う女の子としての心情も丁寧に描かれるわけだ。

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