松本孝弘、入魂のソロアルバム『enigma』  vol. 1

Interview

B'z、松本孝弘。6本の弦が紡ぐ、至高のギターミュージック 【前編】

B'z、松本孝弘。6本の弦が紡ぐ、至高のギターミュージック 【前編】

“Life means Drifting”……自らの音楽人生のみならず、音楽を除いた一個人の人生をも振り返りながら、6弦に託していったインストゥルメンタル・アルバム『enigma』。松本孝弘の集大成のように聞こえて、実は新局面を付帯しているニュー・アルバムの成り立ちとディテールを、ロサンゼルスにいる松本さんと、電話インタビューした(僕としては、初の試みである)。

インタビュー・文 / 佐伯明

B’z 松本孝弘

――今、ロサンゼルスは16時半ですよね。

そうですね。

――ロスで制作を続ける松本さんの、典型的なロスでの一日のタイムテーブルってどんな感じなんですか?

時期にもよりますけど、今は朝は早く起きて、ツアーの曲の練習とか、構成を練ったりとか、そういうことをしてますね。

――ロスで、よく行くレストランとかできたんですか?

それはいっぱいありますね(笑)。

――何系が好きですか?

やっぱり和食が多いですけども……。

――外国人の、そちらの外国人のミュージシャンと行くときも和食が多いんですか?

いや、そんなことはないですね。あ、でも和食も行くかな?

――ロスに行って好きになった食べ物ってありますか?

思いつくのは、やっぱりサーモンかな。僕ね、サーモンはあんまり好きじゃなかったんだけど――日本の鮭の塩焼きみたいなのは大好きだったんだけど、生のサーモンってあんまり食べなかったんですよね。でも、こっちはサーモンがすごく美味しいんで、サーモンのお寿司とか食べますね。

――サーモンね。じゃあサーモンのローフィッシュが多いんですね。

焼いたのはやっぱり日本のほうが美味しい。でもこっちは、ローは美味しいよ。

――好きになったお酒とかはないんですか?

最近こっちでは普段はずっと白ワインですね。たとえば日本だったら焼酎を飲んだりするけどあんまり合わないかなあ。和食でも白ワインですね。

――やっぱり空気感にワインが合うのかも。

そうじゃないですかね、きっとね。

――という、松本さんのレコーディング生活の断片が見えるような話をしたのちに、『enigma』の話に行こうと思うんですけど(笑)。

なるほど(笑)。

B’zのツアー中からインスゥトルメンタルのアルバムを創りたいと。自分がたどってきた道を振り返りつつ作品を創ろうかなと思ってたんです

――この2年の間にインストゥルメンタルの楽曲は、書き溜めていたんですか?

いや、書き溜めたって言うか、だいたいいつも作品自体を、“アルバムを創ろうと思ってから”、作曲にかかるんですね。だから書き溜めてるっていうわけでもないと思います。

――ということは、何か『enigma』に関しては見えたものがあるんですか?

一番最初にレコーディングを始めたとき、1曲目がタイトル曲「enigma」だったんですよね。それで、音楽的な自分の趣向が、前作の「Rain」みたいなところに行ってたんだと思うんですよね。それで、わりと構成も、行き当たりばったりっていうか、思いついたものをそのまま繋げていくみたいな、作曲の仕方もしてたりとか、「Aがあってブリッジがあってコーラスがあるっていうんじゃなくたっていいよなあ」なんて思ってたんですよね。

――今まで、松本さんのスタイルみたいなものがありましたけども、少しそれが壊れつつあるんですかね。

そうですねえ。特にインストだから、キーも簡単に変われるし、そういう意味では自由ですよね。

――気分のままに作曲をしていって1曲になる、みたいなこともあるんですか?

そうですね。

――おおー。キチッと段取りというか、スタイリッシュに作る松本さんにしては、珍しい作り方ですね。

そうですねえ。意識してたわけじゃないですけど、自然とそんなふうな感じになっていって。

――松本さん自身が、インストゥルメンタルを聴く頻度というのは多いんですか?

多いですね。僕、結構好きだから、普段からよく聴きますね。

――ちなみにどんなのを聴くのか、ちょっと教えてもらえます?

わかりやすいところではジェフ・ベックはよく聴きますね。あとは、結構昔の、クロスオーバーとかフュージョンとか言われていた頃のは好きで聴きますよね。

――ラリー(・カールトン)の作品とかも聴くんですか?

聴きますね。それも、ラリーさんのは、最近はあんまりメジャーなアルバムじゃないものを聴いたりしますね。あとはジャズ系かな。

――ウェス・モンゴメリはどうですか?

うん。でも、最近は聴いてないなあ。

――ジャズ・ギタリストはどんな感じが好きなんですか?

レコードをジャケット買いして、それを聴いてたりするんですけど。あとレコード屋さんに行って、ジャズ・レコードのコーナーでかかってて良かったりするとそのレコードを買ってそれを聴いたりしてます。

――結構衝動的なところもあるんですね。

そうですね。

――今回「enigma」って、“謎”っていう意味ですけど、この曲のタイトルが決まってから曲を付けていったわけじゃないですよね。

うん、そうじゃなくて、できたものを、曲をレコーディングしていったんですけども、ずっと去年のB’zのツアー中からインストゥルメンタルのアルバムを創りたいなあと思ってて、いつもとはまたちょっと違って、少しテーマを決めて創ろうかなっていう気持ちがあったんですよ。そこで、何をテーマにしようかなって考えてたときに、自分の今までの人としてとか音楽家として振り返るみたいなところがあって、自分の今までたどってきた道を振り返りつつ作品を創ろうかなあなんて思ってたんですよね。

――いい話じゃないですか。

そうですか?(笑) それで、ずっと何かひとつ筋の通ったテーマを決めて作品創りをしようと思いながらも、自分の中から出てきたものを順々に録っていって、ずーっとそのことについて考えてたんですよね。で、結局、最後にその「enigma」っていうところに繋がって、結局10何曲創った中の一番最初に創った曲がその核だったみたいな。

――なるほどね。結局いろいろめぐり巡って最初に戻ったみたいなね。

でも、やっぱりそういうことをいろいろ思い考えて創っていたので、最終的に一本筋が通ったと思うんですけどね。

――そうですね。ということは、自分のミュージックライフというか、音楽人生を音楽で振り返るみたいなところがあったんですかねえ。

そうですね、まあ音楽人生だけじゃなくてね、自分自身のたどってきた……音楽家としてだけじゃなくてね。

――だけじゃなく。それは、ひとりの人間としてっていうこと?

はい、そういうことです。

――なるほどねえ。やっぱり振り返ってみるっていうか、考えてみるっていうことも必要ですよね。

そうですねえ、うん。

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