Interview

「手をのばせば届くくらいのヒカリでいたい」──安田レイがドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』オープニング曲に書き下ろした「Sunny」

「手をのばせば届くくらいのヒカリでいたい」──安田レイがドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』オープニング曲に書き下ろした「Sunny」

安田レイが新曲「Sunny」を8月14日に先行配信&8月22日にシングルリリースする! 吉岡里帆主演ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』(毎週火曜21時)のオープニング曲として書き下ろしたという表題曲は、夏ドラマにぴったりの爽快感と疾走感に溢れた楽曲だが、安田レイは吉岡が演じる新人ケースワーカー“義経えみる”が生活保護現場で日々孤軍奮闘する姿にしっかりと寄り添いながら、安田自身の思いをも重ね合わせた歌詞を描いている。また、カップリング曲「bring back the colors」では作詞のみならず作曲も手がけた。そんな彼女にニューシングルのことやデビュー5周年を迎えた現在の心境などを聞いた。

取材・文 / 松浦靖恵

誰かの力になりたいと頑張っている主人公“えみるちゃん”と私は似ている

ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』のオープニング曲を制作するにあたって、まず原作マンガを読まれたそうですが、どのような感想を持ちましたか?

原作を読み進めていくうちに、主人公の“えみるちゃん”の日常生活を覗き込んでいるような感覚になりました(笑)。そこに自分の人生を客観的に見ているような、そんな不思議な感覚を覚えましたし、彼女が抱えている思いに共感する部分がたくさんありました。

主人公の“義経えみる”は、生活保護現場で働く新人ケースワーカーですが、どのような思いに共感したのですか?

彼女はとても不器用で、すぐに誰かと自分を比べてしまったり、自分はこの仕事に向いていないんじゃないかとへこんでしまったりする女の子なんです。私に置き換えてみると、ステージで私が歌っている姿を見た人からは「度胸があるね」とか「ハートが強い」とよく言われるけれど、私生活の私はハートが弱くて、小心者のびびり(苦笑)。いつのまにか同世代のアーティストさんと自分を比べてへこんでしまったり、臆病になるときもあったりするので、この原作の中に自分が人に見せていなかった一面がいくつもあってハッとさせられました。自分がどれだけできるかわからないけれど、誰かの力になりたいと頑張っているえみるちゃんと私は似ていると思ったので、彼女の思いと私の思いを重ね合わせて歌詞を書きました。

“えみる”に出会えたことで、今まで人には見せることができなかった一面を歌詞にすることができた?

ステージ上の安田レイは普段の自分ではないというか。ライヴに来てくれたお客さんに思いっきり楽しんでもらいたいという気持ちでステージに立っているので、ハートの弱い普段の自分をなるべく見せないようにしてきたんです。でも、自分がどれだけできるかわからないけれど、誰かの力になりたいと頑張っている彼女の姿や思いに触れて、自分の中にいるびびりな自分もちゃんと言葉にして伝えたいと思えたし、そういう気持ちや経験が、この歌詞に結ばれたんだなって思いました。心に傷ができても、そこにかさぶたができて、免疫ができて、そのたびに人は強くなって、ぶ厚くなる。この歌詞を書いたことで、これからも悩むことや苦しいことはあるだろうけど、それを恐れずに生きていきたいなって、改めて思いましたし、歌詞にある「手をのばせば届くくらいのヒカリでいたい」という部分や「Sunny」というタイトルにも、誰かの人生を少しでも照らす光になれるシンガーになりたいという思いがこもっています。

オープニング曲を作るにあたって、意識したとこはありますか?

ドラマを観ている方に歌詞がすっと届く曲にしたかったので、歌い方をシンプルにして、言葉が耳の中に入っていくような歌い方を意識しました。

ドラマで「Sunny」が初めて流れたときは、どんな気持ちになりましたか?

原作を読んでいたので、「あのシーンがこんなふうに映像化されているんだ~!」ってまず感動して、自分の曲が流れてまた感動しました(笑)。ファンの方のリアクションや、このドラマを通して安田レイを初めて知ってくださった方からも嬉しい反応がたくさんあって、とても嬉しかったです。これまでもファンの方から「失恋してこれからどうやって生きていけばいいかわからなかったけれど、レイちゃんの歌を聴いて乗り越えることができました」「つらくて苦しい受験もレイちゃんの歌で頑張れました」など、自分の思いを丁寧に書いたお手紙をいただくことが多かったんですけど、そうやってみなさんからの気持ちをもらうと、私にどれだけのことができているかわからないけれど、私の歌が誰かの励ましや力になっているんだな、歌い続けてきて良かったなって思うんです。

その壁を乗り越えることができたら、きっと新しい自分に出会える

レイさんは吉岡里帆さんと同い年(25歳)なんですね。

とても魅力的な方ですよね! ドラマの記者会見で、自分の気持ちをきちんと自分の言葉にしてお話されている姿を拝見したんですけど、カッコいいな~、しっかりされている方なんだな~って思いました。いつかお会いして25歳トークがしたいです(笑)。

25歳になって何か心境の変化はありましたか?

25歳は大人の階段を上っている最中なのかなって(笑)。デビューした20歳のときに、さいたまスーパーアリーナで開催された「東京ガールズコレクション」で人生で初めてライヴをしたときのことを思い出すと、あれから5年も経ったんだなって思うんですけど、あのときはステージのセンターに辿り着くだけでも必死で、本番の記憶がないくらい緊張してしまって。楽屋で自分が思うようにできなくて大泣きしちゃったことも今では懐かしく思える。そうだ! ラジオのパーソナリティを始めた頃に、「自分に果たしてパーソナリティができるのだろうか、向いていないんじゃないか」とマネージャーさんに弱音を吐いたりしたことを、原作を読んで思い出しました(笑)。ラジオのパーソナリティは初めての挑戦だったので、最初のうちは慣れないし、とても不安だったんです。でも、いつのまにかパーソナリティのお仕事がとても好きになっている自分がいるんですよ。自分の理想と現実がうまく噛み合わないことで、傷をたくさんおってしまうけれど、経験を重ねていくことで、さっきの“かさぶた”の話じゃないですけど、強く成長していけるんですよね。

世の中には、今の仕事は自分には向いてないんじゃないかと悩んでいる方もたくさんいらっしゃると思います。レイさんならそんな悩みを抱えている人たちにどんな言葉をかけてあげますか?

その壁を乗り越えることができたら、きっと新しい自分に出会えるから、自分が携わっているお仕事を好きになれる瞬間を待っていて欲しいなって思います。あと、自分を見ていてくれる人や手を差し伸べてくれる人、守ってくれる人と今は出逢えてないかもしれないけれど、いつかきっと出逢える日がくるよって言ってあげたいです。

カップリング曲「bring back the colors」のお話も聞かせてください。この曲では作曲を手がけていますね。

これまでもデモの段階まで作った曲はあったんですけど、やっとひとつの作品として、みなさんにお届けすることができました。この曲はもともと最初に歌詞を書いていて、そこにピアノでコードを付けて、メロディを乗せました。歌詞が先にあるというのは私の楽曲の中ではとても珍しいですね。作曲がすごく楽しかったので、もっと曲作りの機会を増やしたいです。この曲をきっかけにしていろんなアイデアが浮かんできているので、これからどんな曲が生まれるのか自分でも楽しみです。

この歌詞にはどのような思いを込めましたか?

大人になっても子供のような無邪気でピュアな気持ちを忘れない大人になりたいという思いを込めました。2番の歌詞では、何も怖がらずにどんな世界にでも飛び込める勇気があった幼い頃の自分が、大人になった私に話しかけていて、今の自分にいろいろ質問しているんですよ。

「Sunny」のハッキリと、テキパキした歌い方や声の出し方とはまったく異なる、語りかけるような歌い方が印象的でした。

昔は「自分はこの歌い方なんだ!」って決めつけていたところがあったんですけど、最近は曲によって歌い方を使い分けできたら自分の武器が増えるし、たくさん武器があったほうがシンガーとしても強くなれるかなって思うようになったので、曲の世界観によって歌い方を変えてみるということを、今回のシングルでは初めて挑戦してみました。

ゆっくりと体に浸透していくようなサウンドも心地よかったです。

サウンド作りのキーワードは“スローモーション”です。ゆっくりと海の底に沈んでいくようなイメージを表現したくて、海の泡をイメージするような、プクプクした音を入れました。サビは海から地上にバッと飛び出して、太陽の光を感じてもらいたかったので、カラッとした世界を持ったサウンドにしています。

ゆるやかなテンポの曲なのに、そこに「踊ろうよ」というワードを乗せていて面白いなって。

小さいときから、思ったことを即興で歌にしてストレス発散していたんですね。今も家で鼻歌を歌いながら踊って発散しているので、きっとそういう普段の自分の感じが出たのかもしれません(笑)。

どんなダンスなのか見てみたいです(笑)。

ちょっと人にはお見せできないダンスです(笑)。けど、そういうときに出てきた言葉をメモに残して、歌詞にしたこともあるんです。

自分の歌も、 “誰かのために”少しでもなっていたら

ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』のテーマは「誰かのために、汗かく、夏」ですが、レイさん自身が救われたものとは?

子供の頃から歌や音楽が大好きだったので、小さなときからずっと音楽に救われてきました。自分にとって大切な曲はたくさんありますけど、中学1年生のときに宇多田ヒカルさんの「First Love」を聴いて、歌手になりたいという夢ができて、自分は絶対歌手になるんだ!と思い続けてきました。宇多田ヒカルさんの存在は私にとってとても大きいです。

レイさんはアメリカで生まれて3歳から日本で暮らしてきたので、どちらの文化も価値観も知っているというところでも、宇多田ヒカルさんに惹かれる部分があったのかもしれないですね。

当時は小学生だったので、自分のアイデンティティの置きどころを、自分の中でどれだけ意識できていたのかはわからないけれど、宇多田ヒカルさんの音楽に心を動かされたのには、自分のアイデンティティと重なるところがあったからなのかなって今は思いますね。私は小さな頃から自分の思ったことをそんなにストレートに言える性格ではなくて。思っていることをどう言えばいいんだろうっていうことが積み重なって、フラストレーションが爆発しそうになるときにいつも音楽を聴いていたし、歌に励まされていました。音楽に本当にたくさん救われてきたし、自分の思いを歌詞にすることができる音楽があって良かったなって心から思っています。だから自分の歌も、そういう“誰かのために”少しでもなっていたら嬉しいですね。

安田レイ(やすだ・れい)

1993年4月15日、アメリカ・ノースカロライナ州生まれ。宇多田ヒカルに衝撃を受けてシンガーを志し、13歳で音楽ユニット“元気ロケッツ”に参加。2013年7月にシングル「Best of My Love」にてソロシンガーとしてデビュー。2015年11月発表の「あしたいろ」にて第57回日本レコード大賞新人賞を受賞。音楽活動のほかに、TOKYO FM / JFN系列でラジオパーソナリティも務めている。

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TVドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』

[放送日時]毎週火曜21:00〜
[放送局]カンテレ・フジテレビ系
[原作]柏木ハルコ『健康で文化的な最低限度の生活』(小学館「ビックコミックスピリッツ」連載中)
[出演]
吉岡里帆 井浦 新 川栄李奈 山田裕貴 小園凌央 水上京香
安座間美優 谷 まりあ 鈴木アメリ
内場勝則
徳永えり 田中 圭 遠藤憲一
ほか

オフィシャルサイト

関連書籍:原作コミック『健康で文化的な最低限度の生活』(柏木ハルコ / 小学館)