Interview

田代万里生&古川雄大が“いけない恋”を伝授? 12年ぶりの再演と新演出に期待が高まるミュージカル『マリー・アントワネット』まもなく開幕!

田代万里生&古川雄大が“いけない恋”を伝授? 12年ぶりの再演と新演出に期待が高まるミュージカル『マリー・アントワネット』まもなく開幕!

9月14日よりミュージカル『マリー・アントワネット』が上演される。今作は、『エリザベート』『モーツァルト!』など数々の傑作ミュージカルを生み出したミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイのコンビによる“新演出版”。フランス王妃マリー・アントワネットと、庶民の娘マルグリット・アルノー、ふたりの“MA”の運命がフランス革命の嵐の中で交錯する物語を下敷きに、マリーと彼女の不倫相手フェルセンとの悲恋が美しくロマンチックに描かれる。そのフェルセン役にWキャスト出演する田代万里生と古川雄大のふたりに、本作にかける意気込みや、改めて感じている歌への情熱、“いけない恋”から愛ゆえの“切なさ”まで赤裸々に語ってもらった。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 増田慶

お客様には、“僕のフェルセン”像を観ていただきたい

今作は18世紀のフランスを舞台に、国王ルイ16世の王妃マリー・アントワネットと貧民の娘マルグリット・アルノーという、身分の異なる2人の“MA”の出会いを下敷きに、マリーとフェルセンの恋のお話で、2006年に初演され、12年ぶりに甦る舞台です。このお話をいただいたときの感想から聞かせてください。

田代万里生 フランス革命を描いたミュージカルはたくさんの名作がありますが、“まさにフランス革命”というミュージカルには、これまでの役者人生の中で僕はご縁がありませんでした。

古川雄大 そうなんですね。意外な事実を知りました(笑)。

田代万里生

田代 だからまずは『マリー・アントワネット』がどんなお話なのか“彼女の生い立ち“と“フランス革命”から紐解いていきました。『エリザベート』(2015・2016年)で古川くんがルドルフ、僕がフランツ・ヨーゼフを演じたとき、実際にウィーンを訪れたのですが、同じハプスブルク家の家系ということもあり、自然とマリー・アントワネットの名所巡りもしたんです。ただ、今回演じるフェルセン伯爵に関しては、どうやらマリーと愛し合っていた人物、ということくらいしか把握していなくて……。2006年の初演でフェルセンを演じていらした井上芳雄さんにどんな人物か伺ったら、「あ、“僕の”フェルセンね」と満面の笑みで返されました!(笑)。

古川 (笑)。

田代 もちろんこれは芳雄さんのいつもの冗談なのですが、僕もすかさず「いや、“僕の”フェルセンです」と、同じく満面の笑みで返しておきました(笑)。皆さん! 田代万里生と古川雄大の“僕のフェルセン”をお楽しみに!(笑)。

古川雄大

古川 僕は初演が日本で上演されたことを知っていた程度だったので、作品のことをもっと深く知りたくて、今作でも演出のロバート・ヨハンソンさんが演出された韓国版の映像をまず拝見しました。綺麗なシーンに加え、ちょっと泥くさいシーンもありながら、とても感動するミュージカルで、特にマリーとマルグリットの関係性がラストにいくにつれて、どんどん魅力的になっていくのが圧巻でした。その中で自分のポジションを理解して、“僕のフェルセン”を演じたいと思います(笑)。

ひとりのために自分の愛をすべて捧げる役

フェルセン伯爵の役どころを聞かせてください。

田代 スウェーデンの伯爵軍人で、お互い18歳のときにパリのオペラ座の仮面舞踏会でまだ王太子妃であるマリー・アントワネットと初めて出会います。仮面をつけているためマリーと知らないまま一緒に踊りお互い密かに惹かれ合いますが、すぐに彼女がフランス王太子妃だとわかり驚きます。その4ヵ月後にマリーは王妃となり、その後フェルセンはこれ以上惹かれ合わないためにもフランスを離れるのですが、4年後にパリで再会をし、ついにふたりは“いけない恋”をしてしまう。しかしあくまで非常にプラトニックな関係だったようです。ここからたくさんのエピソードが生まれますが、大きく捉えると、フェルセンは王妃への忠誠を誓い、自分の人生を捧げるだけでなく、生涯にわたり彼女を全身全霊の“愛”で包み込んだ人物、という印象です。

古川 そうですよね。そのあとも誰とも結婚せず、生涯独身を貫いた。ただ、フェルセンは一度大きな失恋をして、旅先で寄ったパリでマリーに出会うので、こんな一途な人がまさか失恋していたのかと衝撃を受けました(笑)。

田代 わかる(笑)。でも当時の国家的貴族は、恋愛というよりも繁栄のための政略結婚が前提だったから、18歳でマリーと出会うまでは、本当の恋はまだしていなかったかもしれないよね。

古川 社交界の貴婦人からも大人気のキャラクターですし、王子様の要素があるのに、一心不乱にマリーへの“愛”を貫くのは、僕も男性として見習いたいですし、彼の心を掘り下げていったら、きっと“人間”として大切な要素を発見できると思うので、舞台ではそんな彼の生き様をお見せしたいです。

マリー・アントワネットは結婚していますし、“いけない恋”だと知りつつも、どうしても恋をしてしまう、そんなフェルセンのやるせない気持ちをどのように表現されますか。

田代 フランスのお話ですが、マリーもフェルセンも異国の人です。マリーはすでに結婚してフランス国籍ですが、彼女の出自はオーストリアで、フェルセンはスウェーデンの人間です。異国の人同士が、さらに別の国で出会う。そこからすでにマジカルな、“恋”に落ちるような瞬間が待っているような気がしませんか。僕らも海外で出会った日本人や、仲良くなった違う国の人との間には味わったことのない特別な“絆”が生まれる気がするので、そんな切っても切れないような“絆”も表現したいと思います。

古川 マリー役のWキャストの花總まりさん、笹本玲奈さんに、本当に恋をするように演じたいですね。“いけない恋”だからこそ、多くの人が惹かれてしまうと思うので、フェルセンの揺れ動く感情を演じれば、より魅力的なキャラクターになると思います。

これからの未来の舞台や、グローバルな時代にとって大切になってくる

今作の特徴は、日本人の遠藤周作さんが書かれた『王妃マリー・アントワネット』をロバート・ヨハンソンさんが演出するという、日本人が外国の人のことを描き、それをロバートさんが受けて日本の舞台にするという点です。そんな洋邦の文化が手を取り合ってひとつになった魅力的な作品ですね。

田代 原作も読みましたが、もちろん舞台版のストーリーは変わっています。初演の演出の栗山民也さんとミヒャエル・クンツェさんがつくった脚本が、大胆に新しく生まれ変わっています。遠藤周作さんの本がベースではあるのですが、日本のプロダクションがゼロからつくり上げた新作だと思っていただければ嬉しいです。日本人の目線で見た外国を、ヨーロッパの脚本家や作曲家がさらにフィルターを通して色付けする意味は、これからの未来の日本の舞台や、グローバルな時代にとって大切になってくると思います。

古川 そこからクローズアップされるのは言葉だと思います。例えば英語の綺麗な文章も日本語にするとアクセントや語法で単純になってしまいますし、英語本来の持つ綺麗さがなくなってしまう。今作で言えば、単純に遠藤さんの日本語を外国語に訳せば、日本語の綺麗さが失われる可能性があります。今回は日本語から外国語にし、外国語からさらに日本語にする作業があると思うので、その中で日本語の良さを保ちつつ、海外の良さも取り入れる必要はありそうですね。

田代 そうだよね。それが成功すれば、たとえば日本語を英語やドイツ語にしやすくなるだろうし、日本発の『マリー・アントワネット』がもっと世界中に愛される作品になるかもしれません。

自分の思った歌を自在に表現できるように

それでは、“いけない恋”を演じるフェルセンは、どのように恋の歌を歌っていくのでしょう。

古川 まずは楽譜どおり歌を覚えたいと思います。ただ、ミュージカル『モーツァルト!』(2018年)のときに楽譜どおりに歌うことを意識するだけではダメだと改めて学んだので、音楽のシルヴェスター・リーヴァイさんも音符によって感情を引き出す方ですし、歌いながら生じる気持ちを大切にしつつ、まずは一回譜面どおり音楽を入れて、焦らないで感情を丁寧に表現し、自然に歌えるように練習していきたいです。

田代 そうだね。リーヴァイさんは母国語がドイツ語なので、ドイツ語を前提にメロディーを書かれている。そうすると、ドイツ語の特徴で、英語と日本語とは違う細かい音符が多くなる傾向にあります。短いセンテンスのドイツ語に日本語を当てはめて、どう違和感なく、いかにも翻訳しましたという感覚を伝えないように歌えるかが課題になると思います。今作では日本で初めて演奏されるナンバーがたくさんあります。なので、古川くんが言ったとおり、まずは楽譜どおりに歌って、そこからきっと生まれる違和感やノッキングを見つけ、それをなくしていく作業が大切になると思います。最終的には、“表現しようとする”のではなく、言葉や音楽が自分の中から“自然に湧き出てくる”ところまで辿り着きたいです。

歌いたいという感情をいつの間にか引き出してくれる

脚本・歌詞のミヒャエル・クンツェさん、音楽・編曲のシルヴェスター・リーヴァイさんのタッグは、ミュージカル界だけではなくて、世界の演劇界に多くの影響を及ぼしています。ふたりのタッグの魅力はなんでしょうか。

古川 おふたりの魅力は、知らず知らずのうちに、役者が持っている心の奥底の感情を引き出してくれる音楽をつくってくれるところです。『モーツァルト!』ではモーツァルトのテンションが高いとき、歌い始めが高いキーなのですが、やっている自分も自然に最後にはそのキーで歌い続けたくなる。おふたりは、僕の「こうやって歌いたい」という感情をいつの間にか引き出してくれるんです。僕らの感情がより強まるし、お客様もついつい引き込まれてしまう、そんな歌がつくれるふたりです。

田代 『マリー・アントワネット』の初演のパンフレットに、音楽監督の甲斐正人さん、プロデューサーの岡本義次さん、演出の栗山さんがヨーロッパに飛んで、オーストリアのリーヴァイさんの家(シェーンブルン宮殿!)で作曲の打ち合わせ、ドイツのクンツェさんの家で脚本を書き連ねたエピソードが、岡本さんの手で日記風に書かれていました。それがとても面白かった。また、リーヴァイさんの著書を読むと、とても自由で、いろいろなアイデアを受け入れる柔軟な印象がありました。一方、クンツェさんはリーヴァイさん的な自由人というより、また違う形の芯の強い人で、芸術家肌という印象があります。僕のイメージでは対照的なおふたりですが、そんなふたりがうまく噛み合うと信じられない化学反応が起きて、舞台上で奇跡が生まれる。そうやって芸術性があり、なおかつ大衆性もある作品をふたりでつくられているのだと思います。

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