Interview

植田圭輔が舞台『死神の精度~7Days Judgement』で見せる“人間らしさ”。そこに表出する彼の俳優としての真の姿を探る

植田圭輔が舞台『死神の精度~7Days Judgement』で見せる“人間らしさ”。そこに表出する彼の俳優としての真の姿を探る

8月30日より東京・あうるすぽっとにて舞台『死神の精度~7Days Judgement』が上演される。原作は伊坂幸太郎の小説で、死神が“死”を実行される対象となった人間に7日間の猶予を与え、8日目に“生”か“死”のジャッジを下すというハートボイルドなファンタジー作品だ。本公演で死神の対象となるのはラサール石井が演じるヤクザの中年男。そのヤクザの子分・阿久津伸二役を務める植田圭輔にインタビューを敢行し、この舞台の見どころ、役者・植田圭輔の魅力を紐解いていく。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 岩田えり


ひとりひとりのキャラクターの造形に深みが増している

“死神”が人間に“死”の宣告をして、それを実行するか否かというファンタジーの要素がありつつ、“死”を突きつけられた人間の有様を描く人間描写に優れた伊坂幸太郎さんの原作『死神の精度』の印象からうかがわせてください。

僕らが生きている現実の世界では体験できないお話ですし、ヤクザの子分を演じるのも初めてで、いろいろな挑戦づくしで楽しみです。原作を読んでみると、確固たる世界観や、人物像もはっきり書かれていて、心にグッとくる物語ですし、読みやすくて、わかりやすくて、役の雰囲気をつかむうえで勉強になりました。

脚本の印象のほうはどうですか。

原作に忠実でありながら、ひとりひとりのキャラクターの造形に深みが増しています。死神がある人間に7日間の猶予を与えて、8日目に“生”か“死”の判断をする。脚本も和田憲明さんですが、ファンタジーの要素を舞台ならではの絶妙な切り口で表現されていて、すごく素敵です。

阿久津はとても人間くさい。純真さをそのまま表現したい

植田さんは、ラサール石井さんが演じるヤクザ・藤田敏之の子分である阿久津を演じます。役どころを教えてください。

阿久津は藤田の子分ですが、藤田をとても慕っています。まさにヤクザの子分というキャラクターで、性格的には終始イライラしていて誰にでもつっかかるのに、いつも何かしらの失敗をしてしまうちょっと間抜けな性格で、萩原聖人さんが演じる死神の千葉にも振り回されてしまうし、とにかく人間くさい役どころです。

どのように演じていこうと思いますか。

藤田だけを認めていて、この人だけは誰とも違う魅力があると信じている忠義に厚い男なので、その純真でまっすぐな気持ちをそのまま表現することが大切だと思っています。藤田の舎弟ではありますが、目の前に対峙しているのは、恋人のように好きな人でもあるので。千葉から見れば面倒くさいやつだけど、ついつい余計なことを喋ってしまうお人好しな感じが出ればいいと思っているので、何か細工をしようと難しく考えずに素直に演技をしたいですね。

ここまでの稽古はいかがですか。

本作は4人芝居で会話が主体になるので、長い時間をかけて本読みをして、その段階で演出の和田さんから細かく注文をいただきました。数日前から立ち稽古に入って、ようやく自分の繋がれていた枷がはずれて自由になった気分でいます(笑)。役者は“動いてなんぼの生き物”で、台本から目を離して相手の目を見て動くことが大切になりますから。なにより、久しぶりに稽古の初日から参加できる作品なので稽古をしていて楽しいです。

4人芝居は、稽古時間も濃密。会話を突き詰めていく

お話にもありましたが、今作は少数精鋭の4人芝居です。

僕からするとほかのお三方は大先輩で、若手は自分だけなので、たとえば年齢の近い役者との4人芝居とも違う手触りになると思います。いずれにせよ、ゼロからのスタートという気持ちで、稽古中に僕の良さも悪さも出し切って、いつでも修正できるようにしておきたいです。過去に経験した少人数での芝居では、稽古で自分のことを隠さないという態度を心がけていたので、今回もそうありたいと思います。

少人数でのお芝居の魅力はありますか。

大人数のものに比べたら、稽古時間は濃密になりますし、与えられる役割もしっかりと決まりますから、お客様も僕らのキャラクターを感じ取りやすいと思います。同時に、役者にとって大切な会話を突き詰めていく時間が多いので、自ずとディープな内容になる。そんな舞台に挑戦できる機会をいただけて嬉しいですね。

萩原さんが引っ張る、和気藹々としたカンパニー

昨年、第25回読売演劇大賞の優秀演出家賞(『怪人21面相』にて)を受賞された話題の脚本・演出家の和田憲明さんの魅力を教えてください。

小さな声ですが、怖いなあと(笑)。お芝居に関しては、僕の心から絞り出した阿久津の言葉をとても大切にされていて。すべてに高難度なことを求めていらっしゃいますが、和田さんとお付き合いの長い萩原さんがカンパニーを引っ張って場をなごませてくださるので、和気藹々とする瞬間はリラックスできますし、過度に緊張せずしっかりと稽古をさせていただいています。

稽古中のエピソードはありますか。

和田さんが、今年の夏は暑いので体調を気にされていて、3食ともパンを食べているらしいのですが、ラサールさんを筆頭に「それはありえないだろう?」と総ツッコミをされていておかしかったです(笑)。

(笑)。お話を伺っているとカンパニーがしっかり出来上がっていますね。

僕からすれば大先輩なんですが、萩原さんがとにかく気さくで、細見(大輔)さんもラサールさんも素敵な方なので、最初は緊張していましたが、稽古が始まると嘘みたいに楽しい雰囲気の稽古場になりました。

一番アドバイスを受けた方はいらっしゃいますか。

やはり和田さんですね。本当に阿久津が生きているように「その瞬間、その一瞬をもっと深く考えるように」とおっしゃっていただいて、お芝居をリアルにするために、会話に現実味を持たせなければいけないと学びました。

わかり合えないこともあるけれど、必ずわかり合えると信じている

再び作品にお話を戻すと、死神が人間の“生”と“死”をジャッジするという、人の“生や死”をテーマにしている気がします。

阿久津は幼い頃にショッキングな事件があって、“生や死”に対するリアクションや感情がとても強いんです。なので、僕は彼の放つ感情を軽くならないように、阿久津の過去にあった事件が嘘ではなかったというリアリティのある演技をお見せしたいです。人間の生々しい感情を舞台で表現したいと思います。

藤田と阿久津の関係性は、“仁義・忠義”といった関係性で結ばれていると思います。

人間は人と人の繋がりを積み上げていくからこそ、そこから仁義や忠義だけではない、人間的な感情が自然と生まれてくると思います。人間同士は、嘘をついたり、裏切って喧嘩をしたり、わかり合えないこともあるけれど、いつかは困難を乗り越えて、必ずわかり合えると信じています。だから、今作で言えば、人を騙さない、自分勝手にならない、つねに相手のことを考えてみる、そういったことを大切にして臨みたいです。

阿久津として伝えたいことはありますか。

一番人間らしいキャラクターなので、心ではわかっているけれど、それをうまく伝えられない矛盾も抱えた、生身の人間でありたいです。死神には理解できない“人間らしさ”を、支離滅裂になってもいい、矛盾してもいいから、お客様に丁寧に届けられたら嬉しいです。

ちなみに近年、植田さんは小説原作にも数多くチャレンジしています。アニメ原作やゲーム原作との違いはありますか。

ほとんど違いはないのではないかと思ってます。もちろん元々のビジュアルがあるかないかの違いはありますが、小説同様、原作ものではないオリジナル作品の舞台も含め、僕は役づくりのアプローチを変えることはないです。作品をつくっている人間はみんな、「見た目が似ていたら大丈夫」、「世界観をなぞっていたらOK」という気持ちはないんです。2.5次元舞台にたくさん出演させていただいていますが、決して外見だけを意識しているわけではなく、目指すべきところへ向けてのひたむきな努力があります。僕はそれが好きなので、突き詰めると、どんな原作でも役者としての心構えは一緒になります。

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