ZARDデビュー25周年記念特集【THE POP STANDARD】  vol. 5

Interview

自然体の美しさで惹きつける坂井泉水。 それこそが彼女のビジュアルの真骨頂だった

自然体の美しさで惹きつける坂井泉水。 それこそが彼女のビジュアルの真骨頂だった

4月末に、ZARD デビュー25周年記念「MUSIC VIDEOコレクション」、なんと62曲収録BOXがリリースされる。
特集第4弾は、これまでのZARDの映像制作、ジャケット制作に携わってきた、二人のクリエイティブ・ディレクターにこれまでのビジュアル制作の秘話、そして制作現場の坂井泉水の素顔を訊いた。

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歌や音楽はもちろん、ZARDといえばCDジャケットやミュージックビデオの映像も強く印象に残っていますけれど、ヴィジュアルイメージは早い段階から明確にあったんですか?

高野昭彦 それはないですね。試行錯誤しつつ、やっていきました。楽曲で入ってくるイメージはありましたけれど、ヴィジュアルのイメージをこうしようっていうのは明確にあったわけじゃなくて。デビューが決まって撮影する時、長戸プロデューサー(大幸氏/ビーイング創設者。ZARD、B’z、大黒摩季、T-BOLAN、WANDSなどを発掘し育てた)からロックで行こうという話があって、“ブロンディ”といったキーワードがあったんです。じゃあ、80年代のパンクっぽいのでいいのかと思って撮ったら、全然違う(笑)。

鈴木謙一 デビュー前にヴィジュアルイメージのサンプルのために、いくつかのパターンをテストで撮ったんですけど。今のブロンディの話みたいに、衣装を決めてキメ顔で撮ると、いまいちイメージとしてしっくりこなくて。長戸プロデューサーもそれを見て、“こうじゃないな”と。もっとリアリティを追及できないかということで、そこから、キーワードは“リアリティ”という言葉に変更になりました。そこで、レコーディングスタジオで、本当に作業しているところを写真に撮ってみようという話になったんです。当時、ジャケットに使う写真やオフィシャルで使うアーティスト写真って、メイクも衣装も決めてライティングもしっかりしてプロのカメラマンが撮って、というのが一般的なやり方で、レコーディングスタジオで撮って、果たしてきちんと使える写真が出来上がるのかという疑問があったんです。でも、当時レコーディングに使っていたスタジオバードマンに、カメラが得意な社内のスタッフと一緒にお邪魔して、ライティングもしないで地明かりで、感度1600ぐらいの高感度フィルムで撮ってみたんです。

カメラ目線より、隠し撮りのほうが実物のイメージに近かったんです(鈴木)

ザラッとした質感になるフィルムですね?

鈴木 はい。それで、「さあ、撮りましょう!」という時、テーブルに缶コーヒーや譜面とかが雑然と置いてあって、さすがに散らかっていてはマズイと思って片付け始めたら、長戸プロデューサーから“片づけないで、そのままの自然な状態がいい”と。それで撮ったのが、「Good-bye My Loneliness 」の実際のジャケットなんです。この時、自分の中ではそういう撮り方というのがあまり見えてなかったんですけど、実際にやってみると、本人のヴィジュアルが輝いていたんです。まわりとのミスマッチな感じ、違和感も味になっていましたし。しかもカメラ目線より、ちょっと外した目線や、カメラを意識しない、隠し撮り的なほうが実物のイメージに近かったんです。そのあたりから、撮り方のきっかけが見えた感じがしましたね。

隠し撮りっぽいというのは確かにありますね。それ以降、一貫して視線を外したポーズが多いですね、横顔とか。

鈴木 ポーズを取ったり、撮影用にキメた顔じゃないということになってからは、その撮り方で進めていましたね。しかも顔の向きにもこだわりがあって。

左斜めからの角度というのがすごく多いですけれど?

鈴木 はい、左と右で顔の感じが違うので、長戸プロデューサーからこっち(左)を中心にという話になりました。本人の顔の振りとか、その部分は細かく指示がありましたね。

「負けないで」のジャケットは正面ですけれど、あえて美人に映さないように撮ったんじゃないかと思えるような写真ですね。

鈴木 いくらでもきれいに撮れるんですけど、あえて髪の毛もフワッとしていますね。

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化粧も、ナチュラルメイクとスッピンの間ぐらいの?

鈴木 メイクはほとんどしてないです。目鼻立ちがはっきりしているので、作り込むとどんどんキリッとした派手な感じなってしまうんです。

坂井さん本人から、こんなふうに撮ってほしいという話はありました?

鈴木 最初の頃はそんなになかったですね。一番最初にお会いした時、派手な印象だったんです。でも、ZARDのイメージはこうだというのが、ある程度本人が腑に落ちた頃、納得した頃から、本人が実際に自分で買ってくる衣装も、こう見せたいというのが明確になってきたので、坂井さんの考えが入ってきたと思いますね。

映像についても早くからイメージが固まっていて?

高野 ミュージックビデオに関しては、企画があって構図があって、ディレクターがいて、こういうアイデアで撮るとか、そういった演出がほとんどないんですね。写真も映像も同時に撮っていて、どちらをメインにするかは決めていなくて。だから、必ず同じ場所の映像と写真があるんです。あとは使いどころですね。いろいろな場所で撮ってみては、試行錯誤して選びどころを考えました。長戸プロデューサーも、映像のフレーム単位で全部見ましたからね。2時間ぐらい撮っても5秒ぐらいしか使わないこともありましたね。

全部、見るんですか?

鈴木 写真もそうです、スタッフに選ばせない。撮った写真を全部プリントして、何千枚と段ボールに入れてプロデューサーの部屋に運ばれてくるんです。今でも長戸プロデューサーは全ての映像や写真を覚えているんじゃないですか。

高野 どこかで、「ZARDはこれだ!」というものが見えていたんですよね。でもそれはデザインワークではなくて、本人の見え方として、“これはZARD”、“これは違う”っていうのがあったと思います。映像も1秒単位で、これはダメって言われましたから。そういう映像のチョイスでした。こうやって振り返ってみると、亡くなるまで16年ですけど、イメージは確かに一貫してますね。普通は歳を重ねていくと飽きたりするんですけど。

この中では「Don’t you see!」だけ、ちょっとタッチが違いますね。

鈴木 この時はロケ自体にコンセプトがあったので、今までのZARDと違う切り口です。

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あれはニューヨークで撮影して?

鈴木 そうです、カメラマンもニューヨークのスタッフです。長戸プロデューサーが「ZARDのイメージに合わない」ということでNGになって当時は使っていなかったのですが、1日だけニューヨークのファッション・シーンで活躍しているクリエーターを使って撮影したかなりチャレンジなビジュアルもありました。結局、亡くなった後、長戸プロデューサーが厳選したモノを出していくようになりました。

この映像は、ミュージックビデオコレクションのオフショットにも出てきますが、かなりの時間、カメラを回していて。しかもシチュエーションもバリエーションがたくさんあって。

高野 決め込んで撮らないので、スナップ写真と同じなんです。ニューヨークに行っても、その場所場所に合わせて構図を作るんです。この1曲を撮るためにニューヨークに行っているのではないから。今日はマンハッタン、今日はウォール街と . . . 同じ街でも光景が違うじゃないですか。そうやっていろんな映像を収める。レコーディング中の曲があった時は、その場で少し口ずさんでみようとか。

ロケハンは綿密にされるんですか?

高野 通常のミュージックビデオを撮る時のように、ここにカメラ、ここにライトをセットして、といいうことはないですね。この辺いいよね、ここを撮って、次はここ . . . といった下見ですね。

鈴木 あまりロケハンが必要じゃない映像なんです。

大まかに分けると、海外ロケの映像と、ホールで歌っている映像があって、それらをミックスして作られていますよね?

高野 ロケに行っていろいろなシチュエーションを撮って、それがあとで楽曲の映像になっていくんです。ただ、海外ロケの映像だけだとリップ(シンク。歌に口を合わせる)を撮ってないので、リップは日本で撮って1曲にしていく。ただ、日本青年館の映像(「揺れる想い」「負けないで」など)は別で。ZARDは、ある時からミュージックビデオって作ってないんですよ。そうすると、ライブもないし、歌っている映像が何もないので、歌っている映像を撮ろうということになったんです。93年の11月に、日本青年館で1日に十数曲撮りました。朝までかかって、曲ごとに髪形、衣装を替えて、同じセットで撮ったんです。ただ、当時は発表する機会がなくて、そのままになっていたんですけど。亡くなって、ファンの方にも見ていただこうということで改めて全部を編集したんです。

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