連続テレビ小説「半分、青い。」特集 『まだまだ半分、青い。』  vol. 5

Interview

朝ドラ『半分、青い。』で萩尾律の妻・より子を演じる石橋静河ならではの役への寄り添い方

朝ドラ『半分、青い。』で萩尾律の妻・より子を演じる石橋静河ならではの役への寄り添い方

スタートから早5ヶ月、連続テレビ小説、すなわち朝ドラ『半分、青い。』が好評放送中だ。8月6日放送から舞台を岐阜に移し、まだまだ盛り上がっていきそうな気配濃厚。そこで、後半戦も『半分、青い。』をいっそう楽しめるようにと、エンタメステーションでは同ドラマの特集を随時更新中。キャストやスタッフにインタビューを行い、それぞれの役割や個々の「まだ青かったころ」のエピソード、そして収録時のエピソードや作品への思いなどをフィーチャーしていく。
第5回は、萩尾律(佐藤健)の妻・より子役の石橋静河が登場。鈴愛が律にかけた電話に出る緊張感のあるシーンが話題に。これまで写真での登場が多く、どんな人物か明らかにされていないより子という役を、どのようにとらえたのか? 役に寄り添って愛情を注ぐ彼女なりのアプローチから見えた、より子の知られざる人物像が明らかに!

取材・文 / 平田真人 撮影 / コザイリサ

言葉や態度にはトゲトゲしい印象があるけれども、
単に意地の悪い女性にするのはちょっと違うと思った。

NHKのドラマに多く出演なさっているイメージが、石橋さんにはありまして…。

でも、まだ2作だけなんですよ。初めて出演させてもらったドラマがNHK福岡で制作された『You May Dream』(3月放送)で、その次のドラマが、この『半分、青い。』なので。でも、映画『うつくしいひと サバ?』も同じくBSプレミアムで放送してくださって…それで、NHKによく出ているという印象があるのかもしれないですね。

あ、まさしくおっしゃる通りです! ということで、朝ドラの話を聞いていこうと思いますが…『半分、青い。』に出演なさったことに対する反響は、いかがでした?

そうですね…ネットニュースを見ていたら、「ついに律の妻が登場!」といった感じの記事が出ていて、「わ、すごいな…」って(笑)。友達からも「律の奧さん役、いいな~」と言われて、やはり朝ドラの影響力はすごいんだなぁと、あらためて実感しました。

初登場シーンは、自宅のベランダから鈴愛と邂逅を果たす、というシチュエーションでしたね。

あの描写を、視聴者のみなさんはどのように観てくださったのかなと、ふと思ったりもしました。たぶん、鈴愛ちゃん側からの視点で観ている人と、違う角度から観ている人とでは、違った印象で見えるんじゃないかなって。より子はどんなふうに思われているんだろうと、気になったりもしたんですけど…ちょっと怖くて検索できなかったですね(笑)。でも、放送されたものがすべてなので、詮索してみたところで、何かが変わるわけでもないな、と考えてもいて。なので、私はスタッフやキャストのみなさんと一緒につくった作品を、そのまま自分の中で大切にしていこうと思っています。

第78話より ©NHK
律からの“結婚しましたハガキ”を手にする鈴愛に「もしかして律のお友達ですか?」と聞くより子。これに対し鈴愛は『「お近くにいらした際はぜひお寄り下さい」とあったので。』と答える。

素敵な考え方だと思います。では、そこを踏まえて、石橋さんは萩尾より子という女性をどのようにとらえていらっしゃるのでしょう?

私は、あくまで普通の人だと思って演じていました。何と言うか…本当にどこにでもいる普通の女性としてとらえていたんですけど、それこそ見え方によって、彼女の発する言葉が衝撃的に受け取られてしまうのかな、と。でも、より子としては一生懸命生きていて、幸せになろうとしているにすぎないんですね。そのような感覚でした。
正直、最初により子役のお話をいただきた時、なんで私に律くん──(佐藤)健さんの奧さん役がまわってきたんだろう、と思ったんです。でも、役を演じていくうちに「なるほど…!」と(笑)。本人としては普通なんですけど、それこそ視点を変えるとひと癖あるように見えるんですよ。でも、ふだんの私たちにも、自分の思いと他人の評価が噛み合わないことって、結構あるじゃないですか。自分では一生懸命やっているつもりでも、周りからは違うと思われたり…。そんなふうに、より子さん本人の気持ちがちょっと見えづらいのかな、と思ったりもしました。

その辺りは、律とより子の馴れ初めなどが劇中では描かれず、息子の翼くんも生まれていた…という展開になっていたので、視聴者側からすると想像して補完する余白が多めになっているのも関係しているのかもしれないですね。

確かに、そうかもしれません。私自身、「えっ!?」と思うシーンもありましたし…。でも、最初のベランダからの鈴愛ちゃんとのやりとりから、次に登場するまで10年近い歳月が経っていて、その間にも律とより子の間ではいろいろなことがあったはず──というのを自分でも想像しなければいけなかったのと、再登場した時には子どもがいたので、ブランクの間に何があったのかをたくさん考えなければいけなくて、なかなか大変でしたし、難しかったですね。

視聴者に想像する余地を残す芝居が難しかった、ということでしょうか?

う~ん…言葉や態度にトゲトゲしい印象もあるんですけど、単に意地の悪い女性にしてしまうのは、ちょっと違うなと私は思ったんです。けっして、そういう人ではないということが台本を読み進めていく中で把握できたので、より子さんなりの理由というか…彼女の正義のようなものを、どこかで表現することができればいいな、と。もちろん、どのように受け止めるのかは視聴者のみなさんによるところなので、私が気にすることではないんですけど、より子という役を演じる以上、まず自分が彼女のことを好きにならないと、血の通った人にならないので…理解しようという努力が必要でした。そうすると不思議なもので、だんだんより子さんがかわいらしく思えてきて。人間くさいですし、1人の女性として当たり前の気持ちも持っている。たくさん考えた結果、その境地に行き着くことができたのだと思います。

リハーサル後、綿密な確認をして撮影へ

これは聞くのも野暮なのかもしれませんが、石橋さんがより子さんに対して愛を注げるようになった糸口は、どこにあったのでしょうか?

より子さん自身のどこかというよりも、周りの人たちが彼女について話していることだったり…そういったところからキャラクターに関する情報を集めていくうちに、という感じですね。「ここではこんなふうに言われているけど、でも、より子さんはこう言っている。矛盾があるなぁ」「たぶん悪気はないんだろうなぁ」と考えていくうちに、何でもうまくやれる人ではないな、という人物像が見えてきたんです。一生懸命になりすぎて、ちょっとこじれてしまったり、頑張るほどに自分が苦しくなってしまう人なんだな、と。それはけっして良くないことではなくて、一生懸命だからこそなのだなと思ったら、魅力的に見えてきた…といった感じですね。

あまり器用な人ではなかったりするんでしょうか?

どちらかというと不器用な人だと思います。一生懸命さが空回りしているところが、見方によってはチャーミングに映る…かもしれないので(笑)、そういった部分も楽しんで観ていただければいいな、と思います。

はい、より子さんのことをもっと知ろうという気持ちで視聴します。では、ちょっと話題を変えまして、『半分、青い。』の収録中に、「まだまだ自分は青いな…」と感じたことはありましたか?

何だろう…現場の流れや空気が完全にできていて、みなさんが家族のようになっている中に、ちょっと“別枠”の人という感じで途中から入っていったので、最初はちょっとどうしたらいいのかな、という戸惑いもありました。緊張もしていましたし…。でも、子どもたちの存在にすごく助けてもらったんです。息子の翼くんもすごくかわいかったですし、鈴愛ちゃんの娘の“かんちゃん(=花野ちゃん)”と3人で遊ぶうち、緊張もほぐれていって。でも、まだ年端もいかない子どもたちに助けてもらって、“まだまだ青い”なと感じました(笑)。

やはり、できあがっていく中に入っていくのは難しいんですね…。

しかもアウェイな役柄でもあったので、思った以上に難しいものがありました。

そういった中で、鈴愛役の永野芽郁さんにはどのような印象を抱いたのでしょう?

あまり一緒のシーンがなかったので、ほとんどお話する時間がなかったんですけど、芽郁ちゃんは肩の力がいい具合に抜けているように感じました。中でもすごいなと思ったのは…30代後半の鈴愛のシーンを撮っていた時、私がメイクをしていた隣に大人の女優さんが座ったので、「どなただろう?」と思って見たら芽郁ちゃんだった、という。存在感というか、まとっている空気が30代なんですよ。それを感じた時、「すごい人だ!」と思ったのをよく覚えています。

第130話より ©NHK
アメリカへの異動を断ろうとする律に「中川部長の推薦よ、断るのはもったいない。今後に響くと思うの。少なくとも部長婦人以上にはなりたいわ。」と言うより子。

そうなんですよね、娘のかんちゃんが出てきてから、どんどん母親らしく見えてきて。一方、ご主人の律役の佐藤健さんについては、いかがですか?

健さんとも、ほとんどお話する時間がなかったんですけど、現場をすごく広い視点で見ていらっしゃって。「どう演じれば、このように見えるのか?」「こう演じれば、視聴者にはこう映るんじゃないか」というスタンスでお芝居されていたので、私は健さんを信じてついていった、という感じでした。私が自分の役割でいっぱいいっぱいだったぶん、役に集中しながらも客観性も持っていらっしゃった健さんの視野の広さに、驚かされました。

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