LIVE SHUTTLE  vol. 13

Report

GLIM SPANKY in“Virgin Rocks” 渋谷eggman 2016.03.21

GLIM SPANKY in“Virgin Rocks” 渋谷eggman 2016.03.21

松尾レミ(vo)と亀本寛貴(g)からなるロックユニット“GLIM SPANKY”が、所属レーベル“Virgin Music”主催のイベント“Virgin Rocks”の第1回目に登場。キュレーターを務めた。

早い話が、GLIM SPANKYがおススメのロックバンドを選んで、一緒にライブをやろうぜという企画だ。選ばれたのは、GLIM SPANKYが活動を開始して間もなくライブハウスで共演し、意気投合した“Walkings”と“Glider”の2バンドだった。どちらも60~70年代のロックに強い影響を受けたバンドで、GLIM SPANKYと合わせて“60~70`sロック・リバイバル”と呼びたくなる、J-ROCKのルーツが垣間見える濃い内容のイベントになった。

最初に登場したのはWalkings。シンプルなギター・トリオ編成のバンドだ。ブルージーなギター・リフから始まった「ロック」は、飾り気のないストレートなロックで、ギター&ボーカルの高田 風のハスキーな声は、The Birthdayのチバユウスケを思わせる。サウンドはブルースから影響を受けて生まれた“ブルースロック”。60年代末に誕生して、その後、“ハードロック”に移行していくルーツ・ミュージックの変化形だ。そうした“バンドの根っこ”を強く打ち出した「flying fly」では、スライドギターが傍若無人に暴れ回り、前列に陣取ったファンたちが拳を挙げて応える。リアルタイムで60~70`sロックを聴いた僕にとっては、嬉しいやら懐かしいやら、不思議な光景に映った。SEKAI NO OWARIのファンがこの場にいたら、どんなことを感じるのだろう。Walkingsはこの「flying fly」をリードトラックにしたアルバム「穴」で、この4月にデビューする。

LS_Walkings

次にステージに上がったのは、Glider。ギター、キーボード、ベース、ドラムスといういわゆる4リズム編成で、音楽的バランスがとてもいい。しかもギタリストとキーボード・プレイヤーがリードボーカルを取るという特殊な武器を持っている。僕は彼らの1stアルバム「Glide&Slide」を聴いて興味を持っていたが、ライブを観るのはこの日が初めてだった。

Walkingsが雰囲気重視のエモーショナルな演奏を得意とするなら、Gliderはアンサンブル重視の構築された音を出す。ブリティッシュ・サウンドの系譜を受け継ぐバンドだ。生で聴いたGliderは、丁寧にメロディをトレースするタイプのキーボードの栗田ユウスケと、ワイルドな声で畳みかけるギタリスト栗田マサハルという、兄弟のボーカルの対比が面白かった。特に今年2月にリリースしたセカンドアルバム「STAGE FLIGHT」からの「蘇生」は、マサハルのギタリストらしい感情豊かなボーカルがインスピレーションに富んでいて印象的だった。

LS_Glider

“Virgin Rocks”は、Virginレーベルのスタッフによる完全手作りのイベントだ。自分たちで会場を押さえ、入口でチケットをもぎっているのもスタッフだ。CDからデータへと音楽の聴き方が変化する中で、マーケットを支える音楽ファンの実態を把握するにはライブ・イベントを開くのがいちばん手っ取り早く、かつ正確だ。“Virgin Rocks”をスタートさせたのは、そうした思惑があってのことだろう。

ただ会場でのスタッフの立ち振る舞いを見ていると、そんな思惑を超えて、スタッフ自身が音楽好きで、新しいバンドやオーディエンスに出会うことを楽しみにしている様子が見て取れる。そうした気持ちがイベントの雰囲気に良く作用して、出演バンドもオーディエンスもリラックスした表情をしている。お目当てのバンドを見たら観客が帰ってしまうイベントもあるが、この日は帰る人がほとんどいなかった。それは“いいイベント”の証拠でもある。観客たちはトリを務めるGLIM SPANKYを、楽しみに待っていた。

いよいよ“Virgin Rocks”のキュレーター、GLIM SPANKYがステージに上がる。大きな歓声と拍手が起こる。松尾レミはステージに出ると、赤いリッケンバッカー(ギター)のストラップを肩に掛けた。亀本はいつものレスポールで「ワイルド・サイドを行け」のイントロのメロディを弾き出す。続いて松尾が歌い出した瞬間、渋谷eggmanはGLIM SPANKYの色にあっという間に染まった。よくバンドの特徴を表わすのに“サウンドカラー”という言葉が使われるが、まさにそれがピッタリのオープニングだ。松尾の声と亀本のギターが交わって、空気に色が付いたのだ。

「ワイルド・サイドを行け」は、ニューヨークのアンダーグラウンドの雄、ルー・リードの「ワイルド・サイドを歩け」(72年)をモチーフにしていて、GLIM SPANKYのルーツ・ミュージックに対する懐の深さを感じさせる。♪仲間とこじ開ける未来は絶景さ♪というリリックが、このイベントのテーマと重なって、ズシンと響いてきた。

2曲目の「焦燥」は、メジャー・デビュー曲。陰翳に縁どられたへヴィーなロックナンバーだ。このあたりからP.A.が安定してきて、オーディエンスはGLIM SPANKYの世界に引き込まれていく。

そして、この日のベストは3曲目「MIDNIGHT CIRCUS」だった。エスニックなメロディのギター・リフが、妖しいムードを醸し出す。人生を直接的には歌わず、“アントワープの婦人”などシンボリックな単語を並べて孤独や混迷を描く歌詞が魅力的だ。この日は亀本が絶好調で、彼のギターがこのスケールの大きな曲を牽引する。サポートのドラムとベース以上にどっしりとしたリズムを刻み、亀本がグルーヴマスターの役割を果たしていたのが頼もしかった。

このところ、J-ROCKにはギター・ヒーローがいない。70年代のChar、80年代の布袋寅泰、90年代のhideに比肩できるギタリストは、21世紀にはいない。奥田民生やくるりの岸田繁など“シンガー&ギタリスト”はいても、華やかなソロで楽しませてくれるギターには、なかなかお目にかかれない。それは、今のバンド・ミュージックにほとんどギター・ソロがなくなってしまい、ギタリストの存在感が小さくなってしまったからだ。中で亀本は、堂々とソロを弾く珍しいギタリストだ。「MIDNIGHT CIRCUS」のギター・ソロは素晴らしかった。松尾の歌と拮抗し、聴かせ、興奮させ、オーディエンスの感情を力強く押し上げていた。

後半は「褒めろよ」から「リアル鬼ごっこ」まで、一気に盛り上がる。「NEXT ONE」では松尾も負けじと小気味いいギターのコード・カッティングを披露。それをバックに、これもシャープなソロを決めた亀本は、弾き終わると両手を上げてガッツポーズをしたのだった。

MCはほとんどなく、GLIM SPANKYはひたすら歌と演奏に集中し、潔く痛快にライブは進む。ようやく松尾が話し出した。
『今日は“Virgin Rocks”に来てくれて、どうもありがとう。好きなバンドを呼んでいいって言われたので、WalkingsとGliderに来てもらいました。どっちのバンドもお客さんが0人の時から一緒にやってます。“バンドの幼なじみ”っていう(笑)。全員がお互いのファンです』。一緒にイベントを作れた歓びを語る。そして歌った「大人になったら」では、松尾がボーカリストとしての魅力を存分に発揮。歌詞の一語一語を、確実にオーディエンスの心に刻んだ。

上京して大学3年の時に書いたこの曲は、友達が就職などそれぞれの進路を決める中、音楽の道に進もうと決意した心情が歌われている。♪この世の全ては 大人になったら解るのかい♪と投げかけるこの歌を、松尾は“Virgin Rocks”のラストの曲に選んだ。今さら「反逆のロック」を選び、歌う松尾は、一方で売れることの大切さも口にする。本当に手強いアーティストだ。

LS_STRM1347

WalkingsとGliderのメンバーを呼び込んで、アンコールが始まる。
『みんなが共通して好きなのは、ビートルズだから』と前置きして、「Hey Jude」を全員で歌う。コーダの部分のメロディを、オーディエンスも合唱する。いまどきピースフルな“反逆のロック・イベント”だった。

取材・文 / 平山雄一

“Virgin Rocks”セットリスト

Walkings
1.ロック
2.あんたがいったじゃん
3.挽回のダンス
4.風神とライジング
5.ベネフィット
6.flying fly
7.台風
8.無駄

Glider
1.Glider
2.Glider’s Monkey Job
3.Blue Heaven
4.蘇生
5.Sky Is Blue
6.飛行少年

GLIM SPANKEY
1.ワイルド・サイドを行け
2.焦燥
3.MIDNIGHT CIRCUS
4.ダミーロックとブルース
5.FLOWER SONG
6.褒めろよ
7.踊りに行こうぜ
8.NEXT ONE
9.リアル鬼ごっこ
10.大人になったら

EC1.Hey Jude

Virgin Rocks オフィシャルサイト
https://virgin-rocks.officialsite.co/

GLIM SPANKY

松尾レミ(VO.G)、亀本寛貴(G)のメンバーで構成される新世代ロックユニット。2015年10月赤坂BLITZにて開催されたワンマンライブはSOLD OUT。今年1月に発売したミニアルバム『ワイルド・サイドを行け』はオリコンアルバムデイリーランキング初のTOP20入りを果たした。

オフィシャルサイト http://www.glimspanky.com/

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Mini Album Now In Stores
『ワイルド・サイドを行け』
初回限定盤(CD+DVD)
TYCT-69097 ¥2,500 +税
通常盤(CD)
TYCT-60077 ¥1,500+税

【 CD収録曲 】
1. ワイルド・サイドを行け ※テレビ東京系「ゴッドタン」2016年2月度エンディングテーマ ※テレビ神奈川「MUTOMA」2016年2月度オープニング・エンディングテーマソング
2. NEXT ONE ※ブラインドサッカー日本代表公式ソング
3. BOYS&GIRLS ※「トランスフォーマーフェス」テーマソング
4. 太陽を目指せ ※テレビ東京系2016年1月クール「ポンコツ&さまぁ~ず」エンディングテーマ
5. 夜明けのフォーク

【 DVD収録曲 】 ※初回限定盤のみ
2015/10/17 赤坂BLITZワンマン公演
1. サンライズジャーニー
2. 焦燥
3. MIDNIGHT CIRCUS
4. ダミーロックとブルース
5. 褒めろよ
6. WONDER ALONE
7. リアル鬼ごっこ
8. NEXT ONE
9. 大人になったら
10. さよなら僕の町

Walkings

全ての時代に通用するロック=を掲げる3ピースロックバンド。ブルース・ロックを貴調としつつPOPで聴かせる楽曲もある多様性、50年代から現代までを網羅したサウンドに乗っかる日本語。昨年FUJI ROCKルーキーステージではその激しいパフォーマンスから苗場の夜を虜にした。4月6日にP-VINE Recordsからデビューアルバム『穴』をリリース。

オフィシャルサイト http://walkings.wix.com/walkings

Walkings_ANA_JK

1st Album 2016.4.6 In Stores
『穴』
PCD- 93983 ¥2,300+税

【 収録曲 】
1. flying fly
2. あんたがいったじゃん
3. アメーバ
4. 愛と勇気
5. いざ異国行こうか
6. 台風
7. 無駄
8. ベネフィット
9. 風神とライジング
10. 笑われにゆく

Glider

ツインボーカル&ソングライティングチームである栗田兄弟とリズムセクションである椿田兄弟のダブル兄弟によって結成。2/10(水)セカンドアルバム「STAGE FLIGHT」リリース。4/8(金)渋谷O-Crestにて初ワンマンライブを開催。

オフィシャルサイト http://glidertheband.jimdo.com/

Glider_STAGEFLIGHT_JK

2nd Album Now In Stores
『STAGE FLIGHT』
PECF-3160 ¥2,315+税

【 収録曲 】
1. 飛行少年
2. GO
3. Maryrose
4. 未知なる旅路
5. Blue Heaven
6. Sci-Fi Sister
7. R.I.P.
8. Alone
9. 蘇生
10. Stage Flight
11. Everlast
12. Saravah
13. OLE (Bonus track)

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