LIVE SHUTTLE  vol. 287

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ゆず “常に新しいものを目指したい”そんな思いが伝わる、横浜アリーナでの追加公演を振り返る。

ゆず “常に新しいものを目指したい”そんな思いが伝わる、横浜アリーナでの追加公演を振り返る。

<YUZU ARENA TOUR 2018 BIG YELL Ⅱ〜Great Voyage〜>
2018年8月5日 横浜アリーナ

20周年の多岐に渡った活躍を、集大成した側面もあった新作『BIG YELL』。いわゆる“周年”を、階段の踊り場のようにー息入れるタイミングにするのではなく。未来への連続線とした意思が、あの作品集からは伝わってきた。そしてその精神のまま錨を上げ、ツアーという航海を始めたのが、4月末のさいたまスーパーアリーナだった。やがて全行程を終了。始まったのが、追加公演である。横浜アリーナでの3日間のうち、8月5日を観に行った。しかしこの会場、彼らが初演の時も含め、いったい何度、通ったことだろう…。

思えばゆずが最新アルバムを引っ提げてツアーをやるのは、ちょっと久しぶりである。彼らにしてみても、例えば舞台でお芝居やる人が、ひとつの演目を創り込む醍醐味みたいなことも、感じ取ったツアーなのかもしれない。だとしたら、総仕上げが追加公演、と思ったら、セットリストは本公演と、かなり異なるものだった。

冒頭、登場したパフォーマー達(金棒のファビアン、跳躍のベンジャミン、鋼鉄のニコラ、道化のヤン)が狂言回し的に客席をほぐしていく。ほどよいユーモア。やがてオープニングである。客席へ舳先を向けた巨大船が現われ、二人はその上で、「TETOTE」を歌い始める。

歌い終わると、なんと舳先が割れ、船体が上手と下手へと開いていく。そして内部が、船室のコンパートメントになっていることを知る。観ている我々の視線にも、大胆な変化がもたらされ、ワクワクが増す。

磯貝サイモン(キーボード)、松原寛(ドラム)、安達貴史(ベース)、佐々木貴之(ギター)、湯本淳希(トランペット)、川島稔弘(トロンボーン)、河村緑(サックス)からなるバンドは、達者な演奏でありつつ、音楽への衝動をリアルに感じさせるものだった。「公園通り」「真夏の太陽」と、本公演ではセットリストに加わらなかった曲が、早くも前半で披露される。

「ガイコクジンノトモダチ」では、北川悠仁の友人のユージーンに扮した悠仁(“ユ”が4回出てきましたけど)が、アリーナの中央下手通路よりワゴンの箱の中から登場し、片言のようで雄弁な日本語で、お客さんへのインタビューを敢行する。とても大胆な演出だ。でも、どうやらこの日は外国のお客さんも客席に居た様子で、ホンモノ(?)を前にユージーンが、一瞬、素に戻ったかのように見受けられたのが面白かった。

ソロ・コーナーは、前回観た時はそれぞれのトークもたっぷり楽しめたが、今回、まず岩沢厚治がひとりで場を仕切ろうとする。しかしスクリーンに、中継映像が…。会場の外、駐車場付近にレポーターの北川が現われ、なんでも岩沢が会場に通っている愛車を紹介するという。

そこに映ったのは、ハリウッド・スターが乗りそうな長い車体のリムジン! もちろん、岩沢がこれで通ってるわけではなく、ジョークなのだが、わざわざこのために車体を用意する熱意と、その瞬間の岩沢の、“どうでしょう皆さん、このオチ、楽しんでくださってますか”という含みのある彼らしい人柄がこもった笑顔が、とても心に残ったのだった。

歌われたのは「風のイタズラ」であり、彫りの深いメロディながら、大仰さとは無縁の作品だ。この歌に出てくる涙は、言葉で取り繕う前に、“裸の心が喋った言葉”として頬を伝ったものなのだろう。正真正銘の名曲である。

北川のソロは「通りゃんせ」。オリエンタルなメロディとヒップホップの自由な発想が合体され、歌詞は未来へ向け、人類が果たすべき通過儀礼を描くかのようだ。曲のほうは、「恋、弾けました。」をプロデュースしたDJ・作曲家のTeddyLoidとの共作だ。北川が、フードつきのパーカーをまとい、4人のパフォーマーとともにセンター・ステージへと繰り出す。韻を踏みつつメッセージも明瞭だ。それにしてもベンジャミン。“跳躍の”はダテじゃない。彼の宙返りはもはや、体操選手の競技としてのレベルである。

メドレーのコーナーは「青白歌合戦」と題され、アッパーで童心な「LOVE&PEACH」から始まって、「イロトリドリ」などを経て、最後に「栄光の架橋」へと至った。これはこれで、長編ではないけど短編の、でもしっかり読み切りの一本の“コンサート”とも受け取れる曲の並べ方であった。歌合戦だけに、ちゃんと最後に雌雄を決するシステムも用意されていた。

すでに大きく報道されたが、新曲「マスカット」は『クレヨンしんちゃん』主題歌ということで、ステ−ジにはゆずマンに加え、しんちゃんも登場し、夢の共演となった。そして曲に合わせ、みんなで“スカッとダンス”を。この曲、音楽的にはスカのリズムを基調としているが、聴き進むうち、曲調自体が大胆に変化していく。つまり味が違う何層ものシロップで構成されたかき氷のように飽きないのだ。幅広い年齢層で埋まった客席が、衒いなくダンスする姿がまぶしい。ひとつの楽曲で、全体が輪になり和を成す光景こそが、ゆずのライブの醍醐味でもある。

なお、この「マスカット」は日本のポップス史の観点からみれば、浜口庫之助の「黄色いさくらんぼ」などと系譜的な関係にある作品とも言えるだろう。 

ラストの「夏色」は、冬に聴いても会場が夏に染まるけど、夏に聴けば、より季節にコントラスが加わる。もう何回聴いたか分からないこの作品だが、この日の演奏は、ブラスのキレの良さも含め、僕の数多ある“夏色体験”のなかでもベストに近かった。なお、センターステージにひざまずく北川と、それを取り囲む熱狂的な観客達を見ていたら、バリ島のケチャを想い出した。

アンコールで再び舳先を向けた巨大船が現われる。そろそろ彼らは、再び出航の時刻のようだ。「うたエール」を歌う直前、北川はMCで、こんなことを言った。この20年の活動に、もちろん手応えは感じているが、「常に新しいものを目指したい。ここを越えていく気持ちを、諦めたくない」。

実はこのようなMCを、以前も聞いたことがあった。でも何度でも聞きたい。5年後も10年後も、同じことを繰り返し、言い続けていて欲しい。そんなことを思いつつ、横浜アリ−ナを後にした。その瞬間、横浜港の方角からボォ〜っと汽笛が……、聞こえてきたわけではなかった。

文 / 小貫信昭 撮影 / 太田好治、立脇卓

<YUZU ARENA TOUR 2018 BIG YELL Ⅱ〜Great Voyage〜>
2018年8月5日 横浜アリーナ

セットリスト
01. TETOTE
02. タッタ
03. 公園通り
04. 真夏の太陽
05. 境界線
06. カナリア
07. ガイコクジンノトモダチ
08. 風のイタズラ(岩沢ソロ)
09. 通りゃんせ(北川ソロ)
10. イコール
11. 青白歌合戦
 ①LOVE & PEACH ②言えずの♡アイ•ライク•ユー
 ③イロトリドリ ④T.W.L ⑤GO★GO!!サウナ
 ⑥スマイル ⑦少年 ⑧栄光の架橋
12. マスカット
13. 恋、弾けました。
14. 夏色
EN01. 聞こエール
EN02. アゲイン2
EN03. うたエール

オフィシャルサイト
http://yuzu-official.com

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