Interview

荒木宏文が、現代では不可能な“キュンキュン♡恋愛”を森 鴎外のごとくスマートにレッスン──歌劇『明治東亰恋伽〜月虹の婚約者〜』東京公演まもなく開幕!

荒木宏文が、現代では不可能な“キュンキュン♡恋愛”を森 鴎外のごとくスマートにレッスン──歌劇『明治東亰恋伽〜月虹の婚約者〜』東京公演まもなく開幕!

荒木宏文、橋本祥平、北川尚弥ら錚々たる役者が明治時代の偉人となり、現代からタイムスリップしてきた女子高生の綾月芽衣(鈴木桃子)と恋に落ちる歌劇『明治東亰恋伽〜月虹の婚約者〜』、略して“めいげき”。
8月18日・19日の大阪・森ノ宮ピロティホールでの公演が盛況に終わり、いよいよ東京公演が、シアター1010にて、8月25日から上演される。今回も“めいこい”ファンの胸が“キュンキュン♡”すること間違いなしのラブロマンスになっているはずだ。
2016年の初演から、森 鴎外を演じる荒木宏文にインタビュー。彼の演技にかけるスマートな言葉は、鴎外そのものだと感じてもらえる以上に、彼の役者への情熱、舞台にかける熱意を胸に、ぜひとも劇場に足を運んでいただきたい。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 岩田えり


森 鴎外はいろいろな物事に興味があって面白がるキャラクター

荒木さんは、前作の『歌劇「明治東亰恋伽〜朧月の黒き猫〜」』(2016年)からご出演されています。今作を含め、作品の魅力はどこにあると思いますか。

恋愛シュミレーションゲーム『明治東亰恋伽』が原作で、現代にいる女子高生の綾月芽衣(鈴木桃子)が、とあるきっかけで明治時代にタイムスリップをして、今作であれば、僕の演じる森 鴎外と“恋”をします。男性の登場人物は、歴史上の人物ですが、ビジュアルやキャラクターは、史実に基づいているより、とてもファンタジックな造形が魅力な作品だと思います。

前作でもご経験された森 鴎外とはどんなキャラクターだと思いますか。

年齢不詳の設定ですが、キャラクターの中では大人のポジションで、いろいろな物事に興味があって面白がるキャラクターです。菱田春草(橋本祥平)を居候させ、現代からやってきた芽衣ちゃんさえ居候させる。ドイツ留学を背景に、西洋の文化に触れているからこそ、日本の常識とはズレていることも楽しいと感じる、明治時代にはいない優れた感覚の持ち主ですね。

森 鴎外を演じるにあたって、どのようなことに注意しようと思いますか。

留学先のドイツで恋をした、エリスという女性と別れると決めた時に、自分は2度と“恋”をしないと決意して日本に戻ってきたので、芽衣ちゃんとも“恋”をする気はなかったのに、次第に彼女を好きになっていく。“恋”に臆病だった鴎外が次第に新しい“恋”に目覚め、新たな一歩を踏み出す強さに気づいた時の心の変化、いわば心の成長ですね、そういったところを大切にしたいです。

純粋でまっすぐな行動を

具体的にどのような役づくりを心がけますか。

例えば、自分が誰かを愛して、愛情を与え続けるポジションであれば、それをどのように伝えていくのかが大切になります。ただ、このシリーズの魅力は、芽衣ちゃんの“無償の愛”が、僕らの“心”に刺さって、やがて恋心に変わっていくお話にあるので、男性陣はどちらかというと受け手の芝居になりますね。自分からできることが少ない分、芽衣ちゃんをしっかり応援しつつ、彼女の優しさにお返しをしたいという“純粋な気持ち”でまっすぐな芝居を心がけたい。なので、その公演ごとの芽衣ちゃんの“愛”を感じ取って、丁寧なリアクションをする役作りをしたいですね。

お話を伺っているだけではなく、ほかの舞台も拝見させていただくと、荒木さんの中にはいつもキャラクターの造形に深い理解があるように思います。ご自身の中で確固とした役者像はあるんですか。

“自分らしくあること”に重点をおいています。僕はそれほど器用ではないし、瞬発的に演技ができるわけではないんです。僕にできることは、相手から感じたことをストレートに表現することで、だからこそ、“嘘”のない演技をしたい。僕は、あくまでプレイヤーであって、舵取りは、映像であれば監督、舞台であれば演出家ですから、作品のバランスをとるのは、僕の仕事ではないと思ってもいます。それは無責任に見えるかもしれませんが、“割り切り”を持つことも役者にとって大切です。というのも、僕なりのメッセージは、セルフプロデュースをしている音楽活動で伝えたいと思っているからです。そうやって、役割をしっかり認識しているからこそ、役者としての本職をまっとうできるし、自分の感情に“嘘”がない演技ができる。とはいえ、どの舞台でも答えが見つからないし、役者の魅力はそんな“葛藤”がたくさんあるところですね(笑)。

みんなのためにしっかりと真ん中に立ちたい

稽古はすでに“通し稽古”まで入っていると伺いました。ここまでの稽古の手応えを聞かせてください。

すごい稽古をしていると思います。前回はアンサンブルを入れずに、キャストがお面を被ってバックダンサーを務めました。それはそれで、みんなで作っていく苦労や達成感があったのですが、今作はアンサンブルが入ってくれたことで、僕たちが苦労した部分をフォローしてもらえるのと同時に、あれほど大変なことをよりレベルアップしてこなしてくれるから、作品の質も上がっています。何より僕ら役者が助かっていますね。だから、彼らの頑張りにしっかり答えたいし、彼らのおかげで背中を押されていると感じるので、メインキャストだけではなく、みんなのためにしっかりと座長として真ん中に立ちたいです。

荒木さんからはいつも作品を気にかけ、カンパニーを気にかけている視野の広い印象を受けます。

ありがとうございます。前回の座長の橋本祥平が頑張ってくれたから、今回があると思っています。だから、彼の作ってきたものを壊したくないんです。そのプレッシャーはあるし、できることなら、僕が座長の“鴎外バージョン”だけで終わって欲しくないですし、ほかのキャラクターのバージョンだって存在してもらいたい。僕らのカンパニーから、さらに次に繋がる結果を出したいですね。

例えば、今回の稽古で、荒木さんの中で、“読み稽古”から“立ち稽古”、それから“通し稽古”という舞台の一連の流れで、演じる上でのスタンスは変わったりするのでしょうか。

脚本を読み解く“読み稽古”は、悪い意味ではないのですが、ワンマンプレイに近くなります。というのも、実際の景色がなく、頭の中で景色を想像していますから、多少ではありますが、自分勝手に動いてしまうんですね。脚本を読んでいる時は、相手の言葉や表情を汲み取るより、自分がどういう感情で台詞を言っているのかを大事にします。僕自身はこういう発信をしたいと提示しているので、リアクションの積み重ねる稽古ではないかもしれません。

なるほど。

目から脚本を離して稽古をする“立ち稽古”に関しては、“読み稽古”から一段ステップが上がり、演出家が求めているシーンに合わせて実際に演技をしていきます。“読み稽古”で提示したことが、実際に演じてみると、ズレが生じたり、相手の動き方に合わせて、「こう演じた方がバランスがいいな」と考えながら演技します。こういう動きが欲しいという具体的な演出プランを持った演出家なら、その形に合わせます。どういう心情でこのシーンの台詞回しが行われるのか、相手の台詞の意図を感じて、どう演じればカンパニーでより良い舞台を作れるか探りながらの稽古ですね。

そうやって“めいげき”が出来上がるんですね、奥が深いです。

ええ。“通し稽古”は、“返し稽古”を積み重ねて、回数を重ねて体になじませて、どんな状況でも、どうにでも目指した動きができる演技の“癖”をつけていきます。全部の流れを通した上で、心情も動かしながら“立ち稽古”で繋がらないものを発見し、自問自答しながら無駄を省き、さらに演出家の修正が入って、全体の流れをスムーズにできるようにイメージすることを心がけています。

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