山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 41

Column

Easy Rider, Dream Harder !

Easy Rider, Dream Harder !

狂った夏が終わりを告げる。
すべてのものに永遠はなく、だからこそ私たちは前に進むしかない。
閉塞的な社会状況の中で生まれた“アメリカン・ニューシネマ”の傑作が、半世紀の時を超えて「いま」に響かせるメッセージ。


その後の「life」を決定的に変えてしまう出会い。幸か不幸か、僕はそのようなことに恵まれてきた。いつもそれは黒船のように、前触れもなく向こうからやってくる。たいていひどく居心地が悪くて、居場所もなく困惑しているとき。あるいはどうしようもない現実の前で立ち尽くしているときに。

『イージー・ライダー』もしかり。映画と云うよりは、頭をブン殴られたような強烈な体験。価値観をちゃぶ台ごとひっくり返されたような。(笑)いや、ほんとうに。

ヒッピー、コミューン、コカイン、密輸、ハーレー・ダビットソン、ベトナム戦争、マリファナ、ストーン、トリップ、フリーセックス、ロックンロール、白人至上主義、差別、人種問題、殺人、娼婦、マルディグラ、広漠の大地、ロードムービー、エトセトラ、エトセトラ。そしてなによりも、“freedom”。

とんでもないことを知ってしまった。ドラッグでブッ飛んでるシーンなんて、田舎の高校生に理解できるわけもないのだけれど。受験戦争にまったく馴染めなかった僕は“freedom”にこころを撃ち抜かれる。

キャプテン・アメリカ(ピーター・フォンダ)とビリー(デニス・ホッパー)は麻薬密輸で手にした大金で、西海岸からニューオリンズのマルディグラを目指して旅に出る。それぞれ鉄の馬にまたがり、ガソリンタンクに金を隠して。

旅に出る直前。キャプテン・アメリカは時計を空き地に投げ捨てる。僕にはこのシーンがすべてだった。“freedom”。もう時計はいらない。僕も本気で賭けてみようと思った。

自分で決断すること。その経験を受け取ること。考えるより感じてみること。

旅の終盤。彼らは南部でアメリカの闇に直面する。差別という殺伐。僕もその地で実際に経験したことがある。「日が暮れるまでにこの町を出ろ。でなければ、安全は保証しない」。顔色を変えずそう言われるのだ。これは20数年前の話。60年代はこんなものではなかっただろう。

差別する側は、キャプテン・アメリカとビリー、そして若きジャック・ニコルソンが扮するアル中弁護士ハンセンが象徴する“freedom”が怖いのだ。

本気で自由に生きようとする人間たちを認めたなら、彼らのロジックは崩壊してしまう。その恐怖が彼らを卑怯極まりない暴力に走らせる。

いつだって人は所有して、不自由になる。失うものがある限り、人は自由になんてなれやしない。僕はそう思う。

アメリカでも、この国でも。きっと世界のどこに居ても、どんな時代でも。“freedom”を目指すことは難しい。映画監督の井筒和幸さんがこう的確に指摘している。

「同じ自由でも“freedom”と“liberty”は違う。“liberty”は法の制約の中での自由で、“freedom”はすべての束縛からの自由を意味している」。この映画が伝えようとしているものがどちらなのか? 書くまでもないだろう。

ときどき思う。目前の信号を遵守している時点で、もう僕は飼われているな、と。無論、無意味に信号無視をしたりはしない。けれど、ここに疑問を感じなくなる自分にはなりたくない。この話題でガールフレンドと大ゲンカしたことがあったっけな(笑)。

この惑星に“freedom”なんてないのかもしれない。けれど、それでも。すべての束縛からの解放を求めて生きるのが、lifeの意味だと。僕は思う。僕たちは家畜ではない。

若い世代に、今だからこそ、観て欲しい。だから結末は書かないけれど、あのラストシーンは今でも希望だと思っている。

Easy Rider, Dream Harder !

感謝を込めて、今を生きる。


『イージー・ライダー / Easy Rider』:1969年公開(日本では1970年に公開)の、ピーター・フォンダとデニス・ホッパーによる“アメリカン・ニューシネマ”(ベトナム反戦運動、ヒッピー・ムーヴメントの高まりの中で登場した新しいスタイルの映画)の代表作。1965年型ハーレーダビッドソンと劇中に流れる音楽は、自由の象徴として当時の若者たちを強烈に惹きつけた。1969年(第42回)アカデミー賞で助演男優賞と脚本賞にノミネート。1998年にはアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録された。

使用された音楽は以下のとおり。
•ステッペンウルフ:「ワイルドでいこう!」「ザ・プッシャー」
•ザ・バンド:「ザ・ウェイト」
•バーズ:「Wasn’t Born to Follow」
•ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス:「If 6 Was 9」
•ロジャー・マッギン:「イッツ・オールライト・マ」「イージー・ライダーのバラード」
•ザ・ホーリー・モーダル・ラウンダーズ:「If You Want to Be a Bird(Bird Song)」
•フラタニティー・オブ・マン:「Don’t Bogart Me」
•エレクトリック・プルーンズ:「Kyrie Eleison / Mardi Gras(When the Saints)」
•リトル・エヴァ: 「Let’s Turkey Trot」
•エレクトリック・フラッグ:「Flash, Bam, Pow」

製作総指揮:バート・シュナイダー
製作・出演:ピーター・フォンダ
監督・出演:デニス・ホッパー
脚本:テリー・サザーン
撮影:ラズロ・コヴァックス
出演:ジャック・ニコルソン、カレン・ブラック、トニ・バジル

販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年福岡県生まれ。1979年にHEATWAVEを結成。1990年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』には、阪神・淡路大震災後に作られた「満月の夕」が収録され、多くのミュージシャン、幅広い世代に現在も歌い継がれている。アイルランドの重鎮、ドーナル・ラニーやホットハウス・フラワーズ、元モット・ザ・フープルのモーガン・フィッシャーら海外のミュージシャンとの親交も厚い。東日本大震災後は、仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳らと“MY LIFE IS MY MESSAGE”として、福島県相馬市の人たちと希望のヴァイブレーションを起こすイベントを続けている。2018年4月から池畑潤二(Drums)、細海魚(Keyboard)と新生HEATWAVEとしての活動を開始した。リスナーからのリクエストで構成されるソロ・アコースティック・ツアー“YOUR SONGS 2018”もいよいよ後半戦に突入。2017年12月22日渋谷duo MUSIC EXCHANGEのライヴを収録した『OFFICIAL BOOTLEG #005 171222』、17歳から現在に至るまでの激レア&貴重音源満載の『山口洋の頭の中のスープ』好評発売中。

オフィシャルサイト

ライブ情報

山口洋 solo tour“YOUR SONGS 2018”
9月2日(日)長野ネオンホール
9月4日(火)金沢メロメロポッチ
9月6日(木)奈良Beverly Hills
9月8日(土)岩国himaar
10月1日(月)いわき club SONIC iwaki
10月3日(水)新潟 Live Bar Mush
10月5日(金)仙台 LIVE HOUSE enn 3rd
10月7日(日)弘前 Robbin’s Nest
10月8日(月・祝)奥州市 おうちカフェMIUMIU
11月3日(土・祝)岡山 Blue Blues(ブルーブルース)
11月6日(火)出雲 London Pub LIBERATE
11月8日(木)高松 Music&Live RUFFHOUSE
11月10日(土)高知 シャララ opening act 中塚詩音
ブログのコメント欄にて、リクエスト受付中

HEATWAVE SESSIONS 2018_Ⅱ
9月29日(土)横浜 THUMBS UP
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