Interview

※事故物件で取材してきました。事故物件住みます芸人・松原タニシの怪談本がマジで怖すぎる!と異例のヒット『事故物件怪談 恐い間取り』

※事故物件で取材してきました。事故物件住みます芸人・松原タニシの怪談本がマジで怖すぎる!と異例のヒット『事故物件怪談 恐い間取り』

ものすごい勢いで売れている本がある。現在の部数は、なんと発売後二ヵ月で14刷7万部。 “事故物件住みます芸人”として、今やオカルトファンからも熱烈な支持を得ている松原タニシ初の著書『事故物件怪談 恐い間取り』。松原本人が暮らしてきた事故物件や、第三者から聞き及んだいわくつきの物件の間取り図と、そこにまつわる怖くて不思議なエピソードが詳細に記されている。さらに、いわゆる心霊スポットでの体を張った検証ルポも満載で、淡々と事実を書き連ねる文体も相まって、読んだそばからとにかく怖いのだ。

その上、指定された取材場所は都内某所、松原タニシの自宅。つまり事故物件である。恐る恐る訪れてみれば、そこは築50年ほどの古いビルではあるものの、中に入れば普通の1Kの部屋だった。いかにも男が暮らしている風情の雑然とした部屋で、インタビューはなかなかに楽しく進行し、ICレコーダーにも当初心配していたような変なノイズは入らなかった。最後に、本人が楽しそうに「よかったら見せましょうか!」と、いわくつきの赤ちゃん人形“みゆき”と市松人形の“孔子”を登場させてくれたのも、まぁ、ご愛嬌ということで。

しかし、取材の帰り道。部屋の隅に並んで座っていた当記事の編集者と松原タニシのマネージャーが、口を揃えてこう言ったのだ。「インタビュー中に突然、どうしようもなく眠くなったんですよね」。オカルト好きに言わせれば、それは霊障だとか、そうじゃないとか……。

取材・文 / 斉藤ユカ
撮影 / エンタメステーション編集部

怖いっていう感覚はすでにないんですよね。よっしゃネタになる! みたいに思ってしまう

©松原タニシ/二見書房

事故物件の間取りも、それにまつわるエピソードの数々も、ものすごく怖かったです。私は夜読むのが怖くて、昼間に一気読みしました。

そう言ってくれる人けっこういらっしゃるんですけど、そんなに怖いんだ!?  と思ってます、正直なところ(笑)。

だからここへ来るのが本当はイヤでした(笑)。本書に間取りが載っている「事故物件六軒目」がまさにこの部屋ですね。

そうです、そうです。50代の男の人が首吊り自殺したらしくて。でも部屋のどこで亡くなったのかはわからないんですよね。だから、ここかもしれないし、そこかもしれないし。ここには事務所の後輩と一緒に住んでるんです。僕は大阪でも部屋を借りていて、行ったり来たりで。本にも書きましたけど、事故物件だと二軒分合わせても家賃負担が重くないんです。

何か不可思議な現象はありましたか?

その同居してる後輩と連絡が取れなくなったことがあります。事務所の仕事が入ってる日で、すっぽかすようなヤツじゃないのにおかしいな、と。この部屋、8月に入るまでクーラーがついてなかったんで、熱中症で倒れてんちゃうかなとも思って、マネージャーが家まで確認に来たんですよ。そしたら、ちゃんと生きてたんですけど「意識がなくなってた」と。たまたまだったのか、この部屋のせいなのかは定かではないんですけどね。ま、彼はこの部屋のせいにしてますけど(笑)。ただ、クーラーがつく前は暑くて寝るどころじゃなかったので、意識なくなるほど寝てたっていうのもおかしな話だなって。

一度、手違いで事故物件ではない普通の部屋に住んでしまったと本書にも書かれていましたが、やはり物足りなかったですか?

それはもう物足りないですね。ほんっとに何もなかったですから。

事故物件にしろ心霊現象にしろ、正直、怖くないんですか?

そうですね、怖いっていう感覚はすでにないんですよ。よっしゃネタになる! みたいに思ってしまう。心霊スポットに行って、恐怖感を覚える前になぜか鳥肌が立つことがあって、そのときは「なんでや!?」って思いますけど(笑)。事故物件に住むことになったときも、やっぱり仕事がなかった頃ですから、「やったー仕事やー!」って感じでした。

もともと怖がりではないんですか。

お化け屋敷とかは本当に無理で、めちゃくちゃ怖いんですよ。

いや、だって、それは最初から作り物だとわかってるじゃないですか。

最近のやつはめっちゃくちゃ怖いんですって! お化け屋敷のイベントで怪談話をするっていう仕事をいただいたことがあって、試しにどうぞと言われるがままお化け屋敷に入ったことがあるんです。もう、怖すぎてダメでした(笑)。だって本当に出るじゃないですか、お化け役の人が。確実に出るっていうのが本当にもう無理なんです。

取材が行われたのは本書でも紹介されている都内某所の“事故物件”。

すみません、言っている意味がわかりません(笑)。

いやいや、確実に追っかけてくるんですよ?  怖いですよー! だって僕、ごめんなさいごめんなさいって言いながら駆け足で進みますからね。

ひとりで心霊スポットに出かける人が何を言っているんでしょう(笑)。

それは事故物件に住み続けて培われた精神力といいますか、芸人根性のようなものといいますか。なんかね、二人、三人で行くのはズルイなって思うふしがあるんです。ひとりで暗闇の中を進んでいくときに、このまま違う世界に足を踏み入れてしまうんじゃないかっていう怖さがありながらも、迷いこんでみたいなっていう好奇心もあって、それを乗り越えたときの達成感がすごいんですよね。ひとりでできたもん! みたいな。

できたもん(笑)。

できたもん! っていうのが快感じゃないですけど、達成感が半端ないんですよ。大勢だったら少なくとも心強いから、どんな心霊スポットも行けるじゃないですか。ひとりで行けば、よくやったなぁお前! というのを自分に言えるというか。それに僕、とにかく数をこなさいといけないんで(笑)。一ヶ所でも多く行って体験を重ねないと。

怖い話って、繰り返されるありふれた毎日からの脱却を叶えてくれるんです。

番組のロケなどとは別に、個人的に得た情報を検証しに出かけているんですよね。

やっぱり自分の目で確かめないと。人から聞いた現象が本当に起こるなら、やっぱり何かある場所なんだなって思うし、行ってみたら木の皮が剥げてて、それが人影に見えるに過ぎなかったということもあるんです。でも実際に行ってみて解明できない変な現象が起きたり、ましてや聞いてた話と違う現象が起きたら、やったー! って思いますよね。この世界も捨てたもんじゃないな、と。

ええと、この世界に何を求めているんでしょう(笑)。

ロマンですかね(笑)。恐怖感ももちろんありますよ、でもそれは、10のうち2ぐらい。あとの8は、やったー! という喜びです。稲川淳二さんもおっしゃっていたんですよ、怪談はロマンだって。怖い話って、繰り返されるありふれた毎日からの脱却を叶えてくれるんです。ほんのひと時でも夢見させてくれたり、ワクワクさせてくれる、いわゆるファンタジーなんです。そのファンタジーと現実が交差するところにいると、物語の主人公になった気分にもなる。だから嬉しいんですよ、心霊現象が起こると。

タニシさんはお仕事でたまたま事故物件に暮らすようになって、あくまでその流れでオカルト全般への造詣を深めていったわけですが、もしかしたら性格的に向いていたのかもしれませんね。

向いていると思います。物事を探求していくのが楽しい。僕ね、ひねた子供やったんですよ。大人に上から言われることに対して、いっつも「その根拠は何やねん!?」って考えてたような。何か自分で納得しないと気が済まない性格なんで、事故物件や心霊現象を探求する立場になってみて、ゲームじゃないですけどクリアしていく感覚が楽しいんですよね。わからないことがまだまだたくさんあるんだっていうのを、知ること自体も楽しい。戦国時代や戦争でたくさん人が死んでいるんだから、どの場所にも幽霊が出ないとおかしいって言う方がよくいるんですけど、もともと人が死んだ土地の上に建った建物の中でたまたま死んだ人がいて、そこに幽霊が出るのはなぜか突き止めましょうよ、っていう話なんですよね。

ただ、室町時代の板碑(墓石)だとか、市松人形の首だとか、くれると言われても断ることができるし、どこかでお祓いしてもらうこともできるじゃないですか。それをわざわざ自宅に持ち帰っているということは、何かを期待しているんですよね。

期待してますね(笑)。間違いないです。求めてます! 供養するのがもったいない。何か起きてから供養しても遅くないですからね。

そうやって活動していく中で、ちょっとずつ霊感が備わったり、霊障がより多く起こるようになったりはしていないんですか?

僕自身そう感じてはないんですが、周りは感じているみたいです。本にも書きましたけど、マネージャーが僕に電話をすると毎回ずっと変な音が聞こえていたとか(取材に同席したマネージャー談「電話の向こうでガラスが割れたような、ガシャガシャパシャンガシャンっていう音がずっと鳴っていました。カラオケにでも行っているのかなと思ったんですが、いつも自宅にいたんです」)。あと、「北野誠のおまえら行くな。」(エンタメ〜テレ)のロケで、北野誠さんといろんな心霊スポットをめぐるんですけど、あるとき泊まったホテルで北野さんと僕は隣同士の部屋だったんですね。翌朝、北野さんが「お前、昨日ずっと壁蹴ってたな」「朝方どこ行ったんや」って言うんです。「ずっとうるさかったで。オェーオェーずっと言うてたし、取り憑かれてるんちゃうか!?」って。ちなみに、北野さんの部屋側の壁は、僕の部屋ではテレビとかが設置されてる壁で、僕側からは蹴りようがないんです。もちろん外出もしてないですし、疲れて朝までぐっすりだったんで、オェーオェーってなってたはずもない。

そのときのロケで周ったところが、日本三大怨霊のひとつと言われている崇徳天皇を鎮めてるお寺と、七人ミサキという妖怪のルーツの神社。これは七人組の妖怪に見つかると魂を抜かれてそこに加えられてしまい、先頭の妖怪が成仏するという伝説があるところです。あと、いざなぎ流という高知県の民間信仰があって、今では重要無形民俗文化財に指定されているんですが、その太夫さんにも会いに行きました。呪詛を祭壇に集めて祈祷して封じ込めるっていう儀式をして、その祭壇は決して触れてはいけないらしいんですけど、僕ら普通に触ったりしてたんですよ。だから北野さんが「お前の部屋に来てたのはどれや!?」と。

タニシさんの周りは、確かに目に見ない何かで騒がしくなっているんですね。

そうですね。僕、本当に寝てる間にオェッて言うらしいんですよ。村田らむさんっていうライターの人と取材に行って、一緒に事故物件に泊まったことがあるんです。朝起きたららむさんが「タニシさん大丈夫ですか?」と。「ずっとオェーオェー言ってましたよ」って。でも僕はまったく記憶にない。とりあえず先に風呂入りますねと言って、シャワー浴びたんです。そしたらまたらむさんが「本当に大丈夫ですか? お風呂場でもオェーオェーって言ってましたけど」って。それは、起きてるからさすがに僕だってわかりますよ、「僕は何も言ってません」。

そのあと、ニコ生(ニコニコ生放送)で動画配信をしながら心霊スポットに行ったんですけど、石段の一段目と三段目を踏んではいけないと言われている神社があって、あえて踏んでみましょうってことで踏んで歩いてたんです。動画配信って、見てる人からリアルタイムでコメントが入るじゃないですか。そこに「今オェーッって聞こえた」とか「タニシさんがオェーオェー言った!」とか次々に。

今年に入って巫女さんが「タニシくんがもう溢れちゃってるから連れてきなさい」と

もしかしたら、芸人さんとしては幸か不幸かという話かもしれませんが、例えば守護霊であったりとか、タニシさんを守る何らかの力がすごく強く働いているのかも。

ああ、そういうのあるんですかね。京都のある神社に、めっちゃ見える巫女さんがいるんですよ。それこそ北野誠さんの行きつけの神社なんですけどね。そこに3年前に行ったんです。その頃、僕は2軒目の事故物件に住んでて、スマホの顔認証がどうもうまくいかない時期だったんです。膝で認証したり、腰で認証したりで、顔で認証されないんですよ。その話を巫女さんにしたら「あんたには元々すごいものが憑いてて、それが磁石みたいにいろんなものを引き寄せている。今、畜生の塊みたいになってるよ」と。要は、ウサギだのイタチだのっていう小動物がいっぱい僕に憑いてたらしいんですね。膝で認証されるのはそこにいるウサギが僕よりも主張しているからだ、と。僕、ウサギに負けたんです(笑)。「元々キャパシティが広いから、いろんなものを受容してこれたけど、あとほんの少ししか余裕ないよ」って言われて。

今年に入ってその巫女さんが北野さんに「タニシくんがもう溢れちゃってるから連れてきなさい」と言っていたと聞いたので、行ってきたんです。そこで「なんか僕、オェーオェーって言ってるらしいんですよ」って話をしたら「溢れたものを吐き出してるんだよ」って。で、その溢れているという「何か」を祓ってもらったんですけど、ただ背中に手をかざしてサーっと動かすだけなのにすんごい痛いんです。しかも焦げ臭いにおいが神社中に立ち込めて、なんか、すごかった。でも「仕事に差し障りのないように、ちょっとだけ残しておいたからね」って。そんなことできるんや!? って、そっちもかなり驚きでしたけど(笑)。

無意識に自分が何かを発しているって、考えたら怖いですよね。

普通に言葉を発してたこともあるみたいなんですよ。2年ぐらい前ですけど、怪談イベントに一緒に出る人たちと居酒屋に行ったとき、誰かがトマトスライスを頼んだんです。で、僕それを食べようとしたら、みんなが「ちょ、ちょ、ちょ、待てお前!」と。「タニシ、さっきトマトスライス嫌いって言ってたよね」って言うんです。でも、僕そんなこと言ってないんですよ、だってトマト好きやし。「でも、俺らがトマトスライス頼もうとしたときに“僕トマト食べれないんですよ”ってタニシはっきり言うたで!?」って。そこにいる全員が「言った!」って言うんです。でも、絶対言ってないんです、僕は(笑)。

怖いけど、ちょっと面白い(笑)。

そうなんですよ、なんでトマトやねん(笑)。

でも、本書に載っている写真の通り、タニシさんの顔だけが黒く写ったりという不思議な現象が現実に起きているので、心配ではありますよね。

日蓮宗蓮久寺の住職には、5年後にすべて失う前兆だと言われたんですけどね、そこは5年経つのを待ってみるしかないですね。ただ、僕は事故物件に住むことも、心霊スポットに行くことも、あちらの世界を踏み荒らそうと思っているわけじゃなくて、畏怖の念を抱きつつ、お会いできるならお会いしたいなぁと思っているだけなんです。だから、なんとか仲良くなれたらな、と。

え、仲良く!? 幽霊とか、そういうものと?

まぁ、そうですねぇ。なるべくなら「ああ怖かった!」で終わるのではなく、部屋に棲む何者かと仲良くなって引っ越しができたらな、と。そうなれば僕が住んだあとは心理的瑕疵がなくなるはずですし、少なくとも僕が生きてることで、事故物件に住んだからって死ぬことはないよっていう証明にはなるわけですよね。それにほら、僕はどうやらキャパシティが広いみたいだから。今回の本の原稿書いてるときも追い詰められて、ああもう無理だ!ってなると、心霊スポットに行っちゃうんですよ。それがバレて、出版社の会議室にカンヅメにされたんですけど(笑)。

逃避場所が心霊スポットとは(笑)。

もう感覚が麻痺しちゃってますよね。何が怖いのかが、僕にはもはやわからなくなってきました(笑)。

左:松原タニシ。中央:市松人形の胴体に入っていた生首・孔子(最近、胴体部分を作製)。右:曰くつきの赤ちゃん人形・みゆき。

松原タニシ(まつばら・たにし)

1982年4月28日、兵庫県神戸市生まれ。松竹芸能所属のピン芸人。現在は「事故物件住みます芸人」として活動。2012年よりテレビ番組「北野誠のおまえら行くな。」(エンタメ~テレ)の企画により大阪で事故物件に住みはじめ、これまで大阪、千葉、東京など6軒の事故物件に住む。日本各地の心霊スポットを巡り、インターネット配信も不定期に実施。事故物件で起きる不思議な話を中心に怪談イベントや怪談企画の番組など多数出演する。CBCラジオ「北野誠のズバリ」、YouTube・ニコニコ生放送「おちゅーんLIVE!」などで活躍中。
Twitter@tanishisuki

書籍情報

『事故物件怪談 恐い間取り』

松原 タニシ (著)
二見書房

事故物件とは、前の住人が自殺・殺人・孤独死・事故などで死んでいる部屋や家のこと。 そんな「事故物件」を転々としている、「事故物件住みます芸人」の松原タニシ、初の書き下ろし単行本。 「ワケあり物件」の不思議な話を、すべて間取り付きで紹介。怖くて部屋に入れない……!「普通の部屋が実はいちばん恐い」という実話を揃えた怪談集。
世の中を震撼させた殺人犯が住んだ部屋 /住むとひき逃げに遭う部屋/前の住人も前の前の住人も自殺している部屋/ 二年に一回死ぬ部屋/黒い人がゆっくり近付いてくる部屋 /黒いシミが浮き出てくる部屋/天井の穴から男の顔が突き出ている部屋etc


『怪談グランプリ 2018 地獄変』

松原タニシ(著) 島田秀平(著) 大島てる(著)ほか
TOブックス

怪談グランプリ10周年! 過去のチャンピオンが集結! 関西テレビの大人気番組『稲川淳二の怪談グランプリ』の過去のチャンピオンや実力派の怪談師たちによるオール書きおろし怪談集! 10周年にふさわしい豪華な顔ぶれが集結!! 地獄変とは何なのか……? それは読んで確かめるしかない!!