Interview

sumikaが劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』に書き下ろしたシングル「ファンファーレ/春夏秋冬」。僕たちのあの頃の気持ちと、バンドの今の思い──

sumikaが劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』に書き下ろしたシングル「ファンファーレ/春夏秋冬」。僕たちのあの頃の気持ちと、バンドの今の思い──

今年4月にリリースした「Fiction e.p」の大ヒットを受け、日本武道館2デイズを含む全16公演のツアーを大成功のうちに終えた4人組バンド、sumika。早くも登場するニューシングル「ファンファーレ/春夏秋冬」は9月1日公開の劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』のオープニングテーマと主題歌に起用された入魂の作品だ。同時発売のサウンドトラック収録の劇中歌「秘密(movie ver.)」を含む3曲は、アニメスタッフと綿密な打ち合わせを行い、時間をかけ、丁寧にレコーディングを行ったことで、『君の膵臓をたべたい』という作品の重要なパートを担いながら、バンドにとっての新境地を鮮やかに切り開いている。果たして、メンバー4人の現在の心境やいかに?

取材・文 / 小野田雄

僕らのライヴを観たいと思ってくれる方が増えてきたことがなにより嬉しい

今年5月から7月にかけて、日本武道館2デイズを含む、初のホールツアー全16公演を終えたばかりですが、その手応えはいかがでしたか?

黒田隼之介(Gt. / Cho.) 武道館はバンドマンだったら誰しも立ちたいと夢見る場所だと思うんですけど、今回はツアーの一会場、東京公演として武道館を捉えていたので、武道館でやる嬉しさや緊張感を隠してステージに立ったんですけど、立ったら立ったで、お客さんが4人しかいなかった最初のライヴを思い出しましたし、そこから地続きで、武道館のステージに立てているんだなと感慨深くもありました。

片岡健太(Vo. / Gt.) 結成時から一番大事にしているのは、ライヴを観たいと思ってくださった方がちゃんと観られる場所でライヴをすることなんです。だから、前回の動員や応募の数を踏まえて会場選びをしながら、少しずつ動員を増やしてきて。東京公演ではZepp TOKYOをやって、その後、東京国際フォーラム ホールAをやって、次に大きい会場ということで武道館を選びましたし、そうやって無理せず活動を続けるなかで、僕らのライヴを観たいと思ってくれる方が増えてきたことがなにより嬉しいですね。

バンドの歩みとしては、昨年のアルバム『Familia』以降、メンバー4人の音だけでなく、ストリングスやホーンを用いたり、アレンジも多彩になりましたよね。

片岡 わかりやすく言うと、2015年にミニアルバム『Vital Apartment.』を出したあたりまでは、メンバーだけの音で作品を構成しないと、バンドでやる意味がないと思っていたところがあったんですけど、その後、僕が倒れて声が出なくなったとき、残りのメンバーは僕に「声が出なくてもいいから、一緒にバンドやろう」と言ってくれましたし、僕もボーカリストである以前に「人として、みんなとバンドをやりたい」と思ったんです。そんな思いがあったからこそ、2016年に出したシングル「Lovers/「伝言歌」」を作るにあたって、それぞれの楽器の役割以前にこの4人で何ができるのかということを考えて、思い切って鍵盤の音を抜いたり、エレキギターの音を抜いたりして。そういうアプローチであっても、バンドとしてまったくブレないことがわかったので、その後、積極的にストリングスやホーンのアレンジができるようになったんです。そして、そのスタンスがどんどんアップデートされて、いい意味で無責任になったというか(笑)、2018年まで音楽性を広げつつ、楽しみながら活動を続けてこられたんだと思います。

音楽、バンドをやり始めた頃の気持ちに立ち変える

そして、今回のニューシングル「ファンファーレ/春夏秋冬」はそれまでの拡大路線から一転して、バンドサウンドに回帰した作品になっていますよね。

片岡 そうですね。改めて原点回帰した作品なんだと思います。sumikaは結成して5年なんですけど、今回の両A面シングルは劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』のために書き下ろした作品で、アニメに出てくる登場人物の年齢である高校生だったとき、自分たちは何をやってたかなって思い返すと、僕はバンドをやっていましたし、その頃、オリジナル曲を作り始めたんですよ。だから、今回の作品は、『君の膵臓をたべたい』の制作チームと話し合ったとき、sumikaの原点というより、音楽、バンドをやり始めた頃の気持ちに立ち変えて、曲を作ろうということになったんです。

荒井智之(Dr. / Cho.) それなりにいろんなことを経験して、知識も増えてきた今、それこそ楽器を触り始めた学生時代の気持ちや(片岡)健太と出会った頃のことを思い返すという作業はいい意味で違和感がありました。過去の自分というのは、時が経てば経つほど、恥ずかしい部分や足りてなかった部分を思い出して、蓋をしたくなったりもするんですけど、今回の制作で過去の自分と向き合うなかで、今の自分にはないもの、忘れてしまったいい部分にも気づかされましたし、意識的に過去を肯定的に捉える機会にもなったので、そういう意味でも感謝しています。

テレビアニメ『ヲタクに恋は難しい』オープニング・テーマを務めた4月リリースの前作「Fiction e.p」では、片岡さんの心境とアニメのリンクするポイントを模索したということですが、今回はアニメにもう一歩踏み込んで制作を進められたんですよね?

片岡 そうですね。最初にお話をいただいたのは約1年前で、「この劇場アニメに3曲書き下ろして楽曲提供して欲しい」と。もちろん、原作や実写版映画のことは知っていたんですけど、だからこそアニメ化される1年後には相当ハードルが上がっているんじゃないかと思いましたし、それが心地良いプレッシャーにもなって、せっかく準備期間があるわけだから、ボタンの掛け違いだけは避けたいなって。だから、プロジェクトが進む前に『君の膵臓をたべたい』の制作チームと打ち合わせる場を設けていただいて、劇場アニメで伝えたいことやそれぞれの曲の役割、曲が流れるタイミングなどを伺ったあとで気持ち良く楽曲制作に臨めたんです。そして、一曲出来上がったら、聴いてもらって、そこで出てきた要望やアイデアを僕らのなかで咀嚼して、それをまた曲に反映する。そういうラリーを続けて、一曲完成させたら、次の曲に取りかかるというプロセスで、「ファンファーレ」、(シングルと同時リリースされるサウンドトラック収録の)「秘密(movie ver.)」、「春夏秋冬」の順に進めていきました。

新しい経験を、この作品が連れてきてくれた

バンドの蒼い衝動性を凝縮した「ファンファーレ」に対して、初めてバンド名義で作曲した主題歌の「春夏秋冬」はスケールが大きいバラードになっています。

片岡 sumikaは毎回僕がデモを作って、みんなでイメージを共有してからレコーディングに入るんですけど、「ファンファーレ」はデモを作らず、スタジオでドカーン、バキーンって感じで録音したのに対して、「春夏秋冬」はめちゃくちゃ悩みましたね。主題歌というプレッシャーもあってか、サビだけどうしてもできなくて、それを素直にメンバーに話したら、「俺たちはバンドだし、音楽を始めた頃の気持ちと向き合う作品なんだから、この曲はメンバー一丸となって完成させよう」となりまして。僕はバンドを組んで以来、メンバー全員で曲作りをしたのは初めてだったので、そういう新しい経験を、この作品が連れてきてくれたのは面白いことでした。

その甲斐あって、素晴らしい曲が出来上がりましたね。

片岡 曲を作っているときは苦労が圧倒的に多くて。意識が朦朧として風呂場で転んで肋骨にヒビが入ったり、包丁で指を切っちゃったり、いろいろ大変だったんですけど(苦笑)、完成して試写のときに聴いたら、苦労が成仏して、ようやく泣けましたね(笑)。

そして、サントラに収録される劇中歌「秘密(movie ver.)」はピアノフレーズのループが土台になった曲ですが、この曲は小川さんが作曲を手がけたんですよね?

小川貴之(Key. / Cho.) そうです。当初は絵コンテを見ずに曲作りに取りかかっていて、その時点ではふわっとした曲だったんですけど、『君の膵臓をたべたい』チームにお願いして、絵コンテを見せてもらったら、ピアノのイントロが自然と降ってきて、曲のイメージが鮮明になったのには自分でも驚きました。

変化と刺激を糧に、今後も進化していく

映画の制作現場との密な関係性から今回の3曲を生み出したことで、バンドとしてはどんな経験を得たと思いますか。

片岡 かけ算をしていくことの楽しさは年々強くなっているんですけど、今回のシングルもお話をいただいた段階に1年後の完成形が想像できていたかというと、まったく想像できなかったことだったりもして、今のsumikaはそういう変化を楽しめるモードになっていると思いますし、自分たちの内面の変化に加えて、自分たち以外の人たちが与えてくれる刺激も糧にして、今後も進化していけたらいいなって思ってます。おそらく、この作品を作ったあとにはハードルがまた上がると思うんですけど、外に向けて開いているバンドの今の状態を大切に、今後も動き続けていきたいですね。

sumika 『ファンファーレ / 春夏秋冬』 Release Tour

10月28日(日)宮城県 SENDAI GIGS
11月4日(日)北海道 ZEPP SAPPORO
11月7日(水)愛知県 ZEPP NAGOYA
11月8日(木)愛知県 ZEPP NAGOYA
11月14日(水)東京都 ZEPP TOKYO
11月15日(木)東京都 ZEPP TOKYO
11月25日(日)大阪府 ZEPP OSAKA BAYSIDE
11月26日(月)大阪府 ZEPP OSAKA BAYSIDE
11月30日(金)広島県 BLUELIVE HIROSHIMA
12月4日(火)福岡県 DRUM LOGOS
12月5日(水)福岡県 DRUM LOGOS

sumika(すみか)

片岡健太(vocal / guitar)、荒井智之(drums / chorus) 、黒田隼之介(guitar / chorus)、小川貴之(keybords / chorus)。様々な人にとっての“sumika(住処)”のような場所になって欲しいとの願いを込めて、2013年5月に結成。2017年7月に発表した1stフルアルバム『Familia』にてオリコン週間チャート5位を記録。2018年4月には「Fiction e.p」をメジャーリリース、オリコン週間チャート3位を記録、6月には日本武道館3デイズ公演をソールドアウトさせている。

オフィシャルサイト
Twitter(@ sumika_inc)

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