Report

ROOTS66 -Naughty50- @日本武道館 2016.03.27

ROOTS66 -Naughty50- @日本武道館 2016.03.27

1966年「丙午」生まれと言えば、世間的には出生率が激減した年であるにも関わらず、ミュージックシーンには、その迷信を覆すかのようなロックスピリットに溢れた、唯一無二の個性とパワーを持ったミュージシャンが数多く登場した。
2006年、男の厄年である数え年42歳を前に集結した彼らが、「10年後にまた集まろう」の宣言通り、さらにスケールアップして再集結。
同じ時代を生きてきた同級生ならではのレアな選曲や、ここでしか観られない貴重なセッションに武道館が沸いた。
変わらぬやんちゃぶりと熟成された深みを併せ持ちながら、年齢を超越した圧倒的な個性と存在感を放つミュージシャンに魅了された3時間以上に及ぶステージ。
全編エキサイティングで音楽愛に溢れた、新たな伝説のライブがここに誕生した。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 柴田恵理・三浦麻旅子


「僕等はビートルズが来日した1966年に生まれた」とサブタイトルでうたっているように、武道館に集結したのは今年50歳を迎える1966年生まれの ミュージシャンたちだ。前年の1965年には、奥田民生、尾崎豊、吉川晃司、吉田美和などそうそうたるアーティストが生まれているが、66年も負けず劣らず個性派アーティストが誕生している。ジュンスカの宮田和弥、ユニコーンのABEDON、 イエモンの吉井和哉、ウルフルズのトータス松本、スガシカオ、斉藤和義など、現役バリバリの50歳たちが武道館のステージに立つ。

イベント“ROOTS 66 -Naughty50-” のきっかけは10年前にあった。1966年 は丙午(ひのえうま)で、 干支(えと)的には激しい気性に生まれつくという言い伝えがある。特に女性は“男まさり”になると言われ、丙午の年は出産を控える傾向が昔からあった。この迷信のせいで、1966年の出生率は本当に落ちてしまったのだった。そのために仲間意識が高まったのか、40歳になった66年生まれアーティストたちは“合同厄払いライブ”を2006年に行なった。その際、「また10年後に会おう」と約束したのだという。その約束が2016年に果たされたというわけだ。

客席を見渡してみると、観客はアラフォー世代がほとんどを占めている。80年代後半にティーンエイジャーだった彼らは、66年生まれのミュージシャンたちが巻き起こしたバンドブームを支え、彼らの50歳を祝いに武道館にやってきたのだ。
バンドブームとは関係なく活躍してきたアーティストたちもいる。“紅2点”の渡辺美里と斉藤由貴は10代 デビュー組、スガシカオや田島貴男は90年代デビュー組で、バンドたちと一緒に オーディエンスの様々な青春の場面を彩ってきた。キャリアも音楽性も芸風も異なるバラエティに富んだ出演者を、丸ごと呑み込む度量のある 観客たちが武道館を埋め尽くしている。 

スタートは出演者全員が舞台に上がり、66年に大ヒットしたウィルソン・ピケットのR&Bナンバー「LAND OF 1000 DANCES(邦題・ダンス天国)」を合唱。続いて懐かしの歌番組「夜のヒットスタジオ」のオープニング形式で、出演者が紹介されていく。田島貴男が 「やさしくなりたい」を歌うと、次に斉藤和義がマイクを取って「サマータイムブルース」を歌って渡辺美里を紹介するという具合に、アー ティスト同士が持ち歌を歌い繋いでいく。この豪華なメドレーに、客席が盛り上がらない訳がない。というか、豪華なボーカリスト陣を目の前にして、目移りがして仕方がないといった感じだ。

バックに目を移すと、ドラムは阿部耕作(THE COLLECTORS)とたちばな哲也(SPARKS GO GO)、 バンマスのキーボードは奥野真哉(SOUL FLOWER UNION)で、谷中 敦(東京スカパラダイスオーケストラ)など4人のブラス・セクションが華麗な響きを加える。バンドもこれまた全員が66年 生まれ。ベースのtatsu(レピッシュ)は67年生まれなので“ゲスト扱い” という徹底ぶりに笑いが込み上げる。 

ゴージャスな“同窓会ショー”は宮田和弥の歌うイベント・テーマ曲「丙午Song」から始まった。
次に登場した大槻ケンヂは、トレードマークの長ラン姿。「僕に似ている奴を紹介します。斉藤和義!」とコールすると、フライングVギターを抱えた斉藤がお揃いの長ランを着て現われたから、場内は大爆笑。バンドに加わって「日本印度化計画」を熱演したのだった。筋肉少女帯の初武道館(90年)を観たことが昨日のように思い出されるのは、僕だけだろうか(笑)。

ソウルフラワーユニオンの中川敬は、「大槻ケンヂの後は、 歌いにくいね」と言いながらステージに立つ。阪神・淡路大震災から東日本大震災へと歌い継がれてきた「満月の夕」を披露する。爆笑していたオーディエンスが、一転して静かにこの名曲に聴き入った。
怒髪天の増子直純は、登場するなり「皆さん、感動中に申し訳ない。やりずらいゼ~!」とコメント。場内から笑いが起こる。それぞれの持ち味が違うので、歌う側は大変だ。それでも、♪オトナはサイコ―!青春続行!人生背負って大ハシャギ!♪と叫ぶ「オトナノススメ」が始まると、会場を“自分の色”に強引に染め上げたのがさすがだった。

撮影 / 三浦麻旅子

撮影 / 三浦麻旅子

 

増子が田島とトータスを呼び込む。最初のスペシャル・セッションは、世良公則&ツイストの78年の大ヒット「銃爪(ひきがね)」を3人で歌う。当時、小学6年生のヤンチャ盛りの3人は、きっと教室の掃除をサボって、ホウキをマイクスタンドに見立てて“世良”になり切っていたのに違いない。そしてその通りのパフォーマンスになった。思い切りハスキーに歌うので、歌詞は「ガウガウ」としか聴こえない(笑)。サビを3人で歌う迫力は、 まるで猛獣だ。大いに盛り上がった後、エンディングはピンク・レディーの「UFO」 のポーズで締め、大喝采を浴びた。
田島だけ残って、「接吻」を歌う。このところグッと脂ののってきたソウルフルな田島のボーカルに、久々に接したオーディエンスがうっとりと酔わされていく。

今度は田島が中川と吉井和哉を呼び込む。曲は、今年、急逝したデヴィッド・ボウイの「Changes」で、中川が訳した日本語詞バージョンで3人が交代で歌う。そこに凛とした背景を与える奥野のピアノが、素晴らしい。僕はこの選曲に感じるところがあった。日本の音楽にも重要な影響を与えたレジェンドのボウイに対して、最大限のリスペクトが込められている。それをこうした“お祭り”の場で実行することには、大きな意義がある。それは、“50歳のオトナたち”だからこそ可能なことなのだ。この歌は“ROOTS 66 -Naughty50-”に内在する“音楽愛”を象徴的に表わしていて、本当に感動的だった。

終わって吉井が紹介したのは、スガシカオだった。「濃い口の味噌ラーメンの後に、ステーキが出てくるようなイベントですね。僕はリハからずっと濃い人たちに囲まれて、自分が薄くて小さいんじゃないかと思ってました(笑)。 だから今日は“中間色”で行こうと思っています」。まったくスガの言う通り、個性の激しいぶつかり合いが続く。
スガは「Progress」 を丁寧に歌う。エネルギーをじっくり溜めてサビで放出する。時折混じるシャウトが、鋭くて切ない。その歌い方は、薄いどころか、僕には濃く感じられた。♪君とぼくの甘酸っぱい挫折に捧ぐ…♪というフレーズは、“50歳のProgress(進歩)” としてめちゃくちゃカッコよかったのである。 
直後にスガは、スカパンクバンド“KEMURI”の伊藤ふみおを呼び込んで、一緒に「リンダリンダ」を歌った。内省的な「Progress」から、外にエネルギーを解放する真逆のブルーハーツ・ナンバーへの変化に、観客も歌い出す。応えてスガも、思い切りの笑顔で歌ったのだった。

トータスと斉藤由貴が「完全に場つなぎトークです」と登場。やっとリラックス・タイムがやってきた。斉藤由貴が「武道館で歌うのは初めて。すごく嬉しいです」と言えば、トータスは「好きな食べ物は何ですか?」と返すぐだぐだトークがたまらない。場をつないでもらって準備している斉藤和義が、「さっきリハーサルで“斉藤”って書いてある目印のところに立ったら、スタッフに“そこは由貴さんです”って言われた」と混ぜ返す。

トータスが「では、もう一人の斉藤さんが歌います!」。お約束のセリフを受けて和義がギターで弾き出したのは、「ずっと好きだった」のイントロだった。客席から「オーッ」と声が上がる。口髭をたくわえた和義の精悍な表情が、オトナのラブソングによく似合う。40代の「ずっと好きだった」もよかったが、50歳もまた深いニュアンスが加わって魅力的だ。熟成されたボーカルに、スカパラの沖祐市のオルガンがマッチして、明るいロックンロールで会場を沸かせたのだった。

終わって、和義に代わって渡辺美里が登場。「My Revolution」を歌う。大ヒット曲というアイテムが、イベントでは最大の効果を上げる。後で増子が「ヒット曲、禁止。俺たち、ないもん(笑)」 とボヤいていたが、観客がストレートに盛り上がるのはやはりいいものだ。だから吉井と和義を呼び込んで美里が歌った「ロックンロール・ ウィドウ」は、いつも以上に気合いが入っていて、いっそう凄みが利いていたのだった。

ABEDONは、 盟友の八熊慎一(SPARKS GO GO)とユニコーンの「WAO!」を歌う。ユニコーンはメンバー全員の“50歳祭り”を開催していて、今年は最後の50祭のABEDONの番だ。だから彼にとってこのイベントは、前夜祭みたいなもの。「今日は私が生まれた武道館に集まっていただき、ありがとうございます」と挨拶して煙に巻く。

終わると宮田を呼んで、2人でボ・ガンボスの「トンネル抜けて」を歌った。奥野がアコーディオン、八熊がベース、阿部耕作がドラム、木暮晋也(ヒックスヴィル)がスライドギターを弾く。2000年に亡くなったボ・ガンボスのボーカル“どんと”に捧げるように演奏されたのは、これもこのイベントの音楽愛の成せる業だろう。

伊藤がKEMURIの 「SUNNY SIDE UP!」で会場をスカのリズムで踊らせると、ライブはいよいよ終盤だ。
シンセで「卒業」のイントロが流れると、歓声が上がり、斉藤由貴が現われた。それまでの出演者とはまったく違うたたずまいだ。オーディエンスに手を上げて左右に振る動きを促したり、堂に入った“アイドル”ぶりだ。終わると「じゃー、サクッと座ってもらっていいですか?」といきなり“仕切る”由貴に、会場から笑いが起こる。“押し技”のアーティストが続いたから、由貴の“引き技”が新鮮に映る。宮田や増子など “男子コーラス隊”を呼び込んで歌ったのは、竹内まりやの「人生の扉」。パンクバンドがアイドルにコーラスを付けるという、あり得ないシチュエ―ションに会場は大喜びしたのだった。

撮影 / 柴田恵理

撮影 / 柴田恵理

 

吉井和哉が選んだのは、今年再結成したイエモンの「パール」。シブい選曲だ。オルケスタ・デ・ラ・ルスの塩谷哲のピアノが、幻想的な色合いを加える。
続く八熊は、バンドの同僚のたちばな哲也と、ABEDONをバックに「ルーシーはムーンフェイス」を歌い、大槻ケンヂを呼び込んで最終盤のセッションに臨む。
ステージに現われた大槻は、なんと真っ白なスーツが血だらけ。「いやぁ、オヤジ狩りに合っちゃって」ととぼけたセリフで笑わせる。曲は井上陽水の「氷の世界」。シュールな歌詞が、シュールなキャラの大槻と八熊によく似合う。
そしてトリを任されたのは、トータス松本だった。この日、トータスは「森進一に似てる」だの、なんだかんだとイジメられっぱなし。「ウルフルズでは威張ってるんですけどね。実は今日は、誕生日順に歌ってるんですよ。僕は66年12月28日生まれ。いちばん年下ということで、ほんとにイジメられてます。もしこのメンバーと同じクラスだったら、暗い人間になってたかも」と、イジメの種明かしをしたのだった。それでも歌った「明星」は、トリにふさわしい50歳の人生ソングだった。

トータスがバックバンドのメンバー紹介をして、最後の大セッションに突入する。このパートは“公開打ち上げ”みたいな雰囲気で、全員が満面の笑みで歌いまくる。中で忌野清志郎のラストアルバム『夢助』からの「JUMP」が 素晴らしかった。清志郎は出演者全員にとって“憧れの先輩”だ。定番の「雨あがりの夜空に」ではなく、メッセージ性の強い「JUMP」を選んだところにもこのイベントの音楽愛を感じたのだった。

アンコールは西城秀樹のヒット曲「YOUNG MAN」。オーディエンスも全員参加の振付ナンバーで、超長丁場のイベントは大団円を迎えた。面白かったのは、吉井和哉。ステージの端っこに陣取った吉井は、他のミュージシャンが童心に返って踊っているのに、一人だけくねくねとナルシスティックなダンスをしていたのだった。

撮影 / 三浦麻旅子

撮影 / 三浦麻旅子

 

終演後の楽屋打ち上げに潜入した僕は、吉井に早速“ナルシス・ダンス”について質問してみた。「ああ、あれ? あれはね、みんなが同じことしても、つまんないでしょ」。さすがに吉井だ(笑)。
トランペットの田中和(勝手にしやがれ)は 「人数が少ない丙午世代だから、みんなほんとに仲間意識があるみたいね」。 
サックスの田中邦和(センベロ)は 「楽しかったぁ」。
ABEDONは 「50歳祭は慣れてるからね」。
たちばな「曲が多かったから、覚えるの大変だった」。
バンマスの奥野は「ちゃんとやれて、達成感!」

それぞれがワイワイやっている中、斉藤由貴は本番中で一瞬、歌の入り方を間違えたように見えたシーンがあったが、「私が間違ったんではないです…誰が悪いっていうわけじゃないですけど」と相変わらずの“引き技”で笑いを取っていた。

さて、10年後のROOTS66の 還暦ライブは、どんなものになるのだろう。この仲間と音楽愛があれば、きっと楽しいものになるのに違いない!

ROOTS66 -Naughty50-@日本武道館 2016.03.27 セットリスト

01.LAND OF 1000 DANCES/全員
02.夜ヒット形式メドレー(宮田和弥~大槻ケンヂ~中川敬~増子直純~田島貴男~斉藤和義~渡辺美里~スガ シカオ~ABEDON~伊藤ふみお~斉藤由貴~吉井和哉~八熊慎一~トータス松本)
03.丙午Song/宮田和弥
04.さらば愛しき危険たちよ/宮田和弥
05.日本印度化計画/大槻ケンヂ×斉藤和義
06.満月の夕/中川敬
07.オトナノススメ/増子直純
08.銃爪(ひきがね)(世良公則&ツイスト)/増子直純×トータス松本×田島貴男
09.接吻/田島貴男
10.Changes(デヴィッド・ボウイ)/中川敬×田島貴男×吉井和哉
11.Progress/スガ シカオ
12.リンダリンダ(THE BLUE HEARTS)/スガ シカオ×伊藤ふみお
TALK1(斉藤和義・斉藤由貴・トータス松本)
13.ずっと好きだった/斉藤和義
14.My Revolution/渡辺美里
15.ロックンロール・ウィドウ(山口百恵)/吉井和哉×斉藤和義×渡辺美里
TALK2(斉藤和義・渡辺美里・吉井和哉)
16.WAO!/ABEDON
17.トンネル抜けて(BO GUMBOS)/宮田和弥×ABEDON
18.SUNNY SIDE UP!/伊藤ふみお
19.卒業/斉藤由貴
20.人生の扉(竹内まりや)/斉藤由貴+宮田和弥・田島貴男・トータス松本・増子直純
21.パール/吉井和哉
TALK3(宮田和弥・渡辺美里・八熊慎一)
22.ルーシーはムーンフェイス/八熊慎一
23.氷の世界(井上陽水)/大槻ケンヂ×八熊慎一
24.明星/トータス松本
25.JUMP(忌野清志郎)/全員
26.戦争を知らない子供たち(ジローズ)/全員
27.勝手にしやがれ(沢田研二)/全員

<アンコール>
01.YOUNG MAN(西城秀樹)/全員

出演者

友森昭一 1966.01.13
宮田和弥(JUN SKY WALKER(S)) 1966.02.01
大槻ケンヂ(筋肉少女帯・特撮) 1966.02.06
福島忍(勝手にしやがれ)  1966.03.21
中川敬(SOUL FLOWER UNION) 1966.03.29
増子直純(怒髪天) 1966.04.23
田島貴男(ORIGINAL LOVE) 1966.04.24
田中邦和(sembello) 1966.05.13
塩谷哲 1966.06.08
斉藤和義 1966.06.22 
渡辺美里 1966.07.12 
スガ シカオ 1966.07.28
ABEDON(UNICORN) 1966.07.30
阿部耕作(THE COLLECTORS) 1966.07.30
伊藤ふみお(KEMURI) 1966.08.22
沖祐市(東京スカパラダイスオーケストラ) 1966.09.05
斉藤由貴 1966.09.10
吉井和哉 1966.10.08
たちばな哲也(SPARKS GO GO) 1966.11.18
八熊慎一(SPARKS GO GO) 1966.11.28
奥野真哉(SOUL FLOWER UNION) 1966.12.02
田中和(勝手にしやがれ) 1966.12.12
木暮晋也(HICKSVILLE) 1966.12.17
谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ) 1966.12.25
トータス松本(ウルフルズ) 1966.12.28

GUEST MUSICIAN:tatsu(レピッシュ)

NA:立川談春 1966.06.27