Interview

三宅弘城&森川 葵が“ロミオとジュリエット”に!? 宮藤官九郎がシェイクスピアに真っ向勝負で挑む。そこに生まれる笑いに期待高まる舞台『ロミオとジュリエット』

三宅弘城&森川 葵が“ロミオとジュリエット”に!? 宮藤官九郎がシェイクスピアに真っ向勝負で挑む。そこに生まれる笑いに期待高まる舞台『ロミオとジュリエット』

あの誰しもが知るシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』が、連続テレビ小説『あさが来た』で亀助役を好演した三宅弘城と、本作が初舞台となる森川 葵という、歳の差27歳(50歳のロミオ&23歳のジュリエット)のキャスティングで11月20日より本多劇場にて甦る。演出には、宮藤官九郎。斬新な切り口で魅せる宮藤が、本作ではロミオとジュリエットのふたりの“悲恋”を「なるべくまんま」見せると言う。どんな新しい“ロミジュリ”が誕生するか期待が高まるなか、宮藤官九郎、三宅弘城と森川 葵の3人にインタビュー。宮藤の作戦、三宅&森川の今の心境を聞いた。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 岩田えり


これまでの歴史が築き上げてきた“ロミジュリ像”を壊す

宮藤さんがシェイクスピアの作品をモチーフにするのは『メタルマクベス』(再演上演中)以来ですね。事前に発表されたコメントでは「なるべくまんまやる」とのことですが、なぜ“まんま”と思われたのでしょうか。

宮藤官九郎 「三宅弘城さんをロミオに据えた“ロミジュリ”を上演したい」と主催のM&Oplaysプロデューサーの大矢亜由美さんからお声がけいただいたときから、“まんま”やるのがいいと直感したんです。そうすることで、これまでの歴史が築き上げてきた“ロミジュリ像”を壊せるんじゃないかなって。ロミオの台詞を三宅さんが読んでいると想像するだけで、どうしても笑ってしまうし(笑)。

三宅弘城 ホントですか!? 嬉しい。

宮藤 それと、シェイクスピアに限らず、ほかの方の脚本を演出する機会がなくて、戯曲を真剣に解釈する経験も少なくて。他人の戯曲をどうやって演出するべきなのかと思うと、やはり“まんま”がベストだと『メタルマクベス』を経て強く感じていたところがあったので。というのも、『メタルマクベス』はシェイクスピアの『マクベス』をいじり倒して、あくまで自分の世界に手繰り寄せた部分があるので、今回はそことの差別化を考えています。

宮藤官九郎

おふたりは宮藤さんの“まんま”やる発言を受けてどう思われましたか。

三宅 おそらく、演出家・宮藤官九郎の名前をご覧になられると、原作をいろいろ壊して楽しいことをされると思っている方が多いと思います。ただ、キャスティングが面白いですから、みんなのキャラクターがしっかりしているぶん、“まんま”のほうが中身は濃くなるだろうし、あの古典の名作を現代でそのまま作品にしようとされる心意気に賛同しました。

森川 葵 私の友達が『メタルマクベス』を観劇して、「原作をかなり脚色していて次も楽しみだよ」と言っていたのですが、そういう期待を裏切る作品になると思うと楽しみです。

三宅弘城

演出はどのようにされようと思っていますか。

宮藤 どんな話なのかは皆さんご存知なので、そこからが勝負ですよね。そこでまずは、キャスティングが大事だと思っていました。チラシをご覧になっていただければ……えーと……ちょっと“ヘン”ですよね?(笑)

三宅&森川 (爆笑)。

宮藤 映画『ロミオ+ジュリエット』(1996年)ではレオナルド・ディカプリオがロミオを演じて、それ以外の歴代の作品も二枚目の俳優がロミオ役で。それはそれで見どころだと思うのですが、彼らが“恋煩い”をしているのを見ても、「それほど重症ではないな」と思ってしまう。三宅さんの恋煩いのほうが「やばいぞ」って(笑)。三宅さんは“ロミオ”というあだ名の、恋愛真っ最中の近所のおじさんみたいなイメージで、「ほら、ロミオがくるぞ! 逃げろ逃げろ!」みたいな面白さがあるので(笑)。だから、今作はお客様に笑っていただきながら、それでも“純愛”を貫き通す、かっこいいロミオの最後を見せようと思います。

三宅 ちなみに、僕は死んじゃうんですか?

宮藤 そうですね……死なないとまずいので、死んじゃう予定です(笑)。

このキャスティングはドッキリじゃない

(笑)。三宅さんは最初にキャスティングされたときに「信じられない、嘘だ」とおっしゃっていましたね。

三宅 今日、初めて森川さんにお会いして、現実味が帯びてきているんだなと実感してはいるのですが……。

宮藤 ドッキリじゃないよ!(笑)

三宅 ドッキリだったら困ります!(笑)。キャスティングが決まってから僕は宮藤さんと同じく映画版や、蜷川幸雄さんが演出、藤原竜也さんがロミオ、鈴木杏さんがジュリエットの『ロミオとジュリエット』(2004年)をDVDで拝見したんですが、藤原さんはお若いし、50歳になってロミオというのは……びっくりですね(笑)。ロレンス神父でもない、ロミオのお父さんでもない、とにかく最“珍”傑作になると思います。

森川 葵

『ロミオとジュリエット』は誰しもが挑戦してみたい作品だと思いますが、役づくりはどのようにされますか。

三宅 僕がロミオを演じる時点で、今までのロミオには絶対にならないと思うので、だからこそ“まんま”で、宮藤さんに任せて、脚本に書いてある台詞を忠実に喋ることですね。“ロミジュリ”に限らず、あまり役をつくるタイプではないので、いつものように体当たりで臨みたいと思います。

森川 私もそうですね。どうしても私が演じるジュリエットにしかならないと思いますので、自分らしい彼女になりたいです。ただ、役づくりの前に、私は舞台が初めてで、自分のそのままが投影される場所だから、舞台は恐ろしいというイメージのほうが強くて不安です。でも、宮藤さんですからこれまでご指導を受けた経験でしっかり導いてくれるとわかっているし、三宅さんのお話を聞いていると、絶対に大丈夫な方だろうなという安心感が芽生えました。

三宅 嬉しいです(笑)。

もともとあるものを真面目にやることに面白さを感じる

原作を実際に読まれて面白くなりそうだと感じたポイントはありますか。

宮藤 最初に、“三宅さん・ロミジュリ・本多劇場”という3つのイメージがポンポンポンとすぐに浮かんできて面白くなりそうだと思いました。海外戯曲には素晴らしい作品が多いし、挑戦しがいもありますが、僕は無理に演出することもないと思った時期があって、そこから『マクベス』を脚色する機会をいただいたり、大人計画の平岩 紙さんや少路勇介さんが駅前劇場で上演したシェイクスピアの『十二夜』(2004年)を観劇したら、とても面白かった。これも“まんま”に通じるのですが、もともとあるものを真面目にやることに面白さを感じたんです。『ロミオとジュリエット』が下地になっている『ウエスト・サイド物語』は、ポーランド系とプエルトリコ系アメリカ人の少年グループの抗争を描いていて対立構造がわかりやすいけれど、『ロミオとジュリエット』の着想を紐解こうとしても、ロミオは何と戦っているのか判然としないし、そのへんの偉い家の息子で、しかも働いてないとしかわからなくて(笑)。

たしかにそうですね(笑)。

宮藤 劇場にいらっしゃる女性のお客様は皆さんジュリエットの気持ちで観るだろうし、男性はロミオの気持ちで観るので、その気持ちをはずしたくない。だから、最初のイメージをそのまま膨らませながら、“ロミジュリ”の世界をわかりやすく表現したいですね。

宮藤流“悲劇”として捉えてもよろしいのでしょうか。

宮藤 “喜劇”的に始めて“悲劇”の要素を入れていくつもりですが、“ロミジュリ”に関しては、それほど“悲劇”だと思っていない部分もあるんです。たしかにふたりは死んでしまうので悲しい物語だけれど、自分はどこか俯瞰で見ているからか、ツッコミどころがたくさんあって、そこが面白いんです。台詞や戯曲に手を入れるとキリがないし、それこそ『メタルマクベス』になってしまうので、「どうしてあなたはロミオなの」というどなたでも知っている言葉を、言葉の響きでまったく違う意味に聞こえるようにしたいと考えています。

三宅さんと皆川猿時くんが出演する時点で、笑えてしまう

テイストとして、こちらも宮藤さんには欠かせないお笑いの要素があるのでしょうか。

宮藤 あくまで“まんま”ですので、台詞を変えずにどこまで笑わせられるのかというのは考えています。ただ、三宅さんと皆川猿時くんが出演する時点で、真面目にやればやるほど笑えてしまう舞台になると決まっています(笑)。プロデュース公演はあまり経験がないのですが、大堀こういちさんとは20年ぶりに同じカンパニーですし、田口トモロヲさんもいらっしゃるから、笑いの絶えない楽しい座組になりそうです。

ここまでお話を伺っていると、シェイクスピアの作品にいろいろな考えをお持ちのように感じられますが、いかがでしょうか。

三宅 たしかに、僕は演劇の学校に行っていないし、勉強したわけではない。シェイクスピアのアンチからお芝居を始めたようなものなので。シェイクスピア・デビューも、恥ずかしながら『メタルマクベス』(2006年)の初演でしたし。

宮藤 僕もそうなんですよ(笑)。『メタルマクベス』を手がけることになって、初めて『マクベス』を観劇した。だからなのか、ほかの方が自然と受け入れている“シェイクスピアらしい部分”が、どうしても心にひっかかるんでしょうね。ほかの方には馴染みすぎていて気づかない部分。だから、あえて知らなかったこその強みがあるはず。僕らがつくるのは、ありがたがっていないからこそできるシェイクスピア作品です(笑)。

三宅 たしかに、知らないことが強みだと思います。

宮藤 野球だと“バッターが打った瞬間に三塁に走り出したぞ”みたいな、疑問に思わないところで、「その台詞をカットするの?」といった常識を崩すことにいかにチャレンジできるのかが鍵になっていると思います。

森川 私は……まだシェイクスピアのことがいまいちわかってなくて。

宮藤 そのままでいいと思う!(笑)

森川 ディカプリオさんの映画は拝見したのですが、まだ物語やキャラクターなど少しうろ覚えなんです。

三宅 シェイクスピアは、“人”だというのはわかる?(笑)

森川 それでいうと、数年前まで私は“シェイクスピア”というジャンルだと思っていました(笑)。

宮藤&三宅 (笑)。

宮藤 (笑)。ストレートプレイ、ミュージカル、コメディ、シェイクスピアという括りに森川さんの中ではなってるんだね。

森川 お話に出た蜷川さんのDVDを持っているのですが、観たほうが勉強になるのか、観ないままのほうが入りやすいのかよくわからなくて袋にしまったままなんです。

宮藤 設定でつまずくかもしれないから、舞台が終わった日に観たほうがいいかも(笑)。あるいは、みんなで“せーの”で一緒に観る? そうしたら、「あれ、僕たちの舞台、思いっきり間違っている」とみんなで戦々恐々としたら怖いか(笑)。

森川 (笑)。宮藤さんを信じて、観ないでいきます。私は初舞台ですし、本当にわからないことだらけで、稽古場に何を着ていけばいいのかみんなに聞いている段階なんです(笑)。まずは稽古にどういう気持ちで臨めばいいのか、脚本を読み込むのか、そうでないのか。いろんな人にお話を伺うと人それぞれでわからない。とりあえず、稽古が始まるまではお話に慣れて、本番はきちんと自分の演技を心がけるだけで、役に対して何をどうしようとはまだ考えていないんです。

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