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衝撃の隠しエンディングが、実は...『INSIDE』暗闇で繰り広げるアクションと謎解き

衝撃の隠しエンディングが、実は...『INSIDE』暗闇で繰り広げるアクションと謎解き

美しく印象的なアートワーク、解釈の全てをプレイヤーに委ねるストーリー、過激な表現で世界中のゲームプレイヤーを震わせた2Dアクションゲーム『LIMBO』から6年。デンマークのデベロッパー・Playdeadの新作であり、代表作ともいえる『INSIDE』がリリースされました。一足先に発売された海外では、完成度の高いアクションや確固たる美意識で貫かれたビジュアルが高く評価され、数々の賞を獲得しています。日本でも“日本ゲーム大賞 2017”でゲームデザイナーズ大賞を受賞するなど、華々しい受賞歴を誇るこの『INSIDE』。前回の記事で紹介した『LIMBO』と同じ横スクロールのアクションゲームということで、似たような内容ではないかと予想していたのですが、説明皆無のダークな世界で繰り広げられるアクションゲームという大枠は同じでも、新しい表現が積極的に取り入れられて新鮮な作品に仕上がっています。筆者は2010年に発売された前作『LIMBO』からの同社作品ファンではありますが、改めて『INSIDE』をプレイすると、本作の新しいゲーム性に驚き、その表現力や前作の『LIMBO』より高まった作品のクオリティに感嘆しました。今回は、PlayStation®4版で『LIMBO』とのバンドル版、Nintendo Switch™版も発売されたということで、一度プレイしたら忘れることのできない魅力を紹介します。

文 / 内藤ハサミ


孤独から始まるストーリー 

森の風景に『INSIDE』という赤いタイトルロゴが浮かび上がって消えた直後、左上の崖から滑り降りてくる少年の姿。そこからすぐ、プレイヤーに主人公の操作が託され、ゲームは唐突に始まります。方向キーを倒し主人公を走らせステージを進んでいくと、詳細ははっきりしないものの、彼は何者かに追われているらしいことがわかってきます。主人公の少年は、逃げながら非人道的な研究を行っている謎の施設へ潜入する……。ここまでが、プレイ中の状況から読み取れるストーリー中盤までの大筋です。なぜ少年が逃げることになったのか、いったい何から逃げているのか、なぜ研究施設に向かったのか。念のために説明しておくと、前作の『LIMBO』とストーリーのつながりは一切ありません。

▲操作の説明もなければ、ストーリーが理解できるムービー、テキスト、その他一切なし! 徹底して説明を排しています

▲薄暗い森のなかを孤独に進む主人公。プレイヤーは彼の素性や目的、目指すべきゴールのイメージすら持てないまま進むことになるので、非常に心細いです

森を走り抜け、明確な意思をもってどこかへ行こうとしている少年。プレイヤーが操っているキャラクターでありながら、主人公の素性や目的はまるでわからないので、感情移入もしきれない状態です。ですが、プレイヤーの孤独で不安な状況は、寄る辺ない主人公の状況と重なるような気もして、複雑な親近感が生まれます。この、主人公とプレイヤーの微妙な心の距離が、終始うっすらとした恐怖と緊張感を持続させるという……恐るべき演出だと思います。

▲主人公を捜索するかのようなトラックのテールランプ。見つからないよう木の影で停止し、やり過ごします

▲追っ手や監視システムに見つかると、瞬時に抹殺されます。この画面は、監視ロボットのサーチライト圏内に入ってしまったので、フックショットのようなものを打ち込まれて即死したところ……。前作同様、例外なく一撃死です

▲ヘッドギアで近くにいる人間の思考をハックし、主人公の手の届かないところや大人の力が必要だったりするギミックを代わりに操作させることができます。ヘッドギアを装着したあとは、主人公とハックされた人間の動きはシンクロします

おそらく精神を乗っ取られたのであろう、傀儡となった人間たちに紛れたり、ときにはヘッドギア型の機械を付け、彼らを操ったり。次々に仕掛けを解きながら謎の施設のさらに内部(INSIDE)へと潜入していくと、そこでは明らかに非人間的な、恐ろしい実験が行われていました。主人公はこれを知っていたのかもしれませんが、真相は最後までわかりません。

▲以前はここに巨大な施設があったのだろうと思わせる廃墟から……

▲舞台は次第に、現役稼動している施設に移動していきます。重力に逆らい、上に向かって吊られている人型のものたち。これは人間なのか、ロボットなのか、それとも別の生命体なのか……?

▲細部の演出が光る本作。画面では見にくいのですが、左側の机に置かれた丸い灰皿からは、タバコの煙が立ち上っています。ということは、数分まえまでここにはだれかが居たということ。主人公の存在を感じ、ここを去ったということなのでしょうか……

数々の仕掛けを解き、追っ手を振り切って施設の最深部に到着すると、そこには恐るべき実験の結果があります。それと対峙した主人公は……。ストーリーのラストシーンには、個人的に『LIMBO』以上の衝撃を受けました。主人公が最後にどうなったのかについては、プレイヤーによってさまざまな意見が飛び出すはずです。少年の勇気ある逃避行にはどんな意味があって、はたして救いはあったのでしょうか。前作よりも細かい描写がぐんと増え、情報量の多くなった画面には、気になるオブジェクトがたくさん描かれていますから、考察が盛り上がることは間違いないでしょう。

赤色と影の描写が印象的なビジュアル

前項でも触れましたが、本作は『LIMBO』のようにモノクロの影絵のような世界とは違い、主人公の進行方向にやや奥行きをつけ細部に注力した描写、控えめながら色を使った画面が特徴です。主人公には顔がなく表情は一切伺えませんが、滑らかでリアルな動作が、主人公の表情を十分に表現しているといえるでしょう。

▲淡々と走る動きから……

▲襲ってくる犬をたいまつで必死に追い払うダイナミックな動き

▲それとは対照的に、死んでしまったときのぶらんと揺れる無機質な動き

最も注目すべきは、象徴的に使用されている“赤色”。主人公の少年が着ているトップスの赤が、本作の登場人物のなかで唯一はっきりと描写されている色だということには、自キャラを目立たせる効果以上の意匠が込められていると感じます。操られている人間たちはほとんどがモノクロの服を着ていますが、ステージが進むごとに全体が白っぽくなっていきます。そのなかで浮かび上がる主人公の赤色だけが、明確な意思と主体性を持っていることを示すかのようです。

▲序盤のワンシーン

作中で最も主人公の“赤”を象徴的に表現しているのが、操られ自我をなくした大人たちの行列に紛れるため、自分も操られたふりをするというシーン。モノクロの服を着た大人たちとの対比が恐ろしいです。周りの操られた大人と同じ動きをしていないと即時抹殺されてしまうので、気を抜けない数分間となります。

▲終盤に登場する人間のほとんどは、はっきりした色はついていません。よく見ると、頭がなかったり服をろくに着ていなかったりする彼らは、人体実験に使われてしまった人間と考えるのが自然かもしれません

他に赤色で表現されているのは、タイトルロゴ、血、主人公を殺すために用いられるボルトの羽根、主人公を監視するサーチライトのランプ、仕掛けを動かすときのスイッチやレバーなど。生きていることや明確な意思を表すもの、注視しなければならないもののみに使われています。

また、光と影の効果的な使用法も見事です。光はときに主人公の道しるべとなり、主人公を探す恐ろしいサーチライトにもなります。また、柔らかな水中のきらめきやがらんとした施設の無機質な蛍光灯など、状況を雄弁に語りもします。そしてそれは影に関しても同じこと。影に覆われている空間への恐怖や主人公の孤独、打ち捨てられた施設のむなしさやおどろおどろしさなど、光と影はお互いを引き立てあいながら、まとまりのある美しい画面を構成しているのです。

▲恐怖のサーチライト! ライトが動くタイミングに合わせ、影のなかを進みます

▲衝撃的な風景のなかを泳ぐ主人公。後ろから当たる強い光と実験体とおぼしきものたちのシルエットに、悲惨さと水中の静かさが際立ちます

どのシーンを切り取ってみても一枚の絵として完成度のある画面が、この赤色と陰影で更に強く印象付けられます。退廃的なこの世界における、表現の肝といえるでしょう。終盤はさらに衝撃的なシーンが続々登場するので、最後まで驚きは失われません。エンディングまでずっとびっくりし続けることになりますから、どうぞ覚悟をもって臨んでください。

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