IDOL ~Blossoms 2016 spring~  vol. 7

Review

業界内外から熱い視線を浴びる 個性派ニューフェイス

業界内外から熱い視線を浴びる 個性派ニューフェイス

一度聞いたら聞き返してしまうグループ名。かわいい見た目からは想像できないステージング。インディーズどころかほとんどD.I.Y.で活動を開始し、今や多くの芸能人、文化人をも虜にしている注目の2人組が生ハムと焼うどんだ。

文 / 宮内 健


 全国各地で次々とアイドルグループが誕生し続けているが、一方では脱退や解散といったフレーズを毎日のように目にするようになった2016年。そんな乱世の中で大きな活躍が期待されるアイドルを紹介しよう。

 生ハムと焼うどん。名前からしてインパクト大な彼女たちは、事務所やレーベルに所属せずに完全セルフ・プロデュースで活動する異色のアイドル・ユニットだ。生ハム担当・西井万理那と焼うどん担当・東理紗は高校の同級生。オリジナル曲の作詞・作曲から、ライブで歌の合間に披露するコントのような寸劇の脚本・演出、さらにはブッキングなどのマネジメントからグッズの制作・販売まで、全て自分たちで手がけている。2015年3月に本格的なライブ活動を始めたばかりだが、キャッチーな楽曲と、爆笑をさらう寸劇など客席をグイグイと巻き込んでいくステージング、破天荒な言動やパフォーマンスとは似つかわしくない愛くるしいルックスが話題を呼び、口コミやSNSで一気に拡散。デビューから1年、高校3年生の卒業が目前となった今年3月には、赤坂BLITZ にてワンマンライブを敢行。1000人以上を動員し大成功を収めた。さらに今年10月21日には都内で3000人動員のワンマンを開催することも発表するなど、その勢いは止まらない。また堂島孝平(ミュージシャン)、能町みね子(漫画家・コラムニスト)、吉田尚記(ニッポン放送アナウンサー)、中村繪里子(声優)、ベイビーレイズJAPAN(アイドルグループ)など、各界でファンを公言する人たちも増えている。

 生ハムと焼うどんがここまで注目を集めたのは、現役JK のセルフ・プロデュースという話題性や、人懐っこいキャラクターによるところもあったとは思うが、それだけでここまで「バズる」こともないだろう。大きな要因のひとつは、やはりストレートに楽曲の良さがある。マーケティングや大人の思惑とは全くかけ離れた、少女と大人の間の不安定な年頃ならではの視点で綴られる(少し青臭い)リリック。そして子供からおばあちゃんまで歌えそうな、耳に残るわかりやすいメロディ。もはや手札が出し尽くされたようにも思われるアイドルソングの世界に、思いがけないところから切り込んできたアプローチが耳に新鮮だ。そして彼女たちの寸劇、ひいては活動そのものに感じられるのは、アイドルというフォーマットを利用しながら既存のアイドル文化を茶化してみたりパロディとして切り取ってみせる、批評的な奥行きを感じさせるところ。さまざまなアイドルを追いかけすぎて若干疲弊してきたオタクたちには自虐も含めた共感を呼び、これまでアイドルに触れてこなかった人たちにとっては取っ掛かりの良さになっているのは、偶然の産物なのか彼女たちの緻密な計算なのかわからないが、そういったコンセプトをしっかりと成立させているのも、西井と東ふたりの演技力の高さ、そして歌とダンスのパフォーマンスの全力な魅力があってこそ。やりたいことの大きさと、それをやりきる優れたスキルがぴったりと合致しただけでなく、〈西〉と〈東〉という冗談みたいな組み合わせが奇跡的に出会ってしまった、生ハムと焼うどん。彼女たちがこれからどこまで登り詰めて、どれだけ暴れまわってくれるのか、大いに期待したい。

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