モリコメンド 一本釣り  vol. 82

Column

Nao Kawamura 豊かな音楽の慈愛に満ちた彼女の歌。いまの日本のシーンで際立つ存在。

Nao Kawamura 豊かな音楽の慈愛に満ちた彼女の歌。いまの日本のシーンで際立つ存在。

歌声を聴いた瞬間、そのなかに含まれる音楽性、その人自身のバックグランドが伝わってきて、一気に引き込まれることがある。Nao Kawamuraはまちがいなく、そういう資質を持ったシンガーのひとりだ。ネオソウル、オルタナR&B、現代進行形のジャズなどをナチュラルに吸収しながら、美しさ、鋭さ、包容力、官能性を同時に感じさせてくれるボーカルは、まさに唯一無二だ。

1992年生まれのシンガー/ソングライター、Nao Kawamura。母親がピアノの教師だったこともあり、小さい頃から音楽に親しんでいたという彼女。幼少期から作詞・作曲を行い、洗足学園音楽大学に進学した彼女は、本格的にシンガーとしての活動をスタートさせる。R&B、ジャズ、ポップスなど幅広いルーツをもとにした楽曲、表情力豊かなボーカルで徐々に注目を集め、2016年にはFUJI ROCK FESTIVAL ’16 “ROOKIE A GO-GO”に出演。翌年1月には初の全国流通EP「Cue」、7月には2nd EP「RESCUE」を発表し、SUMMER SONIC 2017に出演するなど、活動のスケールを確実に拡大してきた。また、自身のソロ活動と並行しながら、Suchmos、SANABAGUN.、FIVE NEW OLD、WONKといった10年代の音楽シーンを象徴するバンドの作品にコーラス、ボーカル・サンプリングなどで参加したことも、Nao Kawamuraの知名度を上げるきっかけとなった。特にクリエイティヴユニットAmPmとのフィーチャリング楽曲「I don’t wanna talk」がspotifyでヒットしたことは、彼女の歌の魅力を幅広いリスナーに浸透させることにつながった。

2018年3月にリリースされた1stアルバム『Kvarda』は、Nao Kawamuraの最初の集大成と呼ぶべき作品だ。まず印象に残るのは、2曲目の「Awake」。声の多重録音、民族音楽的なビートを軸にしたアレンジ、心地よい解放感をたたえたサビのメロディライン、“過去の自分を脱ぎ捨て、目覚めの瞬間を迎えよう”という意志を込めたリリック。ルーツミュージックに対するリスペクトが強く伝わる楽曲、オーガニックな手触りのサウンドメイク、そして、生命力に満ち溢れたボーカルがひとつになったこの曲は、Nao Kawamuraというアーティストの本質に直結していると言っていい。

「One more dose」は、バウンシーなベースライン、タイトなドラムが生み出すグルーヴ、独特のサイケデリア、ロック的なパワーを併せ持った歌が絡み合うミディアムチューン。R&B、ロックなどが混ざったサウンドのなかを自由に泳ぎ、圧倒的なカタルシスへと導くボーカルはインパクト十分。シンガーとしての特異なスタイルが明確に示された楽曲と言えるだろう。

もう1曲、「Watching you」にも触れておきたい。音数を抑えたR&B系のトラックのなかで響くのは、愛する人に対するストレートな思いを映し出す歌。強がること、または諦めることを迫られるようなこの世界において、“あなた”と一緒にいる時間が自分を本来の場所に誘ってくれるーーそんな思いをシンプルな言葉で綴った歌詞がゆったりと心を満たしてくれる。洗練されたホーンのアレンジ、しなやかさと濃密さをコーラス・ワークも秀逸だ。

プロデューサーの澤近立景(G)をはじめ、半田彬倫(Key)、佐瀬悠輔(Tp)、勝矢 匠(Ba)、田中 航(Dr)、李 令貴(Per)という凄腕ミュージシャンたちによる演奏も、本作の聴きどころ。現在進行形の海外のジャズ、R&B、ネオソウルなどのエッセンスを自然に取り入れながら、Nao Kawamuraが放つ日本語の歌をしっかりと支え、濃厚なグルーヴを与えるサウンドは、いまの日本のシーンのなかでも際立っていると思う。

このアルバムを聴いていると、様々なシンガーのテイストを感じ取ることができる。荒井由実時代のユーミン、デビュー当初の宇多田ヒカル、海外ではビョーク、エリカ・バドゥ、エスペランサ・スポルティング、ネイ・パーム。幅広いジャンルのアーティストから受けた影響を身体レベルで取り込み、彼女自身の生き方、人生、価値観を反映させることで、誰にも似ていない(しかし、確実に多くの音楽、アーティストとつながっている)歌に結びつけているのだ。彼女の音楽は必然的に、ジャンルの枠を超えることになる。軸になるのはジャズ、R&B、ソウルミュージックだが、特定のジャンルに縛られることのない自由なクリエイションは、きわめて現代的だ。

SOIL&“PIMP”SESSIONSのアルバム『DAPPER』の収録曲「Drivin’」にゲストボーカルとして参加、新たなツアーも決定するなど、活動の幅をさらに広げているNao Kawamura。豊かな音楽の慈愛に満ちた彼女の歌が、多くの音楽ファンに届くことを願う。

文 / 森朋之

ライブ情報

Nao Kawamura Kvarda Tour 2018

11/29(木)大阪CONPASS

Guest Act: TBC
前売¥3,500(スタンディング・税込み・ドリンク代別途)
OPEN18:00/START19:00
info. 06-6535-5569 (SMASH WEST)

12/14(金)渋谷WWW

Guest Act: TBC
前売¥3,500(スタンディング・税込み・ドリンク代別途)
OPEN18:00/START19:00
info. 03-3444-6751(SMASH)

詳細はオフィシャルサイトにて。
オフィシャルサイトhttps://www.naokawamura.com

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