Weekly モバイルエンタメステーション  vol. 4

Column

星野 源、米津玄師、崎山蒼志に共通する「二面性」とは? 配信音楽から読み解く、2018年インパクトを残したシンガーソングライターの楽曲3選

星野 源、米津玄師、崎山蒼志に共通する「二面性」とは? 配信音楽から読み解く、2018年インパクトを残したシンガーソングライターの楽曲3選

今年に入ってインパクトを残したシンガーソングライターの楽曲は、どれも配信限定でリリース、もしくは配信部門において記録的なヒットとなっている。音楽の聴かれ方が多様になった現在、「聴く」という行為とそれに対して「対価」を払うという行為が一体になったダウンロード購入は、賽銭箱に小銭を投げ入れるのにも近いところがある。リスナーにとってそれはポップスターという特異な存在への「祈り」の表明なのだ。今回紹介する3曲を通して、真のポップミュージックに必要なものとは何か、ポップスターとは何を体現している存在なのかということが見えてくる。それは安易な共感には回収されない、誰しもが抱える「光と闇」のような二面性だ。

セレクト・文 / 北出 栞

星野源「アイデア」

ジャンルの壁も、「光と闇」も超えていく決意の1曲

星野 源「アイデア」は上記のようなダウンロード配信限定というリリース方法を最大限に生かしたプロモーションで注目を集めた。事前のレビューなどを一切禁止し、日付の変わった配信開始日に一斉にリスナーが楽曲について語り始める状況を作り出したのだ。

同楽曲はNHK朝の連続テレビ小説『半分、青い。』の主題歌となっており、1番にあたる部分はすでに多くの人が耳にしていた。果たして配信が開始され明らかになった楽曲の全体像とは、2番ではフューチャーベース(EDMに続くトレンドとも言われる、クラブミュージックの一種。Perfumeの最新作にも全面的に取り入れられている)ライクなサウンドが、Cメロでは弾き語りパートが取り入れられるなどした、複数の音楽ジャンルが交差する構成であった。

また歌詞の面でも2番では<生きてただ生きていて/踏まれ潰れた花のように/にこやかに 中指を>といったフレーズが入れ込まれるなど、朝に流れることを意識した1番と対比して星野 源の「ダークサイド」が表現された内容となっている。陽気なポップスターとしての地位を不動のものにしつつある彼のイメージからは意外に思われる方もいるかもしれないが、ポップス=大衆の期待を背負うということはそれだけ誰しもが抱える「翳り」も持ち合わせていなければならないということ。朝ドラの主題歌としては速すぎるかと思われたテンポの速さも、通して聴くとこうした二面性をともに自分のものとして受け入れた上で、「ついてこい!」という気概を表すものに思えて頼もしい。この作品は一種の決意表明なのだ。星野 源というポップスターが自己像を解体し、新しい「星野 源」としてプレゼンテーションし直してみせている。

星野 源オフィシャルサイト
http://www.hoshinogen.com/


米津玄師「Lemon」

「死」との新しい向き合い方を提示したポップソング

米津玄師「Lemon」も間違いなく今年を代表する楽曲のひとつだろう。何せ史上最速で100万ダウンロードを記録したというのだ。1月クールのTVドラマ『アンナチュラル』の主題歌として書き下ろされたこのナンバー。法医学者という死に身近な職業において起きる人間ドラマを描いてヒットした同作に寄り添うこの楽曲は、米津自身も祖父との別れを経験しつつ「死」に濃密に向き合う形で制作が進められた。

「レモン」というモチーフを選んだことに深い意味はないそうだが、同時に「これしかない」という必然性もあったという。レモンと言えば魚料理やサラダに振りかけられ、フレッシュさを演出する調味料。鮮やかな黄色からも生のイメージを連想させる。昨年はアルバム『BOOTLEG』で俳優・菅田将暉をはじめとした他者とのコラボレーションを積極的に行い、「外」に開かれていく自らのスタンスの変化を楽しんでいるようにも見えた米津。そんな彼がまた「内」へ潜っていったのか? というとそれも違って、いわばこの作品は「死」という究極の他者とのコラボレーションなのだと思う。

楽曲全体にはゴスペルのような祝祭感もあり(ミュージックビデオは教会で撮影されている)、「生と死」の二面性を織り上げて昇華するという意味でも「アイデア」と近しいコンセプトを持つ。メディアへの露出の仕方など星野とはまた違った「大衆性」との距離感を保っている米津だが、「死」という究極のテーマをこうした形で昇華したことによって、ポップスの作り手としてまたひとつ上のステージに進んだのではないだろうか。

米津玄師オフィシャルサイト
http://reissuerecords.net/


崎山蒼志「夏至 / 五月雨」

リスナーの無意識にすら語りかける、恐るべき詩人

3人目に紹介するのはデビューすらまだな、ともすると無名に近いミュージシャンだ。とはいえネットでのバズにより存在を認知されたことから、この並びに加えても差し支えないかと思う。崎山蒼志。ネット配信のオーディション番組に出演したことをきっかけに、一躍時の人になった現役高校生シンガーソングライターである。

ビブラートがかかった独特のハイトーンボイス、情感と荒々しさを兼ね備えたギターのストローク。彼のポップスの担い手としての才能は、何よりもまずその素朴な佇まいとシリアスな楽曲とのギャップにあるが、現代詩のような歌詞は、その落差を特に際立たせるものだ。13歳(!)の時に生まれたという「五月雨」の<素晴らしき日々の途中/こびりつく不安定な夜に/美しい針の声を/静かに涙で濡らすように>という、痛覚と視覚と痛覚が同時に刺激されるような表現。自動筆記のような筆致で書かれる言葉たちは、私たちの無意識に語りかけてくるかのようだ。

彼の音楽が世に出た経緯を踏まえれば、これは「インターネット」という巨大な集合的無意識に働きかけていると言えるかもしれない。フィルター加工により時代性をはぎ取られた片田舎の写真が、SNS上で広くノスタルジックな共感を集めて拡散される光景はよく目につく。さっき体験したばかりの夏の出来事が、「あの夏」に変わってしまう速度はかつてないほどに速い。崎山の言語感覚は、そうしたインターネット上の「ノスタルジーの再生産」のサイクルにぴたりとはまるものなのではないか。<そうだ 思い出した/あの夏に 取り残されて 何年たったか/虫のように強く 果物のように美しい/君がいた 100年前だ>(「夏至」) 2002年生まれの恐るべき詩人は、「光と闇」「生と死」といった二面性を超え、時空すら超えた新しいポップスの形を示そうとしている。

崎山蒼志 オフィシャルサイト
http://sakiyamasoushi.com/

音楽編の次回更新は10月8日(月・祝)予定です。


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