Interview

シャーロック役声優・三上哲インタビュー

シャーロック役声優・三上哲インタビュー

滔々と、時に矢継ぎ早やに、事件の謎を解き明かす名探偵の長ゼリフ――ホームズを始めミステリー作品における探偵の声は、ある意味で「主役」ともいえるだろう。現在続々公開中の“ホームズもの”の魅力を「音」から読み解く立体特集。
第2回では、人気ドラマ『SHERLOCK―シャーロック』で「ベネディクト・カンバーバッチの声」としておなじみになった声優・三上哲さんに、アフレコ現場や役づくりの秘密を伺った。

ベネさんは正統派二枚目というわけではないのに、とにかく演技がかっこいい

三上哲 エンタメステーションインタビュー

『SHERLOCK―シャーロック』との出会いを教えてください。

オーディションのお声をかけていただき、作品名しか知らずに伺いました。蓋を開けてみたらまさかのシャーロック役(笑)。ボイスマッチ(演じている俳優の声に近い声優を選ぶ)というより、ベネさん(ベネディクト・カンバーバッチ)の雰囲気に合った声を選ぶ、という判断だったようですね。

出会う前、シャーロック・ホームズにまつわるイメージなどありましたか?

もちろん、露口茂さんのイメージです*。だからシャーロックも、ああいう渋い英国紳士なのかなと思ったらとても若くて。ドラマ自体も暗くて怖いミステリーかと思ったら、驚くほど笑いどころたっぷりで。驚きました。
*俳優・露口茂が吹き替えを担当した、1980年代の人気シリーズ『シャーロック・ホームズの冒険』(通称・グラナダ版)。主演は英国の名優ジェレミー・ブレット。

たしかに新鮮でした。当時『太陽にほえろ』などで世の女性に大人気だった露口さんの声をキャスティングしたのは、女性ファンを獲得するための戦略だったという裏話を聞き、さもありなんと思ったことがあります。三上さんのクールなのにどこか甘い声が選ばれたのにも、そういう戦略がありそうですね。

いやいや、そんなことありませんよ! そもそもこれほど(人気の)お化け番組になるなんて、誰も予想していなかったんです。現場でも「このドラマは変わっていて、すごく面白いね」と盛り上がっていましたが、ここまでみなさんに愛していただける作品になるとは。本当に驚いています。

演技のなかで、露口さん的イメージを意識したりは?

それはなかったですね。もう、ベネさんについていく。必死に食らいついていく――そのことだけを考えていました。ベネさんって正統派二枚目というわけではないのに、話し方や身のこなし、とにかく演技がかっこいいんですよ。ほかの作品でも常にそうですね。そして、作品によってまるで違う人に見える点がすごい。『スター・トレック イントゥ・ダークネス』も『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』も、それぞれ違います。どれも吹替えを担当しましたが、特に『スター・トレック イントゥ・ダークネス』は苦労しましたね。あの異世界、圧倒的な存在感!(笑)

三上哲 エンタメステーションインタビュー

たしかに、シャーロックとはまるで違いましたね(笑)。それでも、ジェレミー・ブレットの声=露口さんだったように、カンバーバッチの顔なら三上さんの声で聴きたい、という欲求すらある。これって外画吹替え、とくに海外ドラマの特殊性ですよね。基本的に、どのように収録をされるんですか?

ドラマの映像を見て、俳優の英語のセリフを聴きながら、台本を読んで、相手役の日本語のセリフも聴いて、という感じですね。

すごく器用に思えます。

でも一週間前ぐらいに台本をいただいて、現場で相手役と合わせて、という下準備をした上でのことですからね。収録はスムーズです。通常テストをやって本番、となりますが、シャーロックとジョンに至っては「もうキャラはつかんだだろう」ということでいきなり本番ということも多い。もっとテストやりたいんだけどな(笑)。

阿吽の感じもすてきです。ジョン役・森川智之さんの印象はいかがですか?

……かわいいですよね。いや、森川さんじゃなくてね。ジョン・ワトソンって、かわいいじゃないですか。そこに森川さんの声がつくとよりこう……チャーミングになるんですよ。苛めたくなっちゃうんです。

そう思って演じてらっしゃるの、声から伝わってくる気がします(笑)。ほかに印象的な共演者さんはいらっしゃいますか?

木村靖司さんですね。お兄ちゃんのマイクロフト・ホームズ。木村さんは舞台俳優で、声のお仕事はあまり多くされていないんですが、だからこそのあの独特さ。「シャーロック」と呼ばれるたびにぞくぞくします。サリー・ドノバン役の三鴨絵里子さんも素晴らしいですね。二人ともご本人自体が楽しい方で、あの声が自然体なんです。モリアーティ役の村治学さんとも収録後によく飲みにいきます。みんな仲がいいですよ。

宿敵と飲み会、いいですね。楽しそうな現場の様子が伝わってきます。『SHERLOCK―シャーロック』はシーズンごとにかなり間隔があきますが……

そうなんですよ! でも、2年に1回、戻ってくるとそこはホームなんです。一気に打ち解けたムードになる。収録のたびに、皆さんに会えるのを楽しみにしています。

三上哲 エンタメステーションインタビュー

人嫌いのシャーロックとは、まるで正反対ですね(笑)。三上さんが声優になったきっかけはなんだったんですか?

デビューは音楽だったんです。80年代に活躍したオメガトライブのメンバーとバンドを組んでリードヴォーカルを担当してました。その後、30歳くらいで芝居の世界へ。最初は小劇場が中心だったのですが、そこで教えてもらっていた師匠が声のディレクターを手がけるようになって、その現場に呼ばれるようになった。人の縁ですね。

歌っていた、ということは「声」の表現にはこだわりがあったのでしょうか?

もともと歌というよりもバンド、「だれかと歌う」のがたまらなく好きだったんです。昔、神田にフォーク酒場があって、そこで弾き語りしていると「ちょっと入っていい?」なんてベースが入ってきたり、ドラムが入ってきたりしてセッションみたいになる。あの雰囲気、仲間とのかけあい、それが好きなんですよね。

なるほど。お芝居にも通じる「かけあい」がお好きなんですね。

そうですね。今でも、現場の“同じ作品を作り上げる仲間”という感覚が好きです。じつは高校までは野球をやっていたから、関係あるのかな。会社の草野球チームでは絶対的エースですよ(笑)

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