黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 20

Interview

ゲームミュージックの巨匠 植松伸夫氏(中)今の視点で語る『FF』制作秘話

ゲームミュージックの巨匠 植松伸夫氏(中)今の視点で語る『FF』制作秘話

『ファイナルファンタジー』って、若い人間が集まって作った力技のゲーム

とにかく、いいものを作るぐらいの気持ちで、別に何百万本売ろうみたいな意識はなかったと。

植松 坂口さんと経営的な話をしたことはないんで、ハッキリとは言えないですけど、なんとなく彼の性格上、売れるものを作るっていうよりも、誰もやってなかったことをやりたい、自分が面白いと思うことをやりたい、自分が感動することを盛り込みたいっていうね。なんかね、ホンットに洗練されてないんですよ、『ファイナルファンタジー』って、若い人間が集まって作った力技のゲームといいますか。『ドラゴンクエストIII』とかやってると、「いや~よくできてるなあ~」って思いますもんね(笑)。

それはなんとなく分かる気がします。

植松 コントロールがきいているんですよね。ここで抑えて、次でパーンっていう。抑揚があって、すごく洗練されているんです。でも、『FF』って経験のない若者ばっかり集まっているから、やりたいことを詰め込んじゃうんですよ。だから、それがうまくハマったときはいいですけど、ハマってないときはホントにドン臭い感じになるんです。まだ20代の僕らとか坂口さんなんかが一番年上でしたからね。コントロールしなきゃなんない立場のヤツらも、やりたいことがいっぱいあってコントロールできないんですよ。だから、しょうがないんですよね。

作り手にとっては幸せな時代でしたね

お互いに歯止めがきかないんですね。

植松 ホントはその上にもうひとりいて、そこはもうちょっと抑えたほうがいいとか、そうしたらこっちが映えるよとかね。そうやってコントロールできる人がいれば、客観的な作り方ができたのかもしれないですけど、オレがオレがってヤツらが集まっていますから、全部入れちゃえ、みたいな。

90年代のころ

でも、すごい時代ですよね。そういう意味でいうと、ありとあらゆる個性がぶつかりあって、その中からほとばしる結晶のようなものが生まれた時代ですよね。

植松 そうですね、作り手にとっては幸せな時代でしたね。今はゲーム会社なんかでも外注を使うことが多いですよね。

多いですね。

植松 もちろん、絵の上手いに人に頼もうとか、いい音楽を書く人に頼もうとか、そういうのは全然間違ってないんですよ? でも、その当時の80~90年代のソフトハウスって全部抱え込んでいたじゃないですか。作曲屋やプログラマーから物語書くヤツ、絵を描くヤツまで。もちろん、良い面と悪い面の両方があるんですけど、そうやってひとつのところに集まって、毎日顔を突き合わせてやっていると相互の理解度は違いますよね。

それはあるでしょうね。

植松 「そういう絵を描くんだ」、「そこはそういう語り口になるんだ」、「そこはそういうことなの?」みたいな。裏のストーリーや設定から書いている人の裏の思いまで、すぐにタバコ部屋とかで聞けるんで、よりクセの強いものができやすい時代だったのかもしれません。クセっていうのは個性って言い換えてもいいかもしれないですけどね。

ああいうスタイルも当時のスクウェアさんが先鞭をつけたんじゃないかなと僕は思っているんですよね。重機型っていうと変ですけど、すべてのスタッフをひとつのチームで抱えて、馬力で押していくみたいな。そういう感じのスタイルっていうのは、あの頃のスクウェアさんがひとつの象徴だったような気がするんですよ。

植松 それはそうかもしれないですね。


続きは第3回インタビューへ
9月19日(水)公開

ゲームミュージックの巨匠 植松伸夫氏(下)『FF』は自分にとって“新しくない”

ゲームミュージックの巨匠 植松伸夫氏(下)『FF』は自分にとって“新しくない”

2018.09.19

著者プロフィール:黒川文雄【インタビュー取材】

くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。DMMオンラインサロンにて「オンラインサロン黒川塾」を展開中。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。

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