LIVE SHUTTLE  vol. 21

Report

サンフジンズ対バン企画“問診過注射2016” @恵比寿リキッドルーム 2016.04.03

サンフジンズ対バン企画“問診過注射2016” @恵比寿リキッドルーム 2016.04.03
カイ•ギョーイ(奥田民生)、ジューイ•ラモーン(岸田繁/くるり)、ケン•シューイ(伊藤大地)からなるサンフジンズ。
洒落の効いた楽曲で本気で遊ぶ凄腕ミュージシャンが繰り出すステージは、骨太で圧倒的な迫力が、瞬く間に観客を魅了する。
これまでのツアーを経て、野性味あふれるバンドサウンドへと一段と進化したサンフジンズと、対バンを務めた気鋭の若手バンド、ROTH BART BARONのライブの様子をお届けする。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 山本倫子


サンフジンズのメンバーは奥田民生(from ユニコーン)、岸田繁(from くるり)、伊藤大地(ex SAKEROCK)の3人。それぞれカイ・ギョーイ(奥田)、ジューイ・ラモーン(岸田)、ケン・シューイ(伊藤)という名前を持つ。
そのサンフジンズが、今年の3月1日から6月3日まで4カ月連続で行なっている対バン企画ライブが“問診過注射2016”だ。3月は、3デイズ公演。3にまつわる開催にこだわるのには、“サン”フジンズだからというしょうもない理由がある。しかし、こうしたジョークのぐだぐださ加減と反比例する演奏と歌の切れ味がこのバンドの特長だ。

4月3日のお相手は、“ROTH BART BARON(ロットバルトバロン)”。新進のフォークロック・バンドで、今のJ-ROCKから完全にはみ出した音楽性で話題を集めている。メンバーは三船雅也(vo&g)と中原鉄也(dr)で、この日はサポートのキーボード、トロンボーン、トランペットを加えた5人でリキッドルームのステージに立った。

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満員のオーディエンスのほとんどは、ROTH BART BARONを知らない。だが5人が登場すると大きな拍手が起こる。普通、イベントでは“お目当て”のバンド以外に興味を示さないタイプの観客がいたりするが、この日は真逆で、新しいバンドを歓迎するムードが満々。さすがに音楽好きの3人が集まったサンフジンズのファンの、ナイスなマナーが光る。

クリーンなヒッピーという感じの三船が、アコースティック・ギターを弾きながら「小さな巨人」を歌い出す。スケールの大きなメロディだ。キーボードは古いシンセの音色を奏で、バックコーラスやブラスが豊かな倍音を醸し出す。途中でトランぺッターがグロッケンシュピール(鉄琴)を叩いたりして、全員で音楽に向かう姿勢が快い。それに反応して、客席はすぐに彼らの音楽に溶けていく。ステージにはハルモニウム(手押しオルガン)などさまざまな楽器が置いてあり、曲が進むにつれて5人は楽器を持ち替えながら演奏する。楽器の音色から曲を発想するバンドらしいパフォーマンスだ。

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「今日は呼んでもらって、若いバンドにチャンスをありがとう。僕らもそういうバンドになりたいです」と三船が感謝を述べる。「最後の曲は、友達の結婚式のために書きました。でも受けがよくなくて」と「アルミニウム」が始まった。
いきなり暗い和音が流れ出す。すると「これは結婚式でやる曲じゃないよな」と誰もが思ったらしく、観客からクスクス笑いが起こる。さらに歌詞が♪アルミニウムの空の下 二人どうやって生きようか♪という箇所に差しかかると、客席は完全に笑いとなった。しかし、もし結婚式の歌という先入観がなければ、美しいメロディとハーモニーが心に残る曲で、結果、終わったときには場内から大きな拍手が沸き起こったのだった。そうした観客の心理を読んでいるあたり、若手といえどあっぱれなライブだった。

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それにしても温かいオーディエンスだ。男女比は3:7くらいで、年齢層は20~40代。日曜日なので服装から職業は分からない。かなりビールが売れているので、そういう人たちなのだろう(笑)。

さて、ステージ後ろの高いところにある「手術中」の看板が点灯すると、サンフジンズの出番だ。Dr.dreの「I need a doctor」が鳴り響く中、3人は白衣で登場。まずはギョーイがベース&ボーカルの「そのかわり」からスタートする。基本的にギョーイとジューイがギターとベースを分担する。2人ともギターの名手として有名だが、ベースもなかなかの腕前だ。この曲でギョーイが弾いたのはユニボックス社製のベースで、めちゃ低音が出る。どこからこんなマニアックな楽器を調達してくるのか、ギョーイ(奥田)の音楽生活は本当に奥が深い。
それ以上にガツンと来たのは、シューイのドラムだった。僕はサンフジンズのライブは去年見たきりで、今年は初めてだったのだが、いちばん変化していたのはシューイだった。もともと軽快で切れのいいドラミングが彼の持ち味だが、「そのかわり」でのドラムは以前になかった重さが加わっていた。そのことでサンフジンズのサウンドからは野性味があふれ出していた。

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次の「じょじょ」は、明るく楽しい8ビートの曲。“以前のシューイ”に非常に似合う曲だった。しかしこの曲でも、ビートは軽さよりも強さが前面に出ていた。この変化は、サンフジンズを一層魅力的にしている。気持ちよさそうに歌い終わったギョーイは、にっこり笑った。
サンフジンズは昨年7月に1stフルアルバム『スリーシンフサンズ』を出した“新人バンド”で、初期のライブはアルバムの楽曲を再現することに主眼が置かれていた。だが今、目の前にいるサンフジンズはそのレベルをはるかに超えて、バンドの匂いをプンプンさせている。分かりやすく言えば、男くさいバンドに変身していた。

ジューイの前には、マイクが3本立っている。1本は普通のボーカルマイク。1本はボコーダー用マイク。ジューイはさらにもう1本のマイクの前に立って「サンフジンズです」と観客に向かって言った。するとその声には深いディレイがかかっていて、「サンフ/サンフ/サンフ」とコダマのように響いたから会場は大爆笑。わざわざこのディレイのためにマイクを1本、余分に立てていたのだ。
このオイシイ場面を逃さず、ギョーイが「今日はあんまりしゃべらなくていいかも」と突っ込む。ジューイは任せろと言わんばかりに、ディレイ・マイクに向かって次の曲「パン屋さん」を紹介する。「パン屋/パン屋/パン屋」ときれいにコダマする言葉に、観客はまた爆笑に誘い込まれる。こうなると、すっかりペースはサンフジンズのものだ。ライブはどんどん盛り上がっていく。
メンバー3人は、新しいオモチャを手に入れた小学生のように音楽で遊ぶ。エレクトリック音楽ツールの基本中の基本、ディレイは誰でも使えるものだが、使い方によってはこんなに楽しくなる。ギョーイはそれを「音楽で遊ぶ」と呼んで、自らの音楽活動の中で大切にしてきた。サンフジンズでもそれは同じで、ジューイ、シューイという新しい友達を得て、このバンドらしい遊び方を発明したのだった。
笑いの渦から始まった「パン屋さん」は、サンフジンズのレパートリーの中でも屈指の美しいメロディを持っている。ボーカルを取るジューイが丁寧に歌うと、その美しさが際立って聴こえてきた。さっき「パン屋/パン屋/パン屋」と面白おかしく曲紹介をした本人が、真剣に歌うからこそ音楽の良さが沁みてくる。この不思議なパラドックスが、リキッドルームのオーディエンスを魅了した。

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ギョーイ:1カ月に1回のライブって、どうなのよ。妙な間隔だから、練習しないし、リハもしない。だから、ちょっと演奏に怪しいところがある。
ジューイ:いやいや、ちゃんとやれてますよ。プロって凄いでしょ! 

3人は最上級のミュージシャンで、歌も演奏も素晴らしく上手い。その腕と笑いのセンスのギャップが、唯一無二のライブを形作っていく。

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徐々にペースを上げてきたライブは、「サーフジーンズ」からさらにギア・アップする。ギョーイはジャンプ一番、腰を振り振りサーフロック・ギターのソロを取る。ジューイはボディが小さめのフェンダー・ムスタング・ベースで応じる。ここからはアップテンポのロックンロール・ナンバーで畳みかける。
「さっさっサンフジンズ」では、ジューイとギョーイがベース&ギターのバトルを繰り広げたり。シューイも負けずに、抜けのいいスネアドラムでバトルに参加する。あまり楽器を知らない人でも、彼らの熱気を感じてエキサイトしていく。「問診してください」まで一気に突っ走った。

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「ありがとうございます。最後の曲です。マタニティー!」とギョーイがお約束の挨拶をする。流れからして「マタニティー」が「マタねー」と聴こえる。オーディエンスが笑いながら手を振ると、ギョーイは「これは定着してるのか?」と嬉しそう。
ラストの「サンフジンズのテーマ」は、♪サンフジンズはね 医者じゃないんだ ほんとはね だけどきみの病気を治せるんだよ かっこいいねサンフジンズ♪と歌うパロディソング。それが男らしい太いビートで演奏されるから、ちゃんとラストの感動があったのが面白かった。

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アンコールはこのバンドきってのナンセンスソング「ハリがないと」。ギョーイもジューイも体をクネクネさせながら歌い演奏する。最後はまたしても「マタニティー!」で締めた。こんなに楽しいライブは、そうあるものではない。

終演後の打ち上げで、出演したミュージシャンたちに話を聞くことができた。
ROTH BART BARONは「温かいお客さんだったので、自分たちのライブが思うようにできました。楽しかったです」とリラックスして対バンを振り返ってくれた。
シューイはROTH BART BARONの中原とドラム談義をしながら、「前よりも思いっ切り、しかも楽しくやれてます」。
ジューイはちびちび呑みながら、「音源を聴いて、僕がROTH BART BARONを選びました。一緒にやれてよかったです。サンフジンズは、くるりとまったく使う脳ミソが違いますね。アマチュアの頃の脳ミソを使って、楽しくやってます」。やはりいい意味で“小学生”に戻れるバンドなのだ。
そしてギョーイは「リハもやらないで、本番ができちゃうくらいのバンドになりました。余裕ですよ」と満面の笑顔で応えてくれた。
サンフジンズはますますバンド感を増し、今の時代に音楽を作る意味と、ライブをする意義を追求していくだろう。次のアクションに期待はつのる。ってことで、マタニティー!

セットリスト

ROTH BART BARON
1.小さな巨人
2.Buffalo
3.Campfire
4.Demian
5.blg HOPe
6.氷河期 #3
7.アルミニウム

サンフジンズ
1.そのかわり
2.じょじょ
3.ふりまいて
4.パン屋さん
5.右から左
6.富士夫人
7.ちゅーきんキング
8.奇数したい
9.サーフジーンズ
10.さっさっサンフジンズ
11.過注射
12.問診してください
13.サンフジンズのテーマ

EN1.ハリがないと

プロフィール

ROTH BART BARON


三船雅也(Vo./Gt.)、中原鉄也(Ds.)からなる東京出身の二人組フォークロック・バンド。2014年、アルバム『ロットバルトバロンの氷河期』でデビュー。高い音楽性と圧倒的なライブ・パフォーマンスで注目を集める。同年、アメリカで7都市を回るUSツアーを敢行。2015年には、VIVA LA ROCK、CIRCLE、RSR、サマソニなど大型ロックフェスにも出演して存在感を示す。同年10月に2ndアルバム『ATOM』をリリースした。

リリース情報

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ROTH BART BARON
ATOM

PECF-1127/felicity cap-238
¥2,300+税

1.Safe House
2.Demian
3.England
4.blg HOPe
5.Shopping Mall Monster
6.Metropolis
7.Frankenstein
8.Glass Shower
9.X-MAS
10.ATOM


プロフィール

サンフジンズ


カイ・ギョーイ(奥田民生)、ジューイ・ラモーン(岸田繁/くるり)、ケン・シューイ(伊藤大地)からなるスリーピースバンド。2013年に結成。2014年のイベント出演で話題を呼び、2015年4月には「サンフジンズのおためしオペ」と題した初ワンマンを行う。さらに、同年7月には1stアルバム『スリーシンフサンズ』をリリース。その後「サンフジンズ全国オペ“過注射”」で全国を回った。その模様を収めたDVD「ツアー過注射〜全国オペ2015〜」を2016年3月にリリース。

ライブ情報

サンフジンズ対バン企画 “問診過注射2016”

2016.05.03(火)【東京都】下北沢GARDEN
出演:サンフジンズ / 柴田聡子
開場 17:30/開演 18:00
チケット料金:オールスタンディング¥6,480(税込)+1Drink代別途 ※3歳以上有料
お問い合わせ:ディスクガレージ 050-5533-0888 (平日12:00~19:00)

2016.06.03(金)【大阪府】梅田クラブクアトロ
出演:サンフジンズ / シャムキャッツ
開場 18:15/開演 19:00
チケット料金:オールスタンディング¥6,480(税込)+1Drink代別途 ※3歳以上有料
発売日:5/7(土)
お問い合わせ:清水音泉 06-6357-3666 (平日12:00~17:00)

リリース情報

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ツアー過注射〜全国オペ2015〜

LIVE DVD:RCMR-2001/3,700円+税
LIVE Blu-ray:RCMR-2501/4,600円+税

01.サンフジンズのテーマ(逆)
2015年8月9日@郡山Hip Shot Japan
02.サーフジーンズ
2015年8月9日@郡山Hip Shot Japan
03.さっさっサンフジンズ
2015年8月27日@京都磔磔
04.スリーシンフサンズ
2015年8月27日@京都磔磔
05.じょじょ
2015年8月27日@京都磔磔
06.右から左
2015年8月25日@広島クラブクアトロ
07.パン屋さん
2015年8月27日@京都磔磔
08.奇数したい
2015年8月25日@広島クラブクアトロ
09.そのかわり
2015年9月3日@Zepp DiverCity Tokyo
10.富士夫人
2015年8月27日@京都磔磔
11.ハリがないと
2015年8月9日@郡山Hip Shot Japan
12.ちゅーきんキング
2015年8月25日@広島クラブクアトロ
13.ふりまいて
2015年8月27日@京都磔磔
14.サンフジンズのテーマ
2015年8月25日@広島クラブクアトロ

— ENCORE —
15.過注射
2015年8月9日@郡山Hip Shot Japan
16.さっさっサンフジンズ
2015年8月27日@京都磔磔
17.さっさっサンフジンズ
2015年9月3日@Zepp DiverCity Tokyo

リリース情報

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スリーシンフサンズ

CD:RCMR-0001/¥3,000+税
ANALOG(12inch):RCMR-4001/¥3,500+税

01.スリーシンフサンズ
02.じょじょ
03.ふりまいて
04.右から左
05.サーフジーンズ
06.ハリがないと
07.パン屋さん
08.富士夫人
09.そのかわり
10.ちゅーきんキング
11.奇数したい
12.さっさっサンフジンズ
13.サンフジンズのテーマ


vol.20
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