連続テレビ小説『半分、青い。』特集 「まだまだ半分、青い。」  vol. 6

Interview

朝ドラ『半分、青い。』のセットに生活感をもたらす 小道具装飾・齋藤綾乃の感性と遊び心

朝ドラ『半分、青い。』のセットに生活感をもたらす 小道具装飾・齋藤綾乃の感性と遊び心

4月にスタートした連続テレビ小説、すなわち朝ドラ『半分、青い。』も、いよいよクライマックス。エンタメステーションでは同ドラマをいっそう楽しめるようにと、キャストやスタッフにインタビューを行い、それぞれの役割や個々の「まだ青かったころ」のエピソード、そして収録時のエピソードや作品への思いなどをフィーチャーしていく。
第6回は、小道具装飾の齋藤綾乃さんが登場。文字通り、各キャラクターの住居のセット内を小道具で装飾して、リアルな住空間に仕立てていく役どころを担っている。随所で遊び心をきかせたフレッシュな感性に焦点を当てつつ、その仕事ぶりを語ってもらった。

取材・文 / 平田真人 撮影 / エンタメステーション編集部

人がそこに住んでいるという生活感を出すために、本物の綿埃をセットの中に散らすことも。

まずは基本的な質問で…齋藤さんの「小道具装飾」がどのようなお仕事なのか、お聞かせください。

基本的に、「大道具」さんの建て込みが終わったセットを飾るのが、「小道具」の役割になります。わかりやすく言うと、引っ越し業者さんをイメージしていただくのがいいかもしれません。ソファや机、小物を並べていくのがメインの仕事ですが、プラスアルファで…(佐藤健演じる萩尾)律の受験票だったり、(永野芽郁演じるヒロインの楡野)鈴愛と涼ちゃん(森山涼次=間宮祥太朗)が新居にと考えていた物件の不動産チラシであるとか、役で使う本やメモ帳、ノートといった小物も用意します。

小道具装飾・齋藤綾乃氏

第92話より ©NHK
鈴愛に涼次との新居のチラシを見せられ“のろけ話”を聞く田辺。

ドラマの前半にまでさかのぼりますが、鈴愛が採用試験を受けた会社のリストが、歴代朝ドラの登場人物と職業を想起するような名前だったんですけど、あれも齋藤さんが用意されたのでしょうか?

あ、そうです(笑)。演出部の方から来た原稿を元に、外部の業者さんにお願いする場合もありますし、手書きの場合は極力、小道具チーム内で手がけるようにしています。実を言うと、鈴愛の字は私が書いているんですよ。

わ、そうだったんですね! 

もちろん、全部がそうだというわけではないです。(小西真奈美演じる加藤)恵子さんの緑のお部屋(おひとりさまメーカー「グリーングリーングリーン」)のセットの中にボードがあって、晴さん(松雪泰子)のオペが100%成功するという文言は、永野さんの直筆ですね。でも、それ以外はほぼほぼ…私が書いていて。就職試験の履歴書などがそうです。ただ、永野さんご本人の字がとてもきれいなので、筆跡を真似て書くのが結構大変だったりしますね(笑)。

第138話より ©NHK
「不安になりそうなときにバチッとした文字にシャキッとなる。」という恵子の言葉を聞き、「私も書いていいですか?」と晴の手術成功を願う鈴愛。

あ、そこまで細かく寄せているんですね(笑)。

一瞬、映るか映らないかというレベルなので、「そこまでする?」と思われがちなんですけど、そこまですることが私たちの仕事というか…。それにしても、採用試験を受けた先のリストは、演出部こだわりの“遊び心”だったので、気づいてもらえてうれしいです(笑)。

喜んでいただいて何よりです(笑)。話を戻しまして…鈴愛をはじめ、各キャラクターの住居や部屋の小道具を用意する時というのは、演出部や美術部との打ち合わせを踏まえた上でとは思いますが、人物それぞれの気持ちや感覚で装飾していくのでしょうか?

そういった面もあるにはありますけど…鈴愛の実家の自室を例に出すと、ステッカーを貼りまくったのはデザイン部さんの意向だったりするんです。デザイン部さんがおこした図面を元に、大道具さんと小道具、造園さんと「こういう雰囲気にしよう」と打ち合わせをして、各部でイメージを共有しながら固めていって、実際に飾ってみた上でさらに調整していくという感じですね。人がそこに住んでいるリアリティーがないと、ドラマの世界観が損なわれてしまうので、そういった部分は気をつけています。

ただ、ドラマの前半は齋藤さんが生まれる前の時代だったりもしたわけですが、そこに関してはどうカバーしていったのでしょうか?

確かに…自分たちで用意はしたものの、使い方がわからない小道具も実を言うとありました。最初のころのラジカセがそうです。でも、テレビはブラウン管のものはギリギリ知っていたんですよ。とはいえ、運んだこととかはなかったですし、配線のことになるとサッパリで(笑)。あと、昭和期のポットや扇風機なども初めてみました。意外と大変なのが90年代後半から現代なんです。技術進化や商品のモデルチェンジが早く、タブレットはないけどケータイはある、パソコンやテレビのサイズも今ほどコンパクトじゃなかったりするし、「エコマーク」を各メーカーがいつごろから導入していたかまではさすがに追い切れないので、表示をどうするかといった話になって。そこは、できる限り注意しながら、視聴者のみなさんから問い合わせがないように祈りつつ…各年代に沿ったものを用意するようにしました。

スケジュールの都合上、セットを一度バラさなければいけない場合もあるでしょうから、再現していくのも大変そうだなぁ…と素人ながらに思ったりもします。

なので、逐一セット内の写真を撮って、どこに何が置いてあるかを記録して、いつでも再現できるようにと努めていますけど…。

現場での齋藤氏。様々な小道具を紹介してくれた。

それこそ、「やってまった」ということもあったりする…?

鈴愛の漫画家時代、「秋風ハウス」に住んでいた時に(滝藤賢一演じる父・)宇太郎さんの電気スタンドをめぐって「やってまった」ことが実はあります。それは現場のみなさんにお願いをして撮り直していただいて…オンエアは回避したんですけど…まず引っ越してきたばかりのころのシーンを撮って、次にだいぶ住み慣れたころを撮って、また引っ越し直後のシーンに戻るという撮影スケジュールの時があって。結構ポンとポンと時系列を行ったり来たりしていたので混乱してしまって、宇太郎さんの電気スタンドを入れ忘れてしまったんです。ひたすら懇願をして、後から2シーン撮り直していただきましたが…言い訳するわけじゃないんですけど、意外と現場では誰も気づかなかったりするんです。特に「秋風ハウス」の鈴愛ちゃんの部屋は小物が多くて出入りも激しかったので──。

第58話より ©NHK
正人にフラれて泣く鈴愛に萩尾家特製スープを作る律とおかわりする鈴愛。

晴さんが訪ねてきたことで、物が増えたりもしましたしね。

そうなんです、掃除して片付けられたりもして(笑)。シーンが前後して、片付ける前に戻さないといけなかったりもしたので、本物の綿埃を持ってきてセット内に入れたり出したりと、いろいろなことをしているんです。(石橋静河演じた律の前妻・)より子さんがキッチンにいたシーンでは、シンクに水をかけたり、食器を微妙に傾けたりして使っている感じを出したり、といったようなところで、できる限り生活感が出るようにと心がけています。

祖母・廉子の存在を思わせるカエルの置物があるのは、つくし食堂の店先だけじゃない!?

日々お仕事をされていく中で、どういった時に充実感や達成感を感じるのでしょうか?

私はまだまだ駆け出しなので、そんな偉そうなことが言える立場にはないんですけど…用意した小物や小道具をご覧になった役者さんが、「あ、これって、あのシーンでも出てきた物だね」と気づいてくださったりすると、うれしくなりますね。永野さんもよく気づいてくださっていますし、小西(真奈美)さんが緑色の小道具を見て「あ、これカワイイ」って言ってくださった時は、「やったぁ」と心の中でよろこびました(笑)。

聞くところによると、齋藤さんは現場でスタッフやキャストの方々から、とても愛されているそうで…。

いえ、そんな…どうなんでしょうね。でも、(萩尾弥一役の)谷原章介さんが、私の好物が梅干しだと知ってお家から持ってきてくださったり、マアくん(朝井正人)役の中村倫也さんが久しぶりに現場に戻られた時は「あれ、めっちゃ痩せたね」と、おっしゃってくださったり…もったいないくらいありがたいことだな、と思います。(思い出したように)あ! うれしかったことでいうと、番組の公式SNSに私の撮った写真が使われたことですね。SNS担当のスタッフさんから、何かいい写真がないか聞かれて…いくつか記録用に撮ってあった写真をピックアップして送ったら、律と正人と猫ちゃんの3ショットがSNSに載っていて。セットの写真を撮っていたら、たまたま佐藤さんと中村さんがカメラ目線をくださったんです。まさか公式SNSの画像になるとは思っていなかったですけど、何でも撮っておくものだなぁって(笑)。

お仕事の一環としてセットの記録用に撮っているなかで素敵なことが起こったんですね。

セットの記録写真って、シーン替わりのタイミングでパッと撮ることが多いので、わりとキャストのみなさんが残っていらっしゃるんです。すると、笑顔で目線をくださったりするので、私もそのまま撮るんですけど…永野さんも「あの時撮っていた写真、インスタに載せてもいい?」って言ってくださって。いいも何も、私の方がむしろ貴重な写真を撮らせてもらっているので、「もちろん、どうぞ使ってください!」っていう感じで、画像をお送りするという(笑)。

記録写真が思わぬカタチで役に立つという(笑)。で、まだ充分若い齋藤さんに聞くのも何ですけど、この特集における、みなさんへの共通質問でして…ご自身が「まだまだ自分も青いなぁ」と思うのは、どんな時でしょうか?

いやいや、常に全部が青いですね(笑)。たとえば…スタッフも人間ですから、疲労がたまってくると現場の空気もピリピリッとなる時があって。そういう時に空気が読めない発言をしてしまって、そのたびに「あぁ…まだまだ青いなぁ」と痛感しています。

聞くところによると、そういった邪気のない言葉で逆に現場が和む、という話もあるようです。

そうなんですか? そうだといいんですけど…。私、今年で24歳になるんですけど、もっと若いスタッフだと専門学校を出たばかりで19歳の子とかもいるので、そろそろしっかりしなきゃなって思います。

19歳のスタッフさんは、永野さんと歳が変わらないですもんね。

そう思うと、永野さんはすっごく大人だなと思います。精神的にもそうですし…30代後半の鈴愛を演じている時、モニター越しに見てリアルにその年齢に見えるんですよ。そういう意味でも、すごい女優さんですよね。

津曲のおかもちについて丁寧に説明してくれた。

まったくもって同感です。それと…これまた共通の質問なんですが、「思い出の朝ドラ」を挙げるとすると、どの作品になりますか?

私は『ちゅらさん』ですね。うちは常にテレビが点いているような家じゃなかったんですけど、なぜか『ちゅらさん』だけは見ていて、記憶に残っているんです。小学生だったので、セットで撮っていたことも知らない時ですね。ゴーヤーマンのストラップが欲しかったなぁ(笑)。いまだに欲しいグッズのナンバー1かもしれないです。

それこそ、恵子役の小西真奈美さんも出ていらっしゃいましたね。

あぁ、そうですね! しかも、『半分、青い。』は『ちゅらさん』以来の朝ドラなんですよね。

そういえば! さて、齋藤さんはこの先ドラマをつくっていく1人として、どのような成長線を描きたいと思っているのでしょうか?

う〜ん…まだ私はチーフとしてセットの“担当週”を持ったことがないので、まずは任されるようになりたいです。ただ、これはやってみたいという気持ちだけでできるというものでもなくて、ある程度経験を積まないと務まらないんですよ。1週間で4つのセットを同時に飾り替えしていくこともあるので、冷静に判断しながら頭の中で同時にイメージして考えて、道具を頼んで、搬入して飾るには、スキルがないと無理なんです。まだ私は図面が手放せないですし、先輩たちが装飾する生活感のあるセットを見ていると、「私、まだまだだなぁ…」と思ってしまうんですけど、いつかは“青い自分”から卒業したいと思っています。

©NHK
「秋風ハウス」での鈴愛の部屋。…カエルの置物が!!!

期待しています! では、最後に『半分、青い。』ファンの方々に、注目すべき小道具や装飾のお話を聞いて、締めましょう。

ドラマを担当するのが『半分、青い。』が2本目で、朝ドラはもちろん初めてだったんですけど、せっかくだから遊び心をきかせて楽しいことをしたいなって思って、現場に入ったんです。それで、カエルの置物を(風吹ジュン演じる鈴愛の祖母・)廉子さんを思わせる存在として「つくし食堂」の店先とか、弓道場やバス停の屋根の上とか、鈴愛たちの背景に見切れるぐらいの感じで映るようにしてみたんです。そうしたら、台本のト書きにも「カエルの置物は廉子さんの象徴」といったことが書いてあって! 「わっ、北川(悦吏子)さんに通じた…かも!?」って、勝手に喜んだ──ということがあるんですけど、店先のカエル以外は本当に映っているかいないかぐらいの感じなので、思い出した時に探してみてください(笑)。

齋藤綾乃(テレフィット)

2016年に(株)テレフィットに入社。
これまで「LIFE!〜人生に捧げるコント〜」、大河ドラマ「おんな城主 直虎」などの番組で装飾を担当。連続テレビ小説「半分、青い。」撮影終了後は、10月27日(土)放送開始の土曜時代劇「ぬけまいる」(NHK総合)を担当している。

連続テレビ小説「半分、青い。」

2018(平成30)年4月2日(月)~9月29日(土) 全156回(予定)
[NHK総合] (月~土)8:00~8:15/12:45~13:00[再]
[BSプレミアム] (月~土)7:30~7:45/23:30~23:45[再]
(1週間分)(土)9:30~11:00

■ダイジェスト放送
「半分、青い。一週間」(20分)
[NHK総合](日)11:00~11:20

■「5分で『半分、青い。』」
[NHK総合](日)5:45~5:50/17:55~18:00

オフィシャルサイトhttps://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/
公式Twitterhttps://twitter.com/asadora_nhk
公式Instagramhttps://www.instagram.com/nhk_hanbunaoi/
©NHK

ノベライズ

半分、青い。 上

北川悦吏子(著)
文春文庫
文藝春秋

心は、空を飛ぶ。
片耳を失聴したヒロイン、スズメの愛と勇気の物語――。


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7月26日(木)~9月29日(土)23:59

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