Interview

西川貴教 新ボーカルプロジェクトでの新曲リリースと10回目の“イナズマ”直前インタビュー。その胸中に迫る。

西川貴教 新ボーカルプロジェクトでの新曲リリースと10回目の“イナズマ”直前インタビュー。その胸中に迫る。

「西川貴教」という自身の名を掲げて新たなプロジェクトを発進させた今年、もうひとつの大きな節目として、彼の主宰する“イナズマロック フェス”が開催10回目のアニバーサリーを迎える。しかも今回は初の3日間開催。彼自身も、西川貴教、abingdon boys school、T.M.Revolutionの3形態で出演するという、集大成にしてとてもチャレンジングなステージとなりそうだ。また、西川貴教として10月5日に配信シングル「Be Affected」、11月14日に2ndシングル「His/Story(ヒストリー)/ Roll The Dice」のリリースも決定。目前に迫った「イナズマロック フェス2018」について、また、そこで初披露されるというこの2タイトルについて、彼に想いを語ってもらった。

取材・文 / 本間夕子

とにかく今は何も考えられないというか、なんとか無事に終われたらいいなって

いよいよ“イナズマロック フェス2018”が目前となりましたね。

でも、やっぱり天候が心配で。ステージの設営もこれからだし、今日もすごい雨風だったから、足場がぬかるんでいたりもするだろうし(※インタビューは9月4日に実施)……なんとか無事に当日を迎えられたらって願っていますけど。こればっかりはどうにもできないことだから。心配することしかできないよね。

今年は10回目という記念すべき開催となりますが、3月に当サイトでインタビューさせていただいたときには、“10回目だけど、むしろ粛々とやりたい”とおっしゃっていました。

そうですね。ひとつの節目ではありますし、もちろんここまで続けられたというのはすごくありがたいことなんですけど、そこだけを切り取ってどうのっていう感じではないかな。とにかく今は何も考えられないというか、なんとか無事に終われたらいいなって。

3日間を終えて初めて、感慨がわくのかもしれないですね。

そう思います、きっと。

とはいえ、今回は初の3日間公演となりますし、規模的にもかなり大きいじゃないですか。

関わってくださる皆さん、期待してくださる皆さんのおかげで、西日本ではかなり大きな規模のイベントのひとつに育てていただいて、ホントここまで大きくしてもらえたことは本当にありがたいと思っていて。そういった意味でも、皆さんにちゃんと感謝を伝えられるような3日間にできたら、と。

今年もまた、出演アーティスト、パフォーマーの皆さんが錚々たる顔ぶれで。きっと出演者の皆さんも、このフェスにはかなり想い入れがある方が多いと思うんですよ。UVERworldをはじめ、何度も“イナズマ”のステージに立ってきた常連アーティストはもちろんのこと、最初はフリーエリアの風神ステージからメインの雷神ステージに上がってきて、今年の2日目にはトリを務めるまでになったTHE ORAL CIGARETTESのように、“イナズマ”と共に成長してきたバンドもいたり。しっかりと血の通った歩みが感じられるのが“イナズマ”の素晴らしさだなって。きっと、初出演の方々も並々ならない想いを抱いていらっしゃるんだろうと思いますし。

長くやっていると、やっぱりいろいろドラマがあるよね。こっちが出演をお願いするのはもちろんだけど、出たいと言ってもらえるイベントにできているかどうかっていうのもすごく大事だと思うし。僕自身、今回も出てくださる方々のパフォーマンスにはめちゃくちゃ期待してますしね。ただ、一方でイベントとして当初から“イナズマ”が目指してきたものというのもあって。それは、キャスティングのみに頼るのではなく、イベントそのもののファンを増やしていきたい、ということなんです。この“イナズマ”が好きで期待してくれる人たち、あるいはこのイベント自体に興味を持ってくださって、応援してくださる人たちを増やしていきたい。そのためには、“イナズマ”というイベント自体が魅力的なものにならなければいけないわけで。そういった意味でも、できる限りブレがないようにできたらいいな、と。

ブレ?

例えば、今回のチケットの動きを見ていても、3日間ホントに横並びなんですよ。どの日にちに関しても万遍なくチケットが売れているのを見ると、キャスティングはもちろんだけど、イベント自体にも期待してくれているのかな、と思います。

今回出演するアーティストの中でいちばんアウェイな気がする(笑)

素敵ですね。ところで西川さんご自身も、初日は西川貴教、2日目はabingdon boys school、3日目はT.M.Revolutionと3形態で出演されますが、“イナズマ”とともに走ってきた西川さんのキャリアが反映された3日間と考えると、いっそう胸に迫るものがあります。

最初はそこまで意図してなかったんですけどね。でも、せっかく3日間あるし、みなさんに各日を違う彩りで楽しんでもらう方法として、こういう形もあるのかなって。やっぱり、ここまで続けさせてもらえた感謝を、ずっと支えてくれた皆さんに自分なりに伝えるには、自分が今できる精一杯をお届けすることだとも思いますし。

abingdon boys schoolは2012年以来、6年ぶりの出演ですよね。

そうなんですよ。実はけっこうギリギリに決まったというか、最初のラインナップをインフォメーションする前日ぐらいに、ほとんど思いつきに近い形で提案したんですけど……どうですかね? 正直、ずいぶんとインターバルがあるので、ちょっと心配(笑)。本当は、“イナズマ”をやり続けてくる中で貢献してくれたアーティストのみんなにはもっともっと出てもらえるような機会を作りたかったっていう気持ちがすごくあったんですよ。でも、限られた日数と時間の中ですべてを叶えるのはどうしたって難しくて。ただ、そういった視点で考えたときに、私事ではありますけど、a.b.s.も“イナズマ”の立ち上げから頑張ってもらったところはあったので、だったらこの節目にバンドとして立つことでファンの皆さんに感謝の気持ちを表わすというのもありなのかな、と。

一方、西川貴教としては今回の“イナズマ”が公での初パフォーマンスになるということですが。

そう。それも大きくて、周りからも相当心配していただいたんですけども(笑)。

やはりT.M.Revolutionとは全く違ったものになるんでしょうか。

どうでしょう?(笑) でも、あんまり凝ったことをしようとは考えていないです。現状、西川貴教としてリリースされてる楽曲はまだ数曲しかないですけど、“イナズマ”以降立て続けにリリースがあるので、新曲の多いパフォーマンスになると思うんですよ。だから、過度な演出をするのではなく、じっくり楽曲を聴いていただけるものにしたいなと思っていて。西川貴教として初めて人前に立つにあたって、これだけ大きい場所を与えていただけたっていうのは光栄でもありますし。

初日のトップバッターですし、初心に返って臨む感覚も?

そうですね。なんなら今回出演するアーティストの中でいちばんアウェイな気がする(笑)。

西川貴教としては10月5日に配信シングル「Be Affected」(TVアニメ『学園BASARA』テーマソング)、11月14日に両A面の2ndシングル「His/Story / Roll The Dice」(日台合同映像企画『Thunderbolt Fantasy Project』新シリーズ『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊記2』(以下、『TBF2』)オープニング&エンディングテーマ)のリリースが決定していますが、これらの新曲も“イナズマ”で披露されるわけですね。

もちろん! 今、リハーサルも徐々に始まっているんですけど、編成の都合上、西川貴教のリハがいちばん最後になるので、まだレコーディング以外では全く(楽曲に)触れられてないような状態なんですよ。なので、ライブでどんな感じになるのか僕自身もまだ分かってない部分があるんですけど。

いろんな方々とのコラボレーションをひとつのステージでどうまとめ上げられるのか、興味津々です。

そこに関しては僕は特に考えてないですけどね。曲によって見せ方を変えなきゃ、とかそういうのもないし。ホント、シンプルに曲を聴いてもらえるチャンスなので、それぞれが曲として気に入ってもらえたらいいな、ぐらい。T.M.Revolutionはイメージもあるから“こうあらねばならないのかな”と思うこともありますけど、西川貴教は全くの新人なので、あんまり肩ひじ張っても仕方ないし。

より自由に。

うん。だから、あんまり考えてない。

今後もこういった発想でいろんなアーティストとコラボレーションできるんじゃないかっていう手応えは得ました

せっかくなので新曲についても少し伺わせてください。「Be Affected」はFear, and Loathing in Las Vegasとのコラボレーション楽曲ですが、Las Vegasとコラボすることになった経緯というのは?

ホントに思いつきなんですけど……以前から、『学園BASARA』のテーマソングを、というお話を『戦国BASARA』シリーズのプロデューサーからいただいていたので、準備はしていたんです。ちょうどオンエアの時期が『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊記2』と丸かぶりだっていうこともあって、だからこそ何か特徴的なものにできないかなって思っていたんですよ。本当にありがたいことに、せっかくこうやって同タイミングに大きなタイアップがふたつ重なっているんだから、それぞれが際立つものになればいいなって。

たしかに2作品それぞれに方向性が全く違っていて、ビックリしました。

『TBF2』に関しては、ぶっちゃけかなり準備に時間をかけているんですよ。映像制作の都合もあるので、仕込みはずいぶん前から始めていて。今回『TBF2』の劇伴を手掛ける澤野(弘之)さんとタッグを組ませていただいたんですけど、僕自身も以前からどこかでタイミングがあればご一緒できればいいなと思っていたんです。それが今回実現できて。かつ、今回は僕もキャストとしてレギュラーで出演させていただいたりとか、『Thunderbolt Fantasy東離劍遊記』第1期よりもずいぶんと踏み込んだ形で作品作りに関わらせていただいてるんですね。今回の「His/Story」に関して言うと、元々第1期のメインテーマだった楽曲を新たに歌ものとして再構築しているんですよ。その発想自体も取り組みとしてすごく面白いと思ったし、第1期をご覧になっていた方にとっては耳馴染みのある曲でありつつも、全く違う解釈で新たに第2期を象徴する楽曲でもある。そこが、シリーズとしての作品を音楽で紡いでいる感覚としてすごく新鮮で。実験的な楽曲ではあるけど、非常に完成度の高い楽曲になっているなと思うんです。一方で「Be Affected」に関しては『戦国BASARA』シリーズとの10年以上のお付き合いがあった上でのものだったりもして。

『BASARA』といえば西川さんっていうイメージがすっかり定着していますから。

その中でも今回の『学園BASARA』はちょっと特殊というか、『戦国BASARA』のアンソロジー的作品でもあるので、だったら真正面からというよりは、楽曲の方もこれまでとはまた違った面白さを表現できればいいなって。

それでFear, and Loathing in Las Vegasとのコラボを思いつかれた、と?

そう。ちょっと説明が難しいんだけど……2014年の7月クールに『戦国BASARA Judge End』が放送されて、そのときにアニメの制作体制が一新されたんですね。そこで『BASARA』のプロデューサーの意向もあって、僕は楽曲提供ではなく、キャストとして出演することになって。ただ、せっかくなら主題歌は僕の信頼する後輩に託したいなと思ってFear, and Loathing in Las Vegasを推薦したんです。そういったつながりがあった上で、今回また新たな制作体制で楽曲提供ができる機会をいただけたので、だったら全然違った形で関わるよりも、その時にできた関係性を継承して新しいものに昇華できたらな、と。それでLas Vegasに声を掛けたっていう。

Las Vegasとは長いお付き合いなんですか。

過去に“イナズマ”に出てくれたりもしたし(2015年・2017年)、関西出身のバンドっていうところでつながりもあって。僕も関西出身だから、関西の頑張っているアーティストや関西をもっともっと盛り上げたいなという気持ちはやっぱりあるんですよ。それこそ“イナズマ”を通じて、とかね。ちょっとでもその一助になればいいなと思って。

作詞・作曲・アレンジともにLas Vegasが手掛けていますが、バンドが作った曲を歌うのは、またちょっと違う感じだったり?

そこはコラボレーションを前提に彼らと組んでやっていくわけですから、大きく感覚が違うようなことはないです。むしろ、今後もこういった発想でいろんなアーティストとコラボレーションできるんじゃないかなっていう手応えは得ましたね。今回みたいにシンガーとしての僕の歌とバンドの演奏が合わさることで、また違う聴こえ方をしてくれたらいいなと思うし、Las Vegasが今後、この楽曲をどう演奏してパフォーマンスしてくれるかで、曲自体もより大きく育っていきそうな気もするし。例えば、イベントとかで一緒になったときにこの曲で共演できたりしたら面白いだろうな、とか。

自分ができるすべてで精一杯の感謝の気持ちを3日間を通して届けていきたい

いいですね。「His/Story / Roll The Dice」はとにかく伸びやかで深みのある美しい歌声が印象的だし、「Be Affcted」とのギャップも含めて、これが西川貴教というプロジェクトの醍醐味なんだなと再認識させられました。

そうですね。澤野さんの緻密に計算された楽曲と、Las Vegasのバンドならではのアプローチとで対置する感じが僕的にもすごく新鮮でした。やっぱりいまだに“T.M.Revolutionと西川貴教を分ける必要はあるの?”とか聞かれることがあるんですよ。当然まだシングル1枚しか出してないから、いろいろ言いたくなるとは思うんだけど(笑)。でも、今回の楽曲を聴いて“なるほど、そういうことなんだな”とか、少しでも感じてもらえたらうれしいですね。

この新曲たちをいち早く“イナズマ”で聴けるのが楽しみです。

まだ誰も聴いたことのない楽曲だからね。オンエアもまだ先だし、お客さんにとっては“イナズマ”が初聴きになると思うんですけど。そういう意味でもアウェイ感は強いよね。

当日は緊張されるんでしょうか。

どうなんだろうね? でも緊張すると思います、はい(笑)。

では最後に“イナズマ”を楽しみにされている方々にメッセージをお願いします。

ずっと言い続けていますが、ここまで続けてこられたのは本当に関わってくださる皆さんの努力や協力と、毎年期待して足を運んでくださる皆さんのおかげだと思っているので、そういった皆さんの想いに対して、自分ができるすべてで、精一杯の感謝の気持ちを3日間を通して届けていきたいです。いい意味で手作り感のあるイベントですから、その年ごとにちょっとずつ印象の違ったものにはなってると思うんです。そうやってきて今、2009年から続けてきて思うこれまでの成果を3日間で皆さんに味わっていただくことで、この先や今後にも期待してもらえるものにできればいいな、と。主宰者として僕自身が初年度から目指してきたものの集大成がここにあると思っています。

西川貴教

1970年9月19日生まれ。滋賀県出身。1996年5月、ソロプロジェクト「T.M.Revolution」としてシングル「独裁-monopolize-」でデビュー。キャッチーな楽曲、観る者を魅了する完成されたステージ、圧倒的なライブパフォーマンスに定評があり、「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」「INVOKE」など大ヒット曲を連発する。故郷滋賀県から初代「滋賀ふるさと観光大使」に任命され、県初の大型野外ロックフェス「イナズマロック フェス」を主催、地方自治体の協力のもと、毎年滋賀県にて開催している。2016年5月にはT.M.Revolutionデビュー20周年を迎え、オールタイム・ベストアルバムをリリース。オリコンアルバムチャートで1位を獲得し、2017年5月には20周年プロジェクトの集大成としてさいたまスーパーアリーナ2days公演を開催。2018年3月には、西川貴教名義として初となるシングル「Bright Burning Shout」をリリース。常に新しい挑戦を続けている。

オフィシャルサイト
http://www.takanorinishikawa.com