Interview

藤原さくらが描き出す「大切な人との思い出の色」=『red』。『green』と合わせた2枚のEPに輝いている、新しい明日に向かう彼女の変化

藤原さくらが描き出す「大切な人との思い出の色」=『red』。『green』と合わせた2枚のEPに輝いている、新しい明日に向かう彼女の変化

藤原さくらが2nd EP『green』のリリースから3ヵ月という短いタームで3rd EP『red』をリリースした。共に全6曲収録で、全曲の作詞・作曲は藤原さくら、サウンドプロデュースはライヴのサポートメンバーでもあるマルチプレイヤーのmabanuaが担当した2部作。前作にはアニメ『コードギアス 反逆のルルーシュⅡ 坂道』の劇場版第二部主題歌「The Moon」が収録され、今作にはアニメ『若おかみは小学生!』の劇場版主題歌「また明日」とテレビアニメ版主題歌「NEW DAY」が収録されている。短い期間で制作された2枚のEPの相違点と相似点、そして、両作に通底する歌詞のテーマを探った。

取材・文 / 永堀アツオ

『green』と『red』、アナログのA面、B面っていうのが一番近い

髪の毛、ずいぶん短く切りましたね。

バッサリいきました。「もういったれ!」と思って(笑)。今年に入って一度セミロングくらいにして。それでは飽き足らず、「もっと切りたいもっと切りたい」ってなって。ずっと切りたかったので、スッキリしました。

見た目だけではなく、音源の中にも“変わりたい”という気持ちが表れているような感触がありました。

たしかに。変わりたいところだらけです。日常生活でもそうですし、音楽的にも、たくさんの素敵な人たちと一緒に作業をしたり、ライヴを観に行ったりするたびに、変わりたいと思います。自分にとってはすべてに対してポジティヴな意味なので、そういう歌詞も出やすいのかなという気がします。それに、2枚目のアルバム『PLAY』を出したあとの1年間は、音楽的にも向き合えた期間でしたし、いろんなことが変わったきっかけでした。

前回『green』のインタビューで「音楽と向き合った1年間だった」と語っていましたが、すでにEPを2部作で出すということは決まっていたんですよね。

そうなんです。シングルよりアルバムの濃度で作りたいなと思っていたときに、2つに分けることによって、また違うテイストの作品ができて面白いのかなと思って。挑戦的でしたけど、最初の曲から最後の曲まで同じテンションのまま聴けて、改めて、EPというサイズは気持ちいいなと思いました。

どんな2枚にしようと思っていました?

アナログのA面、B面っていうのが一番近い気がします。『red』の初回限定盤が『green』を収納できるボックス仕様になっているので、2枚でひとつっていうふうにも取れるって考えると、レコードを裏返したような気持ちと近いような気もしつつ、ガラッと変わった印象も見せられる2つの作品になりました。

ガラッと変えた部分というのは?

差別化を図るというよりは、「また明日」と「NEW DAY」の2曲がアニメのタイアップで、『若おかみは小学生!』という作品と向き合って作ったところが大きかったです。『green』は入れたい曲が決まっていたけど、『red』は対照的に、まずこの2曲があって。そこにどういう曲が足りないかっていうのを考えて、すでにある曲ではなく、「こういう曲はどうだろう?」というものを作って投げて、作って投げてっていう感じの作り方だったので、スピード感があって。締め切りとの戦いみたいなものも感じつつ、それが刺激的だったというか。締め切りがあるからこその充実感がありました。

アニメ『若おかみは小学生!』の主題歌のオファーを受けた際はどう感じました?

すごく嬉しかったです。小学生のときに原作が図書館にあったのは知っていて。読んでいた友達からは「『若おかみ』の主題歌やるの? すごい! 懐かしい」って言われて。これまでアニメの曲はあまり作ってこなかったんですけど、『green』のときにもアニメに向けて作品を作らせてもらって。原作がある作品をもとに曲を作るのは好きです。何もないところから作るのももちろん好きなんですけど、どう寄り添えばいいのかっていうのを悩みながら書いていくのも楽しかったです。

自分の隣りにいる人たちを大切にしたいと思える

では、最初に「NEW DAY」と「また明日」を作って。

そうですね。あと、「クラクション」も同じ時期に作りました。

アニメにはどう寄り添おうと考えていました?

テレビアニメ版と映画版では、同じ作品だけど描き方が違ったんです。監督もスタッフも違って、絵のタッチもちょっと変わっているので、同じ作品でありながら違った作品のような気持ちで書いていきました。「NEW DAY」は、テレビアニメの監督さんやスタッフさんと話していくなかで、朝早くに放送されているということと、若い層の子も観ているアニメだから、明るい楽器がたくさん入っていながら、一緒に口ずさんで歌えるようなシンプルな日本語を使って物語の最後を締め括れたら、と思って書きました。今まで自分が出した曲の中でも、とてもポップな作品になっていますね。

カノン進行(パッヘルベルのカノンと同じコード進行)になっていますよね。

はい、なっています。最初にこのアレンジをもらったときに、この終わり方好きだな!と思ったんですよね。素敵だなって。

声色もかなり明るくてポップです。

そうですね。レコーディングのときも、他の曲はどういう声でってあんまり考えないで歌うんですけど、この曲は私の中の可愛いをすべて出し尽くしました(笑)。この声で出せる最大限の可愛いを出せるように頑張ろうと思って歌いましたね。歌詞は2曲とも「優しさというものがどんどん連鎖していくようなものがいい」って言われていて。主人公のおっこちゃんという女の子は、自分の両親がなくなっていて。すごく悲しい過去を背負いながら頑張っていく話なんですけど、私が作品を観て感じたのも、自分が優しいことをしたら、誰かの優しさがまた返ってきて、それがどんどん広がっていくっていうことだったので、自分の隣りにいる人たちを大切にしたいと思えるような明るい曲に仕上がればいいなと思って書きました。

明日を繋げるために、悲しいけれども「さよなら」

「さぁ 変わっていくNEW DAY」というフレーズがありますね。

どんどん変化をしていく。私自身もそうなんですけど、何かつらいことがあっても、また誰かと出会ったり、また新しい何かを始めることによって、どんどん自分が変わっていって、それがいい方向に進んでいったりする。また時々、落ち込んだりすることもあるけど、変わっていくということも、私が作品を観て感じたことのひとつでしたね。

作品に寄り添いながらもご自身の心境とリンクしている部分もありました? 「NEWDAY」と「また明日」、それに「クラクション」も、“あの日”という過去を振り返りながら前を見ていますよね。

リンクしているところはもちろんあって。フィクションであれ、ノンフィクションであれ、自分を通して出てきた歌詞なので、自分が今まで感じてきたことはすごく反映されているなと思います。おっこちゃんのことを考えていても、自分が体験した別れを思い出しながら書いていった曲だったから。そういう意味では、『green』と繋がっている歌詞のテーマなのではと思います。

“また明日”という言葉にはどんな思いを込めました?

“また明日”ってすごくいい言葉だなと思ってて。さよならって、悲しいじゃないですか。なんの準備もできてないまま、さよならをしなければいけなかった人って、きっと、おっこちゃん以外にもたくさんいると思っていて。でも、忘れなければ、ずっとそばで見守ってくれている存在だと思うんです。自分の心の中にずっといてくれる。その人がいたから、決断ができたり、今の自分があるっていうことが多いと思っていて。最後は、明日を繋げるために、悲しいけれども「さよなら」って言うんですけど……なんか、いろいろと考えましたね、お別れに対して。

『green』に収録されていた、ご自身のおじいさんとのお別れを描いた「Sunny Day」や結婚して実家を離れる姉と母の心境とリンクした「bye bye」と対にしようと考えて作ったわけではないんですよね。

自分の別れに対する意識っていうのは、ここ何ヵ月かの話なので、全然変わってはいなくて。ただ、やっぱり、別れも変化のひとつという意味では、すごくポジティヴなんです。悲しいことももちろんあるし、涙が出ることもあるけど、ずっとそうはしてられない。悲しんでいる人の背中を押せるような曲にもなったらいいなと思いましたし、ちょっと哀愁の漂う夏の終わりに聴いてもらいたいような、明日も頑張ろうって思えるような日常感みたいなものも出せた気がしますね。

“嫌いだ”っていう言葉にどれだけ愛を込められるか

もう一曲、「クラクション」も日本語歌詞ですが、この曲の主人公は“ぼく”で男の子になってますよね。

最初は歌詞が付いてなかったので、全然違う世界観で書きました。失って初めて気づくようなことって、すごくあると思っていて。

EPの最後の曲が「だから嫌いだ」と言うフレーズで終わるのも珍しいなと思いました。ずっと“嫌いだ”って言ってる曲ですよね。聴けば、愛情の裏返しってわかりますけど。

「だから嫌いだ」って言いつつ、こんなの「めっちゃ大好き」って言っているようなもんじゃん、っていう(笑)。だから、その“嫌いだ”っていう言葉にどれだけ愛を込められるかっていうのを意識しました。自分の家族とか、近くにいればいるほど、「このやろう!」って思うことがあったり(笑)、うざったく感じて突き放したりすることって、きっと誰しもあることじゃないですか。でも、そこが一番失って悲しいところというか。

自分にとって一番身近な家族との別れで気づいたことが書かれていますよね。

そうですね。自分が愛されれば愛されるほど安心しちゃって、なんでも言っていいような気持ちになったりするんですけど、そんなことはなくて。そういう近しい距離の人への愛について書いた歌ですね。

この曲のタイトルはどうして「クラクション」にしました? 自分の感情とはかけ離れた場所で鳴っている音ですよね。

すごく悩みました。タイトルを付けるのが本当に苦手で(笑)。いつも歌詞を先に書いて、最後の最後まで後回しにするんです。「7」とか謎のタイトルで最後まで伸ばしに伸ばして。すごくパーソナルというか、心情をたくさん歌っているんですけど、タイトルの言葉で「なんの曲?」って思うところから入ってもらえたら面白いかなと思って付けました。

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