連続テレビ小説「半分、青い。」特集 『まだまだ半分、青い。』  vol. 8

Interview

朝ドラ『半分、青い。』のヒロイン・鈴愛を生ききった永野芽郁。 10ヶ月間におよぶ撮影でつかんだものとは何か…?

朝ドラ『半分、青い。』のヒロイン・鈴愛を生ききった永野芽郁。 10ヶ月間におよぶ撮影でつかんだものとは何か…?

4月にスタートした連続テレビ小説、すなわち朝ドラ『半分、青い。』も、いよいよクライマックス。エンタメステーションでは同ドラマをいっそう楽しめるようにと、キャストやスタッフにインタビューを敢行し、それぞれの役割や個々の「まだ青かったころ」のエピソード、そして収録時のエピソードや作品への思いなどをフィーチャーしてきたが、本特集もいよいよオーラスを迎えることになった。
最終回は満を持して…ヒロイン・楡野鈴愛役の永野芽郁が登場。10ヶ月という長きに渡って鈴愛として生きた時間を、どのように消化したのだろうか? 撮影時を振り返るとともに、鈴愛という1人の女性に対して思うことや、永野自身が何を今感じているのか──さまざまな思いを語ってもらった。

文 / 平田真人 撮影 / 荻原大志
取材 / エンタメステーション編集部


お芝居に関しても、日々生きていく中で自分に必要なものだったり、「こうしたい!」っていう願望だったり…私は“青い”ところばかりです。

エンタメステーションでは7月から『半分、青い。』特集をお届けしてきましたが、やはり最終回は永野さんで、と思いまして。

あ、志田(尚二=持ち道具)さんの記事、見ました! URLが送られてきたので読んでみたら、私のことまで話してくださっていて。面白かったです、現場で志田さんといると。さっきも会ってきたんですよ。「志田さ~~ん!」って大きな声で呼んで(笑)。

愛があふれていますね(笑)。では、さっそく質問を。もし鈴愛と対面できるとしたら、彼女にどんな言葉をかけたいですか?

「もうちょっと穏やかに、平和に生きようぜ」って(笑)。そう言いたいくらいパワフルだし、破天荒なところがある人なので。正直、ケンカするシーンのお芝居とか、なかなかツラかったですし…。本番ギリギリまで、みんなとゲラゲラ笑いながら話していたので、その人たちに向かって毒を吐くのはやっぱり…。ユーコ(清野菜名演じる小宮裕子)のことを突き飛ばしてみたり、両親に「嘘つき家族や!」って言ったり。思い返すと、いろいろとやりすぎな感がありますね。

そこを踏まえて、というわけではないんですけど、一度だけ鈴愛の人生をやり直せるとしたら、どのシーンまで戻ってみたいですか?

いやぁ~…もうやり直したくないです(笑)。でも、やり直すならどこかなぁ…(しばらく考えて)うん、やっぱり、やり直したくないです。鈴愛の人生はもう生ききったし、その時々でできることは全部やってきているから、もう一度やり直したところで、もっといい生き方ができるとは思わないんですよね。鈴愛の生き方が正しいかって言われたら、そうじゃないところもたくさんあると思いますし、私としても間違えている部分があったんじゃないかなと思いますけど、その時にできることを精一杯やったから、今やり直すとまた間違えた方向へ行ってしまうだろうなって。なので、あれはあれでよかったのかなって思っています。

なるほど。あの…18歳にして10ヶ月に渡って1人の女性の半生を生きた、特に母親を演じたという経験が、今後も女優を続けていく上ですごく大きなものになるんじゃないかと想像しますが、ご自身はどう感じられていますか?

この世の中には「お母さん」という存在の方々がたくさんいらっしゃいます。自分にも母がいるわけですけど…私も18年間育ててもらって、母からもらったものをちゃんと自分なりに受け止めて生きてきたので、「自分だって(役の上で)母になれるはずだ」って思っていたんです。(鈴愛の一人娘である)花野は役の上での子どもですけど、私は鈴愛として大きな愛を与えられるように過ごせたらいいなと考えていました。実際、今回母親役を演じたことで、「できないものはないだろうな」と思えるようになりました。以前は、演じる前から「できない」と思うことが多々あったんですよ。今回も出産シーンとか…自分は経験していないから、リアルにやろうとしても想像でしかないわけじゃないですか。事前に出産時の映像も見たりしたんですけど、人それぞれに違っていて。そもそも、朝から生々しいお芝居をするべきなのか、っていうのもありましたし…(笑)。それこそ母にも相談したりもしたんですけど、どう演じるのが正解なのかわからなくて。だから、とにかく花野のことを日常的に考えて、娘のことを最優先にっていうことを軸にしていればブレないはずだと思っていました。

第119話より ©NHK
つくし食堂2号店の店名候補を亡くなった仙吉から唯一聞いている花野。そんな花野からどうにか名前を聞き出そうとする鈴愛。

涼ちゃん(元夫の森山涼次=間宮祥太朗)が別れを切り出して来たシーンで、「この花野を捨てるのか?」って言った時の鈴愛の顔や言葉に、母の強さや思いといったものがすごく滲んで見えたんですよね。

わ、ありがとうございます。あのシーンはやっぱり…いろいろ思い出しますね。もう涼ちゃんには自分に対する気持ちがないことは鈴愛もわかっていて、向き合った時に「別れてほしい」って言われた瞬間、「もう、この人に何を言っても無理なんだな」っていうのを察してはいたんです。でも、「あなたと一緒にいたい」んじゃなくて、「花野のために、あなたには一緒にいてほしいの」っていう考えが頭の中にできている時点で、「あぁ、もしかしたら自分はちゃんと母になれているのかもしれないな」とは、おぼろげながら感じていました。

何となくだけど実感があった、と。なお、この特集では、登場していただいた方々に共通質問をしておりまして…今までの人生でも撮影中でもいいんですが、「まだまだ自分、青いな」と思った瞬間はありますか?

それで言うと…青いところばっかりですね。お芝居に関してもそうですし、日々生きていく中で自分に必要なものだったり、「こうしたい!」っていう願望だったり、いろいろなものがまだカタチにならないのは、時間がなかったり物理的な問題もありますけど、力不足──つまり自分が青いっていうことにほかならないなって。年齢のせいにしちゃいけないですけど、18年しか生きていなくて…自分の中では「18年も生きている」っていう感覚もありますけど、その中でしかできないことしかカタチになっていないから、もっといろいろなことができるようになったり、視野が広がっていったらいいのにな、っていうふうには思っています。

視野を広げるために、いろいろとインプットする女優さんや表現者の方もいらっしゃいます。永野さんはふだん、どんなことをインプットなさっているんでしょう?

そうですね…お芝居の合間に音楽を聴いていて、「あ、ドラムやりたいな」って思って始めたんですけど、ドラムはアウトプットするためのインプット、というのではなくて、息抜きするためにやっているという感じなんです。あと、『半分、青い。』を撮影していた10ヶ月間は、家に帰ってもテレビを点けなかったんですよ。本当に(『半分、青い。』の)完パケしか観ていなかったんです。だから、入ってくる情報は基本的に少なかったんですけど、ふとした時に…周りを歩いている人たちの話が聞こえてきて、「あ、そういう印象で受け止められているんだ」っていうことを知る、という感じでした。あとは、ケータイで見るニュースから、「今はこんなこと、こんなものがあるんだ。こんなニュースが流れているんだ」っていうのがわかったり。あとは、母や友達と電話で話して情報を得る、みたいな感じでしたね。

そうだったんですね。では、「ここ一番」という時には、どんなふうに自分を奮い立たせますか?

自分が頑張らないといけない、と思った時にすることってないんですよね、逆に。そういう時こそ、私は何もしないです。その場に立ったら頑張るしかないし、やるしかないわけで。でも…美味しいものを大好きな人たちと一緒に食べたり、くだらない話をケラケラ笑っている時間が大好きだから、そういう時間をつくれるように頑張ろう、と思うことはあります。

ちなみに、今でもふとした時に岐阜のことばが出たりしますか?

出ないです(笑)。岐阜のことばと言っても、特徴的なのは「ありがとう」のイントネーションだったり、「何言っとりゃーす」みたいなのがインパクトありますけど、そのほかだと「何言っとる?」とかではなくて「何言ってんの?」って標準語に戻れるから…何か自分の中からもう鈴愛はいなくなってるんですよね。そこは意外とあっさりしているというか…。

いわゆる「役から抜けた」状態ということですよね?

意外と鈴愛でいることを楽しめていたし、楽しんでいたんだなという実感があるので、終わってからほかの撮影現場に行けない“ロス”に襲われるかなと思ったんですけど、そうなったのはクランクアップの日だけで…今は意外と次のことを考えたりしているからなのか、わりとすんなりと…「鈴愛、さよなら~」って感じですね(笑)。いや、大好きなんですよ! 『半分、青い。』の現場も、みんなも大好きだし、鈴愛という役をできたことがうれしかったし…だけど、意外とあっさり「さよなら~」っていう感じで、今はケロッとできています。
そのかわり、いつでも鈴愛に戻れる自信はあります。昨日(取材日の前日)も、おかあちゃん(楡野晴役の松雪泰子)と一緒に、おじいちゃん(仙吉役の中村雅俊)の舞台を観に行って、その後で一緒にご飯にも連れていってもらって。その時に「鈴愛は芽郁ちゃんにしかできないよね~」と言ってくださって。「そっか~、私にしかできない役っていうのが、この世に存在していることがすごくうれしいな、それが鈴愛でよかったな」と思って。それでも、やっぱり「さよなら~」っていう感じではあるんですよね。

©NHK
クランクアップ直後、モニターで映し出されたこれまでの名場面を見て感涙する永野芽郁。

そうなんですね。では、これも共通の質問なんですが、思い出の朝ドラを挙げるとすると?

実は私、朝ドラを見たことがなかったんです(笑)。なので、『半分、青い。』が、見るという意味でも初めての経験で。しかも、朝起きて見るんじゃなくて、完パケをいただいて見ているという状態で…放送を見るということが、なかなかできていなくて。『ひよっこ』と『わろてんか』は、ちょこちょこ見てはいたんですけど、途中が抜けちゃったりしていたので、ストーリーは全然わかっていなかったんですよ。有村(架純)さんや葵わかなちゃんのお芝居が見たくて、急に見るものだから、ストーリーというよりも「わ~、かわいいなぁ。頑張っているんだろうなぁ」っていう、いちファンとしての目線で見ていたという感じです。

その葵わかなさんからバトンタッチされた時に、どういった会話をしていたのでしょう?

「大変だった?」「もちろん大変だったけど…」みたいな話はしましたけど、お互いの現場でのスタンスもそれぞれ違いますし、過ごし方も違うから、わかなちゃんなりの大変さだと思ったし、私も私なりの大変さを味わうんだろうなと思いつつ…だからアドバイスっていう感じじゃなくて、「終わったら、ご飯行こうね~」みたいな感じでした。私自身のことで言うと、朝ドラに限らず現場に入る時はいつだって最初は何もわからないまま入るので、そこで何か特別なことをするっていうのはなかったですね。

なるほど。余談になるかもしれまんせんが、10ヶ月前のご自身に何か言葉を掛けるとしたら?

「終わらないものはないよ」ですかね(笑)。「これ絶対に終わらない」と思ったことが何度もありましたけど、ちゃんと10ヶ月後には終わるし、無事に完走するよ──っていう言葉を掛けたいです。

そして今、一番やりたいことは何ですか?

今、一番やりたいことは、実家で飼っている猫に会いたいですね。最近、実家に帰れていないので、猫にも会えていなくて。だから、早く帰って猫に「終わったよ~」って言ってスリスリしながら、グシャグシャに顔をいじくりまわしたいです(笑)。

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