Interview

teto 彼らの初めてのフルアルバムは、どうして15曲という曲数以上に重く熱く感じられるのか?

teto 彼らの初めてのフルアルバムは、どうして15曲という曲数以上に重く熱く感じられるのか?

tetoの1stフルアルバム『手』は、フルアルバムと呼ぶのに相応しい仕上がりだ。それは、単に15曲入りという量の話ではなく、その1曲1曲に切実な情感やリアルな情景がしっかりと描きこまれ、しかも十分な熱量を持った演奏がその楽曲世界を印象的にドライブさせてみせるから、アルバムを聴き通した後には確かな質量を持った感情が胸の底で渦巻くことになる。それはやはりフルアルバムを聴いたなと思わせる体験で、結成から約3年ほどのバンドがこういう作品を作り上げたことは快い驚きと言えるだろう。
ここでは、メンバー全員も大きな手応えを感じているというこの新作が出来上がるまでをゆっくり振り返ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 田中和彦

バンドを始めたくらいの時期から、自分のなかには1st フルアルバムはこういう感じにしようというイメージがあったんです。

まず、初めてのフルアルバムを作り始める前に、それぞれがあらかじめ考えていたことを順番に聞かせてください。

小池 1stフルアルバムで15曲入れて、そのアルバムを通して聴かせられると作品を作りたかったんです。楽曲のクオリティーや15曲のバランス、そのアルバムに一貫したストーリー性、そういうことをちゃんとやるのはなかなかできないことかなと思うんですけど、でも今のtetoならできると思ったので、1stフルアルバムなんですけど、15曲入りにしました。

小池貞利(Vo,Gt)

最近はアルバムの曲数が10曲くらいの作品も増えてきましたが、最初から15曲くらいのボリュームを想定していた、と?

小池 バンドを始めたくらいの時期から、自分のなかには1st フルアルバムはこういう感じにしようというイメージがあったんで、それをメンバーと試行錯誤しながら実現したということです。

山崎さんは、いかがですか。

山崎 元々、レコーディングしながら貞ちゃんが曲を作るっていう、同時進行みたいな感じで進んでたんですけど、そういうなかでも貞ちゃんは「15曲やる!」って聞かないんですよ。

最初から15曲入りにすると宣言していたんですか。

山崎 そうなんです。絶対それだって。

小池 途中で山崎に、「無理だよ。作れないよ、15曲なんて」と言ったんです。そしたら、「13曲とか14曲とかでもいいんじゃない?」と言ってくれたんですけど、そしたら「やっぱり15曲じゃないでとダメ!」って(笑)。

山崎 (笑)、そこはすごくこだわってるんだなというのがわかったので…。普通、最初から「15曲録るぞ!」とは言わないじゃないですか。それでも言ったのは、どうしても録りたいんだろうなと思って。だから、貞ちゃんが作ってくるのを待ちつつ、“どんな曲が来るんだろう? 面白い曲ができるかな”と思ってましたね。

福田 どうしても15曲入りということだったんで、終わるかどうか不安も感じながらやってました。でも、曲が多いほうが、喜怒哀楽いろんなことが表現できるから。それでも、やっぱりドキドキしながらやってるところはありました。

佐藤 わたしは「15曲で出すよ」と言われた時に、あまり不安とか感じなくて、再録も4曲入っていますが、それも含めて15曲、いろんなストーリーの曲を小池さんが持って来てくれるので、“早くできたらいいな、楽しみだな”と思いながらやっていました。

最初に「15曲入りで作る!」と宣言したものの、小池さんのなかにはっきりとメドが立っていたわけでもないんですか。

小池 言いたい時があるじゃないですか。「もう疲れた」とか。「もう無理だよ」とか言うんですけど、それはただ言いたいだけで、本当に無理とは思ってないところがあるし、メンバーとそういうコミュニケーションをとるのが楽しいというところもあって。だから、15曲入りにすることについての苦悩みたいなことはまったくなかったですね。

最終的には、現在廃盤で入手困難な状況にある自主制作盤「Pain Pain Pain」から表題曲や「高層ビルと人工衛星」も入ったりして、佐藤さんも言われたように4曲の再録が含まれているわけですが、それも当初からの構想通りという感じですか。

小池 そうですね。

「溶けた銃口」はデモがすごく良かったんですよ。だから、やることねぇなと思っちゃって(笑)。

具体的な作業としては最初に手をつけたのはどの曲ですか。

小池 「高層ビルと人工衛星」という曲ですね。この曲がこのバンドを始めていちばん最初に作った曲なので、その曲から始めて15曲というボリュームのアルバムにしたいというのが僕の考えだったんです。去年夏、『dystopia』というミニアルバムを出したんですけど、そこにこの曲とか入れることもできたんですよね。でも、敢えてそれはせずに、1stフルアルバムに照準を合わせたというか、今回この曲から始めていきました。

確かに、今回のアルバムの1曲目は「hadaka no osama」ですが、それはイントロのような印象もあって、アルバム本編が「高層ビルと人工衛星」から始まっていると感じる人もいると思います。

小池 この曲は、本当に何もわかってない頃というか、ギターを始めて3カ月くらいの頃に作った曲なんですよ。でも、それは本当に“音楽をやりたい!”という、純度の高い気持ちから生まれた楽曲だったので、それはやっぱり大切にしたいと思ってました。

山崎さんは今回の制作を振り返って、印象に残っている曲をひとつあげるとすればどれになりますか。

山崎 12曲目の「溶けた銃口」ですかね。デモがすごく良かったんですよ。だから、やることねぇなと思っちゃって(笑)。それで、俺たちがウダウダやってたら、貞ちゃんとケンカというか…。

山崎陸(Gt)

小池 俺としてはスタジオに入って完成させたかったんですけど、彼ら3人の完成度があまりにも低かったんですよ。で、「なんでだよ。そりゃ、おかしいだろ!」みたいな(笑)。

山崎 それで「ごめん」って言って、貞ちゃん以外の3人でスタジオに入って、詰めて、それで結果的にはすごくいいものになったんですけど、それでも僕は“これ、デモのまま出していいじゃん”と最初に思ってしまったので、その後は本当に困りましたね(笑)。

デモ・バージョンと完成バージョンとでは、やはりアレンジなどに修正が加えられたわけですよね。

山崎 ギターがいちばん変わったと思いますよ。細かいはなしはあまりしたくないですが、自分なりの指針をみつけて、その目標に向けてやっていって、自分なりにいいギターが弾けたと思っています。

「溶けた銃口」は、ひと言で言えば、名曲然とした曲ですよね。そういう曲に対しては、演奏する側も例えば名曲然とした演奏になったりするんですか。

佐藤 どうなんでしょう? そこまで…。

小池 そこまでの名曲じゃない(笑)?

佐藤 (笑)、名曲のように弾かなきゃというふうに思っていたわけではないですが、やっぱり曲ごとの雰囲気というものがあるから、その雰囲気に沿いながら、しかも自分を出せればいいかなと思ってやってますね。

あの曲が持っている雰囲気からすれば、やはりあれくらいのテンポが相応しいと感じますが、それでも「tetoがこういう曲をやるならもうちょっと速くやってみよう」とか、そういう試行錯誤はあったんですか。

福田 デモのテンポはもうちょっと速かったですよ。それは“あるある”の話で、だいたいデモは出来上がりよりもテンポは速いんです。

小池 みんなに送ったデモは確かにもうちょっと速かったんですけど、俺の頭の中ではどんどん進化していて、この曲は腰を据えたいというか、ドンと構えたい曲だったので、ああいうテンポに落ち着きました。

福田裕介(Ds)

福田さんは今回のレコーディングを振り返って印象に残った曲を1曲あげるとすれば、どれになりますか。

福田 「夢見心地で」は、本当にギリギリ、レコーディングの1週間前くらいにデモが届いて、“その1週間で完成させないと…”という感じでやった曲なんですが…。

ということは、これが15曲目にレコーディングした曲ですか。

福田 そうです。これが最後にレコーディングした曲ですね。

では、作業中は全然夢見心地というわけではなかったんですね(笑)。

福田 (笑)、そですね。でも、そういうことを感じさせない仕上がりになったなと思います。

佐藤さんは1曲あげるとすれば?

佐藤 個人的にはやっぱり「高層ビルと人工衛星」ですね。このバンドを始めて、初めて録音した曲でもありますし、小池さんから初めて聴かせてもらった曲でもあって、特別な思い入れがあるんですけど、その曲をまた録るとなって、技術的なことよりも感情の面ですごく悩みましたね。

「感情の面で悩んだ」というのは、例えばどういうことを考えたんですか。

佐藤 最初に録ったときは小池さんに言われたことをやっただけだったんですが、それから何度もライブでも演奏してきたし、よりいいものを作りたいなという単純な思いだったんですが…。前は自分のことしか考えていなかったですが、今回は周りのパートや歌詞の世界も考えてプレイできたとは思います。

佐藤健一郎(Ba)

小池さんは、この制作を振り返って印象に残った曲を1曲あげるとすれば、どれになりますか。

小池 「溶けた銃口」は山崎が言ってくれたので、違う曲をあげるのとなると…。「洗脳教育」は、実は複雑な曲なんですよね。展開も多くて、ちょっと難しいフレーズもあったりして。この曲も確かレコーディングの1週間前くらいにみんなに送ったんですけど、ちゃんと出来上がって“みんな、えらいな”と思いました(笑)。“すごいな。よく覚えてくれたな。愛があるな”って。

ずっと思っていたのは、中学生の僕が作りたいフルアルバム、僕が考える最強のフルアルバムみたいなことなんです。

あらかじめの宣言通り、ちゃんと15曲入りのアルバムになったわけですが、それはただ曲数が15曲あるだけじゃなく、いろんなタイプの曲があって、しかもそのなかにはポップと言っていいような曲さえ含まれていることが印象的です。その曲のバリエーションの豊かさは意識してそういう内容にしたんですか。

小池 意識した部分と、結果そうなったというのが半々くらいでしょうか。何も意識しないでポンとできた曲もあるし、違う色の曲を作りたいなと思って作った曲もあるんですけど、でもいちばん意識していたのは自分がどういう曲にしたいかということで、それに合わせた音の変化、リズムの変化、ということだったと思うんです。それにアルバムのコンセプトというか、ずっと思っていたことがあって、それは中学生の僕が作りたいフルアルバム、僕が考える最強のフルアルバムみたいなことなんです。そのイメージをいちばん大切にしていたので、アルバムを構成する15曲の純度を高めるためにこういう並びになったというか。

純度を高めるためにバリエーションが必要だった、ということですか。

小池 バリエーションは勝手に出ると思うんですよ。ずっと怒っているわけでもないし、ずっと笑っているわけでもないので。その時々の思いを曲にするわけで、しかもその思いは音楽で表現しないと意味がないので。例えばすごくきれいなメロディ、すごくきれいな世界観で、怒ったような歌は歌いたくないですから。

ここで言われている「純度」というのは思いを音楽化する際の混じり気の無さということですね。

小池 そうです。だから、楽しい曲もあれば激しい曲もあるということですね。

「ずっと怒っているわけでもないし、ずっと笑っているわけでもない」と言われましたが、例えば10代の頃はずっと怒ったりイライラしたりしてたけど、いまは穏やかで笑っていることが多い、という話とも違うんですよね?

小池 時間が経ったからこうなった、という話ではないですね。むしろ、アルバム前半の曲に出てくる怒っている人のように、自分もそうありたいという気持ちもあるんです。時間の経過とともに、いろんなものが持って行かれると思うんですよ。前半の曲の怒っている感じとか、嘆いている感じとか。で、“そういうもんだよな”ってなったりすると思うんですけど、でもやっぱり時間のせいにしてしまうことはしょうがないよねという話にはしたくないっていう。

だから、「高層ビルと人工衛星」はこのアルバムに入っていないといけない曲であるわけですね。

小池 そうですね。あの感じは一生持っていたいですね。

(10月からのツアーは)来てくれる人も楽しみだと思いますが、多分わたしのほうが楽しみにしてると思います(笑)。

アルバム・タイトルを『手』に決めたのは、どういうタイミングだったんですか。

小池 最後まで悩んでました。「手」という曲は、自分のなかでも力があるなと思っている曲なんですけど、でもアルバム・タイトルの『手』と曲名の「手」はまたちょっと違うのかなと思ったりして。つまり、力がある曲だから、アルバム・タイトルも『手』にしようということではなくて…。右手と左手、みたいな感じですね(笑)。というか、“このアルバム・タイトルは『手』だな”と直感的に思っちゃったんですよね。

なるほど。この出来上がりについては、どんな感触ですか。

山崎 名盤作っちゃったなあっていう。後世に名を残しちゃうなあ、みたいな感じです。

福田 フルアルバムならではの、緩急のついた出来上がりになったなと思います。

佐藤 何度も聴いているんですが、15曲ひとつひとつが主役というか、“こんなの、他にないよなあ”と思いますね。

そういうアルバムを携えてツアーに出かけていくわけですが、どんなツアーになりそうですか。

小池 このアルバムでは、言わなくてもいいことまで言ってたりするんですよね。俺のなかでは。でも、本当に身を削いで、取っ払って、取っ払って、それでいろんなものが出てきてるから、このアルバムでは純度ということをすごく大切にしてたんです。本当の核の部分に近づけるために。だから、言う必要もないことでも、それが自分の核の部分にあるなら言わなくちゃいけないし…。そういうふうに全部皮を剥いだ状態で出てきた表情をパッケージしたアルバムになったんですよね。ライブでは、そういうことはけっこうやってたんですけど、楽曲ではそういうのはなかったから、そういう楽曲を持って出かける今回のライブはより深まった、いろんな部分のわたしたち、いろんな人間のフラフラした部分を表現したいと思うので、ライブを観に来てくれる人たちとも、そういうコミュニケーションがとれたらいいなと思います。

山崎 中学生の頃の僕みたいなヤツが観に来てたら面白いでしょうね。隅っこのほうでね、楽しくなさそうに観てるんですよ。心臓がすごいドキドキしてるんだろうな、コイツっていう。目を見りゃわかりますから。“ソイツ”を探しに行きます(笑)。

福田 無事に乗り切りたいです。体調に気をつけます。

佐藤 単純に楽しみですよね。これまで行けなかったところにも行けるので、ということはこれまで来れなかった人も来れるようになることがたくさんあると思うので。来てくれる人も楽しみだと思いますが、多分わたしのほうが楽しみにしてると思います(笑)。

僕も楽しみです。ありがとうございました。

その他のtetoの作品はこちらへ

ライブ情報

teto ツアー2018「結んで開いて」

09月30日(日) 千葉・千葉LOOK    ※ワンマン
10月03日(水) 埼玉・北浦和KYARA w/tricot
10月04日(木) 神奈川・横浜BAYSIS w/POLYSICS
10月10日(水) 岡山・岡山IMAGE w/MONO NO AWARE
10月11日(木) 福岡・小倉WOW! w/MONO NO AWARE
10月13日(土) 熊本・熊本Django w/四星球
10月14日(日) 長崎・長崎Studio Do! w/四星球
10月16日(火) 京都・京都磔磔 w/ザ50回転ズ
10月20日(土) 福島・福島out line w/paionia
10月21日(日) 岩手・盛岡Club Change w/paionia
10月25日(木) 長野・松本ALECX w/八十八ヶ所巡礼
10月27日(土) 新潟・新潟CLUB RIVERST w/Helshinki Lambda Club
10月28日(日) 石川・金沢van van V4 w/Helshinki Lambda Club
11月08日(木) 群馬・群馬SUNBURST ※ワンマン
11月10日(土) 大阪・梅田CLUB QUATTRO ※ワンマン
11月11日(日) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO ※ワンマン
11月15日(木) 宮城・仙台enn 2nd ※ワンマン
11月17日(土) 北海道・札幌BESSIE HALL ※ワンマン
11月29日(木) 香川・高松TOONICE ※ワンマン
12月01日(土) 福岡・福岡CB ※ワンマン
12月02日(日) 広島・広島4.14 ※ワンマン
12月07日(金) 東京・恵比寿LIQUIDROOM ※ワンマン

teto

2016年1月、ボーカルギターの小池貞利を中心に山崎陸(Gt)、佐藤健一郎(Ba)らとtetoを結成。同年10月、自主音源となる1 st EP「Pain Pain Pain」を発売(現在廃盤)。同年12月、福田裕介がドラマーとして正式加入し、現編成となる。
2017年6月、Helsinki Lambda Clubとのスプリットシングル「split」を発売。同年8月、1 st ミニアルバム「dystopia」を発売。同年11月から<teto tour 2017「dystoipia」>を開催。全公演チケットは即日完売。
2018年3月、ファーストシングル「忘れた」を発売。同年4月から全国9か所を廻る「teto <60分2,800円ツアー>」を開催。昨年のツアーにつづき、各地チケットは入手困難を極める。同年7月からバンド初のワンマンツアー「始発」を開催。チケットはファイナルの渋谷WWW Xを含めた全4会場全て即日完売。
今夏、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018」や「RUSH BALL 2018」をはじめ、全国の大型野外イベントに多数出演。同年9月26日に1 st フルアルバム『手』を発売。9月30日から、全22本の全国ツアー、tetoツアー2018「結んで開いて」を開催する。

オフィシャルサイトhttp://te-to.net/

フォトギャラリー