Interview

上川隆也、小泉孝太郎、内田有紀が語る『連続ドラマW 真犯人』。昭和と平成に交差する誘拐事件を演じる上での役との向き合い方

上川隆也、小泉孝太郎、内田有紀が語る『連続ドラマW 真犯人』。昭和と平成に交差する誘拐事件を演じる上での役との向き合い方

大人が楽しめる骨太な社会派ドラマとして定評のあるWOWOWの「連続ドラマW」から、またひとつ見逃せない作品がスタートする。それが、江戸川乱歩賞受賞作家・翔田寛の同名小説を原作に、昭和と平成の2つの時代に起きた事件が交差する誘拐ミステリー『真犯人』だ。
事件を追う刑事・重藤成一郎を演じるのは、WOWOWのドラマ主演が『連続ドラマW 沈まぬ太陽』以来、2年ぶりとなる上川隆也。昭和49年に起こった幼児誘拐殺人事件を発端に、時効成立1年前の昭和63年、そして新たな殺人事件が起こった平成20年と、3つの時代にわたって真相解明に奮闘する男の情熱と苦悩を抑制の効いた演技で味わい深く演じている。
そして、平成20年の事件を追うなかで昭和の誘拐殺人事件に行き着き、当時捜査を担当していた重藤に協力を求める若き刑事・日下悟に小泉孝太郎。誘拐殺人事件の被害者の姉・尾畑理恵に内田有紀…といった実力派俳優が集結。
葛藤や無力感を抱えながらも真相解明に奮闘する刑事たち、事件の日から現在まで苦悩し続ける被害者遺族、捜査よりも警察の面子や己の出世を優先させる警察幹部…。さまざまな人物の思惑が絡み合う、スリリングな刑事サスペンスであり、重厚な人間ドラマでもある本作の魅力、見どころについて、上川隆也、小泉孝太郎、内田有紀の三人に話を聞いた。

取材・文 / 井口啓子 撮影 / 荻原大志

昭和から平成へ…演じる上でそれぞれが大事にしたこと

まず最初に脚本を読まれて、演じられる役について感じたことを教えていただけますか?

上川 重藤は要約するのが難しい役柄ではあって、刑事として自分の仕事や立場について矜恃をもって過ごしていることは確かなんですけど、それを「一徹」とかいう言葉で済ましてしまうと彼の持っているなにかをスポイルしてしまう気がするんです。とても不器用ではあるんだけど、本当はあったかいものを内に秘めた人だと思います。

重藤成一郎(上川隆也) 『連続ドラマW 真犯人』より 

小泉 僕が今回、日下を演じるに当たっていちばん大事にしたのは重藤さんの先輩に当たる警部補の(でんでん演じる)辰川さんなんです。僕が今回演じた日下は平成の刑事ではあるんですが、持っている熱量みたいなものは重藤さんやでんでんさんが演じた辰川さんと同じじゃないかと思っています。平成の事件をきっかけに重藤さんに会いに行って、重藤さんの封印した心の中に日下が入り込むには、どこか後輩や息子のような近しいものを感じてもらえわないとダメだなと思ったので、タイプは違っても重藤さん辰川さんに通じるものを出せるように…というのは、いちばん意識しました。

内田 私は台本をまず最初に読んだとき、20代の尾畑理恵のシーンがあって、これをやる人は大変だなあ…と思ったんです。若気の至りではしゃいだりしていい20代という年頃に、彼女は自分は幸せになってはいけないんじゃないかという思いを抱えながら生きている。このような難しい心情、誰がやるんだろう…と思ってたら、自分だったのでびっくりして(笑)。でも、20代の理恵を演じることで40代の理恵がどういうふう生きているのか?ということを得られたので(ひとりの人物の異なる時代を演じることは)大変でしたけど、すごく勉強になりました。

実際に役を演じるにあたって特に意識された点はありますか?

上川 僕の場合は今回、20代・40代・60代という3つの異なる時代の重藤を演じたわけですが、同じ人物でも年齢によって課せられてるものが違って、それが彼の一挙一動に反映されてることは間違いない。やっぱり年齢が上がるにつれて課せられてる圧や重みは増すでしょうから、自ずと声や仕草も変化していくだろうと、今回はそういった『時間』を考えながら演じました。

小泉 僕の場合は先ほどお話したように、辰川さん重藤さんという二人の先輩の思いを駅伝のたすきのように受け継ぐことを一番大事に考えていました。日下と重藤は最初はちょっと距離があって、それは簡単にポンと踏み込んではいけないものなんだけど、どこかで日下を許してくれてもいて…。それが二話、三話と回を重ねるごとに近づいていって、結果としてひとつの事件を執念で追いかけたコンビとして見てもらえるように持っていけたらいいなと思って演じていました。

上川 だって、何度も会いに来るから(笑)。

小泉 そこで嫌だなって思わせたらダメで、「これなら許せる」って思ってもらえる絶妙な距離感は大事にしました(笑)。

尾畑理恵(内田有紀) 『連続ドラマW 真犯人』より 

内田さんは誘拐殺人事件の被害者の姉として、非常に複雑な葛藤を抱えた役でしたが…。

内田 自分の大事な弟の死を抱えて生きる尾畑理恵という役を演じるにあたっては彼女と同じように苦しむ事を模索しました。もちろん演じるだけですべてを背負うことはできませんが、少なくとも真摯な思いを持って撮影に臨む覚悟や使命感のようなものはありました。やっぱり現実に生きている社会にもいろんな事件があって、そこにはいろんな方たちの様々な思いがある。だから、たとえドラマではあっても理恵という1人の女性の境遇ときちんと向き合わないといけないと思いました。

上川 なるほど。周囲にはそんな大変さを感じさせないのが内田さんの素晴らしいところだと思います。

お互いが持つ共演者へのリスペクトが、重厚なドラマを完成させた

上川さんと内田さんは今回が初共演でしたが、お互いの印象と共演した感想を教えていただけますか?

上川 僕は昔から内田さんをよく拝見しておりましたので、今回もいろいろ雑念は持っていたのですが(笑)。それはさて置き、女優さんとして役を演じられている時の印象と、それを離れた時のお人柄の差が僕はすごく印象的で。今回も尾畑理恵という決して軽くない、むしろ演じ方によっては沈痛さや影の部分を持ち合わせていなくてはいけないキャラクターを、カチンコがなった瞬間、見事に演じて尾畑理恵になってしまわれる。さっきまで雪がちらついてきれいだって喋っていた筈なのに。その役者としての瞬発力というか、インナーマッスルとでもいいましょうか。決して外には見せない筋肉を持ってらっしゃる方なんだなあと感じました。

内田 上川さんはこういう語彙力にすごく長けてらして、会話も本当におもしろい!難しいことから雑学みたいなことまで、本当にいろんなことを知ってらっしゃるので、お話していても常に「本当ですか?」ということばかりで、ものすごく引き出しがある方なので、本当に感性を刺激されました。

上川さんと小泉さんは『連続ドラマW 沈まぬ太陽』以来、2度目の共演ですが…。

小泉 今回は上川さんの近くにいる役だったので、『連続ドラマW 沈まぬ太陽』のとき以上に濃い時間を過ごさせていただいて、役者として人として、素晴らしいなって改めて感じました。本当にサッカー日本代表くらいのものを感じる。上川さんは役者として日本代表です。

日下 悟(小泉孝太郎) 『連続ドラマW 真犯人』より 

上川 やめてください(笑)。今話をきいて感じられたと思うんですが、小泉さんは人がともすれば言葉の中に含んでしまうような嫌味とか澱のようなものが一切ない。清流で洗った麻で編んだTシャツみたいな方で、すごく肌ざわりがいいし、汗をかいても決して不快にさせない。共演は2回目ですが、すごく肌馴染みがいいし、回数関係なく構えずに対峙できる。たぶん小泉さんのことを嫌いな方はいないんじゃないかなっていう、魅了されるような磁力をお持ちの方です。

小泉 ちなみに有紀さんは最高級のダイヤモンドです。尾畑理恵はとてもヘヴィな役ですが、有紀さんがやると本来の輝きが削られてちょうどいいくらいだと思いました。とんでもないカラット数をお持ちの方です。

いや、互いにリスペクトを抱きつつ撮影された現場の空気が伝わってきます(笑)。最後に、『真犯人』はジャンル的には、いわゆる犯罪サスペンスではありますが、そこから人間の業や悲しみが浮かび上がってくる重厚な人間ドラマとなっています。それはどういった要素に拠るものだと思われますか?

上川 主観になりますが、やっぱり登場人物が引きずっているものの重さなんだろう、と思います。日下は穢れのない身で、だからこそ重藤の懐にも入っていけたのでしょうし、34年前の事件にもまっすぐに向き合っている。本作で唯一、アクや澱のようなものを感じないで見ていられるキャラクターだと思うんですが、僕が演じた重藤は最初の誘拐殺人事件の時にある種の挫折や無力感を抱えて、二度目は上司の地位を守るためお前がなんとかしろと、無理に押しつけられた仕事に向き合い、忸怩たるものは彼の根底にずっと流れているでしょうし、尾畑理恵にしても、大切な家族を失った上に、自分はそのことを憶えていないという罪悪感をずっと抱えている。そういう登場人物ひとりひとりが引きずっているものの重さが物語のいろんな局面に響いていて、このドラマをたんなる謎解きミステリーではないものにしていると思います。ぜひ、普段ドラマを御覧にならないような大人の方にも見ていただきたいです。

連続ドラマW 真犯人

9月23日(日・祝)スタート(全5話)
[第1話無料放送]WOWOWプライム 毎週日曜 夜10:00
出演:上川隆也 小泉孝太郎 内田有紀 甲本雅裕 田中要次 浜田学 森岡龍 清水伸 長野里美
モロ師岡 近藤芳正 尾美としのり 北見敏之 でんでん 高嶋政伸

原作:翔田寛「真犯人」(小学館文庫)
脚本:池田奈津子(「連続ドラマW 宮沢賢治の食卓」「砂の塔~知りすぎた隣人」)
音楽:やまだ豊(WoWoW×東海テレビ共同製作連続ドラマ「犯罪症候群」シリーズ、『いぬやしき』)
監督:村上正典(WoWoW×東海テレビ共同製作連続ドラマ「犯罪症候群」シリーズ、「連続ドラマW 鍵のない夢を見る」)

<ストーリー>
平成20年、静岡県の国道高架下で須藤勲(尾美としのり)の殺人事件が発生。この事件を捜査する静岡県警富士裾野署の刑事・日下悟(小泉孝太郎)は、須藤が昭和49年に離婚した妻との間にできた、当時静岡在住の幼い息子・尾畑守を誘拐殺人事件で亡くしていたことを知る。この事件は時効成立の1年前となる昭和63年に、静岡県警本部長の榛康秀(高嶋政伸)の指示により特別捜査班を編成。ノンキャリアながら警視にまで昇進した重藤成一郎(上川隆也)が管理官となり、有能な刑事6人を率いて再捜査が行なわれた。
それから20年後に東京在住の須藤が静岡で殺されたことを不可解に感じる日下は、昭和の誘拐殺人事件を掘り下げることが須藤殺害の解明につながると直感し、警察から離れて久しい重藤を訪ねて事件解決の手掛かりを探る。さらに、日下は尾畑守の遺族である母親の小枝子(長野里美)や姉の理恵(内田有紀)にも接触、次第に真相へと近づいていく。