横川良明の演劇コラム「本日は休演日」  vol. 8

Column

「舞台化不可能」の壁を超えた偉大なる挑戦『七つの大罪 The STAGE』

「舞台化不可能」の壁を超えた偉大なる挑戦『七つの大罪 The STAGE』
今月の1本 『七つの大罪 The STAGE』

ライター・横川良明がふれた作品の中から、気になる1本をチョイス。独断と偏見に基づき、作品の魅力を解説するこのコーナー。今月は、シルバーウィーク特別企画ということで、2本掲載です! 舞台「野球」~飛行機雲のホームラン~に引き続き紹介するのは、8月20日の大阪・大千穐楽をもって幕を閉じた『七つの大罪 The STAGE』。妖精族や巨人族など、ファンタジー要素の強いキャラクターが数多く登場する世界を、いかに舞台で再現するか。その演出に注目が集まった本作だが、“2.5次元”らしいデジタルとアナログをミックスさせたクリエーションで、原作ファン納得の世界観を立ち上げた。そんなキャスト&スタッフの総力を結集した挑戦の模様を語ります。

文 / 横川良明

舞台化不可能のハードルを正面突破で超える

数ある漫画原作の中には、その荒唐無稽な世界観や漫画ならではのキャラクターの魅力から「舞台化不可能」と形容される作品がある。鈴木 央原作の漫画『七つの大罪』は間違いなくその系譜に連なるタイプの作品だ。壮大なスケールのバトルシーンから、人間の言葉を話せる豚のホーク(声:久野美咲)や、身長915cmの巨人族の少女・ディアンヌ(長谷川かすみ)など登場するキャラクターはいずれも規格外の個性。映像ならまだしも舞台でこうした魅力をどう再現するのか、舞台化発表の時点から多くの原作ファンが疑問を抱いた。

結論から言うと、『七つの大罪 The STAGE』はこれらの高いハードルを、正面突破で乗り越えた。ホークの表現や、チキン・マダンゴの胞子を浴びてエリザベス(梅澤美波)が小人化する描写は、実に演劇らしいチャーミングな手法でクリア。ディアンヌの表現も映像と生身の肉体を交えた演出で、違和感なく成立させた。こうした映像×肉体というアイデアは他にも随所で見られ、原作でも見られたメリオダス(納谷健)とギルサンダー(榊原徹士)の“槍投げ対決“も映像と掛け合わせた演出でしっかりと再現。メリオダスの超人的な能力を示す印象的な場面だけに、原作ファンとしても嬉しい描写となった。

ストーリー展開もほぼ原作通り。メリオダスとエリザベスの出会いから、ディアンヌ、バン(有澤樟太郎)、キング(斎藤直紀)、そしてゴウセル(北村 諒)が仲間になるまでのエピソードがテンポ良く凝縮された。最初の山場となるのは、バンの過去が明らかになる死者の都のエピソード。そこからバイゼル喧嘩祭り、そして終盤はオーダンの森と、長尺ながら観客を飽きさせない構成になっている。

 さらにそこに歌とダンスという音楽的要素が加わることで、演劇的な華やかさが倍増。音楽は、アニメ版同様、ケルト音楽をベースとしているため、アニメを視聴していたファンにとっては、地続きとなった世界観が楽しめたのではないだろうか。短いビートに乗せてキャストがステップを踏むと、劇場全体が軽やかな高揚感でいっぱいに。特に全キャスト総出演のダンスシーンは圧巻の迫力。アイリッシュな曲調が、『七つの大罪』の世界観にぴたりとハマっていた。

多彩なキャストで原作キャラを巧みに表現!

そして、キャストもそれぞれに健闘していた。主演の納谷健は、普段の声よりも高めのとぼけた口調が、メリオダスらしくて好印象。最大の武器である身体能力を存分に発揮し、バトルシーンで見せ場をつくった。特に“覚醒後”は、キレのいいアクションでメリオダスの圧倒的な強さを表現。細身ながらよく鍛えられた肉体美も、メリオダスそのまま。それでいて、台詞がないシーンではポークにちょっかいをかけたり、笑える小芝居を随所に挟み、男らしさもコミカルさもフル装備の万能性を改めて証明した。

エリザベス役の梅澤美波は儚げな声のトーンが心地良く、守ってあげたいヒロイン役がぴったり。バン役の有澤樟太郎はあまりの腰の細さにまず驚愕。それでいて、声はよく通り、舞台映えする存在感を改めて示した。そして、何と言ってもディアンヌ役の長谷川かすみがアニメの声にかなり近く、ディアンヌのいたいけな可愛さを完璧に再現していた。ゴウセル役の北村 諒は物語後半になってからの登場だが、とぼけたキャラクターを完全に自分のものにしていて、そこかしこで笑いを連発。他にもハウザー役の川隅美慎がバンのチャックを下ろそうとしたり、どこからがアドリブかわからない自由闊達な演技で名バイプレイヤーぶりを発揮していた。

物語は、ここからがさらなる盛り上がりというところで終了。否が応でも続編を期待したくなる幕切れだけに、今後の展開に期待を込めて注目していきたい。

舞台『七つの大罪 The STAGE』

東京公演:8月3日(金)~12日(日)@東京天王洲 銀河劇場
大阪公演:8月18日(土)~20日(月)@梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

原作:鈴木央「七つの大罪」(講談社「週刊少年マガジン」連載)
脚本・演出:毛利亘宏(少年社中)

キャスト
メリオダス:納谷 健(劇団Patch)
エリザベス:梅澤美波(乃木坂46)
バン:有澤樟太郎
ディアンヌ:長谷川かすみ
キング:斎藤直紀
ゴウセル:北村 諒
ハウザー:川隅美慎
ベロニカ:七木奏音
グリアモール:野村祐希
ジェリコ:小玉百夏
スレイダー:奈良坂潤紀
ヘルブラム:窪寺 昭
ギーラ:はねゆり
ヘンドリクセン:輝馬
ギルサンダー:榊原徹士

アンサンブル:SATOCO、青木謙、亀井英樹、北野淳、佐竹真依、高橋広吏、仲田祥司、吉田邑樹、吉野菜々子

オフィシャルサイト

©鈴木央・講談社/「七つの大罪 The STAGE」製作委員会

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